「今宵、ここに紅い月を現せる」
その人物は玉座に腰掛け、そう言った
彼女の前には四人の人物がいた
騒々しく、玉座の王は言う
「恐怖を忘れきった幻想郷に再び恐怖を」
彼女がそういうと、紫のネグリジェを着た女が本を開いた
手のひらから自由に浮遊し、魔法陣を描く
魔法陣より、赤い煙が発せられる
ありとあらゆる場所から湧き出て、広がっていく
それは幻想郷に及び、ほぼ全ての場所を赤で埋めつくした
玉座に座す夜の王は盃を掲げる
「さぁ…紅魔異変の始まりだ!」
全ての始まり、グラウンド・ゼロ
幻想郷の"今"が始まり、共存が加速した時代
そして─────かの男が戻りし時代
〇
「起きたか」
男の声がした
硬い地面の上…では無く布団の中にいた
敷布団だから地面の上だと勘違いしたのだろう
声の方向を見てみると、軍医が居た
軍服に迷彩のズボン…ホルスターには銃がある
赤十字の腕章、肩にはなにかの部隊のワッペンがある
「…八重だ、"大尉"」
八重…あぁ、そうか…八重か
その言葉を聞き、俺は全てを思い出した
まるで封じ込められていた物が一気に解き放たれたように
爆弾が爆発したかのように、思い出す
こいつが、"メディック"…俺は"大尉"
「思い出したか?」
「思い出した」
俺は体を起こし、そう言った
八重はこくりと頷くと椅子から立ち上がる
「あんたが眠っているあいだ、色々あった」
彼はそう言って、語り始めた
12年の年月…その間に何があったか
何が反対勢力に起こったか
「最新の異変は儚月抄…時間軸は気にするなよ
彼女が色々弄ってるせいでおかしくなってるからな︎︎」
彼は言い訳のようにそう言った
何かから逃れるような発言だ
…とてもどうでもいいが
「小分けで教える、まずは…"紅魔郷"だ」
〇
紅い月が浮かぶ
夏というのに紅い霧に覆われどんよりとしている
…こんなの
「洗濯物が乾かないじゃない…」
霊夢はガッカリとしていた
外に出ていざ布団の洗濯でもしようかと言う時にこれである
そろそろやらないとパンドラボックスというのに…
「…シバキに行くか」
霊夢は陰陽玉とお祓い棒を持つと、大地から"浮く"
そのまま自然な動作で空を自由自在に飛び回る
空中で軽く準備運動をすると霧の発生源"らしい"ものを睨む
「"あっち"の準備運動はしなくていいわね」
赤い霧と言えば赤い舘
そういえばクソ程悪趣味な館ができていた筈だ
どうせ関連性はある、無くてもしらない
これをやったやつが悪いのだ
責任をぶん投げ、霊夢は気味の悪い館へと突っ込んで行ったのだった
丁度入れ替わるように、一人の少女が入る
「霊夢ー!異変だ異変だ…あれ?」
誰もが魔法使いとおもう服装をした少女
彼女は家主が居ないことに首を傾げながら縁側に座った
「まぁいっか!少し休んでから行くとするぜ」
そう言いながら神社のお茶を飲み始めたのだった
〇
「共存はさせない」
「茶番に過ぎない異変なぞ」
虚ろな声が響く
まるで何もかもを失ったもの達の声のようだ
事実このもの達は己の仲間達を皆殺しにされている
なんの助けも無く死んで行った仲間達を知っている
銃が掲げられる
「妖怪は殺せ、皆殺しにしろ」
「「「ぉぉおおおおお!!!」」」
敵は敵なり
共存なぞ不可能なのである
恐怖から生まれる存在なぞ、敵だ
なぜ故恐怖そのものと仲良くする必要がある?
「…」
一人の男が立ち去った
彼は腕に装着された何かを操作した
幾何学模様が一瞬見えたかと思えば、そこに男の姿はなかった
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