「…これ何してんだ?」
「レントゲンを撮っているのよ」
…んだそれ
ベッドに寝かされた状態で俺はそう思った
寝台の上に大きな箱のようなものがあり、そこから長方形の箱のようなものが伸びている
それが今胸に当てられているところだ
「レントゲンってなんだよ」
「骨とかが写った写真のようなものよ」
…この他にも割と変な検査をした
「はいじっといてね」
「…眩しいわ、いきなりなんだよ」
「いえね、瞳孔収縮してないかなーって思ったから」
「…勝手に死人にしないでして貰えるか」
「あら、そのくらいの知識はあるのね?」
……本当に、変な検査だ
「1+1は?」
「2」
「2×5は?」
「…んだそりゃ」
「ふむふむ、小学2、3程度の知能指数…」
「なんかバカにされた気がする」
「じゃあこれは?フェルマーの最終定理って言うんだけど」
「ああ、簡単だなこれ」
「え」
…簡単ってなんだっけ
取り敢えず簡単では無いとは思う
ただ、アホらしいことをしていたような気がする
「…取り敢えず、今日はこれでいいわね」
「いやもう来ねぇよ」
「そう言いながらそっちから来るんじゃない?」
「…はぁ」
んなわけないだろうと俺は立ち上がる
こういう質問系は嫌いだ
その上血を取られていくのはもっと嫌だ
「血やらなんやらを取っていく必要あったか?特に髪の毛一本二本」
「重大な意味を持つのよ、人のそういう破片は」
「…俺には一生縁が無さそうだ」
そっち側に縁が無いことを祈りたい
どうせろくなことでは無いのだ、どうせ
そう思いながらこの場を後にしようとしたところだった
「永琳ー、お腹すいたぁー」
「…?」
間伸びした気の抜けた声が響く
恐ろしく間抜けな声だ、この声の隙に二三発はぶち込める
そんなことを思っているとこの部屋に一人の女が入ってくる
美しい
正直に言うと、そう思った
全てが完璧に整えられた顔に全てが完璧に配置されたパーツ
そこから綺麗に流された長髪に素晴らしい着物
これは美しい、人間国宝だ
「…こいつは?」
「蓬莱山輝夜、私の…主のような存在ね」
「えーりん…あれ?あなたは一体だれよ」
「輝夜…輝夜姫?」
「あの?無視しないでもらえる」
輝夜と言ったら輝夜姫が思いつく
母が子持ちらしく昔話として言い聞かせてくれたものだ
たしか…時代は平安だっけ、そこくらいだった
「ええ、本人よ」
「ということは蓬莱人か、キッショ」
「ヘェッ!?」
キッショ、お前も蓬莱人かよ
今まで美しいと思えていたそれが獲物を誘う美貌にしか見えなくなったわ
今すぐ死んでくれねぇかな、いや死んでも蘇るか
「今私のことキッショって言ったわよね?」
「あ?もう口塞いでてくれねぇかな頭が痛くなる」
「ハァァァァ!?永琳何こいつ美しいとか何もいわないんだけど!」
「あら、気持ち悪いとかおもってるんじゃないかしら」
すごいうるさい
もう黙っててもらえるかなお前
よし帰ろうすぐ帰ろうもう帰って寝よう…
「待ちなさいよアンタ帰す訳には行かないわこんな無礼者」
「あーひめよーわっしのぶれいをおゆるしくださいー」
「殺すぞ!」
そのままぶん殴ってきた
コイツ姫か?姫らしい攻撃しろよ、小刀とか
そう思いながら軽く輝夜の攻撃をいなす
…すっげぇ怪力
こんな華奢な見た目して怪力とかシャレにならない
見たところろくに鍛えてすらなさそうだ、はぁ…
「キィッー!!なんなのよアンタ!」
「通りすがりの放浪者だ、覚えておく必要は無い」
「いいや!無理ね!絶対に忘れないわ!」
「あっそ」
俺はもう疲れたので部屋を後にした
後ろから輝夜の叫ぶ声とあの女医の宥める声がする
なんとも仲がいいらしい、主と従者の関係じゃ当たり前か
俺は懐から輝かしい光を放つ七色の実を宿す枝を取り出す
ただの木の枝と思われるそれに七色の七つの実が実った物
質感からして本物の枝に何かの実がついているっぽい
あの姫様が無防備過ぎたのと割と頭に来たので盗んでしまった
それはどうでもいいのだ
本題はこの盗むことが出来た医療薬品類と外科セット
もう2、3回戦闘してもなんら問題無い程度の量だ
割とポケットに入らなさそうだが、ウエストバッグに入れた
量が多いのでこれ以上のものは拾うことは出来ない
なのでとっとこ帰ることにしよう
俺が盗んだことは知られている
盗もうと思った物は全て分けられていた
まるでこちらは持っていっても構いませんよと言わんばかりに。
蓬莱の枝の方を彼女が認識しているかどうかは知らない
ただ、まぁ
「危ないな」
俺は放たれた火球を避ける
背中を大剣を構える
刃を向けたその先には妹紅が立っていた
憎悪とも取れる表情を俺に向けていた
「アイツからの興味を買うな、私が薄れるだろうが」
「あん?お前はあいつが好きなのか?だったら邪魔をしたな」
「ああ、好きさ…」
彼女は豪炎を両腕に纏わせる
2、3回地面に拳を打ち付けると辺りが炎に覆われる
その中で俺は注射器が折れないかなと全く見当違いのことを考えていた
「殺したくなるくらいになぁ!!」
「殺し愛か?物騒だな」
どうも、お相手は俺が目障りになったらしい
輝夜の興味を引いてしまったからか、いや俺も引きたかねでよ
ただあの美貌で引きつかないと興味を引いてしまうのだろうか…
まぁ、良いさ
「軽いじゃれあいと行こうか」
異能との戦闘もこれで2、3回…さてどんな"その程度の能力"を持っている?
お前はどうやって俺を殺そうとする
〇
やつの能力は恐らく"火"系
私と同じ…術だ、おそらくのところだが
今はあの燃えさかる炎から考えた憶測に過ぎない
もしかすれば炎はただの術であるかもしれないからだ
「…」
「ただの大剣で来るか」
大振りな大剣をぐるりと振るう
その見た目にそぐわず俊敏な動きをしている
右から左へ、大剣をそう振り回す
「能力はひとつか?それともまだ"応用"で本質を隠しているか」
「あんたが死なない程度、どうとでもなる」
会話が成り立たなかった
戦闘中の戯言とも言える会話自体が成立しない
今見てみれば彼の瞳には一切の光は無かった
あの時会話してのと今対面して分かった事だが余程"人外"が嫌いらしい
こちらとの対話が不可能な程に"怒り狂っている"
…少しでも会話出来る(出来てない)限り、まだ私はマシなのだろうか
「けれど、ねぇ」
「―――ッ!?」
ゴゥンゴゥンと身軽に大剣を振るう彼の大剣を意図も容易く食らう
自身からくらいに行ったことに少し驚いたらしい
どサリと体が落ちる、綺麗に体を真っ二つ、しかも次いでに頭を持っていかれた
でも、関係ない
蓬莱人にこんな傷、かすり傷ですらないのだから
炎を纏いながらゆっくりと歩き始める
彼は少し驚いた様子だったが直ぐに大剣を構え直す
久しく、輝夜以外と殺し合っている気がする
しかも割と強いヤツだ、ちょっぴり嬉しい
「さぁ、かかってきなよ…いくらでも相手になってやる」
「死因は関係ないか、いくらでも殺してやるとしよう」
〇
まだスペルカードが無かった時代、人間達は炎の術や近接武器を使用した
妖怪との近接戦闘、それは死だけを示していた
余程の強さで無ければ妖怪との近接戦闘なんぞ出来ることは無い
何も出来ずに殺されてしまうだけだ
だからこそ、彼らは博麗の巫女を頼った
腕の立つ妖怪退治屋は数人居るがたかが数人だ
それに故に博麗巫女は重宝され、称えられた
妖怪殺しの英雄、人里の守護者と
その裏で、人では無い人でなし、化け物と罵られた
博麗巫女の戦いぶりは人間が再現出来るものでは到底ない
だから、そう言われるのも時間の問題だった
しかしそうやって罵倒する奴ら、いや、称える奴らさえ忘れていることがある
博麗巫女の名前は、誰にも覚えられていなかった
ただ、今代は違った
ただ、
たった、1人
それだけが、彼女の名前を覚えていた
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