スキマに愛された大尉という人間について   作:回忌

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後は頼む

「…シイッ!」

 

女の方が先だ

大太刀を横から薙ぎ払うように振るう

それを男は見てから避けると、懐に入り込もうとする

 

「洒落臭い!」

「ぐっ」

 

それを女は蹴り飛ばした

男が吹っ飛ぶが、地面に叩きつけられる前に受身を取る

 

「死ね」

 

女がそこに追撃を入れる

大太刀による鋭い突きだ、受けたらひとたまりもない

 

男は冷静に受け流そうとする

 

「…!」

「愚かめ」

 

受け流しには成功したが、ガラス片が砕けた

流石にあの短さだと殺すには届かないだろう

 

これでは防戦一方になってしまう

 

俺はそう察すると、近くを見渡す

先程の医師が確か短銃を持っていたはずだ

銃弾なら確かなダメージを与えられるだろう

 

近くに転がっているのが見えた

手で届く範囲だ、俺は手を伸ばした

 

 

…鈍い

 

 

これ程までに俺の動きは鈍かったか?

そう思わさざるを得ない程動きは鈍かった

 

「クソッタレ」

 

男がそういったのが聞こえた

そちらの方を見てないから何が起こっているのか分からない

 

もう少しで届く

 

後ろから銃声が響いた

どうやら男が警備兵の銃を取ったらしい

しかし、金属音共に鼻で笑う声が聞こえる

 

「遅いぞ」

「クソ、技術が上がってやがるな天狗め」

 

取れた

俺は体を捻り、天狗の方に向けた

奴が背中を向けているのが見える

 

引き金を引くだけだ

 

銃口を向け、俺はそう思った

 

「遅いぞ!このアホめ!」

 

女がそう言って男に対して大太刀を振りおろそうとする

 

…今だ

 

俺は男がこっちを見てそう口を開いたのが見えた

言われなくてもそうしてやる

 

 

 

 

 

「ぐあっ!?このクソ野郎─────」

「遅いのはお前だったな」

 

奴の背中に弾着

血が吹き出るが奴はそれほど気にした様子は無かった

それよりも傷を付けられたことにキレているようだ

 

しかし、そうやって振り返った時点で俺の勝ちだ

 

「あばよ」

「ぎゃ」

 

男が背中からライフル銃を突き刺した

そこから更に引き金を引き、全弾をぶち込む

合計38発程の弾丸を受けた女は頭から灰となり消えていった

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

「さぁ、立て…ここを出るぞ」

 

男がそう言ったのが聞こえた

俺と似たような声色をしているようだ

先程よりは動けるようになったが、立てはしなかった

 

「…あの女は…」

「女?あれは…地獄に落ちたさ」

 

男は窓から外を見た後、こちらに近付いてきた

 

やはり、包帯でぐるぐる巻の顔だ

瞳だけが俺を見ているのが分かった

オッドアイらしい、外人の類か?

にしては流暢な日本語で体付きも日本人らしいが

 

「何が起きてる…」

「そんなの後回しだ、出るぞ」

 

男は扉を指さす

既に開け放たれた扉の前に男は移動した

俺もすぐに移動しようとするが、動けない

 

「足が動かないか…」

 

男が少し悩んだ仕草をすると、何かを取りだした

注射器のようだ、透明の液体が入っている

 

「八意印の増力剤だ…直ぐに歩けるようになる」

 

足に突き刺した

液体を注射した後注射器をほおり投げる

俺は感謝を言うために口を開いた

 

「有難う…えっと…お前は…」

 

そういえば、こいつはなんなんだ?

かなり手厚く支援してくれるが…

名前すら知らなかった…

 

「イシュメールと…これはテンプレート過ぎるか…

 そうだな、"カール︎︎"…"カール・フェアバーン"」

「それが本名か…カール?」

「そうかもな、行くぞ」

 

この数秒で、俺は軽く這いずることが出来るくらいになっていた

あの注射にあった薬は余程スゴイものなのだろう

 

カールは死んだ警備兵からナイフと拳銃を取り出した

オートマチックかと舌打ちしながら弾倉を確認する

 

「その様子じゃエレベーターでなくても良さそうだ」

 

カールはそういうと、階段があるであろう方向に歩いていった

体を壁に当てながらではあるが、歩けるようにはなった

これならエレベーターで降りる必要も無い

 

エレベーターの出入口に敵がいたら危険だ

 

「奴らは一体…」

「喋る余裕があるなら早く来い」

 

俺が疑問を投げようとするが、弾き飛ばされる

説明は逃げてから…ということだろうか

 

階段は開けた螺旋階段、と言った感じだ

どうやら割と大きい病院らしい

 

 

そう思っていると、上から短い悲鳴が聞こえた

 

 

見てみると、先程の女…の男バージョンみたいなのが居た

なんなんだ、あの化け物は…

 

「急げ、できるだけ足音は立てるな」

 

そう言って、カールは下に降りていく

いつの間にか普通に歩けるようになってきた

音を極力立てないようにして降りていく

 

上から化け物が降りてくる足音がする

 

「居たか」

「居ない」

 

降りていると、そんな声がした

足を反射的に止めてしまい耳を立てる

 

「ここに逃げてきたとあの"金髪の学生"は吐いた…良く探せ」

 

下にさらに降りてくる

しかもひとりじゃない、複数人だ

 

「飛ばないのか…?余程油断しているんだな」

 

カールがそう呟いたのが聞こえた

あの化け物共は飛ぶのか?そんな馬鹿な

どこにも翼は生えていないんだぞ

 

 

そう思った時だった

 

「そこの男!止まれ!」

「クソが!」

 

バタンと扉が開いたかと思えば化け物の男が入ってくる

カールは悪態をつくと、いつの間にか持っていた手榴弾を投げつける

 

化け物の男は爆散した

 

「早く!」

 

男が出てきた扉に入り込む

そしてそこから直ぐに扉を閉めた

鍵を閉め、近くにあった鉄製の棚を倒す

これで少しの間は入って来れないはず

 

荒い息を整える

 

「…ここか、運が良い…」

 

カールはそういうと、奥に進んだ

入って分かったがどうも普通の一室らしい

病室とは違う…なにかの管理室だ

 

カールはどこにも行くこと無く迷わず机に向かう

 

そして、置いてあった何かを手に取った

それをこちらに手渡してくる

銃のような…なんだろう、おもちゃのレーザーガンみたいな物だ

 

「使え」

「…これはなんだ」

「いいから!」

 

彼がそう叫んだ瞬間、ザクリと扉に大太刀が突き刺さる

どうやら強行突破してくるようだ

 

俺は引き金を引いた

 

その瞬間、体が引き摺られるような感覚に陥る

 

「…あとは頼んだぞ、"大尉"」

「逃げられ────」

「通すか!」

 

後ろ向きで滑り台に入ったような感覚を感じながら、俺はその場から飛ばされたのだった

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