スキマに愛された大尉という人間について   作:回忌

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知らぬ天井

一人の男が眠りについた

 

その男は妖怪の賢者の心を満たす者であった

 

契を結び、結ばれた2人

 

男は妖怪の賢者だけではなく、数多の者から尊敬されたものだった

 

部下しかり、仲間しかり…敵しかり

 

 

故に、その悲しみは深く、重いものであった

 

 

 

 

 

 

 

その戦争は忘れられなかった

人里からも見えるその閃光と轟音の数々

幻想郷の歴史にも残る、凄まじい戦い

 

忘れるはずも無い

 

 

そんなの、出来るはずがないのだから

 

 

「んー…いい天気ねぇ」

 

縁側で背を伸ばす

"先代"から代を受け継ぎ、こうして巫女となった

彼女は人里に移り住んで…時折来たりしている

 

ただ、その顔は浮かばれないものだが

 

「…はぁー」

 

しかし、その虚ろな顔も最近はとても良くなっている

今までの撃沈具合が信じられないくらいだ

どのくらい酷いことがあったのかは知らないが…

 

まぁ、母と慕うそれもあったし…深く調べないでおこう

 

 

 

さて、今日は何をしようかな

 

そう思いながら"博麗霊夢"は縁側で背を伸ばした

先代がいた時はこんなにごろごろ出来なかった

やろうものなら地獄の課題が待っている

何素手ひとつで岩を割ろうって、人間か?

 

今日も今日とてお天道様を眺めながら目を細める

 

いつまでもこの平和が続けばいいのだが

 

 

「──────────」

 

目が覚めた

パッチリとしたものではなく、底なしの沼から浮かび上がるような覚醒

体の節々が悲鳴を上げ、動くのを拒否する

 

視界はぼやけているが、どこかの病室というのが分かった

俺は病人で、病院で寝かされているのだろう

 

ぼんやりとした視界がどんどんハッキリしていく

 

壁には新聞らしき紙が貼り付けられている

他にはめくれて左端が見えないが写真がある

戦闘機の写真のようだ、SFのそれに近い

 

そんな新聞や写真よりも別のものを貼るべきだと俺は思った

 

『先日──の区域にて行方不明者が発見されました』

 

ラジオからそんな放送が突然流れる

今まで音楽が流れていたらしい、全く聞こえなかった

それよりも外の雨音が耳に入る

 

外は雨模様らしい…らしいというのはカーテンが閉じきっているからだ

外の風景は分からないが、どうせ外も窮屈だろつ

空を見たい、開放的な、全てから解き放たれる空を

 

『発見された人の名前は──と呼ばれているそうで…』

 

ガチャリとドアの開く音がした

そちらに目線を向けると、看護師が入ってきたのが見えた

もう1人…真っ黒な戦闘服に身を包んだ男も

足取りはゆっくりであり、どうも警備兵らしい

キラリと証明に銃が照らされ眩しい思いをする

 

その看護師は俺を通り過ぎて行った

 

そこで気づいたがどうも厄介になっているのは俺だけでは無いようだ

もう1人が隣のベッドに寝かされている

頭を包帯でぐるぐる巻きされているのが見えた

 

『このような薄暗い話は止めましょう

 続いての曲はリクエスト、"千年幻想郷"︎︎です!』

 

「…もしもし?」

 

その曲が流れ始めた共に俺に声がかけられた

ふとそちらに目を向けると、看護師がかなり近くまで来ていた

 

何か言おうとするが声が出ない

 

辛うじて呻き声のような声を発することが出来た

今気付いたが、この看護師はどちらかと言えば医師に近い

 

…その赤と青の奇抜な服を除けば…普通の医者だ

いや、医者じゃないんだろう?コスプレイヤーか?

髪型もおかしい気がする、そんな髪型は見たことがない

 

「…なんてこと」

 

彼女はぽつりと呟くと、走り出した

後ろの警備兵が驚いた様子でこちらを見ているのが分かる

 

ここまでただ辺りを見渡しただけなのに、かなり疲れた

彼女が去ると、その疲労が一気に襲いかかってくる

 

 

 

 

 

 

俺が瞳を完全に閉じ切る前に、言葉が聞こえた

あの女医の声だ…恐ろしく凛とした声だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Vが目覚めた」

 

 

 

 

 

 

 

単語のそれは、俺の頭の中に響き渡る

V、それは数字なのか、それとも別の意味なのか

 

ただ、俺にはとても関係のある単語に思えた

 

 

それは、後にわかる事実だった

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