スキマに愛された大尉という人間について   作:回忌

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文字数多め、後次から少し変わります


境界の果て

「あぁ怖い、引き金を引くのが早いわ」

「この程度で死ぬとは思ってない」

 

マテバの銃口を下に向ける

降参では無い、撃っても意味が無いと知っているからだ

意味が無いことをするのは…まぁ、この時の気分次第か

 

「ようこそマヨヒガへ、私の家では無いのだけれどね」

「…そうか」

 

俺はマテバをホルスターに戻す

そして、背中からアンツィオを取り出した

 

衝撃の事実じゃない

何せ大体分かっていたのだ、俺には

 

幻想郷を作った賢者…妖怪の賢者

人間との共存を望んだ素っ頓狂な野郎

それであっても長い年月を生きた人でなし

 

長い年月の間生きているならば、それなりに冴える

こいつは俺がちっぽけに見えるくらい頭が良い

 

 

…そんな奴が、自らの家を人間如きにみつかる?

 

 

 

有り得るわけが無いだろう

 

 

 

こいつが俺たちの情報を知っている理由は知らない

どうせインチキな力で俺たちの情報を知っているんだ

 

 

「ここがお前の住処でも無くていい…俺には関係ない︎︎」

 

ライフルを構える

 

言葉の通り、俺には関係ない

マヨヒガの破壊を必要としているのは俺では無いのだ

俺はこいつを殺す為にここに来た、マヨヒガの任務だから受けた

 

今から始めるのは、命と命のぶつかり合い

奪われた者と、奪った者の戦いでもあるのだ

 

「…母の仇は討つ」

「うふふ、さぁ、来なさい…"双星"」

 

引き金を引いた

 

 

「…」

「…どうかしたか?」

 

私は空を見た

雨が降り注ぐ、曇った天気模様

しかし、月から降り注ぐ月光は雲に遮られない

 

そもそも、月は雲に覆い隠されていない

 

「…なんでも無い」

「なんでも無い風じゃ無かったが」

 

横にいる人物はそういった

片足を曲げ、縁側に乗せている

 

古い仲じゃない、相手にとっては

私にとってはとても頼りにはなるのだが

 

「少し嫌な予感がした」

「uh-huh、博麗の勘ってやつかね?」

 

彼はそう言いながら煙草を吸い始めた

妖力の火によって煙草を着火し、一服し始める

 

…ここは禁煙じゃないか?

神社って神聖だし…

 

「あ、無礼講な」

「それ私が言うんだよ」

 

ふーっと煙を吐いた後に彼は言った

普通それは私が言うべき言葉だ…

私はお茶を啜りながら話を続ける

 

「ただ嫌な予感がしただけだ」

「さいで、嫌なことでなければいいがな」

 

煙草を指で挟み、彼は笑う

彼の言うとおり嫌なことでなければいいのだが

…大体こういう場合は私の勘は当たる

昔からずっとこうだった…生まれた時から…

 

「…シケた顔すんなよ、煙草が不味くなる」

「そりゃ悪かったな、勝手に顔がなってた」

「真に受けるなよ…まぁいいさ」

 

彼は煙草を何処かに仕舞うと足を崩す

どうやらもう立ち去るようだ、今日は早い

 

「じゃ、俺はそろそろ帰るぜ」

「あぁ…私は寝るよ」

 

彼は手を振りながら神社の鳥居の方に歩いていく

歩いていく彼の"紅白"の衣装が蒼い炎に包まれていく

前までスキマ野郎のようにワープホールみたいなのを使ってたのに…

見た目の問題か?前のも前で良かったが

 

「また会おう、━━、次は面白い話を頼むぜ」

「分かってるよ…斬鬼」

 

彼は、完全に炎に包まれた

 

 

2発で仕留められるとは思わなかった

少しくらいかすればいいのに、かすらない

持っているマガジンを加味して考えるとそれ程撃てない

 

このアンツィオは5発装填式だ

弾薬は専用の物、マガジンも叱りだ

 

「さぁ、舞えよ戦え戦士達」

 

紫がそう言うと、大量に空間が開いた

恐ろしい、というより本能的な恐怖が上がってくる

その空間からのぞく大量の目は、全て俺を見ている

ギョロギョロと、気持ち悪く動く

 

俺だってただの人間だ

 

恐怖は感じる、表に出さないだけで

 

「最初から潰す気、か」

 

俺がそう言った瞬間、絨毯爆撃が始まった

大量の弾幕が俺一人に対して放たれる

まだ俺に到達していないのに、もう消し飛ばされた気分だ

 

しかし、まぁ

 

「やれるだけはやるか」

 

弾幕に走り込む

後ろに逃げようとも背中から撃ち抜かれるだけ

そもそも、奴が逃走という手段を許してくれる訳が無い

何かしらを既に仕込んでいるだろう

 

大量の弾幕の中を駆ける

どうもこの雨霰の中に抜け道が存在しているようだ

奴もまだ本気じゃ無いのだろう

 

この距離でも当てられるが、どうせ避けられる

奴にとって必中は必中では無い

 

「まだ遊戯の段階か」

 

明らかに銃火器じゃ不利だ

奴には弾丸が当たる気がしない

俺の装備類に刃物はあるが、如何せん短い

有効打を与えるものが少ないのだ

 

…いや、待てよ

 

「関係ないか、そんなの」

 

不利とかどうでもいい

近づいてぶちかませば大体死ぬんだ、間違いない

奴がどの程度の生命力を有しているか分からない

 

ただ、大妖怪であろうと奴に致命傷は与えられる

 

マガジンは予備を含めて2個

既に装填されているものを含めれば14発だ

多くも少なくもない、ばら撒くならば少ないが…

マテバは予備を含めて5個

六発装填だから、割とばらまける

ただ、リボルバーだから大量にばら撒くことは出来ない…

 

「…ッーィイッ」

 

空を瞬駆けながら弾幕を避ける

隠れる場所はどこにも無い

 

あるのはもはや美しいと言える弾幕のみだ

 

「そろそろ、新しいルールを決めないといけない」

 

弾幕の奥からそんなふうな声が聞こえた

弾着の音にかき消されることなく、俺の耳に届く

 

アンツィオを2発放つ

弾幕が貫通、相殺されて一直線に消えていく

弾幕一つ一つの耐久力はアンツィオより低いようだ

 

"詰み"であっても、何とか出来るはずだ

 

「今までのように血を血で洗う戦闘では無い

 美しく、雅な戦闘を、遊びを︎︎」

 

奴の声が耳に入る

 

何をクソのようなことを言っているのか

何故、遊びにする必要があるのか

 

妖怪と人間が相入れることは無い

 

未来永劫、それは変わらない

 

「遊び?戦いを遊びっていうのか、お前は」

「戦い続けてもそのまま廃れていくだけ

 貴方でも、それは分かっていることでしょう︎︎」

 

彼女は弾幕の中、そういった

俺は放たれる弾幕を避けながら確実に近づいていく

 

「そもそもこれは遊びってか?」

「えぇ、これはその試験の様なものよ」

「…試験会場はここじゃねぇぞ」

 

一際大きく空間が開いたかと思えば

そこからとても大きな鉄の箱のようなものが現れる

 

確か、電車だったか?

 

それが俺に突っ込んできた

もしこれが遊戯ならば、どれだけ妖怪のお遊びなのか

というか、遊びならば人間もするということか?

 

人間をおもちゃにして?

 

「狂ってる」

「狂ってる?何を今更」

 

ふふふ、と笑い声が響く

廃電車が何両も走ってくる

畜生、日本中の廃電を使っているのか?

 

一両一両に弾は使えない…避けるしかない

 

「妖怪なんて狂い者の集まりでしょうに

 そこに少し、もっと狂った者が現れる︎︎」

「お前様な人間と共存を望む奴が、か?」

 

廃電車に紛れて標識が飛んでくる

俺は片手で「止まれ」とある標識を掴み取る

そのまま、投げ返してやるが当たる気はしなかった

 

「えぇ、えぇ、私のような者が、ね?

 それは貴方も変わらないと思うけど︎︎」

「俺とお前は違う、決定的にな」

 

俺はお前と違う━━━━━━

それは残酷な程決定的に違うのだ

 

投げられた標識が当たることは無かった

 

 

「俺はお前程頭が良くないし、体が頑丈でない」

 

 

優雅に空を舞い、1マガジン分のアンツィオを放つ

簡単に奴の弾幕を粉砕しながら弾丸は突き抜けていく

 

ただ、空間に入られる訳でも無く簡単に避けられる

 

奴が放つ弾幕に比べればこっちは赤さんのようなものだ

避けられて当たり前な話だろう…

 

「変な術も扱いにくいし、能力も無い」

 

奴とかなり近付けた

弾幕の密度が凄まじいが、避けられないことは無い

霊力を使いながら、空を駆ける

 

俺の言葉に、奴は━━━━紫は言葉を繋げる

 

「そうね、その通りよ

 比べてみれば大量の違いがあるわね︎︎」

「その中でも決定的な違いはな…」

 

奴の寸前まで思い切り近づく

下から回り込むように高度を下げ、突き上げるように奴の目の前に行く

 

高濃度の弾幕を針に糸を通すかのように突き進んだ

 

周りから見れば、神業としか言えない所業

 

 

 

ようやく、意外そうな顔をした奴の顔を見れた

 

「お前らと違って、希望を持って生き抜くこと…

 

 ︎︎俺の場合は、お前をこの世から抹消し、完全に消す事だ!」

 

俺の希望は、いつでも同じ

例え妖怪であろうとも、何であろうとも…

 

血が出るならば殺せる、摂理だ

 

妖怪を殺せるという事実があるならば、俺は喜んで地獄に身を落とす

例えどこに行こうとも、例えどこへ堕ちようとも

 

奴の体にアンツィオを叩きつけ、ゼロ距離の射撃

丁度、最後のマガジンだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、俺も最後の時だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私はだから人間が好きなの

 たかが70、60年を必死に生き、名を残す貴方達が︎︎」

「━━━━━━━ぐ、いぎっぁあああっッ!?」

 

顔面が、激痛を上げた

特に右目の方から酷い痛みを感じる

 

俺は激痛に晒されて奴から離れた

 

離れたと、思っていた

 

「…ぁ。?」

 

気付けば、俺は落ちていた

奴のいた空中から、地面へと落とされていた

 

視界には、叩き割られたアンツィオが見えた

それと、十字に切られたと思わしきナイトビジョン

 

 

 

それよりも、視界は半分しか存在していなかった

 

片方は何も映さず真っ黒なままだった

 

 

「あぁ…!」

 

 

ある事実に気づく前に、俺は地面に叩きつけられた

深く、俺の精神も叩きつけられた事だ

 

辺りに土煙が立ち込める

 

俺は、その中でゆっくりと目を閉じた

 

 

眠るように

この現実から逃げるように

永遠にこの夢から覚めぬように

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だからこそ、貴方達が…あなたが好きなの

 奪いたい程に、永遠に愛を誓いたい程に

 

 だから、堕ちていきましょう?アナタ

 ︎︎︎︎︎︎全てはアナタの為、我が身はアナタの為…」

 

暖かい感触が体を包む

母親のような感覚があるが、体は拒否を起こしていた

俺をそうしていいのは、母親だけだ

 

 

触るな、俺の体に

 

汚すな、俺の体を

 

何も、何もするな━━━━━━━

 

 

 

 

 

何も、見えなくなった

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