スキマに愛された大尉という人間について   作:回忌

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「位置に着いた、中に入る」
『外の歩哨はどうした?』
「地獄で仲良くやってるだろうよ」

時刻、真夜中
場所、補給拠点
目標、奪取、及び捕虜の解放
既に眠そうな歩哨は後ろから刺し殺し、服も近くのゴミ箱に突っ込んだ
殺したのは二人程度なので直ぐにバレはしないだろう
配置的にもこちらに他の奴らが来るのは有り得ない

…かかっていた鍵をピッキングし、中に入り込む
そのまま中を流れるように進んで行った


サボタージュ

『ブリーフィングを直ぐに燃やしたようだが、ちゃんと読んだのか?』

 

無線からそんな声が聞こえる

俺はオペレーターを配置するように頼んだ覚えは無い

あちらが勝手に付け足したのだろう

 

「あんなの直ぐに覚えた」

 

嘘を着く意味も、黙る意味も無いため事実を話した

あんな長文でも無いものすぐに覚えることが出来る

 

僅かな配置と目的についてだけあったら分かるわ

 

「あともう黙っていてくれ、もう拠点内だ」

『…分かった、用があるときに頼む』

 

ガチャりと無線を自分から切る

ここから先に安全な場所はどこにも無い

全員を始末しないと安全は確保できないのだ

 

まず初めに捕虜を解放し、邪魔がいなくなったのを確認して殲滅する

どうも"潜入者"なる人物曰く、この夜に捕虜を回収に来る天狗共が居るらしい

 

――つまるところ先に拠点を確保すると後々面倒事が起きる訳だ

 

…その潜入者が捕虜らしいのだが

なんでこんなにも呆気なく掴まってんだソイツ…

 

「!」

 

角を曲がったところで天狗とばったりであった

天狗の大剣を横から直ぐに振ろうとしている

直ぐにその懐に入り込み、腹に一発叩き込む

 

吐き気に襲われているところに足で巧みに大剣を操り、首元に叩きつけた

 

灰がパラパラと舞い上がる

残った武器と服を近くのロッカーにぶち込もう――と思った時だった

 

「…ッ」

 

ガチャりとロッカーを開けると、腐敗臭が飛び込んできた

何かと思ってよく見てみると腐乱死体がロッカーに入っていた

着ている服などからして、恐らくここの防衛兵士だったんだろう

 

…可哀想にな

 

「…ニュゴイ、ベーケーバン」

 

安らかに眠れ

俺はポツリと呟いた

こんなところでは安らかに眠れないだろうが、せめて気が良くなるくらいには…

俺は大剣と装備を押し付けるようにロッカーに入れ、扉を閉ざした

 

…憎しみ

 

「…あぁ」

 

母を奪われた時も、こんな感情が湧いてきたな

 

報復心、怨嗟、怒り

 

言葉では言い表せない言葉が頭の中を埋めつくしていく

バサリと鴉が舞い降りて、俺の肩に留まる

 

仲間が奪われた怒りが、心を染めていく

 

あの時、あの場所では感じなかったのに

護衛兵士たちが死んでいたところを見ても何も思わなかったのに

 

何故だろう

 

何故、こっちの方が怒りが湧いてくるんだろう

 

 

「…任務だ」

 

これ以上、変な連鎖になる前に俺は思考を断ち切ることにした

鴉を軽く撫でながら施設の中を進んでいく

 

重要人物がいるというのに守りはそれ程固く無い

アイツらに危機意識というのは無いのだろうか

もしくは絶対に攻めてこないという確信でもあるのか…

 

――後者だろうな

 

地下室に行くための階段をみつけ、そう思った

階段の前に歩哨が誰もいないのだ

敵が来るとすればここがダクトしかないというのに

 

それなのに天狗が誰もいない

 

まぁ、こちらからすれば楽だからいいんだが

 

天狗というのは割とザルなのかもしれない

もしくは無能か…いや聞く限り大天狗は無能らしいのだが…

 

 

少しばかりの警戒をしながら階段を降りるが…

どうにも気配がひとつしか感じられない

 

…いや、これは1つと言うよりも――

 

「俺は必要だったか?これは」

「ああ、必要だぜ?」

 

こっちを見ずに見張りの白狼をボコボコにしている"潜入者"の姿だった――

その上、"檻から出た"状態で白狼をボコボコにしていた…

 

 

「悪い悪い、ちょっと火が入っちったぜ」

「よく気付けたな、俺が来たことに」

 

今だ灰となっていない白狼をゲシゲシと蹴っている潜入者

時折死ね死ね言っているので割と本気らしい

 

…ていうかなんで気付いたんだ?

 

「いや?予定通りだからさ

 思ってたより予定通りでちょっと怖いが…」

「そうかよ、さっさと逃げるぞ」

 

俺がさっさと任務を終わらす為に逃がそうとすると、彼は首を振った

何かまだやるべきことがあるらしい

 

というか監視室にある装備類すら取っていない

 

「…」

「俺は捕虜になった本拠地に輸送されるという任務がある」

「んじゃあそこで捕まってろ」

「あぁ、お前にもやって欲しいことがあるんだ」

 

そう言って彼は白狼天狗の服を渡してきた…え、マ?

これ着るだけで白狼なれるなら苦労しねぇよ?

 

「私にいい考えがある、そもそも捕虜になったのはわざとだ」

「…今はお前の考えに従っておく」

 

渋々俺は彼の考えに賛同することにした

本当はやりたくないが、こいつのやりたいことが分かってしまったのだ

 

…本当にやりたくない

 

 

「…静かだ」

「何がでしょうか?」

 

椛はふと呟く

その独り言を拾ったのか、四人連れてきた内の一人が聞いてきた

椛はなんでも無いというふうに首を振って補給拠点に向かうことにした

 

――いくらなんでも基地に動きがない

そう思ったのは自分だけか…そう思いながら飛翔する

 

実の所、既にこの四人は殺されており入れ替わっているのを彼女は知らない

そもそも知る由もないことだろう

 

…それより

 

「補給拠点の防衛はこんなにも少ないのか?」

 

防衛の白狼天狗はあまりにも少なかった

たかだが五、六人程度しか兵士がいなかったのだ

守りを固めるにはあまりにも薄すぎる…

 

もしくは人間を驚異として見ていないのだろうか

 

空から施設内部に入り込み、廊下を歩く

どこもかしこも血塗れだ…鉄の匂いが嫌でも鼻腔をつく

 

腸を抜きちぎられた人間の死体、地面に落ちている天狗の衣服

激しい戦闘があったことをそれらの痕跡が伝えてくれる

 

「…」

 

恐らく人間達は死ぬ気で抵抗したのだろう

"潜入者"が居る地下に近付くにつれ、戦闘が激化したのが分かる

二三人程、見覚えのあるエンブレムがある…EEFだ

 

恐らく名付きでは無く、無名のEEF兵士だろう

かの部隊の兵士は舐めれたものでは無い

1人で天狗十人はかっさらって行けるという化け物なのだ

そもそもあの部隊に人間らしい戦闘をするヤツが居るのが気になる

 

ただ、そんな奴らが居ても数の暴力には敵わなかったらしい

明らかに多い傷口、欠損した片腕、抉り取られた頭の半分

 

可哀想に

 

「…」

 

階段を降りる

戦闘は主に一階がメインだったのかここらの戦闘痕は少ない

ほぼ皆無と言っても良いのだろう、大半の兵士は一階で死んだ

 

そして、"潜入者"の牢屋にたどり着く

 

「お疲れ様です」

「あぁ、お疲れ様」

 

見張りらしい白狼がこちらに会釈をした

私は軽く会釈を返し、彼に話しかけることにした

 

「"潜入者"は?逃げてはいまいな?」

「こちらの中に」

 

彼の目線の先を辿ると、縄で括り付けられた"潜入者"が居た

成程、これなら逃げられることも無いだろう

 

「…やーっと迎えが来たか?」

 

顔がゴロリとこちらを向いた

酷く饐えた匂いが…そうとう惨い事をされたのが分かる

何か慰めの言葉をかけたくなるが、それは彼らが嫌うものだ

 

変に何か言うのは止めておこう

 

「今からお前を山に連れていく、変な抵抗はするな」

「する事なんて出来ないぜ」

 

牢屋を開け、中から"潜入者"を連れ出す

見た感じ変に装備類を持っているわけではなさそうだ

手持ちも何も無い、必要以上に警戒する必要は無さそうだ

 

「犬走隊長、私も同行します」

 

そして牢屋を後にしようとすると、先程の白狼がそういった

私は首を傾げた――こんなの聞いていないからだ

ブリーフィングで同行するものが現れるなんて聞いていない

 

まぁ、射命丸なら私に伝えていない情報くらいあるか…

多分何かしらの任務で別行動していたのだろう

 

椛はそう思って特に疑問を抱かなかった

 

「そうか、分かった」

 

それだけ言って、部下達の所に戻ることにした

私とその白狼天狗で"潜入者"を挟むようにして、進む

 

後は彼を連れて帰るだけで終わりだ

 

楽な仕事、楽な仕事だ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――椛は後に、その事実を大いに否定することになる




原作キャラが拷問受けるって嫌いですか皆さん

私は嫌いです






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