スキマに愛された大尉という人間について   作:回忌

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減る妖怪共

探索3時間目、なにも見つからない

森の中を探索しているが血痕ひとつも無い

本当に普通の森、強いて言うなら静かすぎる森だろうか

小鳥がさえずりや所々鹿やらの動物が闊歩している

ここまで来たのに何故か妖怪の一体も出会わない

 

「…おかしい」

 

それがおかしいのだ

普通の森でありすぎておかしいのだ

本当ならあの鹿はもう少し怯えていいはずだろう

この小鳥のハーモニーはもう少し小さいものだろう

 

なのに、普通だ

 

この普通はこの世界(幻想郷)では異常だった

妖怪が一匹、たった一匹入ればこんな事にはならない

鹿やらはその場から逃げ出し、小鳥はその声を潜める

しかしそんな気配はどこにも感じられない

妖怪なんて居ないという顔で鹿は闊歩している

なんとも、見たことがあまりない光景だ

旦那を持ち子をさずかった程の年月が流れようともこのような光景はなかった

 

「…警戒しないとな」

 

こきりと拳を鳴らなす

昔からこぶしだけには自信がある

どんな妖怪も拳でぶっ飛ばしてきた

アイツの結界もぶち壊す位、強い

奴曰く「無意識に霊力を纏ってる」らしい、どういう事だか…

 

警戒しないとなと言ったものだが言うてそんなにだ

低級妖怪程度なら拳で良いし若干長く生きてるのは足が出てしまえば良い

今も尚妖怪への認識が変わりに変わらないがアイツは変えるように言っている

 

「…どいつもこいつもなぁ」

 

――どうやって認識を変えろと?

それは恐怖の対象を友人のように見れと言っているような物だ

何をどうしたら奴らを友人のように見ることが出来る?

ハッキリ言ってしまえばアイツでさえ敵だと思っている

こんな形で親子を分断させて…

 

私はまだ許せていない

あの子の顔を思い出す度に死にたくなる

この役目を放り投げて探しに行きたくなる

なにもかも嫌になってしまう

 

これ以上やるなら私は…

 

「…はぁ」

 

そんな、ネガティブな思考はそこまでにしようと私は思った

嫌な思考に行っても嫌な気持ちになるだけだ

少しはマシな方に向けよう

人間的にこの状況は万々歳と思うだろう

人間でも少数の人間はおかしいと思う、特に妖怪退治の人間は

 

妖怪なら不思議に思う

このような住処、どうして住まないのか、と

このような森、暮らすには最適すぎるくらいである

 

その原因はすぐそこにあった

 

「…この匂い」

 

錆びた鉄のような匂い

嗅ぎなれた匂い、血だ

それもかなり濃い…ますますおかしい

妖怪というのは食に貪欲だ、特に低級妖怪は

血は大体人間が流す物なので火につられた蛾のようにやってくる

血を辿ればいつしか獲物にありつくことが出来るからだ

 

警戒しながらその場所を見る

 

「これは…!」

 

そこは異変の中心だった

辺りに血肉が飛び散っている

内蔵という内臓がばら撒かれ、辺りに酷い汚臭が満ち溢れる

既にハエが集り始めていて物凄く不潔だ

 

そして、驚きなのが死体が残っているということ

大抵の妖怪はやられてしまえば塵となって消えてしまう

恐が強すぎる場合は死体が残ってしまう時があるが…

見たところこいつらは襲う妖怪と言えばこいつらみたいな風潮がある

それ故に大抵塵となって消えていくのだが…

 

死体が残っている、いや、血肉が残っているということは…

 

 

まだこいつら、生きている

 

 

そのことに私は鳥肌が立った

今まで、このような自体に遭遇したことが無いからかもしれない

しかし、それ以前にこのような行為に行くことが出来る意思に恐怖した

確実に妖怪にある殺意と憎悪、それを行うほどの手腕

 

人間がやったのか?

 

私は脳内でそれを否定した

いくら殺意が強いとはいえそれが出来るのは少ない

最近生まれた危険分子達であろうとそこまでの戦闘能力は無い

だとすれば人間以外の何者かということになる

 

確実に、人間では無いやつの仕業

 

「早く慧音に伝えないと…!」

 

私の意識は里を守ることに集中され、その場から急いで走り出す

早く伝えた方がいい、こいつは完全に質が悪い

今の所妖怪にだけ殺意が向いているから良いだろう

しかし、いつしかその矛先は私たちに向かう

 

その前に、その前にソイツを止めないといけない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もし、それが息子の亡霊だったとしても

 

 

現在時刻、大体八時半程

天候、大雨

目標、妖怪の山

目的、新しい装備と敵の威力偵察

 

以上の事を実行するために現在川の中を進んでいる

母から聞いた話だが白狼天狗は鼻が聞くらしい

その嗅覚と獣らしい聴覚で敵を探る

現在嗅覚を欺く為、雨の日に加えて川の中を泳いでいる

雨の日なら大体の匂いを欺くことが出来るだろう

聴覚については…この大雨であっても警戒する必要がある

 

M1911の薬室を確認、こいつを使うのは最終手段だ

基本は背中にあるサビサビの刀であるが…

木端天狗とはいえ天狗は天狗である、通用するか?

 

「そろそろ岸に上がろう」

 

妖怪の山には河童が住むとも聞く

ならばこのまま登り続ければ奴らに見つかってしまうだろう

それは勘弁願いたいものである

冷たい川から身を引っ張り出し、近くの林に身を隠す

ここからは身を低くしながら行くことにする

本当なら匍匐がいいと思うが雨だから多少甘えてもいいだろう

 

そう思いながら雨中行軍していると何か物音が聞こえた気がした

身体を更に低くし、その方向を見る

そこには2人の白狼がいた

濡れたくないのか両方とも編笠をしていて目元がよく見えない

しかしまぁ、体付きで嫌という程分かる

 

 

片方は女、片方男のツーペアだ

あの女の方、着痩せするタイプだな、見てわかる

男の服が真っ黒になっているのを女の方が聞いているようだった

聞き耳を立てる限り塗料を頭から被ってしまったらしい

…あの大剣、なかなか良さそうだ

さて、1人なら何とかできるだろうが2人は無理だ

あっという間にバラバラ死体にされてしまう

ここから少しだけ観察する

出来れば女の方はどっか行って欲しいんだが…

 

 

神は居たのか、女は呆れたようにどこかに立ち去って行った

さて、ここで喜んでブチコロムーブに行く訳には行かない

なんて聴覚がいいのだから喜んで殺しに行けばすぐにトンボ帰りしてくる

騒音を立てないためにさっと殺す必要がある

 

さっと殺したくても耐久が高すぎて殺すのが面倒くさい

とはいえあの男に関してはさっさと死んでもらおうか

きっちり2分待ち、やつに近づく

とはいえただ近づくだけではバレるかもしれなかったのでやつの近くに石を投げた

編笠を被ってるとは言えだ、念入りに行かないと

それは草むらの中に入り、がさりと音を立てる

 

「なんだ…?おい?誰かいるのか?」

 

彼はそう言って近づいていく

誰もいない場所に勝手に歩いていく姿は間抜けだ

後ろから足音と息を死ぬ気で殺して近づく

 

やがて彼の真後ろについた

奴は草むらを大剣でいじくっていたがやがて誰もいないと判断したのかため息をついた

ネズミか、と悪態をついた彼は草むらを睨みながらその場を立ち去ろうと後ろをむく

 

「よう、まぬけ」

 

「なっ―」

 

まず喉元に思い切り錆びた刃を突き刺す

油断していた奴の喉元に簡単に刃が突き刺さる

そこからみぞおちに肘を食らわせ、足払いの要領で後ろにこかしてやる

 

いきなり侵入者からの不意打ちを食らった哀れな哨戒はその大剣を手放した

俺はそれを手に取り、思い切り振りかぶる

 

「――!!!、アぁ――!―かぁ―!!」

 

かすれた人語でない呻き声で何かを言おうとする

しかしそれは声帯にささった刃のせいでどうすることも出来ない

それに命乞いなんて意味が無い

 

俺はなにも躊躇うことなく刃を振り下ろした

 

それは脳天をかち割り、更に大地に突き刺さった

彼の体はみるみるうちに灰となり、その場には衣服と持ち物が残された

俺は地面にささった大剣を無理やり引き抜いた

 

さて、物色の時間だ

 

端的に言えば持ち物は哨戒中の食べ物と盾と大剣と服だけだった

あとは雨を防ぐための被る傘、それだけだ

哨戒任務中の装備はまぁ、この程度か…

幸運なことといえば食べ物にあまり手が付けられていなかったこと

そして、もうひとつが誰も来なかったことだ

かなり早く終わらすことが出来て良かった

 

俺はそう思いながら大剣を背負い、衣服を燃やししておく

火がついた衣服はやがて森を燃やしていくだろう

この雨だから全てを燃やし尽くすことは出来ない

それでも、やることに意味があるんだ…そっと編笠で目元を隠す

 

あとはタダ帰るだけだ、俺はそう思いながらその場をあとにしようとした

 

 

「…!」

 

 

その瞬間、後ろから大きな遠吠えがした

明らかにこの山全体に聞こえるであろう遠吠えが

方向としては先程戦闘があった場所

何か、女の方が気づいたのだろう…運が悪い

ここにいる意味もない、いても死ぬだけだ

そう思った俺は駆け出した、全力で、死ぬ気で

この雨なら恐らく大体の音はかき消される

相手が相当いい目と耳を持っていないと分からないだろうな

 

嘲笑が口から漏れる

俺は抑えきれない歓喜を抑えながら山を下山するのだった

 

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