「目が覚めましたか?」
瞳を開けると、そんな声が聞こえた
あのコスプレのような奴とは違う…また違う声だ
そもそも男らしい
見えた姿は普通の医者らしい格好をした…医者だ
年配者らしく白髪が生え、眼鏡をしている
優しい感じの医者、と言った感じである
「聞こえているなら、頷いて下さい」
彼は俺にそう言ってきた
従わない理由がないのでこくりと頷く
彼の後ろには前も居た黒い戦闘服の男が居た
どうもその注意はこちらに向いているようである
そんなに俺が気になるのか…?
「上を向いて下さい」
彼は天井を指さしながらそう言った
俺は頭を上にあげ、天井を見上げる
肩周りが硬い気がする、自由に動かない
視界には真っ白な知らない天井が映る
数秒後に元の状態に戻る
「…良いでしょう」
彼はなにかに納得したようだった
「今から貴方の状態を説明します
いいですか?落ち着いて聞いて下さい︎︎」
身振り手振りで現しながらそう言った
そうしてくれるとありがたい、落ち着けないからな
俺は昨日よりはマシになった意識でそれを聞いていた
「貴方はずっと昏睡状態だった」
状況から見てそう考えられるだろう
じゃないと女医やそこの兵士があんな反応をする訳が無い
反応から見てかなり長い間眠っていたようだが…
「えぇ、えぇ…分かっています…どのくらい寝ていたか」
それを聞きたいのだ
口を開けて言おうとするが上手く喋れない
それを医師は察したのか手で抑えるような仕草をした
「落ち着いて…いいですか、あなたが眠っていたのは…」
──────12年です
体が燃えるような感情に支配される
12年?12年も俺は眠っていたのか?
衝撃と驚愕が入り乱れ体が暴れる
医師が何かを言って落ち着かせようとするが全く聞こえない
俺の頭の裏にはずっと何かが壊れていく光景が見えた
黒い集団のような物が建物を破壊していく
破壊されている建物はとても大切なものだったはずだ
声に上がらない絶叫を上げていた俺は唐突に意識を落とす
俺の首元に注射器が刺さっていた
何かを入れられたようだった、恐らく…強制的に眠るものだろうか
それによって俺は落ちるように意識を失ったのだった
━━━━━━━━━━━━━━━
また行方不明者の話か
俺はラジオから流れてきた会話を耳に入れながら目を開ける
『その人によれば"俺は全てを殺した…殺したはずだ"と虚ろに喋っており…』
異常者の話でもしているのか?
気狂いだろう、そんな話をするのは
全てを殺した…一体何を殺したというのか
『更に、彼は"奴らを皆殺しに…げ──』
「"今すぐ顔を変えて、逃げなければならない"」
「"しかし…"」
「"患者が、危険だ"」
途中でラジオは遮られた
昨日の医者と普通の看護師だ
ただ、その髪は白髪のようだ…ストレスが溜まっているのかな
眠っていた期間を宣告された時に居た看護師とは違う
外の世界にまでこいつらは来ているのか?と不意に思った
医者は俺の方に来ると、そうだ、と言ってくる
理解できない言語で喋っていたから何を言ってるんだか…
「あなたを凄まじく憎む者達が居る」
彼はそう言って、俺を抱えあげた
どうやら移動するようだ…看護師が車椅子を持ってくる
俺は自分で立てると思い足に力を入れる
…立てない
そもそも少ししか動かないのだ
「力を貸します、早くここから─────」
医師がそういった途端、俺は地面に投げ出された
受身をまともに取れずに地面にたたきつけられる
呻きながら医師の方を見てみると、首根っこを誰かに掴まれていた
…先程の看護師だ
白では無く、銀色の髪に紅色の瞳
その頭と腰からは明らか人間のそれでは無いものがある
尻尾と、獣耳
「よくもここまで隠し通せたな」
「くっ…げぐぅぐ…!」
医師は慌てて懐から短銃を取り出した
しかし人外であるあちらの方が圧倒的に早い
引き金を引くどころか向ける前に首がへし折られる
片手で軽々持ち上げ、そして首をへし折る
明らか人間では無い
「重い」
医師の死体をほおり投げる
それは棚に激突し、派手な音を立てて薬品類が落ちていく
その大きな音に気付いたのか、バタンと勢いよく扉が開く
あの警備兵だ、物音を聞きつけて駆けつけたらしい
「動くな!」
「あぁ?」
「ぐぎゃ────」
ただの一振
腕を軽く煩わしそうに振るっただけ
それだけでその兵士は血塗れになっていた
胸元がバッサリと切り裂かれ、アーマーが割れている
何をどうしたらあんなことが出来るんだ?
人間なのか?あれは、人じゃない、なんだ?
「暑い」
そういうと彼女…いや、そいつは服を脱いだ
その下には独特な和風の衣装があった
方の繋ぎ目が紐というなんとも意味不明な物である
コスプレ?それとも未知の勢力?
奴はいつの間にか持っていた大太刀をこちらに向けた
何も出来ずに這いつくばり、殺し屋を見上げることしか出来ない
ここで死ぬのか
何も分からないまま未知の力に殺されるのか
「終わりだ、"大尉"」
そう思いながら見上げていた
奴が大太刀を振り下ろそうとした瞬間、何かが飛びかかる
獣のようだ
いや、人だ…隣で寝ていた患者らしい
そいつは獣のように飛びかかり、首を絞めていた
突然の襲撃に驚き、大太刀を振り払う女
「くっ…なんだお前…!」
それは彼に当たることなく、仕切りや医療機器を真っ二つにしていく
不覚を取ったからか首を絞められているか…顔を赤くしながら女は男を振り解き、投げ飛ばした
壁に激突し一瞬動かなかった彼は直ぐに立ち上がる
そして近くにあったガラス片を持ち上げる
丁度ナイフの様な形をしているのが見える
方や意味不明な衣装の大太刀を構えた女
方や病人の姿でガラス片を構えた男
戦いのそれとは全く違う筈なのに、死闘の緊張感が伝わってくる
俺はそれを見あげることしか出来なかった
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