スキマに愛された大尉という人間について   作:回忌

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満ちる

「…」

「…?」

 

部屋の中に入ると、同年代…もしくは4歳くらい下程の少女がいた

服装は病人が来ている水色の服だ

カタンと首を傾けて俺を見ている

困惑、と言うより誰だろうかという純粋な目で見ている

 

「八重?コイツが?」

「そう…博麗霊夢のクローン…だな」

 

俺が彼女の前に椅子を置き、座る

ミコは傾けていた首を元に戻してこちらをジッと見た

八重は何も気にすることなく説明を続ける

 

「EEFα隊コードネーム"ミコ"…と名義では呼ばれている」

「そうか…名前は?」

「…なま…え?」

 

俺がそう聞くと、又しても首を傾げる

八重が呆れたように俺に言った

 

「名前なんて無い、被造物に名前なんてある訳ないだろう」

「…それもそうだったか…」

「なまえ…名前…名前ー?」

 

オウム返しのように言葉を続けると、"ミコ"は俺に顔を寄せてきた

目をキラキラとさせて、ワクワクとした目をしている

 

「…?これは…?」

「さぁ…クローンに感情をつけた覚えはないからな

 ただ、単語を繰り返しているだけじゃないか?」

「なーまーえー!」

 

構えーみたいな感じでミコは言ってくる

俺は少し考えた後、仕方ないと言った感じで与えることにした

 

「…じゃ、お前の名前は今日から"レイム"、だ」

「…レイム…?」

「双星…」

「皆まで言うなよ、八重

 どうせこいつをその名で呼ぶのは俺だけだ」

「いや、後で言語をローディングするからよ

 覚えているとは限らないんだよ」

「…いいさ、覚えて無くても」

「レイム…レイムレイム…うー!」

 

嬉しそうな"レイム"を横目に、俺は八重に向き合う

少しだけ、真剣な顔をしてやつの耳元で囁いた

 

「…EEFの隊員について知りたい」

「資料ならある、なんなら近いうちに紹介されるさ」

「情報程度は知っておきたい」

「…分かった」

 

俺の要求を彼は飲み、早足でどこかに行った

俺は"レイム"に向き直り、目線を合わせて言った

 

「またな、レイム」

「うー!そうせい、またー!」

 

屈託の無い笑顔して彼女は見送ってくれる

 

思考能力はどうも幼稚園児かそれくらいだ

どう見ても高い方では無いのが分かるだろう

 

…昔の俺も、こんなだったな

母さんにいつも擦り寄ってたっけ…

 

俺はその姿に少し、懐かしさを覚えながら外に出るのだった

 

 

「ねぇねぇ」

「ん?なんだい?」

「最近さ、"潜入者"?だっけ」

「あぁ、居たねそんなの」

 

妖怪の山、川の上流にて2人の妖怪が話していた

頭の皿は帽子で見えないが、れっきとした河童である2人

その2人はこそこそと噂話のように話していた

 

「なんか…消えたらしいよ」

「幽霊だったとか?怖いね」

「そうだよね、こう、煙のように消えたとか…」

「そうか―――」

 

片方の動きが突然止まった

ピタリと、空を見て全く動かない

不審に思った片方が声をかける

 

「どうしたの?にとり」

「いや…このプロペラ音は…!」

「ど、どこ行くのーっ!?」

 

にとりと呼ばれた河童は走り出した

それに負けじと追いかける片方の河童

 

もう少しで中流という所でにとりは止まった

ぜぇぜぇと後ろから片方の河童の声がする

 

「ど、どうしたのさ…」

「間違いない…AC-140…零戦…空挺戦闘機…」

 

ブツブツとにとりは独り言を言うかのように呟く

それに少し違和感を覚えながら声をかける

 

「ね、ねー…」

「くそっ、こうしてられないよ!」

「ひゃ!?どうしたの!?」

 

急ににとりは声を荒らげ、走り出す

あまりに体力の無い片方の河童はその音速について行くことは出来なかった

あまりに早く、すぐに見失う程のスピードにはついていけなかった

 

「ま、待ってー!にとりー!」

 

全力疾走でにとりを追いかける河童

しかし、すぐに息切れをしてへたりこんでしまう

 

「ま、負けるものかー!」

 

 

すぐに立ち上がり、ダッシュする

ぜぇぜぇと息を切らしながら、彼女はにとりを追うのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…尚、追いついた後に川を登ればよかったと気付くのはまた別のお話

 

 

「準備は整ったな?」

「はい、ヴラド公」

 

紅い館で男の声が響く

雄々しく、人を平服させ、統べる声だ

少しの震えの無い声で執事らしき男が返す

 

「娘達は別室に居るか?」

「えぇ、鍵も掛けてあります」

「上々」

 

ヴラド公は笑いながら言った

別に、娘たちが嫌いだから閉じ込めた訳では無い

 

逆だ、守る為だ

 

今、ヴラド公達に味方はこの館の者以外存在しない

出れば敵のみ、誰一人として信用出来る者はいない

もし負ければ、娘達が危険に侵される

それだけは何としても防がなければならない

 

「お前は山を攻めろ、私は人里を制す」

「仰せのままに」

 

他の吸血鬼仲間は居ない

吸血鬼はこのヴラド公と娘たちだけ

あとはゴブリン達やらのモンスターばっかりだ

 

だからこそ、ここで制さなければならない

 

ある意味、タイミングは良かった

 

ただ、それはこいつらではなかった

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