スキマに愛された大尉という人間について   作:回忌

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疑惑

滝の中が静まり返る

文がニコニコとしたまま空中から動こうとしない

 

風が吹き、髪が揺れる

 

滝が巻き起こす轟音が静寂を常に破る

 

「…おやおや、なんの事やら」

「とぼけ無くてもいい、大体想像はついているからな」

 

わざとらしい声色で文がそんなことを言った

俺はカチャリとホルスターからSOCOMを取り出した

サプレッサーがとLAMが装着されたカスタム型だ

M1911よりデカいが威力はある

 

その銃口を椛の頭に向けた

 

「あやややや、野蛮ですねぇ」

「そう思うか?」

 

実を言えば大尉は若干キレている

組織の中に裏切り者が居るというのもそうである

ただ、まぁ、この天狗の一々のわざとらしさが腹立つのだ

 

なので、椛の腕に向けて一発撃った

 

「――ッ!?」

「密告者は?」

「あやッ…一旦落ち着き――」

「密告者は?」

 

片方の腕にもう1発発射する

どうせ妖怪なのだ、この程度勝手に再生することだろう

そろそろ眉間にぶち込んでも問題ないかもしれない

 

「わ、分かりました、分かりましたよ…言います」

「早く言え」

「分かりました!だから撃たな…撃つなって言ってるでしょーッ!?」

 

あまりに勿体ぶるので腹いせにもう1発腹にぶち込んだ

椛は俺の"能力"によって一切喋ることは出来ない

喋らせてもいいのだがここは敵地のど真ん中である

お得意の彷徨をされたら死ぬのはこちらである

 

…割と危険なことしてないか?俺

 

 

 

この男、危険だ

目の前の凶行に冷や汗が走る

 

椛がボロボロにされている

密告者から絶対喋るなと言われているのでどうにかして水に流そうとしたらこれである

 

彼からは「会って伝えたいことがある」と伝言があった

場所指定はその後にあったので来れた

 

――まさか椛か人質に取られているとは思わなかった

 

あちらで酷い拷問か慰み者にされているかと思っていた

そう思っていたのに大尉に人質にされていたのである

 

にしてもこの男、引き金が軽すぎないだろうか

簡単に何回でも撃つ…多分このまま受け流しを続けていたら殺される…

 

「密告者はですね、――という男です」

「…成程な、予想通りとも言うべきか…」

 

私が言ったことに対して、彼はある種の納得をしたようだった

聞いた限りの話ではその男は通信系の担当をしている

自然にどの場所に兵を配置するかなど、簡単に入ってくることだろう

 

「…何故密告者が分か――」

「嘘じゃないよな?」

「嘘じゃないですよー信用して――また撃ったーッ!」

 

うん、こいつと相手する時は自粛した方が良さそう

椛の周りが血だらけになってしまっている

失血死は体の数倍以上の血が出ないとありえない

 

「嘘じゃないなら良い」

 

椛から銃口を外すと、ホルスターに戻す

良かった…背中にある"馬鹿デカい大砲みたいな"銃で撃たれなくて

 

…あれ多分妖怪でも一発で死ぬぞ…?

 

「話は終わりだ」

「そ、そうですか、では…私はこれ――」

 

息が詰まった

この場所から逃げ出そうと翼を広げた瞬間だった

 

見てしまった、と言うより反射的だった

 

 

 

 

 

 

 

――胸に、背中にあった筈の大砲の"砲口"が向けられていたのだ

 

何を言う前に、引き金が引かれる

心臓の真横辺りを貫通し、滝に一瞬大穴を開けてどこかに弾丸が消えていく

 

一瞬の事だった

 

爆音が辺りに鳴り響く

その爆音に反応してか、白狼達の遠吠えが聞こえてくる

 

倒れた文にまるでその場に無いように何かを弄る

ピピッと電子的な音が響く

 

「…こうでもしないと背中から刺すだろ?扇子持ちやがって。

 さて、ついでに河童から奪った"コレ"も使うか――」

「――ま…て…」

 

文が制止しようとするが、大尉は次の瞬間――消えた

頭から指先に至るまで背景と同化した

 

それまるで河童の光学迷彩のような――

 

「ここから聞こえたぞ!」

「囲め!逃げれないようにしろ!」

『あばよ馬鹿鳥、地面と仲良くキスしてな』

 

天狗の聴覚が大尉が水中に入ったの知らせてくれる

しかし、外の白狼達には何も分からないだろう

このまま、文と椛しか居ない滝を包囲していく

 

――こりゃ、始末書は不可避かなぁ

 

 

現状から目をそらす様に、文はそう思ったのだった

 

 

「…」

 

水中を進む

上流から下流に向けて進んでいるので軽い力で進める

光学迷彩、そして日が沈んだ今ならほぼ分からないだろう

 

「…――」

 

息継ぎの為に上にあがり、少し滝の方を見てみる

 

…ありゃ過剰戦力過ぎんか?

 

見た限り三十…下手したらそれ以上かもしれない

どちみち時間が経てば椛の血が流れてバレる

思いのほかさっさと聞けて良かったかもしれない

 

「――…」

 

潜水

潜水の自己ベストというのは数えたこともない

そもそも川の中を進むのはこれが初めてなのだ

大体…10分くらいだろうか?進んだのは

途中止まっていたのでもう少しあるかもしれない

 

 

 

 

…あぁ、なんか凄いちょっかいかけたくなってきた

 

突拍子も無く俺はそう思ってしまった

死にかけた味方しか居ない滝裏を探そうとしているあのアホ共にちょっかいかけたくなった

 

「…――ふー」

 

良いポイントを探す

川から顔を出し、あの滝が見えるいい位置を探す

見たところ…あよ杉の木が1番狙いやすいだろう

 

「…良し」

 

匍匐し、川から抜ける

濡れた服に細かい小石が付くが、気にせずに進む

やがて小石から草木に変わり、付着するのは泥になった

 

そのまま進んでいくと、目的の木下にたどり着く

 

「さて」

 

まだ突入をしていないらしい、あの天狗共は

そろそろ出血多量で死ぬんじゃねぇかな…まぁ無いか、そんなこと

 

そう思いながら杉の木を登る

途中に生えている枝を足場にしながら登る

 

杉の木真ん中辺り…ちょうど狙える位置

 

背中からアンツィオ"41cm対艦"ライフルを取り出す

武器庫に取りに行った時凄まじい改造をされていた…

この小ささで出てくるのは41cm砲並の威力を持つライフル弾らしい

――威力が41cmなだけで口径は全く違う

流石にあんな馬鹿デカ砲を担げる訳が無いだろう

 

「…――」

 

息を止める

アホみたいな火力があるが、その分重量は凄まじい

そもそもは伏せ撃ちが基本らしい

 

…ま、知らんが

 

そう思いながら1番エラソーにしているアホの後ろ頭に引き金を引いたのだった

 

 

「あー疲れた」

 

基地に戻り、大尉はため息をついた

あの後速攻でバレて凄まじい追いかけっこをしていた

まさか伏兵が真横にいるとは思わないじゃないか…

無論ぶち殺してささっと逃げた、異論は認めない

 

「随分遅かったじゃないか?」

「八重か…なんだ?何かあったのか?」

 

部屋に入ると、俺の椅子に八重が座っていた…何座っとんねん

彼はくるりと回って立ち上がると俺に耳打ちする

 

 

「裏切り者が見つかった、通信士だ」

「…本当か」

 

 

…タイミングが良いな

"インタビュー(忍式)"したかったが、出来ないようだ

まぁ…良いか、どうせ1人だけじゃないんだから

 

「上は大変そうだな…"インタビュアー"が忙しそうだ」

「…"少佐"、だったか?」

 

俺たちが指しているのは拷問のプロフェッショナルの事だ

拷問の方式は某シャラシャーシカ方式らしい、おお怖い怖い

 

「他には?」

「今のところは居ない、今は、な」

 

彼は窓際に歩み寄り、新月を見る

寝静まり、哨戒しか居ない基地はとても静かである

 

「…お互い、秘密があるようだ」

「そうか?今まで秘密を作ったことは無いな」

 

ハハハと八重は軽く笑った

そして俺の横を通り過ぎていく

 

耳元で、彼は言った

 

「…あまりこんなことしていると勘違いされるぞ?

 皆が皆結束している訳じゃないんだ」

 

彼はそれだけ言うと、ガチャりと扉を閉めてどこかに行ってしまう

俺はため息をついてベッドに横たわった

 

あぁ、疲れた――

 

そんなことしか、思っていなかった

 

 




3月まで投稿できないと言ったな?あれは嘘だ(大嘘)

都合上投稿が遅れるだけですハイ

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