スキマに愛された大尉という人間について   作:回忌

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月明かりの下

月光が辺りを照らしている

どれほど歩いてきたのだろうか

体感的に数時間は歩いた記憶がある

 

「…はぁ」

 

辿り着いた先は、鈴蘭が咲き誇る丘

何故か分からないが鈴蘭が咲き誇っている

今の季節は…なんだったっけ?忘れてしまった

それほど長い間幽閉されていたのだろう

 

…体感2年くらいだ

外の世界だと成人出来るほどの年齢にはなっている

 

これだと、部隊から戦死扱いされてそうだ

 

新顔にこんにちわしたところで射殺されそうだ

八重とかが近くに入ればなんとかなるが…

 

「…はぁ」

 

ため息がまた漏れた

いつの間にか、小高い丘の上にある枯れた木下にまで来ていた

 

棒のようになった足を休める為、木に背中を預け、座り込む

新月だと言うのに、何故か月光が辺りを照らしていた

 

「…どういうことなんだ?」

 

不思議な光景である

ただ、幻想郷ならではの非常識な光景と言ったところか

生まれたばかりだったか覚えていないが、何でも様々な花々が咲いた時期があるらしい

100年周期だか、50年周期だか知らんがそれくらいに起こる現象だそうだ

 

 

「…まぁ、いいか…疲れた」

「ンッンー、アンタに休む時間はないわよん」

 

 

休もうとした時だった

どこからともなく女の声でそんなのが聞こえた

八雲ではない、別のだ、射命丸でも、椛でも無い

 

この木の後ろ側だ

だらけきっていた体を奮い立たせ、M500を抜く

慎重に辺りを探った後、木の裏に躍り出る

 

誰だ?まぁ、考えなくてもいいだろう

こんな所にか弱い女性が来るとは考えにくい

 

なら、化け物しかいないだろう、人の形をした化け物しか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…という考えが頭をよぎったのを、後々意味ないと思った

その人影は、何故か満月となった月を背にして浮かんでいた

 

その姿が視界に入る

 

俺が先ず発したのは―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…えぇ....(困惑)」

 

 

 

その、『welcomeHell♡』とかいうクソダサTシャツへの困惑だった

 

 

 

「ただいま」

「おかえり」

 

帰宅した私を迎えてくれるのは、1人の少女

帰るべき場所に明かりがついていることにこんな安心感があったか?

久しぶりに感じる気持ちを抑えながら、居間に上がる

 

今には、霊夢がだらけた感じに横たわっていた

 

「寝てばっかじゃダメだぞ」

「やることないもーん」

「じゃ、宿題追加だな」

「ちょっと霊力の操作してくる」

 

私が笑顔で地獄を見せようとすると、彼女はそそくさと外に出ていった

少し、その様子が面白くて笑顔が漏れる

 

「ふふ…」

 

そこで、私は気づいたことがあった

いつぶりに心から笑うことが出来たのだろう

お世辞で慧音と笑い会うことはあった

 

しかし、そこに本当の笑顔は無かった

 

「…双星」

 

息子の顔が、脳裏に浮かぶ

彼がまだ生きているとすれば、私は何を言えばいい

恐らく、彼は妖怪を恨みながら死んだのだろう

生きているならば、十中八九あの虐殺は息子のものだ

 

そこまで、妖怪を恨んだ息子が私を見たらどう思うだろう

 

親であっても、裏切り者として殺されるのではないだろうか

誘拐されて人と妖怪の調律者をやってましたとか、私なら殴る

 

「…はは」

 

いや、彼なら許してくれる

こんな愚かな私を、許してくれるだろう

 

あの子は、優しい

 

妖怪と共存なんて、とか言ってるかもしれない

しかし、生きているならばいつしか気付くだろう

 

争いだけ無駄だと、争いは無意味と

 

気づいて、欲しい

 

私はそう、切に思った

 

 

母さん、今僕は頭おかしい奴と対面しています

妖怪の味方をしていても良いので助けてください

 

ていうかなんなんだ、その頭おかしいTシャツ

圧倒的にセンスが無さすぎるだろう

まだ迷彩の方がセンスある(確信)

 

「ちょっと?神に対してその反応はどうなのよん?

 地獄に落とすよん?えぇ?」

「…神かよ」

 

え?マ?神様の服装これマ?センス壊滅しすぎだろ…

幻想郷終わってんなぁ、ヒッドイ都よここも

 

こんなんが神とか

 

 

…ていうか何の神サマ?

 

「良くぞ聞いてくれた!私はこの幻想郷の地獄の神だわよん!」

「…」

 

さいで

なんだろう、不老不死になってでも地獄に行きたくない

え?こんなのが閻魔みたいなことしてんの?

 

無理だろ

 

最初にあった緊張感は消え失せ、呆れだけが浮かんできた

 

「アレ?反応無しぃ…?…あぁ!驚きすぎて声がでないのよねん?」

「…そう、ですね、ハイ」

 

なんか思ったこと言うとぷち殺されそうだから止めておこう

 

…この神、巧みに隠しているが凄まじい力を持っている

 

伊達に地獄の神を名乗っていない神力だ

八雲よりやばいかもしれない

あちらは姑息な手段大量だが、こちらは純粋な力だろうか

 

そもそもなんで俺はこんな奴と話しているんだろう

 

「…まぁ話を戻すわよん」

 (…話してたか?)

 

素朴な疑問が浮かんだがこれも沈めておくことにした

出る杭スプラッシュマウンテン、古事記にも書いてある

 

「ほぼ成りかけ…もとい"成っている"、貴方への提案よん」

「さいで」

 

成りかけ、成りかけねぇ

毎回思うがどこまで崖っぷちなのか教えて欲しい

スキマヤローは教えてくれないしこいつも曖昧だし

どいつもこいつも分かってるなら言えばいいのに

 

…ただ、もはや落ちているところまで言っているかもしれないが

 

 

「貴方に究極の一択を選ばせてあげるわよーん」

「はぁ…―――ッ!!!」

 

 

凄い気軽な感じな空気が氷と化す

すぐさまグリップを握り直し、腰からナイフを片手で抜く

 

俺は、この神を過小評価していたと言わざるを得ない

 

あの態度が騙すものなのかフレンドリーに話す為なのかは分からない

ただ、神と名乗るだけはある力を俺に示してきた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やつが、増えた

 

3人に、頭に載せている球体がそれぞれ違う

 

1人は赤い惑星

1人は青い惑星

1人は灰の惑星

 

そのうちふたつは見た事のある

そもそも、灰の方に関しては今まさに"天"に浮かんでいる

 

 

そして、俺はこの神の正体をようやく理解したのだ

 

母から聞いたことがある

 

月に、恨みを持つ神がいるということを

フレンドリーに話したそうだが、まさに俺のような感じだったのだろう

 

 

名前を、確か

 

 

「…へカーティア・ラピスラズリ」

「おやん?母親はちゃんと伝えていたのねん」

「んな事いいから早く答え聞かせろやねん」

「えー、落ち着いてよーん、地球ちゃーん」

 

 

3人の、神が俺の前に降臨していた

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