「よし」
降下完了だ、木の下にてそんなことを思った
RSI空挺兵達に紛れても特に不審がられ無かった
普通、誰が仲間かくらいの判別はついているだろう
実はそれ程仲が良い訳では無いのかもしれない
RSI空挺兵の装備を脱いでいく
"いつもの"服装の上に着ているからとても暑い
ただ、今日はどうも雨が降りそうな予感だ
更に蒸し暑くなるともう嫌になりそうだ…
にしても、最近は雨が多い
「…ふぅ」
ここを見られたら敵前逃亡とか言われそうだ
…だが、俺にもやることはあるのだ
手のひらに"月光"を集め、形作る
それは見覚えしかない大剣の形となり、実態化する
柄を握りしめ、数回振った後に背中に回す
首をコキコキと鳴らし、軽く手を揉む
「"依頼"をこなすことにしよう」
足を踏み込む
行先は人里から少し離れたくらいの場所
俺は夜を駆けながらあの日の会話を思い出した
〇
「…」
暇だ、最近は
兵士達がワッセワッセしているが、何かあるのだろうか
帰還して、偶にまた適当な所をうろついている
何か手紙…?があったらしいのだが、無かった
あんまり気にしてないし、いいか…
そう思っていると、俺は不意に金属音を聞いた
ドアの方向からだ
「…ふぅ」
珈琲を啜る
警戒なんてものはしない
敵が俺より格下だから?違う
敵が圧倒的に油断しているから?…違う
敵がそもそも来ていないのか?…もっと違う
警戒なんてする必要は無いのだ
なんせそれは、ドアの"鍵"が掛かる音だから
そして、この基地は基本鍵は内側から掛けられる
外の世界のような鍵穴のようなやつでは無い
このドアは鍵穴がある、外の一般的なドアだ
鍵のかけ方は中にしろ外にしろ鍵が要る
…ただ、鍵は俺が持っているがな
だからこそ、おかしいのだ
鍵をかけるためには中からじゃないといけない
しかし、これまでに中に入った気配や音はあったか?
こんなことが出来るのは、俺は1人しか知らない
「何の用だ」
「会いたくて来たわ」
背中から手が回された
暖かい肌の感触が背中に柔らかく触れる
鏡を見てみると、スキマから上半身を出した紫の姿が見えた
紫色のワンピース、前あった時と変わらない
「余程暇なんだな」
「そう見える?」
そうは見えない
目のクマが素晴らしいことになっている
恐らくここ三週間は寝れなかったのだろうと推測できる隈だ
「疲れたから、心を癒しに逢いに来ちゃった」
「そうか、俺も疲れてるんだよ、じゃあな」
会話をブツ切りにしようとする
少し怨念が逸れたからって調子乗ってるとブチ殺すぞお前
あの時お前に"負けた"という雪辱はいつか晴らすからな…
俺は珈琲を飲んだ
「え?「あぁ^〜生き返るわぁ^〜」とか言いながら露天風呂入ってたの…
誰でしたっけ?ねぇ?双星︎︎」
吹いた
いやなんでお前その現場見てるんだよ
妖怪の山中腹くらいのところだぞ、なんでお前…
天狗にも悟られずにウキウキしていた俺は馬鹿だったというわけか…
…そういえば、一生見てるって言ってたっけ…
ゴホゴホと咳をしながら俺は話を戻す
「ぁ"ー…で、何か用があるだろ、大体察せられるが」
「あら、話が早いわね」
「あの吸血鬼のことだろ、お前が忙しいなんてそれ以外は無いだろ」
こいつが何をしてるかなんて知ったことは無いが…
幻想郷の創造に関わった彼女が吸血鬼に関わっていないはずがない
…関わっているよね?
「勝手に他所から来て侵略宣言、もう五週間以上も寝れてない…」
「…そうか」
二週間追加されたわ
というかそもそも関わってすらなかったわ
彼女が疲れた様子で俺に枝垂れかかった
重くは無いが…その、当たってる…てか…あー
「凄く大きいな」
「何がかしら?」
「事が」
ナニとは言っていない
そもそも間違った発言では無いのでOK?イイネ?
ていうか、ここでその話題を出してくるということは…?
「えぇ、アナタに依頼がありましてね」
鏡の中の彼女の目が真剣になった
どうもここから仕事モードらしい
…隈のせいで台無しになってしまっているが…
「頼みたいのは…人里に迫る吸血鬼の撃退ね」
「…凄まじい事を頼むな」
おいおい、凄いことを頼みやがる
吸血鬼って…vampireの事だろ、バンパイア
人の生き血を吸い、生き延びる鬼の…劣化版?
心臓に杭を刺したら死ぬとか、十字架見せたら死ぬとか…色々あるらしい
「100程の雑魚を連れているらしいけど…ま、どうにかなるわ」
「期待で体がひしゃげる」
「実際、どうにかなるでしょう?
幽香よりはマシな部類よ︎︎」
幽香…確か、太陽の畑に住むフラワーマスターだったか
凄まじい猛攻で死にそうになったのを覚えている
奴から植え込まれた種が体で疼く感覚がした気がした…
「事前情報はそれだけか?」
「あぁ、その日が満月な事くらいかしら?」
満月…満月ねぇ
吸血鬼は満月の下で真の力を発揮するとか…
それはこちらも同じことだ
「それだけなら良い」
「じゃ、お願いね」
「…終わったら妖怪の山に送れ、それだけだ」
俺はそう言うと、本を取り出した
EEFについての本だ…
β隊について、確認しておくか
〇
事前情報によれば、人間どもは人里に引きこもっている
妖怪と関わることをせず、自分達のテリトリーを作っている
共存とは程遠い様子に見える、共存を掲げているのに
余程妖怪が恐ろしいのか、それとも…
「もうすぐ着くな」
部下達を100体程引き連れながら私は言った
これほどの化け物がいれば、制圧なんて容易い
妖怪ごときを恐れる人間程度ならば、少し力を見せるだけで怯えるだろう
そして、私に屈するのだ
そう思いながら、進軍しているときだった
「"よぅ、随分大掛かりだな"」
「何者だ」
道のど真ん中に座り込んだ男が居た
ジャケットの様なものの四肢に包帯が巻きついている
背中には大剣、太腿には銃がある
どう見ても、味方には見えなかった
「達者な日本語だな、英語で喋る必要もなかったか」
「お前の汚らしい口で我が言語を喋るなんてな
…反吐が出るわ︎︎」
かなりの威圧をばらまく
部下たちから怯ような声が聞こえたが、男は態度を変えなかった
よっこらせと立ち上がるとため息をついた
「やれやれ、力が強くなると傲慢になっていくのは避けられないことか
それとも、お前らにとってはそれがいいのかね︎︎」
「お前のような下民には理解出来ん事だ︎︎」
こいつと会話する意味は無い
首をやつに向けて振った
「やっていいぞ」
その瞬間、歓声のような声と共に部下達が飛びかかった
部下と言えど、中にはここに来てから部下になった者もいる
私はそれ程こいつらに情は持っていない
しかし、この時ばかりは情を寄せた
「おーおー、しゃらくせぇなぁ」
その声と共に、部下達は灰になった
直ぐに飛びかからなかった者は警戒しながら武器を構える
聖水か?それとも何かの神の加護か?
否…ただの"妖力"放出だ
「"そこを動くな、一歩も動くんじゃ無い"」
やつがそう言うと、部下達は全く動かなくなった
目だけが忙しなく動いているのがわかる
「何が起こっている?」というのが見てわかる
「ほう、お前…中々やるな」
「お褒めに預かり光栄だ、ヴラド公?」
「知っている上であの態度…ますます気に入った」
槍を作り出す
真紅の、血より深い紅色の槍を
槍の先端から血のような妖力が零れた
「俺も頑張るか、別に里が滅びようがどうでもいいが」
奴が背中から大剣を抜き、振り払った
その瞬間、刃に月光が収束し…刃と化す
美しい青緑色の月光を放つ刀身だ
しかし、それが我が身を裂く刃であることも知っている
「月光で我を殺すと?」
「その通り、随分な皮肉とは思わないか?」
夜に生き、満月の夜に力を解放する吸血鬼
それを月光で殺すという皮肉
私は、この人間が気に入った
「いや、人間では無いな?」
奴の頭と腰から現れた物を見ながら私は言った
男はハッと笑いながら切っ先を向ける
「お前がどう思おうと俺は人間だ
今も、これから先もな!︎︎」
「ほう、ならば見せてみるといい
お前が人間であるということを!︎︎」
槍と大剣が交差する
激しい火花が辺りに飛び散った
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