「なぁ、聞いたか誠」
「なんだってさ」
幻想郷のある地域にて兵士が話し合っていた
小規模なキャンプで10数人が身を寄せあっていた
夜なのもあり、震えながら目を瞑る者もいる
その中の、ドラム缶焚き火にあたっていた2人だった
「吸血鬼ってのが近いうちに侵攻してくるらしい」
「侵攻?恐ろしいな…化け物同士の戦いか」
一般兵から見て吸血鬼なんて恐ろしいで片付くものでは無い
軽く腕を振るうだけで死んでしまうだろう
それが侵攻するなら、山の天狗と争うのな確実
とても恐ろしいことなのだ
MAB38を背負いながら兵士は言う
「あぁ、でもな、お偉方はそこをチャンスだと思っているんだ」
「チャンス…?なんでなんだ?」
人間が化け物同士の戦いには入れない
片方の兵士の声にはそんな恐怖が混じっていた
しかし、片方は笑いながら言う
「吸血鬼が山を攻めている時に一緒に攻めるらしい
敵か味方かなんてスグ分かるだろ」
「ま、そらそうだ…にしても恐ろしいことを考えるな」
妖怪と人間の違いはその衣服にも現れる
外の世界がどんどんファッションが変わっているのに対して
妖怪のものはあまり変わっていない
時間の流れの感覚もあるが、その伝統性もあるだろう
「チャンスはそれ以外ないんだろ、攻撃チャンスは」
「そうか…家が恋しいよ」
Lee-Enfieldの薬室を確認しながら兵士はそう言った
それにああ、と兵士は反応した
「そういえば外の世界出身だったな」
「あぁ、懐かしい……?」
Lee-Enfieldを持った兵士は辺りを警戒し始める
それに不審感を持ったのか、MAB38を片方の兵士が構える
「…嵐の前の静けさってか?」
気付けばあたりは全くの無音になっていた
兵士達はいつの間にこんな静かになっていたのか?
俺たち以外は?
「まさか…」
「気付かれたぞ、やれ」
「敵だ、天狗だぞ!」
暗闇に慣れた目が白装束…天狗独特の衣装を見つける
それに対して発砲した時には彼の首は落ちていた
Lee-Enfieldが地面に落ちる
「伊藤誠ォーッ!貴様よくもぉ…ッ」
血を拭う天狗に照準を合わせる
「あぁっああああああっ!!!!」
叫びながら引き金を引く
高レートの弾丸がやつにとんで行く
しかし、どこまでも妖怪の能力は高いものである
「遅い」
「ァカポッ」
いつの間にか後ろに回り込まれていた天狗に突き刺される
口から何かが漏れたかと思えば、血を吐いて兵士は倒れた
「ここは終わりか」
「これ以上の兵士は居ない」
「つまらんな」
4人の天狗が口々に報告すると互いに頷き合い、飛ぶ
10体ほどの死体がキャンプ地には倒れていた
どこにも息をする者はいない
これが、本拠地から別の場所に配属された者の基本的な末路だった
余程遠くの場所か、太陽の畑近く以外、大抵この末路だった
〇
「太陽の畑の近くって安全らしいですよね」
「言っている暇があるなら狙撃の続きをしろよ
"大尉"さんも今資料を見ているところじゃないか」
「……ズズッ」
珈琲角砂糖3個の一分冷ましマウンテンブルーを飲みながら資料を読む
後ろから乾いた音が数発と話し声が聞こえる
司令官から狙撃隊の養成指示が出たので適当にやっている
というのもEEF隊員の資料を読もうとした時にズケズケとやってきて
「養成ヨロスク」って言ってどっか行ったからな
一応狙撃をしていたから教えられる…が、口径が違いすぎるだろう
…てか無いし、アンツィオ
こいつら使ってるの三八式とかモシン・ナガンとかだぞ?
口径の話じゃねぇ、時代が違う
「…はぁ」
「今確か独りだっけか?太陽畑とこのキャンプ」
「そそ、大抵が妖怪に殺されたとか
その1人も狙われたけど花好きだったから救われたとか…」
どこに行こうとも話をしてサボるやつはいるものである
俺は関係ない話なので注意はしない
聞かれたら答えるがこれ以上はしない
こいつらが後悔するのは死ぬ手前だから知ったことは無い
「…ズズズ」
「あ?俺が聞いた話じゃ勇敢だったからとかだったが」
「…真偽は本人ぞ知る、かな…ここにゃ携帯無いし
態々そんなの聞くために無線は使えん」
まぁ、どうでも良くなったので資料を読み漁る
EEF隊員は現在11名、すぐに一名追加されるだろうがそれ程話題にはならん
一名一名がかなりの戦闘力を持ち、反対勢力の中では最強とも言えるだろう…
"大尉"と"メディック"に関しては知っている
他の隊員達を知りたいのだ
「あ、霧の湖の方の館あるだろ?」
「あぁ、最近監視キャンプが作られた」
「あの趣味悪い館な、吸血鬼の住処だってよ」
「こえーな、それ…」
隊員については別々に専門がある
そこら辺はまた追々見ていくことにしよう
目次のような所に一応大体の説明がある
背丈を簡単に越える長刀を扱う剣士、"ロングソード"
表情を一切変えずに拷問を行うサディスト、"インタビュアー"
背丈程の双大剣を軽々しく扱う剣士、"ビッグソード"
戦闘機用バルカンを携帯用に改造したものを持つ機関銃手、"ミニミ"
あらゆる爆薬や爆発物に関してのプロフェッショナル、"ボムマン"
光学迷彩を身に付け暗殺を生業とする殺し屋、"プレデター"
変形するロボットに乗り込み戦う兵士、"バイパー"
銃器を他世界から運び込み、ありとあらゆる場所に運び込む運び屋、"ベクター"
ジェットパックを身に付け、ミサイルを乱射する戦士、"フライトマン"
目次に書いてあるのはあまり詳しくは無い
ただ、大体の能力は察することは出来る
だからこそEEFになれたのだろうが…
α隊はこいつらだけだろう
「…ズズズ」
なら、β隊はどのような感じなのだろうか
目次は同じような感じて書いてあるだろう
α隊は置いておいてこちらを調べてみるか…
「そろそろ昼飯の時間か?」
「今日はなんなんだ?またじゃがいもか?」
「いや、米は出るらしい」
「本当か!いやー、一週間ぶりに米が食えるぞ」
献立は気にしなくてもいいだろう
それ程腹が減っている訳でもない
…後単純に不味い、本当に不味い
紫のやつは嫌悪が入っている、本当に美味いのはアリスのやつくらいな気がする…
ササッと読んでしまおう
そして、部屋で読もう、ここじゃ後ろがうるさい
そう思いながら、β隊の資料を漁ろうとした時だった
ふと、違和感に気付いた
「…いつから、こんな俺に合わせた珈琲出るようになったんだか」
空間からなんの前触れも無く、珈琲が零れた
その匂いは、コップに入っているものと何一つ変わりないものだった
〇
「大尉に会いたい?」
「あぁ、俺は少し興味がある」
「…"ロングソード"、精神科なら受け付けるよ」
「病んで無い、軽く精神科行きにするな」
怒ったような声が響く
俺は何事かと思いそこに向かってみると、二人の男が向かい合っていた
――アーッ♂な展開ではない…多分
片方は背をゆうに越える長刀を持った男
片方はよく知っている八重の方だ…
…資料で見た、ロングソードだ
まさかこんな早く会えるとは思わなかった
「人と関わろうとしない君が大尉と…無理無理」
「…そうなのか?」
「聞きたいのはその幻肢痛か?それとも痛みか?どっちだい?」
なんだか、邪魔しちゃいけなさそうな雰囲気だ
あれは…あれだ、桃色のオーラってやつだな
適当に離れる理由を考え、俺はそっと離れることにした
「待て双星、その顔でどこに行く」
「いや、今日は赤飯と食当の奴らにな…」
「え?今アーッ♂なオーラ出てたのか俺たち?」
「…勘違いも甚だしいぞ、"大尉"」
ため息をついて"ロングソード"が言った
俺はHAHAHAと笑いながら向き直った
「悪いな、勘違いしそうな雰囲気はあった」
「全く…それを後々グチグチ言われる気持ちを考えてくれ」
「…"ロングソード"、田代桜だ」
彼はそう言うと、こちらに近づいてくる
口でのお遊びは嫌いなタイプか?そうか…(落胆)
「お前に話があって探してた」
「そうか、丁度俺はαの隊員を探していた」
「誰でも良かったか?」
「誰でも…とは言わんが話が通じる奴ならな」
"インタビュアー"とかヤバそう(小並感)
真顔で俺たちを拷問してきそうだ
その他もろもろは何か任務でいなさそうだし…
「付いてきてくれ」
彼はそういうとどこかに足を進めた
どうも無駄なことは省くことが多いらしい性格だ
口数も少ないし、ありゃ俺の得意分野じゃ無さそうだ
「言葉遊びが嫌いなタイプらしいな…」
「…君日に日に紫化してないか…」
「何か言ったか?」
「変わっているね君」
「殺すぞ」
〇
「話ってのは?こんな所にまできて」
俺達はいつの間にか基地周辺の地雷原を抜け、原っぱにいた
崖の上にある、幻想郷の景色がよく見える原っぱだ
監視のポイントにはもってこい、なんて思いながら俺はそう言った
「…家族を奪われたと聞いて」
「…だから何だと言う、お前に何がわかる」
背中の大剣に手をかける
まさかとは思うが、母を侮辱する為だけにここに来たのか?
それとも母を奪われたことを嗤うためにきたのか?
それならば、仲間と言えど容赦はしない
彼は手を少し出しながら言う
「違う、俺も奪われた」
「そうか、だからどうした」
柄を持つ力が強くなる
まさか、俺に同情するとでも言うのだろうか
愚かなり
もしそうだと言うなら…
彼は俺の動きに感情を察したのか、腰の刀を抜いた
通常サイズの刀だが、長刀がある故短く見える
「親を、家族を妖怪に奪われた」
「それは悲惨だったな、同情したいのか?お前は」
大剣を抜いた
もはやこれ以上話し合う余地も無いはずだ
これは殆ど警告のようなものであった
しかし、彼は言葉を続ける
「登山を家族一緒にしていたら、密林に入った
親が心配で、振り返ったらそこは血の海だった︎︎」
「…」
彼はその光景を思い出したのか、拳を握りこんだ
あまりに強く握りしめたのか、タパタパと血が地面に垂れる
俺は初めて、他人に同情した
「必死に走った、どこまでも、どこまでも
皮肉なことに家族の死体に夢中だったから逃げれたよ︎」
「お前はそれからここに来たと?」
彼は頷いた
「少し、妖怪狩りをしていたんだが…妖忌…もとい師匠みたいな奴とあって…
︎︎剣技を教えてもらったけど、冬の夜に遭難した」
「…成程、それがお前、ね…」
俺は大剣を立てかけるように地面に突き刺す
桜はというと、刀を逆手に持っていた
「俺が語ったからお前も語れとは言わん
ただ、誰かに言いたかっただけだ︎︎」
「境遇が似ているからか?」
「それもある…」
彼は長刀を抜いた
あまりに長すぎる故、鞘からどう出しているのか分からない
恐らく、鞘の背の部分がないのだろうか
「…へぇ、稽古か?」
「剣士と戦うことは少ない、皆銃に頼る」
「まぁ、戦闘の基本は格闘ともいうしな…」
接近戦は幻想郷における基本である
ルールは無い、殺られる前に殺れ
それがこの無法地帯の唯一の掟であるのだ
それこそが、問題でもあるのだが
桜は右手に長刀、左手に逆手に持った刀のスタイルになる
独特な構えだ、低く腰を落とし、左手の刀を地面と平行に
そして、長刀を上に構え地面と平行にした構えだ
「カッコつけか?」
「戯け、理由はある」
俺達はそう言いながら剣技を交わしたのだった
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