スキマに愛された大尉という人間について   作:回忌

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帰還

「大尉?生きていたのか」

「そうだとも、"メディック"」

 

八重が驚いた顔でこちらを見る

少し失礼だが、窓から入らせてもらった

 

「本当に君か?双星君なのか?」

 

余程生きているのが信じられないのか、俺の体を触って確かめてくる

やがて完璧に理解したのか、ふぅ、とため息をついた

 

「本当に君か…良かったよ」

「…そんなに心配だったのか?」

 

彼は俺の質問に当たり前のように答える

 

「勿論だとも!何せ"潜入者"は殺されたからね

 君も死んでいたと考えるのが妥当だろう?

 それにもう2年以上経っているんだ」

「…"潜入者"が死んだ、か」

 

声を荒らげる八重を置いておいて、俺は彼のことを思い出す

思い出すというほど彼との思い出は無い

ただ、仕事仲間としての意識しか無かった

 

「これでEEFのα隊は君を含めて11人…あ、でも今日から1人増えるかな」

「…増える?勧誘でも出来たのか?」

 

そもそもα隊は12人しかいなかったのか…

…そういえば聞き覚えのあるβ隊は何人いるのだろうか

 

ていうか増える?何?勧誘成功?

 

「あー…君はクローン技術について知ってるかい?」

「何となく」

 

クローン技術、生き物をそっくり復元…というか作り出す技術

外の世界じゃ羊のクローン、「ドリー」とかいう羊が居るらしい

色んなものに使えるらしく、恐らく人間にも出来るだろう…

 

…ん?

 

「ここでその話が出てくるということは…」

「そう、クローン人間第1号がEEFα隊に加わった

 "マッドネス"も嬉しそうだったよ」

「…"マッドネス"、か…狂気の博士と言ったところか」

 

"狂気"なんて物騒な物がコードネームなんて、ろくな奴では無い

俺と関わることは無いに等しいだろうな

 

そういえば、気になることがあった

答え次第ではかなりアレな話だが

 

「そのクローン人間、誰が素体なんだ?」

「あー…簡単に言えば子供ってか少女のものだ」

「…慰み者に使う気じゃあるまいな?」

 

え?何少女から遺伝子摘出したのか?

そんなの非人道的なこと許さへんで?

殺すぞ?おいコラどうなんやコラ

 

「まさか、そんなのには使えないよ

 生殖機能はカット出来なかったから出来るけども…」

「そこまで聞きたくなかった」

 

すごい生々しい話をするじゃないか

クローン技術はそこまで行けるのか…

幻想郷だからというのもあるが、外の世界なら割と奇跡だぞ

…多方面で活用されそうだ

 

「元の人物は…次代の博麗巫女のものだ」

「次代?今の巫女はどうなんだ?」

「"マッドネス"曰く、次代の方が強くなるらしい」

「だから次代…そういえば、今の巫女さんは誰なんだ?」

 

その質問に、八重は頭を悩ませたようだった

そんなに悩ませる質問だったろうか

 

「…情報が無さすぎるんだ

 名前も、生年月日も不明、ただ分かっているのは連れてこられたことしか」

「…いつ?」

 

俺は、何故か鼓動が早くなっていた

まさか、まさかそんなはずは無いだろう

 

連れてこられる、つまり誘拐

 

俺はただ1人、誘拐される姿を見た

 

自意識過剰かもしれない

ただ、可能性があるだけだし、別人かもしれない

 

「君が入隊する前なのは確実だ

 その頃は先代がやってたそうだ」

「…そうか」

 

何故かあったことも無い博麗巫女の姿が思い浮かぶ

もし、俺の仮説が大当たりだとしたら…

 

「そういえば、クローン…もといコードネーム"ミコ"に会いに行くかい?」

「あぁ、仲間は確認しておかないとな」

 

この想像はよそう

もし当たっていたなら、今までの行動を全否定することになる

なんの意味もない、無意味なことになるだけだ

 

 

「"シャドウ"?生きていたのか…?」

「噂じゃ死んだって話だろ?噂は嘘ってことか…」

「EEFが精鋭揃いってのは嘘じゃないらしい」

 

廊下を歩いていると、そんな声がすれ違った後に聞こえる

地下基地には組織の精鋭揃いだが、信じられなさそうな声ばっかりだ

 

「…"シャドウ"、ねぇ?」

「影に潜み、影から狙撃する君にはピッタリだろう?

 ただ、装備が変わっているからコードネームも変わるかもしれないけど」

「それもそうだ…こいつら一体?」

 

明らか一般兵と違う兵装のヤツらを横目に通り過ぎる

軍服が黒一色に統一され、明らかに凄腕と分かる手癖

肩には槍を構えた女神のエンブレムがある

持っているものは夜間奇襲様に塗装されたであろうSCAR

他にも、ヘルメットを被らず軽装な格好をしたスナイパー

持っているのはDMRやM8000等だ

 

「…上のやつらと明らか兵装が――」

「近代的だろ?RSI空挺兵や歩兵達には第二次世界大戦のものを持たせているからな」

 

地上にいる奴らはMAB38やAP38などを装備している

トレンチガンやThompson、もはやタイムスリップだ

 

「"ベクター"が装備を取り入れているんだが

 近代なもの程負荷がかかるるしくてな」

「…だから戦車とかも第二次世界大戦のものなのか」

 

ティーガーを見た時は博物館に来たのかと思った

ここは戦争博物館のようなものだろうか

 

「それより、着いたぞ」

 

八重は扉の前に立つとそう言った

俺は大剣の位置を直しながら後に続く

彼は俺の顔を見ると、何か考えついたようだ

 

「今度眼帯を作ってあげよう、病人と思ってしまう」

「有難いね」

 

そう言いながら、2人して部屋の中に入り込んだのだった

 

 

「うーん」

 

味が薄い

アリスは率直に感じた

作ってみたスープが思いのほか薄すぎるのだ

 

「…少し調味料をケチったからかしら」

 

最近調味料を買いに行けてない、と言うより作れてなかった

まぁ今でなくてもいいかなんて思っていたらこれである

人里に行くのは認識の魔法が面倒なところである

 

「まぁ、いいかしら」

 

今日取りに行く必要は無い

味が薄いのは少しあれだが…

まぁ、無いよりかのマシである

 

アリスはそう思いながら、人形作りに勤しむことにした

実を言えばこの時道の途中で反対勢力の歩兵がうろちょろしていたので

割と彼女は運がいいほうだったのかもしれない

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