「最近はめっきり妖怪殺しのを効かなくなったな」
「確かに、最近は妖怪が虐殺されたことを聞かない」
博麗神社の縁側にて、2人の人物が茶をすすりながらそんなことを言っていた
上白沢慧音と先代巫女である
2人は妖怪殺しのことについて話していた
「それよりも妖怪と争っている組織の方が話題で上がっているよ」
「あぁ…共存反対勢力の事ね」
最近天狗とバチバチに殺り合っている連中だ
遠目から戦闘を見たことがあるが、割と善戦していた、結果はお察しだが
装備も割と充実している、伊達に反対派を名乗っていない
「人里からも賛成するヤツらがいるから、割と困っているんだ」
「と言っても、私は動けないぞ」
「分かっているよ…相手に外来人が居ようと、始めたのは人里の連中だ」
そう、あれほど異様な組織であってもすぐには潰せない
相手に外来人がいるからと言っても無理なことには変わりない
始めたのが人里の連中だからというのも関係ない
…そもそも、反対派が現れるのは"恐怖"があるからなのだ
妖怪への恐怖、妖怪はそれで成り立っている
ある意味妖怪にとっては追い風なのだが…
人間が妖怪を滅ぼすなら、そもそも関わらなければいい
関わらなければ、妖怪の恐怖など知りえないのだ
「…苦労してるな、アンタ」
「君もだろう?」
ふたつのため息が、同時に溢れた
話題を変えるようにぽつりと巫女が言った
「…最近、養子を取った…ていうか貰った」
「…君がかい!?」
慧音は明らかに驚いていた
この博麗巫女がいつになったら跡継ぎ作るのかと思っていたが…
多分子育ては無理だろうと思っていたから意外だった
「そこまで驚かなくてもいいじゃないか?」
「君と子供というのがどうも思い浮かばなくてな…」
「…そうか」
巫女は、急に押し黙った
何か聞かれたくないことでもあるかのように
慧音は分かっていた、これが彼女の癖である
ことを
「嫌なことでもあったのかい?」
「…ぇ?」
「子供に関して、嫌なことでもあったのかい?」
「………、…」
本当に、気分だった
…彼の姿が脳裏に浮かんでしまったから
「…実は………息子が居たんだ」
「…え?」
慧音はありえないようなものを見たような顔をした
簡単に言えば、人を見るにはあまりに失礼と言える顔だろう
ゴホンと軽く咳をして意識を戻す
「紫に連れてこられる前に息子がいた…生きているか分からないけど」
「君はどこから来たんだっけ?」
「ここから少し離れた場所…2人で暮らしてた」
ふと、懐かしい感情が芽生えた
こう人に話してみると少しは楽になるものである
「…今生きているとしたら?」
「…15、か16?だろう、霊夢と同じくらいだ」
「霊夢っていうのか?養子の名前は」
「そうだ、名前は紫が勝手に決めたがな、育てていたのもアイツだし」
言ってしまえば、紫はほぼ教育係だろう
本格的な技術は私が伝え、次の博麗巫女となる
そして、私はお払い箱、という訳だ
…そろそろ私も御役御免か
そんな感傷にひたろうとしていると、慧音が突然別の話題を話した
「…そういえば、霧の湖にある屋敷、知ってるよな?」
「あぁ、それがどうした?」
「最近、そこら辺がおかしいんだ
…なんていうか、紅い煙が溢れているというか…」
〇
暗闇
深い暗闇の中に俺はいた
今日は新月だ、僅かに見える蝋燭の灯り以外に何も見えない
「…」
体が重い
ここ何日は楽に動けていないことだろう
そろそろ動かしたい
そう思いながら体を捩る
「…?」
その時、小さな違和感がした
縄で柱に括り付けられた右腕が、いつもより動くのだ
(…まさか)
体の細胞が活性化し、力が湧いてくる
抱いていた僅かな希望が大きな希望と化す
右腕を見てみると、思った通り、縄が緩んでいた
かなり緩い、簡単に解けそうだ
(…アイツ、締めるのを忘れていたな?)
忙しかったのかなんだったのかは知らない
ただ、このチャンスを無下にする必要は無い
俺はくるりと体を回し、縄を解く体制に入る
今まできつく締められていて出来なかったこの動きも簡単だ
あまりに簡単すぎて、少し拍子抜けである
床に縄が転がる、解くことが出来た
手首の感覚を確認しながら柱からゆっくり離れる
(さて…)
辺りをよく見回す
暗がりには慣れている、長すぎて目が慣れた
だからこそ、気になるものが見えた
(あれは)
あるものが見えたので、そちらにゆっくりと向かう
近づくと、それの形がよく見えた
(持っていた装備類か)
紫に負けるまでに持っていた装備類が無造作に置かれていた
何一つ変わっていない、手を付けられていないようだ
まさに剥いで置いておいた、という感じだ
(…壊れているままか)
破壊されたナイトビジョンが目に入る
この様子だとアンツィオも死んでいるはずだ
俺の予想を裏切らず、真っ二つに叩き割られたアンツィオが目に入る
(…まぁ、邪魔だし)
割と気に入っていたので傷心しながらマテバを拾い上げ…アレ?
(…これ、マテバじゃない?)
よく見てみると、フレームがシルバーに変わっている
グリップはブラックのラバー素材
そして明らかに延長されたバレル
刻印には、"M500"と無骨に彫ってある
(弾薬は…)
装備類にはもちろんないだろう
こんなもの持ってきた覚えは無いのだ
だから、シリンダーに入っているものしかないだろう
ガチャりとシリンダーを開く
(…五発、どれも新品だ)
カスタムが施された、新品
(…)
俺はそれをホルスターに収めた
これ以上ここにいる必要は無い
少し、ジャケットの首元を緩めた
新鮮な空気が俺の濡れた胸を冷やした
「…出よう」
出口に鍵は掛かっていなかった
静かに扉を開き、俺は暗闇に向かって飛び出した
誰も、何も、縛るものは無かった
ただ、ずっと感じる、舐めつけるような視線を除いて
〇
「…」
ある男が、テープを聞いていた
カセットウォークマンに入れられたテープを聞いていたのだ
時折、納得したような声を漏らしながら聞いていた
安楽椅子がギィギィ揺れる
男は無言で、ある武器を手に取った
大きな、大砲のようなスナイパーライフルだ
地雷処理などに使われる、強大なスナイパーライフル
かのバレットM82が通常サイズに見える程のビッグサイズ
人呼んで、アンツィオ20mm対物ライフル
ボルトを引き、薬室に直接実包を詰める
ガチャりとボルトを元に戻す
スコープに『Vipera-PILOT』と刻まれている
男は静かに、テープを聞いていた
安楽椅子がギィギィ揺れる
やがて、男は立ち上がりライフルを背負い外に出て行った
テープは回ったままだった
そのまま、終わりまで再生されるかと思われたテープは磁器のような白い手に止められる
白い手袋をしたその腕は、ウォークマンを掴む
そのまま目玉だらけの恐ろしい空間へと消えていった
部屋の中には、サプレッサーの付けられたデザートイーグル
それと、揺れる安楽椅子があるのみだった
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