千束の元相棒が自殺しかけた   作:曇らせピエロ

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 千束って曇らせ適正高いけどヤンデレ適正も高くね?


六話

 

 

 真菜は月に二回、公園へと遊びに行く。

 小学生の女の子達と月に二回、遊ぶ約束をしていた。最初は人間らしくなかった真菜を千束が連れてきてから、無表情だというのに子供達は面白可笑しそうにかまってくる。

 

 表情を出せない自分とは何が楽しいのか、いつも分からなかったけれど子供は無邪気に真菜を振り回す。それから奇妙な事に、この関係は続いている。

 

 流行りを教えてくれたり、体育の授業の一環で鉄棒や体操の練習に付き合ったり、鉄棒をしたり鬼ごっこしたりと、色々と遊びに付き合ったりもしている。全員小学一年生、元気いっぱいでこちらの体力が足りなくなるほどだ。

 

 

「おねえちゃん!もっかい回して!」

「私はいいけど、ナナちゃんのお母さんは大丈夫ですか?」

「ちょっと、休憩させて…というか今日は無理、腰が」

「あ、あはは」

 

 

 今日は大縄飛びの練習に付き合っている。

 近々、クラス対抗大縄飛びの学校行事があるらしく、真菜は回す方に付き合っていた。かれこれ飛べずに100以上回しているが疲れた様子はない。ナナの母親の方が疲れていてちょっと休憩する事にした。

 

 自販機に向かい、飲み物を買おうと歩いていると視線を感じた。振り返ると制服を着たたきなと千束が此方を見ていた。

 

 

「随分と早い再会でしたね」

「そこは触れないでくれると助かるかな」

 

 

 後ろにいた千束に笑われた。

 また今度が今日中になるとは思わなかった。自販機で缶ジュースやお茶を数本買うと、それを抱えて休憩している子供達の方へと歩き出す。

 

 

「井ノ上さんは千束の配達の手伝い?」

「いえ、DAの仕事の説明を」

「ああ、でも此処DAより殺伐としてないでしょ?」

 

 

 その言葉に言葉を詰まらせた。

 保育園、英語教室、組長、共通点が全く見当たらずたきなも本当に此処がDA直属の組織の一つなのかすら本気で考え始めていた。

 

 頭を悩ませていると先程の子供達が千束に抱きついて来る。拒む事なく千束は屈んで子供達を抱きしめた。

 

 

「あー!千束おねえちゃんだ!」

「やっほー、久しぶりナナちゃん、真澄ちゃん、トワちゃん!元気にしてたぁ?」

「うん!真菜おねえちゃんと大なわとびやってたの!」

「30回も飛べたんだよ!」

「おおっー!凄いじゃん!これはクラス対抗は優勝かなぁ!」

「疲れたでしょ。好きなの一本選んでいいよ」

 

 

 喜ぶ子供達、ジュース缶を選んでは子供達はベンチまで走って飲み始めた。保護者の母親達にも渡すと、いくらでしたかと言われたが、真菜もリコリコで働いている分は給料が出ている。真菜は給料の殆どを使わずに貯めている。その程度の金額を貰うまでもなかった為、いいですと言って断った。

 

 子供達から少し離れてベンチに座った。

 たきなも今までの案内から仕事の共通点が分からず、真菜に問い詰めた。

 

 

「此処はどんな仕事をする場所ですか」

「何でも屋だよ、DA以外にも結構殺しから離れた依頼も受けてる」

「個人のためのリコリスですか?」

「まあザックリ言えばそんな感じ、だと思う」

 

 

 依頼ならまだしも、任務の回数が二年で数えられる程度だ。何でも屋というのは正しいが、実際には真菜もハッキリと明言できなかった。殺しの依頼は殆どないと断言は出来る。正確には殺しの依頼を受けても不殺で終わらせるのが千束だから。

 

 

「ですが、ファーストの二人が何故こんな小さな支部に?幾ら何でも過剰──」

「たきな」

 

 

 千束が強く名前を呼んだ。

 ファーストは下手をすればリコリスの一部隊に匹敵する。千束は今その代表格と言っても過言ではないだろう。真菜もそういう意味では間違いなく一部隊どころな一組織を壊滅させるだけの戦闘力を保有していた。

 

 ファーストが二人もDAから遠い支部にいる。

 たきなはそれが不思議でならなかった。真菜は困った顔で真実を告げた。

 

 

「私は今はDAから半除隊してる」

「えっ…?」

「私、記憶喪失なの。だからファーストだった頃の記憶が無いの」

 

 

 信じられないものを見る目をしていた。

 使えなくなったリコリスは処分される。DAの情報を不用意に漏らさないための措置としてだが、真菜は半除隊という形を許されている。その為制服も着ていない。リコリスの制服は都会に紛れる迷彩服のようだが、真菜の場合は裏社会でかなり知れ渡っている。絶対に標的が制服である事がバレている為、あえて普段着を着ているのだ。

 

 

「で、でもそれなら普通再教育とか」

「それは上層部が私の記憶を取り戻したいからだよ」

「何故?」

「それは──」

「はい!休憩終わり、行こうたきな!」

 

 

 千束が話を切り、ベンチに立ち上がる。

 この話をすると千束は少し曇る。だからといって少し過保護過ぎる気もするが。

 

 

「この後どこ行くの?」

「お世話になってる警察署の所」

「ああ、私も後で行くよ」

「えぇ、別にいいよ。行っても事件があると思えないし。晩御飯作って待ってて」

 

 

 やんわりと断る千束に真菜も今回ばかりは苛立ちからため息をついた。毎回毎回、危険だから遠ざけようとするのは理解出来ても、いつか失った記憶を取り戻さなければいけない。まるで記憶を戻したくないという千束の我儘が入っているようで、ずっとこうなのだ。

 

 

「……うん、わかった」

 

 

 一体いつまで頼られない事に耐え続ければいいのか、そんな思いをひた隠すように真菜は軽く笑った。たきなには無理して笑っているように見えたが、千束はそれに気付けなかった。

 

 

 ★★★★★

 

 

 夜にバイクを走らせた。

 大型二輪のバイクとヘルメット、風が気持ちよく走らせるにはいい気候だった。除け者扱いに嫌気もあったのか、真菜は真菜なりに調べてみる事にした。たきなが銃を乱射した現場へと走らせ、バイクを止めた。

 

 

「……此処か」

 

 

 銃千丁の取り引きをした場所、そしてDAが偽の情報を摑まされた場所でもある。老朽化により立ち入り禁止の看板があるが、真菜は気にせずに入った。中を見渡せば、銃を撃った損壊も無く、舗装用のセメントで固められて塞がれている。クリーナーが既に動いている。証拠となるものや遺体は当然の如く無く、銃は一丁も落ちていない。手掛かりなど、見つかるはずもない。

 

 

「……!」

 

 

 そう思っていたが、窓際すぐ近くの木箱の裏側に一発だけ弾丸が落ちていた。クリーナーの回収漏れ、一発だが弾を回収し、それを見続ける。

 

 

「(……10mm弾、リコリスが使う弾じゃない……筈)」

 

 

 断定出来ないのが歯痒いが、触れた感覚からどの弾なのかは理解できる。マグナム以外のハンドガンなら全て一通り使った事がある。覚えていなくても、()()()()()()()()()

 

 リコリスが使うハンドガンは基本的にはグロック17の9mm弾。量産型で、威力や反動のバランスを取った銃である筈。この10mm弾は反動がそれより大きい。女向けの銃なんてないが、この弾はリコリス達が使う銃ではない筈だ。

 

 

「(……それ以外何も分からない)」

 

 

 けど、それだけだ。

 銃弾一発では何も分からない。ハンドガンは少なからず弾が大きければ威力が増すが、反動も高い。使い手は男の可能性が高いというだけ。ただ事件の詳細からたきなが機関銃ぶっ放して殺したのは男。その男達の弾の一発があそこにあっただけで、この話は終わりになる。

 

 

「……帰ろ」

 

 

 結果、調べようとしても意味はない。

 クリーナーやラジアータの人工知能があるDAの方がもっと掴んでいるのだろう。自分が介入して分かるほどのものではない。建物から出て、バイクまで戻ろうと歩き出した瞬間に真菜は僅かに目を細めた。

 

 背筋が僅かに強張る。()()()()()()()()()()()()()()が肌を差す。

 

 

「(視られてる……上から?)」

 

 

 誰かが自分を視ている。

 スマホを弄り、カメラ機能で自撮りモードに切り替えると真菜の上に居たドローンが僅かに写った。黄色のドローンが自分の上を飛び回っている。

 

 

「(DAの……いや、わからない……何処のだ?)」

 

 

 事件現場を調べていたDAのドローンか、または別のドローンか分からない。止めていたバイクを素通りし、別の道を歩き続けた。此処でバイクのナンバーを見られたら危険だと思い、監視されながらもドローンをどうするか考えていた。

 

 もしもDAのドローンでない場合、自分を監視してるあのドローンは何処のものなのか。

 

 ドローンから見えない位置で電話をかける。

 DAに最も詳しい、楠木司令官へと電話をかけた。

 

 

「もしもし」

『楠木だ。貴様が直接連絡するとは珍しいな。記憶でも戻ったか?』

「あっ、えっと記憶はまだ……それより一つだけ聞きたい事があるんですが、よろしいでしょうか?」

『手短に話せ』

 

 

 電話をしながら自販機にお金を入れて缶コーヒーを購入する。手袋を片手だけ外し、プルタブに爪をかける。電話しながらコーヒーを買う一般人、一連の行動に違和感はない筈だ。

 

 

「DAって私を監視してますか?なんか黄色いドローンに見られてるんですけど」

『何…?いや、DAは貴様を監視していない』

「そうですか。──じゃあ遠慮なく」

 

 

 右腕に全集中、振り被り標的に視線を向けた。

 真菜は缶コーヒーを握り締め、豪速球でドローンへと投げ付けた。ガシャン!と音を立てて宙を飛んでいたドローンのプロペラに直撃し、地面へと落ちていくのを見て走り出す。

 

 完全に壊れないように墜落するドローンを身体で受け止めた。スライディングで抱え、ズボンが僅かに破けたが、気にせずに通話中の楠木に現状報告する。

 

 

「今監視してたドローンを撃ち落としました。DAの方で解析出来ますか?最近はドローンも飛ばす許可が必要だったりしますし、ドローンの機種や飛んでいる電波情報さえ分かれば、購入者を割り出せて少しは犯人に近づくかもしれません」

『直ぐに現場付近のリコリスを寄越す。というかどうやって落とした。報告では銃が使えないと聞いていたが』

「自販機で買った缶コーヒーを投擲しました」

『……出鱈目だな、相変わらず』

 

 

 銃を使わずにドローンを落とした真菜にため息が聞こえた。記憶を失っても出鱈目な行動をしている事に呆れているようだ。

 

 

『あまり不用意に事件に首を突っ込もうとするな。今のお前は全盛期から程遠い、中途半端に関われば死ぬ事もある事を心に留めておけ』

「……すみません」

『それと…よくやった』

 

 

 冷たい叱責の声から一転して不器用な声で楠木は褒めた。その事に驚いて、僅かに思考が止まった。楠木は冷徹で合理的だ、時にはリコリスの犠牲も厭わない。そんな楠木が真菜を褒めたのだ。

 

 

『身体には気をつけろ』

「……はいっ」

 

 

 胸が少し温かくなった気がした。

 この後、サードのリコリスに撃ち落としたドローンを引き渡し、真菜は自分のセーフハウスへとバイクを走らせた。

 

 

 ★★★★★

 

 

 

 

 

 

 

「……真菜、何処行ってたの?」

 

 

 帰ってきたら千束が仁王立ちしていた。

 僅かに怒気を含む赤みがかった瞳を向けながら。

 

 





 ケヒッヒヒ、まだ、まだだぞ……!
 
 曇らせが見たい人、曇らせが足りねぇ…!って人は高評価&感想お願い致します。モチベ次第で曇らせます。次回、曇ります。
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