スキマに愛された大尉という人間について   作:回忌

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コマンダーヨリ

最近、妖怪ヲ虐殺シテイル者ガ居ルラシイ
恐ラク何カ妖怪二私怨ガアル者ガヤッテイルト思ワレル
見ツケ次第、仲間二ナルヨウ催促セヨ


ナオ、手段ハ問ワナイモノトスル


追跡

森の中を進んでいく

接近戦になってもどうにかなるようにナイフと銃を同時に構えている

ナイフ一本でどこまで行けるかと聞かれれば中級妖怪止まりだろう

そこから先はもはや壁が高すぎて何も見えない

 

「…」

 

己の規則正しい呼吸音の耳に聞こえてくる

それ以外は何も無く、森は静寂に包まれていた

囀る鳥も居らず、動き回る鹿すらここにはいない

 

…ならいるのはひとつしかないだろう

 

俺は直ぐにその場に匍匐する

妖怪は匂いやらなんやらで俺に気付くと言うが、この服にはそれらをせき止めるものがあるらしい

どうやってかというのは頭が痛くなるのであまり理解はしたくない

 

てか出来ないだろうな

 

「グルるるるる」

 

後ろを低級妖怪が通り過ぎる

先程まで獲物がいたのに瞬きすればいなくなっていた

恐らくずっとつけていたのだろう、じゃなければこんな様子では無い

その妖怪が通り過ぎるのじっと動かずに待つ

 

にしても不覚だ、いつの間にか付けられていたなんて

普段の俺ならあんな低級妖怪なんぞ簡単に回避していただろう

なのに今回は俺は何故かつけられたのだ

 

「…ッそういう事か」

 

俺はその場から立ち上がり、全力でダッシュする

先程の低級妖怪が涎を撒き散らしながらとんぼ返りしてくる

 

しかし、そんなのは気に止めるほどでも無い

 

それよりも不味いのが居るのだ

 

上から何かが飛び移る音がハッキリと聞こえてきた

枝から枝へ、人間離れした技を軽々とやってくる

俺は知らなかったが、幽香が記憶を入れてくれたからよく分かった

 

天狗のやり口だ、これは

 

「ここは妖怪の山の領域じゃない…

 野郎いつの間にかつけてやがったな?」

 

恐らく最初からつけていたのだろう

山で俺が襲撃した後、辺りを哨戒していた奴が発見したのだろう

その場で始末するより仲間を見つけ出して纏めて始末する気だ

 

…この服は死人から取ったものだから仲間がどなたか知らないが

 

『お前たちの仲間は死んだ、早く出てこい』

 

それを肯定するかのように上から声が降ってくる

聞く限り敵は3人と思われる、枝から飛び移る音が1人では無いのを確実にしている

…この音の鳴り具合からして三人で確定だろうか

姿を見ないと分からない

 

「クソッタレ」

 

先程から追い回していた低級妖怪はもう居ない

天狗に怯えて既に逃げていたのだ、危機察知が遅い

 

森を超えていく、少しだけ視界が晴れる

 

 

 

駆け回っていると、少し開けた場所に出た

それだけなら良かったのだが、そこには残骸が散らばっていた

 

装甲車両、テント類があるが全て破壊されている

装甲車両の前面はひしゃげ、機銃手は上半身が無い

地面には恐らく殺されたであろう人間達が転がっている

よく見ると2人程肩に見た事のあるエンブレムがあった

俺の服の肩にあるヤツと同じだ、…E.E.F.

黙祷する暇もない、その胸にあるスタングレネードを奪う

 

いつの間にか枝から飛び移る音は消えていた

俺は囲まれる前にまだ燃えきっていないテント内などを探し回る

見たところテント内には弾薬が少しばかりあった

ガバメントのマガジンがあるのに気付き、リグに入れる

その横に接近戦で役に立つショットガンの弾薬があるのに気付き、ポケットにぶち込む

本体に関しては外の死体が持っていたはずだ

そうして、俺が外に出た時だった

 

「動くな」

 

森の方向から、そんな声が聞こえてきた

俺は目だけをそちらに向ける

 

矢をつがえた白狼の兵士が1人、こちらに照準をつけていた

 

「そのまま動くな、動くと貫くぞ」

 

後ろから刀を抜く音が聞こえた

2つだ、足音も2人のものだ

やはり敵は三人だった、天狗3人だ

 

前から矢を引き絞ったまま白狼兵士が近付いてくる

 

「こいつ、ここで殺すべきだろ」

「そうだそうだ、こいつらも殺しただろう?」

 

俺の後ろからそんな声が聞こえた

勝ちを確信した、典型的な声だ、つまらない声だな

 

まるで俺が確実に負けるみたいじゃないか

 

「いや、こいつは用がある

 山の仲間を殺したって用が――」

「じゃ、俺がお前を殺してもいいわけだ」

 

もはや矢が意味の無いほど近づいた彼にはアホだろという言葉しかない

この距離なら妖怪の反応速度にしても、ナイフの方が有利なのだから

 

電撃的なスピードで奴の腹に五、六回突き刺す

白狼兵士は呻き声を上げながら殴りかかろうとする

俺はそのスピードを上手く生かし、俺が拘束するような形になる

 

「しねぇええええ!!」

「ぐわぁっ――」

「あ」

 

錯乱した2人は俺に対して刀を突き立てようとしたが、結果は違った

彼らはまんまと俺が拘束した白狼兵士の顔面と心臓に刀を突き刺したのだった

絶命し灰になろうとしているこいつを2人に向けて突き飛ばす

刀は刺さったままだったのでそのまま2人は体制を崩した

 

俺は近くの死体からショットガンを取り上げる

ウィンチェスターM1897、トレンチガンだ

見たところ12ゲージの30インチのものだ

 

俺はコッキングをし、即時に天狗兵の頭に狙いを定める

 

やつが何かを言う前に引き金を引いた

 

すると風船が破裂するように頭が砕け散る

顔に生暖かいものが付着するが関係ない、今度は心臓を撃った

生命力を無くした体が地面にばたりと倒れる、間もなくして灰化していく

 

「…」

「ひ、ひぃ!」

 

もう1人の生き残りに近づいていく

この生き残りからすれば同族の血を頭に付けた狂人だろう

弾倉を見ると、後1ゲージ残っている

ゆっくりと、しかし確実に銃口を向けた

 

妖怪の方が接近戦は有利というのにこいつはそれすら忘れているらしい

天狗らしくなく、人間な彼は媚びた

 

 

 

恥知らずと笑われるのも承知の上で

 

 

「ま、待て、お、俺はな――」

 

 

しかし、相手が悪かったとしか言いようがないだろう

相手は親を妖怪に奪われた人間なのだから

そんな命乞いを聞くに値する存在では無いのだ

 

俺が命乞いを聞くのは八雲だけだ

それ以外は絶対に聞いてなるものか

 

頭をぶち抜き、足でその心臓を貫いた

元々生命エネルギーが少なかったのか、即座に灰に帰した

 

トレンチガンを捨てる

接近戦において強いが、なにか物足りなかった

 

「…そういえば」

 

今思ったことだが、こいつらは何かを守っている配置をしている

よく見てみると真ん中に運搬車があるのが分かった

近づき、中を見ると大きな箱がある

 

蓋を蹴り開け、中身を見てみると大きな対物ライフルだった

 

「アンツィオ20mm対物ライフル…」

 

刻印に刻まれた名前を呟く

俺は少し迷った後それを拾い上げる

とても大きい、俺の身長以上ある…なんだこのアホ兵器

どうも特注の改造品のようで折りたたむことができるようだ

それをコンパクトに折りたたみ、背中に背負った

 

「収穫はあったな」

 

この同族の死体達には申し訳ないが、役に立った

こいつらも目指すところは同じなのだろう

 

そして、妖怪を殺す理由を同じ者も居るのだろう

 

しかし、俺は傷の舐め合いはしない

そんな惨めで慰めにもならないことをする意味は無い

せめて、せめて妖怪を殺せるくらいにはあって欲しい

 

…にしても

 

「やれやれ疲れた――」

 

俺がため息をつこうとした時、カチリ、と音がした

足元を見ると丸い、板状のものが敷かれていた

外の世界の知識に当てはまるものがひとつある

 

…地雷だ

 

「――ッ!!!」

 

身構えた俺を嘲笑うように黄色の煙が噴出する

俺はどうにかして鼻元を抑える

 

(マスタードガス!?いや、違うこれは――)

 

俺はがくりと膝を崩し、その場に四つん這いになる

足腰に力が入らない、まるで全身が眠ってしまったかのようだ

…睡眠ガスの類だ

 

(くそ…完全に見落としていた)

 

そこらの雑魚妖怪を近づけないために地雷くらいは敷設するはずだ

なぜそんな当たり前なことに気付かなかった

幸運なのは睡眠ガスな所だろうか

 

(い…しき、が…)

 

四肢に力が入らなくなり、そこにうつ伏せになる

 

僅かに残った視界に、何かが見えた

金、僅かなる金の輝き

 

(…あれは…尻尾…?)

 

黄金の美しい尻尾が見えた

ゆらり、ゆらりと揺れている

 

まるで火だ、始まりの火だ

 

(…いや、あ、あれ…は…)

 

俺は今気付いた、それは()()あり、それの真ん中に人型があることに

どうして初めから気づかなかったのだろうか

 

どうして、この妖力に今頃気づいたのか

この押し潰すような圧力の妖力に

 

妖怪の中で9つの尻尾などあの妖怪しか居ないのだ

 

 

 

 

 

 

 

「…九…尾」

 

それが限界だった

やがて俺は意識を完全に失い、闇に落ちたのだった

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