スキマに愛された大尉という人間について   作:回忌

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死ぬかよアホウ

「れっつぱーてーたいむ って何だよあの野郎!」

 

文句を言おうとした瞬間、閃光が走る

霊力で自分をすっ飛ばして難を逃れる

あまりに光と火力がデカすぎるのか俺がどこに飛んでいるのかは理解できないようだった

 

いや、理解しなくていい

 

理解した瞬間、俺はしぬことになってしまうからな

そのまま一生閃光と遊んでおけ

そう心の中で悪態をつきながら固定器具を腕と腹に巻き付ける

腕はまだ動くものの腹に関してはもうボロボロにも程がある

先程の打撃でよくちぎれ飛ばなかったものだ

思いのほか俺の体は丈夫らしい

 

「さぁ、かくれんぼなら上手く隠れてみなさい」

 

閃光と爆音の中で途切れ途切れに聞こえる声

玩具で遊ぶ子供そのものの声をしている

 

流石妖怪、人を人だと思っていない

 

まぁ、良い

 

「かくれんぼなら得意さ」

 

大地を這いずりながらその場を移動する

閃光が巻き上げる土が体に降り掛かってくる

元々目立ちにくい服だったおかげか、さらに分かりにくくなった

 

ただ、相手は妖怪だ

 

嗅覚 聴覚 視覚において人間が勝てるものは無い

強いて言うなら頭の狡猾さくらいだろうか

それにおいては互角な種族やそれを超えてくる種族もいるが…

 

ともかく総合的に勝てる相手では無い

 

そもそも低級妖怪ですら常人は運が良ければ逃げられる程度なのだ

それに立ち向かえている俺達も人間では無いだろう

 

 

 

そう思うと、どちらが化け物なのだろうか

 

 

 

こんな、閃光迸る戦場にて俺はそんなことを思った

人間基準で見れば、妖怪は圧倒的に化け物と言える

人間のいかなる特徴より優れたものを持つ存在

嗅覚は人間の倍以上、聴覚も勿論それに匹敵する

 

しかも獣人となればその倍数は更に跳ね上がる

 

人間とは到底比べ物にならないのだ

 

 

だとすれば、その化け物を殺す人間はなんなのだろうか

人間の中には多大なる霊力や技術を持って生まれる者もいる

凄まじい術や汎用性の高い技を作り出す職人も居る

 

そんな人物がいるならば、妖殺しもちゃんといるのだ

 

過去の人物の殺った妖怪を見てみれば、その凄まじさが分かる

 

 

鬼、九尾の狐、吸血鬼、その他の犠牲者をあげて言ったらキリがない

そもそも、鬼を殺す時点で人間では無い

 

 

人間ながら、人間では無い

 

彼らは周りから何も思われていたのか

 

まぁ、彼らは戦いを良いものとは思わなかっただろうな

 

 

「さぁさぁ、パーティもクライマックスよ!」

 

彼女がそう言うと、閃光が更に強まる

頭を上げてられない、それどころか動くこともままならない

動けばこの極太ビームに触れてしまい、凄まじい激痛を伴うだろう

 

永琳の鎮痛剤はとても素晴らしい性能をしていた

これだけ体を酷使すればそろそろ効果が切れてもおかしくは無い

 

しかし、未だに切れるから雰囲気はどこにも無いのだ

 

ただ、そんな痛み無くて無敵ヒャッハー状態でも動くことは出来ない

鎮痛剤の効果があってもあんな極太ビーム食らいたくはない

当たれば痛みを上回って死が確定するだろう

 

彼女が地面を抉り飛ばそうと思わなかい限りしゆことはない、断じて無い

 

 

「これはどうかしら」

「…ッッ!!!」

 

俺は殺気を感じて横に回避する

すぐに目を俺のいた場所に戻すと、そこには傘が突き刺さっていた

 

バレていたのだ、居場所が

 

彼女は頭を人差し指でトントンとつつく

 

「編笠でバレバレよ、もう少し練習しなさいな」

「ああ、そうかよ…」

 

俺は大剣を背中から引き上げる

もうかくれんぼは終わりだ、そもそもすることも出来ない

見つかった状態から隠密に行くのは中々できることでは無い

 

こういう戦いに遊びを持ち込むやつは特に、だ

 

「へぇ?私に立ち向かうっていうの?噂を知らない訳では無いわよね?E.E.F.」

「どうだろうな?花の妖怪、俺は命を投げ出す準備は出来ている

 お前ごときに命乞いはしない」

「ほぅ、面白い男…でもどうかしら?男は最後の最後で根を上げる」

 

大剣を正眼に構える

彼女は優雅に傘を畳み、それをこちらに向けてくる

その先端に妖力が集まっていくのかよく見える

こいつを殺すことは出来ない、無理だ、確実に

 

ただ、退けることはできる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ、死ね、人間」

「死ぬ訳には行かんな、妖怪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

閃光が交差する

傘の先端から発射された極太ビームを横に避ける

そこから一気に足に力を込め、飛び出す

彼女との距離の差はそれほどに離れていない

 

つまり、勝負も早く終わる

 

「ウラぁぁぁぁぁああッ!!!」

「洒落臭い」

 

頭の後ろからかち割るように大剣を振り下ろす

風見は鬱陶しそうに傘でそれを受け止める

受け止めたそこに下から足でキックを放つ

しかし、当たっても彼女が怯む素振りもない

 

「無駄無駄、無駄でしかないわよ、あなたの攻撃は」

「ちぃっ」

 

軽く投げられる

やはり化け物だ、この妖怪は

 

能力もさぞかしやばいのだろうか

 

着地し、即座に連撃に入る

重いはずの大剣を何度も叩きつけるが軽く傘で受け流される

あの傘、妖力を纏っている…そのおかげで凄まじく硬い

あれを破壊し、一撃を加えるのいうのは不可能だろう

今の俺には無理だ、未来はどうか分からんが

 

そもそも今を生き延びねば未来は無い

 

「さ、私はかなり楽しめた、終わりにしましょう」

「終わりにするか?」

 

大剣を構える

素の大剣でどうにかなるとは思えない

 

「はァァァァッ……」

 

僅かに回復した霊力をふんだんに解放する

開放された霊力は俺の体を包み込み、そして大剣にまとわりつく

 

すると、大剣は業火をその刀身にまとい始めた

 

 

 

ガチャりと構える

全てが静かで、聞こえるのは草が風に揺れる音と炎が燃える音

 

 

 

 

「…ッッ」

 

 

 

 

先に動いたのは俺だった

天空に1発、風見に2発の弾丸を放つ

正確に頭に2発飛んでいくのがよく見える

 

「無駄よ」

 

しかし、それらは閃光にかき消される

風見は極太ビームを放ったのだ、消すつもりだ、弾丸ごと

弾丸がどうなったかは語るまでない、俺は空中に飛び出す

下には焼け野原がよく見える、綺麗では無い、太陽の畑は綺麗だが

 

「本当によく飛ぶ、本当に蝿のよう」

 

彼女は上記の言葉を言いながら、顔は笑っていた

弾幕が雨あられのように降り注ぐ…下から降るってのはおかしくないか?

右へ左へと音速で回避して弾幕の嵐の中を突き進む

 

愚直なまでに

 

「ああっ鬱陶しい弾幕だな!おい!」

「そういう弾幕だから、仕方ないわよね?」

「仕方なくねぇ!お前がそうしてるからこんな糞弾幕になってんだろうが!」

 

 

ドッジロール

空中で前転し、迫る閃光を避ける

 

奴までの距離はそう遠くなくなった

ここならやつの眉間を撃ち抜くのも容易くない

 

「脳味噌1回ブチまけろ」

 

左手で素早く拳銃を抜き、発砲する

正確に4回、今の弾倉に幾つ入っているかなんて気にはしない

もはや総力戦と同じような現状になっているのだ

弾数いくら気にしたって意味が無い、当たらなければ意味もない

 

数打ちゃ当たるなんて、ここには通用しない

 

 

放たれた弾丸は上手い具合に弾幕を掻い潜り、相手に向かっていく

しかし、彼女はまるで欠伸をするようにその弾丸を受け止めた

 

やろうと思えば出来るが…弾丸なんて一直線に飛ぶ物体、こうなるのも定めか

 

 

「そう?ぶちまけるのはあなたじゃない?」

「…――あがっがっ!?」

 

彼女がそういった

俺が真意を問おうとした時、謎の軽みを感じた

明るい閃光、細いビームが左肩と腹部を直撃する

凄まじい質量が込められたそれは簡単に左腕を弾き飛ばした

肩から先の感覚がごっそり無い、感覚を共有していた腕はもうどこかの地面だ

脇腹に命中したビームは綺麗な穴を開けて突きぬけて行った

一瞬開けられたことに気付かず、血を流すことを忘れていた様だ

 

次の瞬間、ドバっと血が流れでる

 

「ああ…」

 

動けない

その場に片膝立ちになり、大剣を取りこぼす

ふと、体を見てみればあちこちが血だらけになっていた

 

痛い

 

鎮痛剤が今更になって効果を切らしたのだ

激痛が、もはや呻き声を出すほどの力を激痛が奪っていく

 

目の中に血が入ってきて、視界を赤く濡らす

 

痛い

 

 

「もう少し骨があると思っていたんだけどねぇ

 彼女が優秀すぎたか…お前が弱すぎたかのどちらかしら」

 

いつの間にか目の前に風見がいた

ただ、顔を上げる気力はどこにもなかった

今の今まで、気力と鎮痛剤の力で剣を振るっていた

 

そのふたつはもう無い

 

「さようなら、彼女の…なんだったかしら」

 

頭に何かが当てられる

固くて、冷たくて、向けられるだけで寒気がする代物

 

…銃だ

 

俺の持っていたガバメント、あれ以外にない

こいつがあれを集める物好きならあるが、噂を聞くに花好き、それは無い

 

E.E.F.って奴らの最後はこれなのか?

これが誉なのか?俺はそうとは思えないな

 

ぼんやりする頭で、そんなことを考えた

 

 

彼女の言う通りだ、男は最後の最後で音を上げる

俺はねを上げた、もう、動けない…動きたくもない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

乾いた音が辺りに響いた

がちゃん、とスライドがフルオープンになる音も続いて響く

 

それが鳴ったあとは、恐ろしくその場は静かになった




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