スキマに愛された大尉という人間について   作:回忌

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強者ってのいつもそう

「この程度、とは思ってないわ

 ただ、思っていたより手応えが無かった…」

 

あの人間の銃を投げる

弾も全て切れて、もう使えない

 

何もかもこの男には無い

 

目の前で膝を崩し、脳みそをぶちまけれている男には

 

「…あら?残り弾があったのね」

 

ふと、空中を見ると、鉛玉がひとつ見えた

落下速度を加算して凄まじいスピードで迫ってくる

 

ほぼ意味の無いスピードを眺める

 

悠々と、傘を地面に突き立ててその弾丸を見やる

それを手で受け止めるのは簡単だ

 

 

そうやって、彼女は楽観視していた

 

 

 

 

罠という可能性を考慮せずに

 

 

「鈍い弾丸ね…ッッ!?」

「くたばりやがれ、花の妖怪」

 

やつの背後からその腹部に大剣を貫き通す

油断しているのもあって簡単に皮膚を突き抜ける

 

ようやくだ

この時を嬉々として待っていたのだ

 

全て"ふり"に過ぎない

英語で言うならブラフっていうのだろうか

 

「いつの間に…!?」

「ようやく見えたぜ、あんたのその驚く顔」

「この…!?」

 

俺に掴みかかろうとした手に弾丸が突き抜ける

彼女は信じられないようなものを見る目で俺を見た

 

 

 

あぁ、確かにガードできていたな?傘で

 

 

片方の腕にあった傘で確かに防ぐことは出来た

しかしまぁ、よく見なかったのがお前のツケ、って所だろう

 

俺は良く見えていたぜ?この弾丸が「グニャアー」と曲がるところに

 

大剣を引き抜き、その傷口から手を思い切り突っ込む

人間と妖怪…特に人型の妖怪はほぼ体内構造は同じと呼ばれている

同じように、糞尿はするし、妊娠だってする…妊娠は知らんけど

 

白狼なんかはそこらの野生の狼が長く生きた結果なんて言われている…

長く生きた結果があんな縦社会なんてゴメンだ

しかも白狼は一番の下っ端に当たるらしい…もっと酷い

 

そんなことはどうでもいい

 

「――らっしゃァァァアアアッッ!!!」

「ぐぁうッ!?」

 

モツを確実に掴み、引き抜く

内部の痛みには慣れていないのか、彼女は初めての呻き声を上げた

 

ああ、ようやく聞けたよ、お前のその声

その余裕そうならツラからようやく、その声が

 

「汚ぇ」

 

モツを握りつぶし、投げ捨てる

彼女は片膝をついてその場に呻いていた

ぐちゃりと脇腹から内蔵が零れでる

 

彼女は俯いたまま、俺に質問を投げかけてきた

 

「いつ、後ろに回ったのかしら」

「最初からお前の背後だ、正確には、ビームをブッパしていた時だが

 お前が戦っていたのは俺の幻影なんだよ」

 

…とは言えどこの幻影、欠点しかない

確かに本体と別で行動して俺の意思どおりに身軽に動く

それだけ使い安ければ欠点の一つや二つある…ひとつしかないが

 

第1…というよりこれが無ければとても使えるのだ

 

…痛覚の共有

 

もう字ズラだけで欠点なのが分かる

痛みは全て俺と共有されるのだ、この糞幻影

一切の遅れ無く動く代償がこれ…強者にもバレない完璧な幻影の欠点

 

中途半端な覚悟で使えば激痛に身を悶えて動かす所では無い

幻影と本体が同じ形で間抜けに藻掻くだけだ

 

ああ、永琳のモルヒネがあって良かった

恐らく普通のモルヒネではこんなの耐え切れるわけが無い

 

確信できる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

にしても

 

 

 

「人間も妖怪も似た部分は多いのかもな、身体構造といい見た目…は1部例外か…」

「…余裕そうね?」

 

彼女は俯き、血反吐を吐きながらそんなことを言った

俺は身をかがめて彼女に言った

 

「ああ、余裕さ」

 

…実際は余裕もクソもありません

体のあちこちは折れてその上それ以上の場所にヒビが入っている

腕や足もろくに動かしたくないし頭も使いたくもない

もう何もしたくありません、たすけて

 

…ただの戯言でしかねぇ

余裕?余裕だぁ!?ふざけんなマヌケぇッッ!!

俺が今どんな思いでお前に向き合っているかわかるかコノヤロウ?風見幽香

もう今すぐ横になって寝てぇんだよこちとらァ!!!

 

「…終わりにしよう」

 

M1911を拾い上げ、弾倉を交換する

チャキッとスライドを元に戻し、彼女の頭に照正を定める

この距離では傘も無理な上に腕ももはや間に合わないだろう

 

引き金を引き絞る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先程と真逆だった

ただし、違うところを上げれば…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだった、男は直ぐに勝ちを確信する、もあったわね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

相手が、妖怪だったところだろう

 

「――ッ!?」

 

反応が遅れた

首元に瞬時に風見の手が迫ってくる

引き金を引く、瞬時に、ほぼ誤差は無く放たれた

 

発射された弾丸は彼女の頬をかすめた

 

 

 

 

なんの狂いもなく、俺の首根っこを掴み、そのまま風見は持ち上げる

苦しい、痛い、息が続かない

 

 

「ぐぅっ…!!」

「捕まえた」

 

妙に艶のある声だった

どこかしら、風見の頬が紅潮している気がする

もしかして本当に戦いを楽しんでいたのか

 

これですら、彼女とって戦いなのか

 

「見事、本当に見事だわ…久しぶりよ、あのアマ…いや、巫女かしら

 彼女以来よ、こんなやり方」

「…、……あぁ」

 

それはその賞賛に対しての答えではなかった

ただ、この人生に対しての感想のようなものだった

意味もない旅をしてしまったものである、本当に

 

…あぁ、終わったか

 

俺の万策は尽きた

もうこれ以上俺には何も残っていない

霊力も、動かす力も、何もかも

 

…秘めたる力も何も無い

先程弾が曲がったのもそういう"事象"だったからだ

それ以上でも、それ以下でもないのだ

 

「人間こうも諦めると不味く見えるのね」

 

先程の紅潮した顔はどこへやら

もう人間を見下す顔へと変わってしまっていた

 

…やはり妖怪、か

 

俺は何度も思ったことをまた、思った

俺はどうして、こんな場所に産まれてきてしまったのか

外の世界ならもしかしたなら、平和に暮らしていたかもしれない

 

 

 

 

――それは無いでしょうね

 

どこからか、そんな声が響いてきた

ぼんやりと意識が遠のく頭がそれを聞くだけの力を振り絞る

痛い、頭が痛い…待て?俺はこの声をどこかで聞いた――

 

――貴方が外で生まれようと争いに巻き込まれるのは必然

  戦いに巻き込まれ、外の世界のやり方の戦いに呑まれるだけ

 

…なんだ

俺はこいつの声を知っている

そうさ、忘れることは絶対に無い、忘れるものか

 

貴様の声と姿は、確実に覚えている

 

金髪の紫妖怪

 

胡散臭いクソ野郎

 

あぁ、よく思い出せるぞ、お前との邂逅

本当に思い出せる、このクソ野郎が

 

――あらあら、そんなに殺気立たなくても?

  ほらほら?穏便に行きましょう?

 

「…この殺気、あいつかしら…」

「…、……」

 

彼女は少し辺りを見回した後に俺に鼻を近付けてきた

胸の辺りに鼻を寄せ、二…三回程俺の匂いを嗅いだ

その行為について咎める声も出なかった…心中じゃ出るが

 

「…お前、本当にあの女の」

 

風見は驚いた様子で顔を離した

何か、知ったらしい…知った?分かったじゃねぇのか?

どっちでもいいだろう…何かが分かったんだ

 

「…ふふふ、面白い、面白いわ

 お前、運が良いわね…気分がのってきたわ」

 

彼女はそう言うと、俺をその肩に担いだ

まるで銭湯でタオルを肩にかけるように、軽々と

…装備類を見て見りゃ割と重量がある筈なんだがな…

 

 

 

 

ゆらゆらと体が揺れる

小舟の上に乗っているかのように、心地の良い波が来る

 

 

 

 

…俺はそのまま、意識を揺れる波に任せることにした

もはやこれ以上瞳を開けている必要も無い

 

 

…もう、疲れた

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