「幻想郷に竹林なんてあったのか」
目の前の広大な竹林を見ながらそんな事をこぼす
母はこんなところがあるなんて言ってなかった
初めて見る、こんな広大な竹林は
あれから数時間歩き、着いた場所がここだった
遠目から見た時に鮮やかな緑が見えたので気になったのだ
近くで見ても分かるほどの大量に生えた竹
竹と竹が重なり合い、奥の景色を見ることは出来なかった
これ程広く、密集して生える竹林も珍しいだろう
というか、見た感じここ以外の竹林は無いのだが
道らしい道はある、土肌が見えたところ
自然にそんな道が出来るはずがないので、恐らく誰かが歩いているんだろう
旅人か、それとも盗賊か、獣か
もしくは妖怪か
「…」
無意識に拳を握る
ぎりぎりと奥歯も鳴るくらい食いしばる
やはり、奴らは死ぬべきだ
奴らのことを考えると頭が殺意に支配される
どうせろくでもない奴ら、それが奴らだ
「カーカー」
実際面倒なことを押し付けられたものだ
押しつけというより無理矢理か、野郎しばく
そんな事を思いながら竹林の中に入る
かなり密集して生えた竹林ではあるが魔法の森よりはマシだった
あれほどジメジメしてないし、あれほど憂鬱でも無い
かなり入り組んでいるが、まぁ特に問題は無いだろう
割と進みやすい道でもあることだ
「…」
ふと、空を見上げる
竹林に邪魔されて見えにくかったが、日が傾いている
まだ太陽は留まっているがもうそろそろ真っ暗になるだろう
生憎、ZIPPO程度の火で進む気は毛頭ない
そもそも、このZIPPOを付ける原料が分からないのだ
無闇矢鱈に使えない
「何か雨風凌げるものがありゃあなぁ」
文句のように呟いて竹林の中を進む
無闇矢鱈に進むのもどうかと思うが、それでも仕方ない
進むところまで進んでみよう、そうしよう
謎の決意を固めながら進んでいく
時折石造りの明かりがあり、その人工物はまだ火をともしていなかった
ただ、行先の目印とはなったのでそれらをつたうように歩いていく
ぴちゅん
その瞬間だった
何かが切れる音がした
「ん――」
反応する前に上からタライが落ちてくる
避け切れないと予測した男は背中の大剣で叩き切る
大岩は真っ二つになって地面に落ちる
「なんなんだ――」
ぴちゅん
また何かが切れる音がした
男は動いてずるいなかった、足で切ることは無い
それとなると想像するのは2つのことだけだった
連動装置か、それとも手動か
ただ、予想する前にグウィンと風切り音がする
すぐ横の竹が限界までしなっていて、それが解除されたのだ
ただ、作った素材が素材だったのか凄まじい勢いで倒れてくる
いや、打ってくる
見ることは出来たが腕が追いつかない
すぐさま横に回避をする、バチィンッと酷い音がする
「危な――」
かった、と言おうとしたら急に浮遊感に襲われる
下を見る前に、どすんと鈍い音がした
落とし穴だった
〇
「うさうさ、人間がかかったねぇ」
竹林の隙間からそれを見ていたのが一人…いや、一匹いた
その人物はピンクのワンピースに人参の首飾りをした女…
いわゆるロリというのがそこにいた、凄く悪い顔で。
頭に着いたうさ耳を揺らしながらお落とし穴に近づいて行く
かなりの手練だとあのスピードで分かるが落とし穴に入った今じゃカモネギだ
「楽勝ー楽勝〜」
どう抵抗されても簡単にいなせる
とても油断しながらそのロリ…てゐは穴の中を覗き込む
どうせ、穴の中で立ち往生してるものだと思った
見て最初に見えたのは、黄色とオレンジの光だった
そしてそれと同時に聞こえる爆音
「え」
あまりの閃光と爆音に驚く声が出た
その瞬間、肩を何かが貫いて行った
「あがっ…?」
激痛
削るような痛みが肩を突き抜けていく
あまり痛さに膝を崩し、穴の中に落ちてしまった
そこで、穴の中の様子が鮮明に見える
「外したか」
無機質な声
その先には1人の男がいた
大剣をつっかえ棒のように穴の端と端に引っ掛け、峰の部分を掴んだ男
その男が片手で金属の筒のようなものを持っていた
その筒の先から煙が上がっていた
そこから、何かが音速で肩を貫通したらしかった
てゐが落ちて横を通り過ぎると、彼は身軽に大剣を使い、飛んでいく
まるで穴に落ちるのが計算のうちのような動きだった
そう思って入れば、穴の奥底にたどり着いた
頭から激突したものだから、即座に意識は無くなった
〇
「全く、イタズラ野郎が」
穴から脱出し、体についた土を叩き落とす
先程から視線を感じだが、まさか妖怪とは
男はこのイタズラに憤慨するのでなく、この罠について驚愕していた
なにせ、何かを作るとかをするのは河童とかだと思っていたからだ
低級の妖怪がまさか罠を作る…しかもかなり巧妙な罠だ
この先に避けると考えて作り、そしてそれを避けるとかかるなどの罠
どう考えても低知能な妖怪が巧妙な罠を作っている
そんな事実に男は驚愕していた
「中級上級がやることだと思ってたんだがなぁ」
軽いため息をついてその場を離れる
"無駄弾"を使ったものだ、よく良く考えればナイフで十分だ
発砲音も出してしまったことだからさっさと離れることにしよう
そう思いながら彼はそそくさとこの場から立ち去ったのだ
〇
「…」
「どうしたの?」
ピンと頭の"うさ耳"が立つ
それに気づいた1人の銀髪女性が声をかけた
しかし、その声に気づいていないかのようにじっと窓の外を見つめている
「…どうしたの?うどんげ」
少しおかしいと感じた彼女はもう一度、彼女の名前もつけて呼んだ
しかし、それでも彼女はずっと窓の外を見たままだった
数秒した後、銀髪が首を振り立ち上がる
そして肩に手を当てようとした時だった
「…銃声がした」
うどんげは突拍子も無くそう言った
その言葉に肩に置こうとした手が止まってしまう
こちらが止まったのを他所に、彼女の口が動く
「.45ACP弾…M1911…」
「うどんげ、待ちなさ――」
彼女は止めるよりも先にかけ出す
薬の師匠である彼女の制止も聞かず、屋敷を飛び出す
そのまま竹林の中を凄まじいスピードで走る
彼女には聞き覚えのある銃声だった
かつての故郷、かつての場所
いつもの訓練場
そこで何度も聞いた、間近に、とても耳に残る程
何度も繰り返し"撃った"、あの銃を
「…はぁっ、はぁっ、」
全力で、その銃声が聞こえた場所に走る
もしかしたら、もしかしたら…
己の考えた最悪は、当たっていた
〇
「…もうそろそろ何にも見えなくなるな」
もはや太陽が沈みかける時、そんな言葉が口から盛れる
月の光と太陽の光、それが端と端から現れる
しかし、それらであろうと夜の闇は消せない
どんどん、辺りが暗くなっていく
もう辺りは目を凝らさないと見えないほどだった
「…まだ、進める」
進んでいるのか戻っているのか分からないが、まぁ良い
そんなのは些細な問題だ、どっちに転んでも良い
そう思いながらずんずんと進んでいく
夜に慣れたからか分からないが、既に瞳は夜目の状態だった
この状態なら割と進められる
竹の性質上根が盛り上がり、コケるということは無いだろう
ある種の確信を持って進んでいるときだった
「…廃屋?」
暗い闇の中、確かにそんなものを見た
あったのは自宅と五分五分な見た目をした一軒家
ボロッボロで人が済みそうにもない、行ってみるか
そろそろ腰を落ち着けたかったのもあるので、男は行くことにした
扉の前に立ち、少しだけ聞き耳を立てる
中から物音ひとつせず、不気味な静けさが耳に入っていた
「……、居ない?」
中を見るが、囲炉裏に塵となった木炭があるばかりで誰もいない
奇妙なことに使用痕が所々に残っている
食器に埃は被っていないが、床全体に埃が付いていた
何故そんなに奇妙なのか
何も音がしない理由は、すぐそこに"居た"
「おおっと…先客が居たか」
横を見てみると壁にもたれ掛かる1人の女性が居た
白髪の、赤いモンペを着た、女だった
次の小説
-
キヴォトスに霊夢が来る話
-
幻想郷が現実世界に攻め込む話