スキマに愛された大尉という人間について   作:回忌

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地獄の門

「…」

 

呼吸が短くなる

体が危機を察知しているのを嫌でも察する

 

圧倒的な存在が、3人にも増えた

 

1人ならまぁ片目やれてたかなぁくらいだった

ただ、それが3人となれば話が大きく違ってくる

 

…蹂躙とかいう話じゃないだろうな

 

「んーん、そんなに緊張しなくて大丈夫よん」

「さぁ頭を垂れて平伏しろよん、はようはよう」

「落ち着いてほしーよのねん」

 

うるせぇ奴らだなぁ…

ひとりが喋ると連動しているのか他2人も喋る出す

これが本当にうるせぇ、死んでくれねぇかな

 

「んー、死んでも魂は地獄にあるし、厳密に言えば私も本物じゃないのよねん」

「そうだよん、だからさっさと平伏しろんこのアホが!」

「地球ちゃーん、ちょっと黙ってよーん」

 

…さいで

つまるところ地獄にある魂をボコボコにしないとなんの効果もない、という話である

と言っても、地獄には冷たい炎だの神曲の最下層だな…色々あるんだろう

 

地獄の神なら最奥にあるのは不思議な話では無い

 

…最も死なないと地獄になんて…そもそも死後の裁判すら無縁なのだ

 

「いいや限界だ!殺るね!」

 

なんか吹っ切れたのか、地球のへカーティアが叫んだ

そして、俺に指を指す

 

「くらえん!スーパーアルティメットハイパー無限サイキョーアポカリプスアメイジングシャイニングサバイブブラスターキングソウコウハイパークライマックスエンペラー…

 

 

 

 略して隕石」

 

…が、何も起こらない

長ったらしい詠唱だと思っていたが、何も起こらない

文末的に…隕石降ってたのか?コレ

 

逆に、地球へカーティアの右腕が目玉に覆われ肘から先が消え失せる

 

「…へー、貴方愛されてるわねぇ、妬ましいわコンチクショウ!」

「…話を戻すが、究極の選択とは?」

「あー、そうだったわよん」

 

すっかり忘れていたのか、月のへカーティアは2人をどこかにも戻した

多分鬱陶しいかったのもあるのだろう

…そらあんなの鬱陶しいに決まっている

ていうかあれだけ大袈裟に言っておきながら忘れてたのか…

 

「いやねん、最近月でやべー力が見つかったのよん

 それこそ月の都30個くらいが壊滅するくらいのヤベーやつが」

「はぁ(月の都ってどんなのだよ…)」

「だから」

「ん?」

「貴方に預けようと思って」

「なんで?」

 

途中から嫌な予感がしたが、まさかそんなこととは

素朴にというか、反射的な疑問の言葉が出てしまった

なんだよその超危険な力、ヤベーやん

月の都がどのくらいか知らないが、母に聞けば相当だと帰ってくるだろう

確か、行ったことあるとか言ってた筈だし

 

…母何者?

 

「いやねぇ、封印するのもいいんだけどねん

 それじゃあ面白くないでしょう?

 アイツら速攻封印しようとしてたし」

「対応として当たり前ですよ姐さん」

 

普通そうなんだわ

自国の都30回滅ぼせる力なんて即封印するでしょうよ

逆に封印しない理由が分からないんだが

 

「ちょっとした私怨もあるかもねん」

「…ソウデスカ」

 

ハイライトが消え失せたへカーティアの瞳を見て、色々察した

確かこいつも月に恨みがあったはずだった

母から聞く話によれば相当月人はゴミクズらしい

良くもそんな人間性で都やって行ける…

 

 

 

 

というか

 

「…それが究極の選択?力を受け取ることが?」

「んー、まぁ、そうよねん」

 

凄い笑顔で言い切ったなこの神サマ

それだけの事を究極の選択の選択といったのか?

何?「その力の代わりに貴様の大事なものを奪うぜガハハ」みたいな感じなの?

場合によっちゃ今すぐ自分の頭撃ち抜くぞ?

俺は天国に行って逃げるぜ!あばよ神サマーッ!

 

「あ、死んで逃げようとしても無駄よん

 貴方今天国側だけど、私が地獄に引き摺り落とすわ」

「えぇ....(困惑)」

 

凄い私情で他人を地獄に落とすやん

というか、俺は天国行きだったのか…

割と妖怪を殺してきたはずだが、どうなんだそれは

 

「妖怪殺しは人間にとっては必然よん

 恐怖に打ち勝つ、という方法でもあるしねん」

「さいで」

「というか貴方続けないと地獄行きよん(真顔)」

「続けるさ、どこまで」

 

時折神の片鱗を見せないで欲しい、心臓に悪い

 

「まぁ、いいわ」

 

彼女は笑顔でそう言うと、手のひらをかざす

すると、青緑色の光が彼女の手から溢れた

 

「…月光?」

「そう、あらゆるものの中で1番神秘とされる月光

 それが凝縮されたもの

 

 …あとこの力は元々そちらのものだしねん」

「で、それをどう―――」

 

俺がいい切る前に、彼女が拳を握りこみ、俺に振り払った

こちらが構えようとする前に、月光が拡散する

 

「んじゃ、あとは頑張ってよーん」

「あぁ?どういう―――」

 

俺は、それを言う前にばたりと倒れてしまった

 

 

「大尉でしたか?彼は戦死扱いでしょうか」

「んむぅ、そこは少し悩んでいるんだよ八重君」

「早くしてくれませんかね」

 

急かす声と、のったりとした声

ただのったりとした方には人を従える圧力がある

心做しか急かす声には少し敬意が感じられる

 

「潜入者君は?」

「無縁塚にて死体を発見、除隊処分しているかと」

「そうか…死因は?」

 

のったりとした声に少し悲しみが入る

しかし、次の瞬間には人を従える声と変わっていた

はっと急かした声は返し

 

「左胸を恐らく腕で貫通され失血死…と思われます」

「…やれるのは妖怪だけだ」

「…こいつを見てください、彼の服に付着していました」

 

急かした声が何かを机に置いた音がする

それに対してのったりとした声の方は驚いた様子だった

 

「…まさか鉢合わせたのか?」

「恐らくは、任務が完了したのか確認する際にかと…」

「…確かに、最後の無線には女の声が聞こえた」

「…司令官、そろそろでは?」

 

急かす声はさらにまくし立てた

それに対して司令官と呼ばれた男は拒否をしたようだった

焦ったような声が響く

 

「…いつ?」

「大尉が戻ってから、それとも数ヶ月後かな」

「…それ割と面倒なことになりませんか?」

 

急かす声は呆れの声へと変わって行った

なんかもう、ねぇ?という感じの声である

見放すような声では無い、ただ呆れている様子だ

 

おや、とのったりした声は言った

 

「何か問題でも?」

「えぇ、少し大問題が」

 

少しで済む大問題では無いのですがと矛盾を平然と出しながら言う

そして、ピラピラと何枚かの写真が机に置かれる音がする

 

「…これはあの屋敷かい?」

「えぇ、近々襲撃が始まるでしょうね」

「ふむ」

 

恐らく、写真には興味をそそるものがあったのだろう

少し感心したような声がのったりした声の方から漏れる

 

 

そして

 

 

「…良いタイミングだ」

「…はい?」

 

彼は嬉しそうにそう呟いた

呆れた声はさらに呆れを加速させる

何言っているか分からないからだ

 

「全隊に装備を潤滑に回せ

 AC-130やRSI空挺兵の準備もするんだ」

「…まさか彼らのタイミングに合わせると…?」

「そうだ」

 

呆れの声にのったりとした声は嬉しそうに返す

はぁーっと呆れた声はため息をついた

 

「RSIじゃなくてヴァルキリー部隊で良くないですかソレ」

「…最初はRSIだ、その後にヴァルキリーで行く」

 

司令官は覚悟を決めたようだった

呆れた声はソウデスカと返しながら、ため息を吐く

どこか、楽しそうな言葉を残す

 

「言っておきますが吸血鬼に味方識別マークはありません

 AC-130でバラバラにしても知りませんよ」

「そもそも奴らは妖怪だろう?識別する必要が無いじゃないか」

「…確かに」

 

ハハハハと笑い声が響いた

 

後に、妖怪の山大襲撃事件として語られる戦争の前日談だった

 

後にも先にも、天狗と人間が真正面から総力戦をしたのは、これだけだった

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