スキマに愛された大尉という人間について   作:回忌

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「…」

 

意識が暗い

瞼が今にも閉じそうだ

あたまがいたい、からだじゅうがいたい…

 

「…!た…い!」

 

誰かが俺の肩を揺すった

意識は全く明瞭にならない

誰が来たのかも分からない

 

俺って、何をしていたっけ

 

紫を殺す為に反対勢力に行って…

そこから何をどうして、こうなったっけ

 

「ごめんなさい…貴方の……ならない」

 

なにかの声の応酬があったが、最後の言葉の後に口元に柔らかい感覚がした

それが離れると、少しだけ意識が晴れた

 

 

 

 

 

俺は抱えあげられていた

いわゆるお姫様抱っこと言うやつだ

 

意識が晴れたおかげであたりの様子が見える

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

灰の山だ

 

天狗服と灰が積み重なっている

地面と服は血だらけの様子だった

 

「…双星」

 

声がした

 

懐かしい、声が…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…かあ…さん?」

 

 

「大尉!起きろ!死ぬな!…双星!!」

 

俺は双星を揺する

彼は曇った瞳のまま、虚空を見つめていた

その瞳が薄くなっているのを見ると、ゾッとする

 

死ぬな、死なないでくれ

 

 

 

 

 

 

 

 

…お前だけには死んで欲しくない…

 

寿命でも、なんでもない、とにかく、今死なないでくれ

 

「…くそ、これしか…」

 

彼の容態は酷い

身体中がボロボロ、抉れて骨が見える箇所がある

これでは直しようが無いが、一つだけある

 

 

 

 

 

 

 

 

…この注射器を使えば

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「駄目よ」

 

後ろからそんな声がした

 

それと共に向かってきていたであろう天狗が爆散する

凄まじい轟音が鳴り響き、大地が揺れる

 

凄まじい量の服と灰が空から降り注いだ

死の灰…まぁ、死人の灰だから死の灰か…

まるで雨だ、少し前に止んだと言うのに今度は灰になった

 

俺は怯まずにM1911コンパクトを取り出した

その声の主が誰か俺は知っている

 

 

「八雲紫、お前は大尉を死なせたいのか?」

 

俺は銃を突きつけながらそう言った

紫のワンピースを着用し、おかしな傘を開いた妖怪

扇子を開き、目は憎悪の宿ったそれだ

 

「死にたいの?」

 

重圧が俺を襲う

あまりの殺意に腰が抜けそうになるが虚勢を貫く

口を開きたくもないが、ありもしないプライドを守る

 

「事実だ、死ぬ、大尉は何もしなかったら死ぬ」

「その注射器は駄目、私が、私が彼を護る」

「…あ」

 

いつの間にか俺は真っ二つになっていた

頭と体がいつの間にか飛んでいた

 

死んだ…か

 

俺はため息をついた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パタリと倒れていた体が起き上がり、歩き始める

 

それは俺に手を伸ばして…

 

 

「大尉、大尉…ねぇ、聞こえてる?」

 

虚ろな、感情のない声

その男の体を抱きとめ、抱える

もし何も知らない人が見れば悲劇的な光景に見える

 

そして、知る者ならばどれ程おぞましい事か

 

 

優しく、色のない声

 

「まだ、起きてるわよ…そう、死んでない…」

 

抱き寄せる

死は人を分てる、何があっても

 

人には死に対する抵抗は出来ないのだ

何をどうしようとも死んでしまう

 

だからこそ、弱い

 

 

 

 

 

しかし、彼女の目の前で死ぬのは人では無い

 

「…そうよね、その力は私が作った力」

 

彼女は妖力を込める

多くも少なくもない、同じ力を込める

口元に、そのピンク色の唇に妖力が宿る

 

「だとしたら、力をもっとあげれば…戻ってくるわよね?」

 

淡い口付け

戦場のど真ん中、凄惨な死体の中心

死者達の楽園(ネクロファンタジア)の中…式は上がる

 

 

 

「汝は我、我は汝

 

 ここをもって己を制する

 

 肉体と魂を別かつこと無く

 

 死と生と…全てを持って─────」

 

 

彼女は男の顎を貪り、術を詠唱する

辺りが結界に包まれ、月は堕ちる

 

紅い月は既に消え、古の月が君臨する

 

 

「…ここに、楔を」

 

 

彼女は口を離し、そう言った

男の傷がみるみる癒えていく

 

ボロボロで骨まで見えていた重症は既に無くなっていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこで、男は口を開く

 

「…かぁ、さん…」

「…えぇ、私は…貴方の──────」

「双星!」

 

巫女はその男を抱きとめた

男は巫女と紫から挟まれる格好になった

 

「ごめん、説明しなくて

 ごめんな、何も言わずに消えて

 

 …だから、死なないでくれ…︎︎︎」

 

「大尉!…妖怪の賢者に博麗巫女!?」

 

桜が駆け寄る

大妖怪と巫女に抱きしめられていることに困惑しているようだった

 

「桜、落ち着いて聞いてくれよ」

「や、八重?頭持ったまま落ち着けって言われても…」

 

そんな声が響いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

騒がしいなぁ…

 

 

 

…おやすみなさい、皆

 

俺は、少し寝るよ…本当に疲れた…

 

 

 

 

 

 

 

「…9年…2003年までに目覚める」

「…本当か?」

「永い、寝てるのがバレるぞ」

「天狗共は許さない、確実に探し出してくる」

 

4人は境界の中で話し合っていた

目玉だらけの空間、瞳は3人をじっと見ていた

 

「紫、仕方ないことなのか?」

「…仕方ないの、今起きたら反動で本当に死んでしまう

 それに治ったのは外面だけ…中はボロボロよ︎︎」

「仕方ない…か」

「…むぅ」

 

ため息が響く

空間感覚が狂う場所にいるからか、ため息が大きい気がした

 

「八重、貴方は…誰でもいい、"カバー"をして欲しいの」

「…分かった、"インタビュアー"にも頼まないと…」

「基地は天狗達の報復で破壊されているわ

 "ベクター"︎︎を探しなさい、人里にいるはず︎︎」

「分かった、巫女さんは?」

「私は…待つよ、手伝いが必要なら言ってくれ

 …"魂魄"︎︎桜君だっけ…君はどうするんだ」

「俺は…俺は人里に隠れる…その時が来るまで︎︎」

 

4人はそれぞれの事が確定すると、その場から消えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深い、眠りに落ちていく

 

深海の如く暗く、宇宙の如く美しい眠りに

 

俺はそこからでなければならない

 

「…」

 

しかし、出る…ことは…叶わない

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