「…思いの外言葉遣いは優しいんだな」
「よく言われるよ、とりあえず座りたまえ」
彼は俺の前にある椅子をさした
若い顔つきだ、恐らく年齢は――二十歳を超えないくらいだろうか
こんなナリで組織を引っ張ることが出来るのならかなり腕はある方なのだろう
「…ふむ、聞いていたよりもずっと若いな」
「若い?」
俺は思わず怪訝な顔をしてしまった
なんでまぁ、そんなこと言ってしまうのかなぁ…
年齢は気にしないタイプたが、言われれば気になる
俺の怪訝な顔に気分を損ねたと彼は思ったのだろう
直ぐに悪い悪いと訂正してくれた
「報告で聞いた顔よりもずっとマシな顔をしていると思ったからね」
「マシ?」
「いやね、まるで人修羅だと…」
そりゃなんとも酷い言葉だ
人を修羅呼ばわりするなんて…とち狂ってんじゃないのか
彼がそのあとに何かを言った気がしたが聞こえなかった
「人を人外呼ばわりとは不名誉な」
「妖怪を殲滅するにあたっては名誉じゃないかい?」
「…そういうものなのか?」
…まぁ一般人から見れば妖怪も俺達も変わらないのかもしれない
たしかにひょいひょい岩と岩を足場にしたり気を引っこ抜いたり…
その他をあげればキリがないが、もう人間じゃない
見てわかる、確かに気配は人間だが…力は人のそれじゃない
もはや人外のそれだろうな
「まぁ、それはどうでもいい事だ」
彼はさっさと本題に入りたいのかこの話を切り離した
俺としても早く本題に入って欲しかったところだ
コホンと彼は咳をして本題に入る
「ここから近くに点基地として使っていた補給拠点がある
大尉、君の任務はこの補給拠点に潜入し破壊、もしくは奪取をしてくれ」
「――いきなり任務か?」
彼はいきなり任務を俺に手渡してきた
その事に違和感を覚え、反射的に質問してしまった
何かの入隊テストも無く…そのまま任務?
普通だったら有り得ない、俺に裏切りとか考えないのだろうか
「もしかしてテストでもすると思ったのかい?」
「…まぁ」
俺の答えに彼はくつくつと笑った
目が笑っていたので本当に笑っているらしい…
…え?そこまでおかしい事だったか?
「君、今そんなことをしている暇なんて無いぞ
他のEEFの奴らも基本噂話を信じて雇った奴らだ
そもそもいちいちテストなんてしてられないだろう?
大尉、私達には時間が無いんだ」
…彼の言い分は最もだった
妖怪との戦闘に時間は死活問題だろう
あちらのやる気がほぼ無いおかげで今を生きていられるのだ
危険因子絶殺マンがあちらに居れば…何も言うまい
「まぁ、これが入隊テストの変わりだと思ってくれ
いい戦果を期待しているよ」
「…分かった」
俺はそれだけ言うと、ブリーフィングを手に取った
軽く目を通した後霊力の炎で完全に焼き尽くし席から立ち上がる
そのまま武器を確保する為に武器庫に――
「あぁ、EEFは武器は現地調達だ
彼に負担を掛けすぎる訳には行かないからね
ナイフと拳銃程度しか持っていけないよ」
「…はい?」
〇
天狗という社会は縦社会の体現であると言える
下っ端はいくら武功を上げようとも下っ端のままである
天魔はどうあがこうとも天魔のままである
傲慢な僧が成ったやら、とある人物の怨念やら…
元が人間説などもあるというなんとも複雑な種族である
どれもこれも、恐らく真実なのだろう
…ただ、ほかの妖怪と絶対的に違う点がある
それは、社会を形成していること
如何なる妖怪とも違うこと、これが一番だろう
どんな妖怪であっても社会を形成することはあまり無い
群れを形成したりするが、天狗のように一致団結はしない
同じ種族であっても協力することが少ないのが妖怪だ
ただ、天狗は違う
天狗と…鬼だけが社会を形成しているのだろう
ずっと前に鬼は居なくなってしまった
今やズル賢い天狗の天下だ
「…はぁー」
下っ端天狗である犬走椛はため息をついた
何をどうあがこうとも私はこの地位なんだと思うとやる気が失せる
大天狗とかにそろそろ慰み者にされそうで怖い
部隊内に被害者は"まだ"出ていないが…
最近の人間反乱軍の奴らが"代わり"を務めているからだろうか
まだ"出せる"活きのいい男を取引する場所なんてのもあるらしい
そんなものに手を出す気も――そもそも出せないし出される側だろうし…
敵側ながら憐れだ、助けを乞うんだったら殺した方が良いだろう
こっちでいいように使われて殺されるだけだ。
「なーに悩み事してるんですか」
「…なんでもないです」
いやそもそも山は攻めてこないかと納得していると、いきなり声がかかる
そちらの方向を向かずに素っ気なく椛は返した
「さっきからなにかに悩んでたようでしたよ?」
「…同僚を殺していたヤツをどうしてやろうかと」
変に返すのも面倒だったので片隅で思っていたことを言った
あの後調査して分かったことだったが、奢りを約束した同僚が殺されていた
あの山火事は残された服を燃やすためだったらしい
…最初からやる気だったというわけだろう
尚、彼女は"同僚を殺したから"その人間を殺すのでは無い
"奢り分が消え失せた"からその人間を殺すのだ
「だったら最近、いい任務が入ってるじゃない」
「…あぁ」
文が卑しく嗤いながらそういった
彼女が言っているのは殺された同僚の報復として人間の基地を殲滅している事だろう
人間側が銃火器やらを使って抵抗しているのを聞くが、おそらく無駄だろう
事実全て無駄になって全員殺されている
…その後博麗の巫女にボコボコにされている
反乱軍側にポツポツ人里の奴らがいるのが原因である
人里の人間は絶対殺すなというアレがある
「外に出りゃ関係ないだろ!殺す!」ってのが数人居る
…実を言えばそれはあまり関係ないという話だ
実は今、妖怪は弱体化の傾向が見られている
妖怪と人間が接するのが少なくなってきてしまったというのが大きいだろう
接触したとしても基本皆死んでしまっている
明日は我が身状態では無いため、それ程警戒心が無いのだ
…いや襲っても良くね?コレ
態々人里の人間を見分けるのは面倒だが襲わなくては強さを維持できない…
なんだこの負の連鎖、あまりヒドイ
…そろそろ賢者辺りが動くんだろうな
人里の外にいる人間は保護しない、とかだろうか
…まぁ、それが最善だろうな――
「嫌ですよ、私は博麗巫女に殺されたくありません」
「いやぁ、"そっち"の仕事じゃないですよ」
どうも点基地の襲撃では無いらしい
確かにあっちを襲撃したとて殺されるだけだから違うか
――違かったら無慈悲すぎんかこの人
「補給拠点というのを最近確保しまして、"捕虜"とともに今そのままなんですよね」
「兵を配置しただけ?鴉天狗も居ないんですか?」
彼女はこくりと頷き、こちらに提案してくる
「捕虜の移動を行いたいので、その護衛をしてほしいのです」
「捕虜?一体誰ですか?そもそも何人ですか?」
文はこのくらいなら教えていいかと呟くと、パタパタと羽を動かす
「"潜入者"、ですよ――捕虜は彼1人のみです」
「せ、"潜入者"ぁ!?」
あまりの驚きに声が出てしまった
コードネーム――潜入者…本名不明の男
"消える程度の能力"らしい能力の使い手
今までの被害は凄まじく、危うく天魔の行動表が奪われるところだった
人間ならばと近接戦闘は…高い
能力により、するりするりと消えるように避けられる
「…い、一大事じゃないですか」
「えぇ、ですので…失敗、挙句の果ての逃走なんてのは許されませんよ」
な、なんという任務…それ哨戒天狗にやらせるものじゃない…
もしかしてこの人私を使い捨てのパーツだと思ってる?
ただ、まぁ
「…やるしかないんでしょう?どうせ」
「おお!ありがとうございます!あと一人だったんですよねー」
そう言って彼女はバサリと飛び去っていった
どうせあのパパラッチのことだ
…何をしてでも私を任務に入れたがるだろうな
大体の路線は出来ています
あとはそれをどうやって上手く繋ぐか…ですねぇ
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