「50口径を見きって切るなんてアンタ人間じゃねぇだろ?」
「ワンタップで五発飛ばすアホには言われたくない」
オレンジ色の光と銀の閃光が交差する
片方は銃、片方は大剣というなんとも結果が見える武器である
しかし、すぐに結果は出ない
2人の技術は卓越したものであり、拮抗したものでもあった
「良いねぇ、こんなに骨のあるやつは初めてだ」
「今まで雑魚と戦ってきたんじゃないのか?」
言うねぇ、と彼女は笑う
これ程公平な戦闘も久しぶりなものだ
相手は飛行もしないし、インチキなソレも無い
ただ実力が潰しに来ている
んむ、好ましい
「間違っては無いかもねぇ」
「さいで」
基本的に遠くから狙撃していたのだろうか?
それにしてはこの戦闘が長引きすぎな気がするが
切りつけようとするとバレットでそれを受け止める
少しの火花が散って刃は傷を付けることなく止まる
「…普通の奴じゃ無さそうだ」
「んー、市販とは違うよ、あたしにしか作られてない特別製だ」
カスタムも違う、恐らく弾も普通の物じゃない
というか明らかに50口径の重さでは無い
どうも威力が完璧に違うらしい
弾丸を切り裂きながらそんなことを思った
「そらよかったな」
後ろに下がり、M500をクイックドロウ
即座に三連射を叩き込む
それはやつの腹部に命中した
「っ、いったいなぁ!?」
「ただの銃創ですんでいるアンタは何もんだ…?」
レッドフードは痛そうな声を上げながらこちらをバレットでぶん殴ろうとしてくる
銃って殴打するために作られたものやないんやで
「armen armen Gospell armen」
「…くっぅ!?」
神の言葉のままになんていう馬鹿らしい言葉を吐きながら大剣を突き上げる
近接戦闘の経験が、差を産んだ
そもそも、彼女の分野が違うとしか言いようがない
だから、彼女は大剣に貫かれることになったのだ
〇
「…やってくれるじゃねーか」
「そうか?その状態でよく喋れる」
目が紅くなっているレッドフードを見ながら俺はそういった
彼女は右腕と左足首が無い状態だった
腹には俺の刺した大剣の痕がある
気づけば辺りは元の幻想郷の風景に変わっていた
空には満月が浮かんでいる
月光が辺りを照らす
「後はトドメを刺すだけだよ、頼んだ」
「…自殺したら、力は何処に行くんだ?」
シリンダー内の弾薬を確認する
戦闘で使った弾は合計三発のみ
使える弾は2つ、使う弾は一つ
カチリとシリンダーを収め、彼女の頭に照準を定めた
「…知らないね、適当な奴にわたるんじゃないか?
特にこの幻想郷のどこか、神秘は神秘に寄り添うからね」
「…ありがとう」
そしてさようなら
ガチりと引き金を引いた
どこからか、ここです、と聞こえた気がした
〇
「…」
月光が散っていく
彼女の体がどんどん月光と化し、散らばる
行き場所のなさそうに見えた光はやがて俺に収束していく
「ん」
軽く擽ぐるような感覚が体を這いずり回る
それと同時に包帯が宙を舞う
それは四肢の関節の部分に巻きついた
両腕の肘、両脚の膝、クルクルと巻き付きヒラヒラと先端が揺れる
そして、俺の右目に包帯が巻きついた
少しした後に擽ぐるような感覚は収まった
首をグリグリ回す、手首をコリコリと鳴らす
あーっと背伸びをした
体が少し軽くなった気がした
月光を手に入れる前と今では全く違う
感覚も、何もかも違うのだ
「遂に、こちらの世界に来たわね」
後ろからそんな声がした
俺は大剣をぐるりと回し、片手で保持する
白狼が使っていたものと違い、細身の大剣だ
クレイモアと呼ばれる大剣が1番近いだろうか
もう少し刀身を太くして、持ち手を伸ばし、鍔やらに装飾を施せばそれだろう
「貴方も私も、同じようなもの
今までひとりぼっちだったから…とても嬉しいわ」
くすりとその声の主が笑う
俺はなんの感情も持たずに声を出す
「お前とお仲間なのは勘弁願いたいな、死んでもゴメンだ」
「ふふ、そう誤魔化さなくてもいいじゃない?」
「なんだ?俺がお前と同じようになりたかったと?」
俺は切っ先を声の主に向ける
既に月は沈み、代わりに太陽が顔をのぞかせていた
日の出はもうすぐ、そして、明るくなるのももうすぐだ
「心では、ね?」
「俺はそんなの望まない」
「あらそう?あの時は願っていたじゃない
『みーんななかよくなれますように』って」
月光が迸る
青緑の閃光が散り、辺りの木々を薙ぎ倒す
無論、背後にあった巨大な木も薙ぎ倒して行った
ただの人間や妖怪なら死んでいる
「そんなにカッカしないの、ね?アナタ」
「すぐに離れないと玉ねぎみたいにスライスするぞ」
耳元に聞こえる声にそう返す
俺は背中に大剣を収めた
「アナタの"月光狼"と化した姿も好きよ
ただの混ざりものでは無いもの、その力は」
「…お前が作った力か…」
何となく、想像はしていた
何だか、馴染んでしまうのだ、この右目と
こうして、包帯で視力を封じているのに
無数の境界を写す右目と、馴染む
「ふふふ、聡明ね…そこも好き…」
「お前全部好きってそのうち言いそうだな」
ため息をつきながら、俺は帰ることにした
帰る先は勿論、新たな家となった、あの場所に
後ろから、声が響く
「ええ、ええ、好きですもの、アナタの全てが
骨も灰も、血も涙も、全て…
アナタも好きな癖に、そのプライドが唯一残念かも
…私はそれすら大好きだけどね」
やがて、声は聞こえなくなった
あんな変人は置いておこう
俺は朝日を眺めながら歩みを続けた
最近の出来事でろくなことは無い
いい事は片手で数えられるくらいだ
その程度しか存在しないのだ
「お前のことを好きになりはしない…しないさ
だが、もし母さんが生きているんだったら…見逃してもいいかもな」
俺は少し考えが変わった気がした
我ながら、単純な脳だと思った
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