(力の差は奴の方が上だな)
鍔迫り合いを直ぐに止める
満月の下では単純な力比べでは負けるようだ
月光狼とは言えど、満月吸血鬼には敵わんか…
まぁ、少しの誤差だ
(後々のリスクは消す…)
部下と思われる化け物共もきっちり始末しておく
戦闘が終わった後に後ろから刺されるなんてオチは感じたくない
「無防備な部下しか殺せないのか?人間よ」
上からそんな声が降ってきた
どうやら鍔迫り合いから離れた後空に移行したようだ
どこに行ったかと思ったが上に行っただけか…
「そう思うか?」
「我はそう思うがな」
そう言うと、奴は槍を回転させながら俺に突っ込んできた
俺はそれを受け流す体勢に入る
モロに食らう訳にはいかない、体が耐えれん
この状態でも普通に死ねる
…試したことは無いが、死ぬ筈だ
刃と矛先が触れる
「!?」
「愚かな」
月光の大剣が吹き飛ばされた
どうも回転のエネルギーで吹き飛ばされたようだ
先程の鍔迫り合いを引き摺った…
やつはそのまま槍を突こうとしている
いや、好都合
「こっちの方が早い」
「ぐぅ!?」
M500のクイックドロウ
ついでに今回は銀の弾丸に変えている
通じるかどうか分からないが、やつは苦しんでいるようだ
演技か効いているか…どっちか
「どこから我らの弱点を知ったのだか…
事前に来ることは分かっていたようだな?︎︎」
どうも、アタリのようだ
銀は効く…この様子ならニンニクもか?
十字架はダメそうな気がする
それで済むなら最初からあーめんって言いながら十字架構える
いやそもそも、紫がスキマから十字架見せつけて終わりだ
「ん?逆に分からないとでも?」
今の俺は、"幻想郷の調律者"
課せられた仕事を終わらせるだけ
今回の仕事はこの吸血鬼を殺すだけ…
いつも通りじゃないか?
ただ、妖怪を殺すだけじゃないか
俺の言葉に、ヴラド公は目付きを変えた
「…舐めていたよ、人間
まさかここまで"やれる"︎︎ものとは思っていなかった」
「この程度で認識変えてたらこの後死ぬ程後悔するぞ」
大剣を手の平に出現させる
かの大剣は月光で出来ているのだ、そして今宵は満月
いちいち取りに行く必要は無い、だろ?
奴との近接戦は可能
ただ、能力が不明だ
そもそもあるのか…それとも他に手段があるか…
「このヴラド・ツェッペリン…容赦はしない!」
「……"大尉"だ、この戦い情け無用。」
やれば分かる
死合えば敵の手札なんぞ零れ出てくる
やるしか道は無いのだ
大剣を持ち、翔ける
森の中を利用する
奴の身体能力はどの程度か…
「逃げるつもりか?」
後ろから全く離れない声が聞こえた
どうも、複雑な森の中でも距離を離さない機動力はあるようだ
今、奴は俺を追撃する形で動いている
後ろから定期的に飛んで来る槍がそれだ
「逃げるだけがお前の特技か?」
時折そんな挑発の言葉が飛んでくる
俺も振り向き、M500をぶちかます
当たるわけも無い
当てる気でやっている訳じゃないのだ
俺が森を駆けていると、後ろから声が上がった
「逃げるだけなら、こちらから行くぞ!」
「…!?」
前から何かが突っ込んできた
暗闇でよく見えないが、今の俺は感覚が研ぎ澄まされている
…ありゃコウモリだ
ただ、普通のコウモリと違う
翼の膜が赤く、目が赤く光っている
しかも1匹じゃない、群れだ
その全てに上記の特徴があるので…凄い怖い(小並感)
赤い流星群が目の前から迫っている、例えればそんな感じか
…んだその人生で1度も味わうことの無い現象
「畜生」
身体をひねり、その群れを躱す
ただ、こいつはこの群れだけじゃ無いはずだ
まだいるんだろう?えぇ?
「いつまでそうやって避けられるかな?」
「…嘘だろ」
俺が奴の言葉に視線を前に戻す
そこには、赤い星々が森の中に存在していた
あれが全部蝙蝠だと?
多すぎて天の川みたいになってるぞおい!
「ああクソッタレが!」
大剣の刃を"伸ばす"
月光の力を収縮し、それを刃に込める
込めた分だけ刃が大きく、伸びていく
邪魔ならば、全部落としてしまえ…
流石に蝙蝠が吸血鬼レベルの耐久力はないだろう?
「おぉ…らぁっ!!」
月光大剣をバットの様に振るう
今回だけは形とか技術とか、そういうのは無しにしてくれ
いや…考える脳も無い動物ごときに技術も要らんか…
大剣を振るった少し後に蝙蝠共が煙のように消えていく
どうも実体があるという訳では無いらしい
…そして、僅かに後ろからした"うめき声"を俺は逃さなかった
「なるほどなるほど…そういう事か」
「ぐぐ…貴様、正面からやらんか」
"切り刻まれた"胸を抑えながらヴラドは言った
どうも話題から逸らしたいようだな
分かり切ったことだが、言うか
「蝙蝠はお前の分身のようなもの
その一つ一つにお前としての感覚がある
…まぁ簡単に言えば小さくなったお前か︎︎︎」
「ふ、ふふふ…簡単に見破られる…」
つまるところ、蝙蝠を殺ればダメージが入る
1匹じゃそこまでのようだが、先程の蝙蝠は"天の川"の様に居た
そりゃ、そんなダメージ食らうだろうよ…
「んまぁ、逃げるのはどうでもいいんだが…
ここは"幻想郷"︎︎流儀でいかせてもらう」
俺はそう言うと、己の"能力"を発動する
紫から初めて聞いた時…あまりに意味のわからなかった能力
腕をのばし、奴に向けて指を指す
『俺とお前、どちらかが死ぬまで逃げられない』
これはそういった"現象"
何人たりともこの"現象"を崩すことは出来ない
そして、ありえない
「…呪いか?」
「そういう類の物だと思え、"吸血鬼"」
大剣を構える
大体の事は分かった
やるべき事も分かった
…やることを果たそう
〇
「すげえ、吸血鬼側が死ぬ程ボコボコにされてる」
"スポッター"はそう言った
画面を見てみると、吸血鬼の部下だろう化け物が天狗の風に巻き上げられている
安全な機内であっても落とされそうだと思うくらいの殺気だ
現場にいる奴らは可哀想だな…
「迫撃砲部隊は既に攻撃を開始している、やるぞ」
「「「イエッサー」」」
AC130はベトナム戦争の古臭い兵器だ?うるせぇ
この幻想郷は文化レベル明治とかやぞ、ベトコンとは違ぇよ
対空火器もそれ程なさそうである…河童を除けば
隊長が口を開いた
「攻撃開始!」
「全隊に通告、これより航空支援を開始する…デンジャークロース!」
無線にそう呼びかけ3秒くらい待つ
…3秒後、カチリとボタンを押した
サーモカメラに25mm砲の弾丸が一瞬見えた
その後、風を吹き上げていた天狗が一瞬で粉々になった
「oh......」
少し同情した
ただ、これで辞めるならここには居ない
情けを捨てて、25mm砲を連射する
地上部隊の援護
それが航空部隊の任務なのだ
『落下傘部隊到着!これより降下する!』
無線が忙しくなってきた
これは楽しくなりそうだ…
そう思いながら、ひたすらに25mmの雨を糞共に浴びせた
〇
「…妖怪の山が騒がしいな」
私は思わずそう呟いてしまった
見てみれば、妖怪の山が凄いことになっている
あそこで誰か戦争でもしているんじゃないかってくらいだ
…実際してるんだろうけど
「これもお前の計算通りか?」
「さぁ?どうでしょう」
縁側から眺める私は、横の影にそう言った
いつの間にか座っていたその人物は問にそう答えた
紫だ
「見たところ天狗と人間の三つ巴か?
それにしちゃ人間が押している感じがする︎︎」
「彼らにも彼らなりの事情というものがあるのでしょう」
まるで他人事のように話を進める
実際私たちには関係ないことである
天狗が押し負ける事なんて"決して"無いし、人間が勝つこともない
あるのは、結果を見て恐怖する人間のみ
「お前も残酷だな、生贄みたいなものじゃないか」
「あら、生贄なんて酷いことを言うわ」
何処吹く風、というふうに紫は言った
まるで自分が酷いことをしていないかの様に言う…
私はそんなことより聞きたいことがあった
「生きているんだろう?双星は」
「どうしてそう思うのかしら」
彼女はわざとらしくそう言った
おや、という風である…こんの性悪が
拳を握りこんだ
「お前からあの子の匂いがする、染み付いてやがるな…?
何をした?……お前、︎︎あの子に何をした?」
こいつから"あの子"の匂いがする
いくら化粧や香水をしてもごまかせない匂いが
…何をどうしたらそんなにこびりつく?
意味がわからないくらい匂わせてやがる
私の質問に彼女は当たり前のように答える
カタン、と首を傾げて
「そんな酷いことはしていないわ
ただ、跨って、辱めて、嬲っただけ︎︎」
「……一旦死ぬかそこに這いつくばれよ、クソ野郎」
何回か死んでもらおうかな、コノヤロウ
私の息子に対して何をしてやがる?
そもそも生きているのを知っているなら…
そこで、私は気がついた
奴の瞳…右目
見覚えのある視線
「お前…!その目は!」
「あら、今気がついた?」
その瞳をよく知っている
"彼"はその目で私を見ていた
その"日本人特有"の瞳を私は知っている
「双星に何をした!?貴様ァ…!」
「とっても馴染みが良くて、私に合うの
それに、人から奪うのは妖怪の性でなくて?︎︎」
「生きて帰れると思うなよ!ユカリィィィイッ!!」
奴に拳を振り上げた
容赦は無い、元々仲間とも思っていないのだ
死んでも、誰も文句は言わないだろう
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