スキマに愛された大尉という人間について   作:回忌

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被造物

…目が覚めた

 

眼球だけで辺りを見てみると、何かの装置の中らしい

やがて、カバーのようなものが開き冷たい空気が触れる

 

一人の男が近づいているのが分かった

白衣、肩には何かの部隊章がある

その男は横まで来ると私の顔を見た

そして、口を開く

 

「…おはよう…調子は?痛いところは?」

「…ありません」

「それは良かった」

 

白衣の男がそう言うと、カルテを取り出した

そこに何かを記入している様子だった

彼は途中でふと何かに気付いたらしく、私に問いかけてくる

 

「何か覚えていることは?些細なことでもいい」

「…何も…」

「…そうか…残念だな…」

「…あ、一つ…?2つだけ?」

「何かな」

 

その男がため息をつこうとした時、私はあることを思い出した

ただ、怖かったからでは無い…本当に思い出したからだ

 

 

 

…本当に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…大尉…と、双星…その人物の顔…」

「…他には?何か無いか?」

 

彼は興味を引いたのか、私に問いかけてきた

聞いた感じは優しい医師というイメージだ

ただ、狂気を孕んだ…ただの優しい医師では無い、腹に何か抱えている

 

「…レイム。私は…レイム…あの人がつけてくれた」

「ありがとう、丁度名前に困っていたんだ」

 

彼はにこやかにそう言うと、ペンで何かを書き消した

やっぱり、私に名前なんてなかったんだろう

どうせ役職名で呼ばれるのが運命だったんだ

 

…あの人は違う、大尉は…

 

「…レイム、これを着たまえ」

「―――巫女服?」

 

彼が差し出してきたのは青い巫女服

確か、私の元の人物が同じようなのを着ていたような…

 

「全裸はダメだろう?服はこれしか無かった」

「…ありがとうございます」

 

私は着ることにした

どうせ他に選択肢は無いのだ…全裸で出るのも倫理的にダメだろうし

 

服をササッと着る

それ程時間がかかる服の多さでは無い

 

「着替えたら司令官室に、場所は知っているだろう?」

「…はい」

 

 

「"ミコ"が配置されたか」

「…覚えていたよ、君のことも、名前も」

 

八重の部屋にてそんな会話をしていた

俺は、レイムの顔を思い出す…あの純粋な顔を

記憶改竄が入ったから、多分無機質になっているんだろうけど…

 

「双星、彼女がそれを覚えているのは非常に凄いことなんだ」

「それほどか」

 

彼は興奮気味に話している

元からマッドサイエンティストの才能はあったが、ここまでとは

なんか裏で妖怪をバラバラにしてたりしそうだ…

 

「非常に!ね、例えれば記憶を全て消されているようなものなんだ」

「なるほどな…」

 

そう思うとかなり凄いことなのだろう

ここまで嬉しそうに話すなら…

彼にとってはただのエラーでは無いということだ

要らないエラーではないということに少し安心を覚える

 

俺の反応に八重はため息をついた

 

「君はあんまりこういうのに興味無いよね…」

「俺はそういうの得意じゃないからな

 専門用語なんて覚えられるかよ︎︎」

 

これはこういうものという認識はある

ただ、それを覚えておくという気があまりない

とてもどうでもいいのである、OK?

 

月光で蝶を型どり、弄びながら俺は言う

 

「そういえば、そろそろ大掛かりな作戦があるらしいな」

「耳が早いな、君は」

 

大掛かりな作戦…通称"デスストーム"作戦

ありとあらゆる場所に吸血鬼と共に攻撃を開始する作戦

尚識別する者はないので吸血鬼を殺しても問題ないものとする(真顔)

特に重要視されているのは妖怪の山である

今回、そこを叩くのに総戦力が組み込まれているのだ

 

「トゥーデスシュトルム…デスストームねぇ

 なかなか粋な作戦じゃないか︎︎」

「空と陸、両方から攻め叩く」

「空から大量に降り注ぐ兵士と砲弾

 陸から襲い来る大量の兵器と兵士…恐ろしい」

 

人間が何も出来ないと思っているヤツらに示してやる

司令官はそう言っていた、かなり、燃えている瞳だった

 

多分、彼も奪われた人間なのだろう

 

ここには奪われた人間しかいない、もしくは、生粋の狂人か…

 

「EEFメンバーも大体確認できた

 本人に会ってないからどうとも言えないが…

 同士討ちは避けられる筈だ︎︎︎︎」

「それは良かった…作戦開始は明日だ」

「…は?」

 

あまりに自然に出てきたので驚いた…

え?明日?Tomorrow?Really?こマ?うせやろ?

一切聞いてないんですけどそんな話…

聞いた話によれば一週間とか

 

「あ、君にだけ情報言ってなかった?

 君どっか行くこと多もんね︎ぇ

 伝えに行ったけど本人いなかったパターンかな︎︎」

「それ程の準備は無いが事前情報は聞きたかった…」

 

俺ははぁとため息をついた

これだったら基地で大人しくしている場合じゃなかった

偶々湧いていた天然温泉で「あぁ^~生き返るわぁ^~」なんてしてるんじゃなかった…

 

八重がコホンと咳をして顔を真剣にさせる

 

「じゃ、"大尉"…改めて言うが、君の任務は狙撃師団を引き連れろ」

「引き連れろ…だけじゃないだろ」

 

こくりと八重は頷いた

そんなピクニックのようなこと、するわけが無いだろう

意味が無い、本当に意味が無い

 

「狙撃師団に的確な援護をさせ、君は敵を叩く

 指示は君待ちか、自由に撃て、か︎︎…」

「…あるいは司令官か?」

「そうとも言える…」

 

八重はそう言うと、拳銃の薬室を確認しカチリと叩く

妖怪と合わせ、天狗を叩く…

しかし妖怪は人間を襲うだろうから実質一対二…

 

それは…

 

「…勝ち目あるのか」

「あるだろう、…、……正直に言えば無い、1%も」

「やっぱりか」

 

俺は溜息をつきながら珈琲を飲む

いつものブレンドが身に染みる、美味い

…これが最後の味になることはないだろう

 

「戦力差は問題外、問題は吸血鬼がいること

 最初のうちはいいが…相手が体制を立て直せばそうはいかない︎︎」

「そこをどうにかしないとな…」

「司令官次第だ…でも彼は死ぬ気だと思うよ」

「…」

 

八重の発言を聞かなかったことにする

ここで最後になるとは思っていない

奴らの手では死なない、絶対に

俺はまだ死ぬ訳にはいかないのだ…

 

「出撃は日の出前、迫撃砲部隊や狙撃師団はもう展開している」

「足は?部隊の足は」

「軽装甲車や戦車もある、空には零戦もあるんだぞ」

 

貴重なものを軽々使ってんなぁ…

もしくは、"ベクター"が過去やらなんやらから取ってきているのだろうか

そうだとしたらあまり貴重では無いか…

 

「あ、そういえば忘れていたよ」

 

そう言うと、彼はポケットから何かを取りだした

俺としてはもう少し早く手に入れたかったものだ

 

「眼帯か、必要だったよそれ」

「あぁ、だろうね?」

 

俺はそれを受け取り、包帯を解いてすぐに眼帯をつける

顔を縛り付けるものが減るとこれ程楽なのか…

まぁ、カッコつけでは無いし大丈夫か…

 

俺が眼帯を装着するも、八重は口を開く

 

「さて…大尉」

 

 

八重は言葉を続ける

 

 

 

 

 

 

 

 

最後に、八重はこう聞いてきた

 

「君はどこについて行く?」

「…そうだな」

 

…俺は軽く決心をして口を開いた

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