スキマに愛された大尉という人間について   作:回忌

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妖怪と人間は対立する存在である
それは未来永劫変わることの無い事実であり
変わってはいけないことでもあるのだ



故に、双方が手加減する理由はどこにも無い


「妖怪死すべし慈悲は無い」

「全く、名前に対しての質問が酷いやつだった」

 

俺は本当にため息をつきながら竹林を歩いていた

あの後の妹紅は本当に面倒な奴だった

こちらが名前を言わないのをアホ程弄りまわしやがる

 

『おいー、早く言えよー』

『なんで言わなきゃいけないんだよ、お前に』

『礼儀だろう?なぁ?』

『悪いが人外に礼をする趣味は無いんでね』

『ひどいこというじゃないか、なぁ!?…早くさぁ』

『…あんた会話長引かせたいだけだろ』

『何故バレた!?』

『人肌寒くて死にそうな顔してたんでな、あ、死んでたか』

 

 

…弄ってたのこっちか?

まぁどうでもいいか、直ぐに忘れることだろう

 

それよりも、彼女が言っていた病院についてだ

月から逃げてここに住み着いた月人なんて興味の対象すぎる

少しだけ、すこーしだけ覗くだけだ

 

…その病院、どこにあるんだろうか

 

こうやって灯篭のある竹林の道を進んでいるがたどり着く気配がない

場所を聞くのも忘れたし、どんな月人がいるとか聞いていない

野郎共だったらとても幻滅ものだが、女共なら…

 

 

 

 

 

ねぇな、どちみち見た目は人でも中身は人ならざるものなんだから

この幻想郷で人に擬態する妖怪はごまんといる

人里ですれ違った奴が天狗だというのも珍しい話では無い…らしい

母が言うに人里には巧妙に力を隠す妖怪がいると聞く

 

んな姑息な手段使わずに真正面から来い真正面から

そうしたらいくつでもぶち殺す口実ができる

 

…まぁ人里の人間じゃないからあまり人里に興味はないんだが

半妖が教師をしているとか割と気になることはあるんだがわざわざ行くほどでは無い

そんなのいつか人里に行く時に会うだろう

 

「…にしても、なぁ」

 

少し、開けたところに出てきた

割と奥の方に進んできたと思っている、まぁどこか分からないがね

竹林にかこまれているが、日はどこからが明かりを照らす

 

「そんなにじっと見られるとこっちも来るもんがあるんだ…よ」

 

ホルスターからM1911を引き抜き、瞬時に引き金を引く

45ACP弾の大きく濃厚な発砲音…その音通りに反動も高い

竹林の一つ…竹の後ろにいる"誰か"に発砲する

 

そいつはぐりんと横に回避し、歩み出てくる

どう見ても訓練された避け方だろう、素人じゃない

 

現れたそいつは何とも珍重な格好だった

少なくとも幻想郷のセンスの服では無い

多分月のセンスの服だ、きっちりとしている

どことなくこの剥ぎ取った服と同じ感じがする

まぁ似ているのはどことなく雰囲気だけなのだけれど

 

「…お前か」

 

彼女は俺の手元にある銃を見るとそんなことを呟いた

何か心当たりがあるらしい、面倒くさいことになったな

奴の目がキラリと赤く光る…なんとも妖しい光だな

カチリと俺は銃を向けながら大剣を引き抜く

 

 

彼女が何の心当たりがあるか…

少しだけ頭の中を探る、何かあったか?

 

 

「…あぁ、お前あの兎の仲間か

 通りで見たことがあるわけだ」

 

 

全く同じ種族なのだろう

ヨレヨレのうさ耳のおかげで何も分からなかった

そして相手は俺の一言で全てを察したらしい

 

「殺しかけたのもお前か…!」

「はは、そうかもな

 それにな…」

 

俺はグリンと大剣を回すと銃をホルスターに仕舞い、両手で逃げる

そのまま霞の構えを取り、ギッと奴を睨む

 

そして、あたかも当たり前かのように嘘を作る

 

 

 

「こっちも仕事なんでな、死んでもらおう」

 

できる限りの神速でやつの懐に入り込み、そのままかち上げるのだった

 

 

「…」

 

やった

確かに俺の大剣は奴の顎をかち割り、その場に転げさせている

未だにやつは悶え苦しんでいる

 

しかし、なんとも腑に落ちない

あまりにも斬った感触が無かったからだ

 

まるで霞でも斬っているかのような感覚

俺は懐に指をぬすくりつけると大剣を構え直す

 

「幻術だが何だか知らんが、姑息な手を使うな」

 

検討はついてはいる

恐らく何か幻術の類なのだろうと思われる

俺がそんなことを言うと、奴の死体が消える

 

そして、目の前に現れる

悠々と余裕そうにやつは近づいてきた

 

「舐めた真似を」

 

斬るのも面倒臭いので、M1911を取り出し即座に引き金を引く

その弾丸は確実に奴を捉え貫くはずだった

 

いや、貫いた

しかし何故か血も吹き出さずにこちらに歩いてくる

6発放ったが同じだ、実態じゃない

幻術なんだ、こいつは

 

「幻術だと思ったかしら、これは幻術ではない」

「じゃあなんだってんだ?」

 

そう質問すると、大量に奴の姿が増え、消え、増える

何か凄まじく鳥肌が立つ、気持ち悪いヤツだ

こうも正体不明だと腹が立ってしまう

 

「あんたの波長は元から狂いかけだけど、狂ったらもっと酷いものね!」

 

そう言ってやつは勢いを付けて殴りかかってきた

単純に、一斉に幻影共が殴りかかってくる

咄嗟に大剣を盾のように構える

 

しかし、前からの衝撃は一切ない

疑問に思った瞬間、横から鈍い一撃が叩き込まれる

完全に前を警戒していたのでろくに受け流しは出来なかった

 

「ツッ…」

 

苦痛に耐え、視線を戻すが今度は大量の弾幕が放たれる

くらくらするほどの閃光に目を瞑りそうになるが耐える

 

「この…!」

 

また幻影か、そう思いながら突っ込む

ちゃんと避けながら…時折ミスもするが運のいいことに幻影だった

半透明になったりする弾幕がとてもうざったい、タイミングが掴みにくい

 

「さぁ!さぁ!後が無くなってきたねぇ!」

 

どこからともなくそんな声が木霊する

恐らくどこかに悠々と立っているのだが狂わされて何も見えない

こうもこれだと腹が立ってしまう

 

本当に、腹が立つ

 

「コノヤロウ…」

 

何もかも狂わされて攻撃が予測できない

あちらからと思えばこちらから攻撃がとんでくる

ワンパターンな弾幕に関しては防ぐことが出来るが近接攻撃は不可避に近い

幸いか、または"わざと"か分からないが聴覚は耳鳴りがする程度だ

 

幻影があちらで殴れば、恐らく同じ形で殴っている

幻影と本体が同じ動きをしているのは理解出来る

しかし、判断はとてもしにくい

 

目の前の幻影に頭が振り回される

 

 

 

 

 

 

 

 

だから

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああっ、邪魔だ」

 

低く腰を構え、背中で大剣を構える

そこから回転するように大剣を切り上げる

 

大剣から豪炎が吹き上げる

それは実体を持たない大きな剣となり、奴に襲いかかる

あまりに大きいそれは辺りの竹林を切り捌く

 

「何…!?」

 

奴の驚く声がどこからともなく聞こえる

しかし、俺はすぐその場所を察した

 

殆ど勘だった、しかし俺はその勘で今まで生きてきた

信じない筈がないのだ

 

思いのほか、とても近いところだった

豪炎で刃を伸ばさなくても良いほどの近さ

そして、相手が驚愕し体ががら空きであろう今が攻めどきだった

 

「そこにいるな」

 

グッと一歩引いて大剣を構える

そこから一歩大きく踏み出し、突き刺すように大剣を刺す

そのあまりに大きい大剣からは有り得ないような鋭い突きが放たれる

 

 

それは勿論避けられるはずも無く

 

 

「あぎぃっ」

「とった」

 

確かに、奴に突き刺すことを成功した

これだけは幻影でもなく、実体を大剣で貫いたと俺は言える

 

何せいつまでも奴は大剣に突き刺さっているのだから

 

「何もかも狂わされたが、勝てなかったな」

 

俺は大剣でブランブランになっている奴に言う

俺ははははと笑いながらやつを見ていた

 

やつは悶えた顔だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キリキリと弦が絞め上がる音がした

俺はそれが瞬時に弓の類だと察した

そして俺が大剣を防御に回そうとした瞬間、放たれる

 

ひやうなんて生ぬるいものじゃない

音速を超えた神速、それが向かってきていた

大剣で防御した場合…確実に折れる

そんな確信を持てるほどの威力

 

即座に受け流しの体勢に入る

 

その瞬間大剣をガリガリと矢が削っていく

もう少し…それこそ5°程傾ければ、大剣が折れる

俺としては一瞬でなかったがそれはちゃんと受け流せることが出来た

 

そして、俺は先程突き刺したうさ耳の奴を持ち上げる

その胸元…大体心臓の辺りに銃を突きつける

刃物の方が速度は早いが如何せん大剣だ、どうにもならない

ナイフが靴の横にあるが取ろうもんなら狙撃してくるだろう

 

「…次構えたら撃つ」

 

恐らく移動していないであろうソイツに向かって静かに言う

こいつが気絶したからか謎の幻術はとうの昔に剥がれている

この静かすぎる竹林の中で如何に静かに弦を引こうとも撃つことが出来る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――…ギリ

 

「1」

「あぐあっ」

 

硝煙の匂いが鼻腔をくすぐる

弦が軋んだ瞬間、俺は引き金を引いた

一発目はわざと外した、二発目もその予定だ

 

「後二発だ、二発目で殺す」

 

俺はうさ耳に突き付けた銃を強く押し込む

狙撃されて頭が飛ばされないようにちゃんとこいつの体全体を盾にしている

身長大体165程なので俺が少し…ほんの少し屈めば良い

身長は大体167だ、本当にほんの少しだ

 

 

 

…静寂が辺りを支配する

 

 

 

痛いくらい、静かだ

恐らく奴はこいつを貫いて俺を殺すか、それとも僅かにはみ出た足を貫いて殺すかで迷っているだろう

 

しかし、俺は既に撃っている

ということはこいつを殺すという意思は確定だと相手は思うだろう

あと二発、それだけあればこんなに弱った妖怪を殺すのに十分だ

 

相手が誰だか知らないが、やってやる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数十秒構えていると、茂みが揺れる

矢が放たれた竹林の隙間から、弓矢を携えた女が出てきた

 

あまりにも、特徴的で月の光と全く合わない服装だと俺は覚えている

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