出てきた女は半分が青、半分が赤という変な服装をした奴だった
アホらしい見た目をしているが、先程凄まじい矢を放ったのは事実だ
人を見かけで判断してはならない
その上、俺の勘がこいつを舐めてはならないと言っている
俺は銃を彼女に突きつける
それに対して彼女はあまり興味を持ってないようだ
「その子を殺して、私も殺すの?」
「どうだろうな」
俺は銃を突きつけながら歩み寄る
彼女は弓も構えず、その様子をじっと見ているだけだった
やがて、両者の腕が届くくらいの距離に到達する
銃はずっと突きつけられたままで外されたことは無い
うさ耳は片方の腕で引き摺られていた
虫の音が聞こえないほどの静寂
数秒の睨み合いの後、カチリ、と金属音が鳴った
奇抜な女は辺りを見回すが何も無い
「そっちじゃないな」
「…ああ、そういうこと」
彼女は俺の手元を見た
そこにはM1911がスライドを開ききった状態で存在していた
この状態は弾が無くなった時におこる事だ
つまるところ…
「殺す気は無いって事?」
「無益な殺生は好まないんでね」
ゴミのようにうさ耳を捨てると、俺はマガジンを交換しスライドを引く
M1911は発射可能状態になった、と言ってももう撃つ気も無いが
俺のリロードを見ながら彼女は鼻で笑う
「無益な殺生が嫌いなクセしててゐは殺そうとするのね」
「てゐ?誰のことだ?」
「貴方道中で兎の妖怪を撃ったでしょ」
「あぁ…妖怪は別だ、当たり前だろ?」
俺はホルスターに拳銃を仕舞った
彼女はある種の興味を俺に示したらしい
目が少しだけ危ない目付きになった、ありゃ"医者"だな
「まぁいいわ、そこのうさぎを持ってきてくれる?」
「あん?自分で歩けるだろ?」
俺はうつ伏せになっているうさ耳を見る
口から血の混じったヨダレが垂れ出ている
四肢は痙攣して全く動いてはくれなさそうだ
「貴方が投与したんでしょ?毒を」
「したと思うか?」
「妖怪が嫌いなら尚更」
「いつ?」
俺はしなかったとは言わなかった
妖怪嫌いなら確実にやると言われれば仕方ない
と言うより実際にやったし、HAHAHA
「抱えてる時に口ん中に親指を突っ込んだ」
「最初から毒を塗ったのかしら?」
俺はクルクルと指を回す
「見てたなら分かるだろ?」
「懐に指をぬすくりつけた時ね?」
「その通り」
そう言って懐からキノコの切れ端を取り出す
ちゃんと袋に包んである、安心したまえ
というよりこいつ、その時から見ていたのか
恐らくこの兎の飼い主とかそんな所だろう
そのでっかい耳で俺の銃声を聞きつけ、来たんだろうな
てゐとかいう兎がやられたのを助けただろうからあんなに殺気立っていたのだろう
まぁ、その頭に返り討ちの文字は無かったようだが
俺はため息を着きながらうさ耳を担ぎあげる
「重ッ」
「後で殺されかけても知らないわよ」
「事実を言ったまでだ」
このアマ割と重いんだが?
見た目的に割と軽い女だと思っていたが…やはり妖怪か
どこかしら構造が違うのだろうな
そう思いながら奇抜な女の後をついて行ったのだった
〇
鬱蒼とした竹林の中に明かりが見えてくる
目は既に闇夜に慣れていてそれが何かハッキリと分かる
今まで見た事のないほど豪華な屋敷だった
豪華なだけであってそれほど大きくは無い
ただ、俺の家よりは確実に大きかった
「ようこそ、永遠亭へ」
「…不死人かお前ら?」
「あら?なんでそう思うのかしら」
「いや、さっき死なない奴にあったし」
根拠は全くない
ただ、類は友を呼ぶという単語が頭を過ぎったので聞いてみた
憶測の域を出ないのであまり言うことは無い
「ああ、妹紅ね…」
「知り合いか?」
「私の…お姫様が知り合いね」
「仕えているのか」
この見た目して仕えているとは
凄いな、アンタ…従者がこれとか俺はシバキ倒しそうだ
多分月の服センスはこれが普通だったりするのだろう…
恐らく月にはこの女みたいな奴が大量にいるんだろう
まぁ月の壊滅的なセンスに関しては置いておこう
「…」
永琳に続き、永遠亭に入る
見た目通りの木製の廊下が3人を迎えた
木のいい匂いが鼻腔をくすぐる、割と慣れない匂いだ…
少しくらいかび臭い方が雰囲気があっていい
もちろんこれも雰囲気があるからいいのだが
「さ、こっちよ」
「指図するな」
「誘導じゃない」
「どちみちにしろ腹が立つ」
冗談の押しつけあいをしながら彼女について行く
抱えたうさ耳からはずっとうーあー言っている声が聞こえる
多分涎が垂れたままなんだろうなぁ…
それが服にかからないのを祈る、普通に汚い
「あなたって応急処置とかあまりしなさそうね」
「唾付けとけんなもん」
「言うと思ったわ」
呆れながら彼女は一室に入っていった
言うと思ったってこっちの衛生情報舐めてんな?
流石に洗い流すわ唾と汚れは
そうぶつくさ言いながら入るとスンとした空気が鼻に入る
薬物の様な、割と不快感のある匂いがする
その方向を見れば、当たり前のようにガラスの入れ物に液体が入っている
青かったり透明だったり、毒々しい液体があったりもした
…中には馴染みある液体もあった
「…血か」
それを見てしまった瞬間、俺は棚に近づいていた
戸がある訳でもないので直ぐに手に取ることが出来た
手に持ったビンの中には血液が突っ込まれていた
ラベルには 「被検者05、TUKIYA YAE」とある
この棒が多用された文字は一体…?
まぁ、いいや、被検者とかどうせろくなものじゃない
「…貴方ひとつの事に集中すると他のことを忘れるのね
もしくはそれが妖怪だとそれが顕著になるのかしら」
「…あぁ、そうかもしれない」
永琳指摘されて気付いたがこの兎を落としてしまっていた
棚の瓶に夢中になって一切気付かなかった
お姫様抱っこのように抱えあげる
「こいつはそこの寝床に置けばいいのか?」
「ええ、よろしく」
俺はぺっと投げるようにうさ耳を置く
そんなところで気づいたが、この部屋やけに進んでいる気がする
木製とかでは無い別の素材で作られている気がするのだ
壁が木ではなく、ほかの物質で作られている
少し触ったくらいの感覚だと石系の素材だと思う…
「さてまぁ、俺的にはもう全ての用が終わった様なものなんだがな」
「私的にはとても興味があるわ、もう少しだけ居て頂戴」
そう言うと彼女は椅子に座り、何かをし始める
瓶の中の液体と他の瓶の液体を混ぜたりしている
何をしているかよく分からない、恐らく薬作っているのだろうか
病院と…妹紅?が言っていたから間違いない筈だ
…これ本当に薬剤か?
彼女は液体を混ぜこぜした後に注射器にそれを入れる
少し針先を突いた後にうさ耳の横によっていく
そして何も躊躇うことも無く首元にぶっ刺す
「…」
「これでいいわね、次はあなたよ」
いや、いいです
そんな言葉が口から漏れかけた
何故ならそこのうさ耳が入れられた薬剤はケバケバしく発光した液体だったから…
そんなことを思っているのを察せられたのだろうか
「アレを入れる訳じゃないわよ、軽い検査よ、検査」
「"アレ"て…」
自分でも引いているじゃないか…
まぁいいか、そんな事
にしても、検査か…
「何故?」
「面白そうなのもあるけど、単純にサンプルが少ないのよ」
「さんぷるだぁ?なんだそりゃ」
「材料と言った方が分かるかしら?ここ来る人少ないし、彼からは同じものしか取れないし
ともかく多い方が良いのよ、サンプルは」
「…そうかい」
彼女は椅子を指さした
座れば彼女と対面になれるだろう
…ここで立つのもなんだ、座るとしよう
俺が座ると、彼女は板に紙を敷いたものを持ち、こちらに向き直る
「簡単な質問、血液検査、X線、その他諸々ね」
「…軽い検査って?えぇ?」
「まずは名前をお願い」
「話聞けよ!」
ダメだこのアマ、検査しか頭にねぇ
いくら言っても無駄なヤツの目をしている…
「…というかそれって答えなきゃダメか?」
「任意と言いたいけど、面倒だから名前を頼むわ」
「…あー、俺は権兵衛ってな…」
「弓で打つわよ?」
おおすっごい笑顔、その笑顔攻撃力持ってるよ
簡単に人殺せそうな笑顔してる、アハハ怖い
「本当に言わなきゃならんのか?」
「言わなかったら…どうなるかしらね」
下手な殺害予告より怖いんだがソレ
何をするか伝えないだけでこれだけ怖いのか…
まぁ、言うも言わないもどっちもどうでもいいんだが
「…村斬双星、双星だ」
「村、斬、双星…、ね、分かったわ」
カリカリと鉛筆の音が響く
俺は質問については全て聞き流す体制に入った
殆どどうでもいいからである、本当に
「性別は…男ね?年齢は?」
「…大体16?だと思う」
「若いのね」
カリカリとまた鉛筆を走らせる
目がキラキラとしていて綺麗だ…ちょっと狂気入ってる気がするが
「身長体重は…後でいいわ、恋愛経験は?交尾は?」
「ひっでぇ質問してくるなアンタ」
あまりに受け流せない質問が時折流れてきたが、問題でもない
俺はところどころ虚偽を交えて彼女に話したのだった
…骨が折れる
次の小説
-
キヴォトスに霊夢が来る話
-
幻想郷が現実世界に攻め込む話