空を飛ぶ
傍から聞けば魔法や不可思議な力に思うだろう
この幻想郷ではポンポン空を飛ぶ者が多い
人間は一部を除き飛ぶことは出来ない
そもそも人に翼は無い、飛べるはずも無い
人で飛べる者は、相当の霊力の使い手か…
それともそういった能力を持ったものか
霊夢は後者である
能力を応用し、空を飛んでいるのだ
"浮く"程度の能力
ありとあらゆるものから浮く能力
極端に言えば、現実や今からも浮くことが出来る
破格の、人にはあり余る能力である
彼女自身はあんまり気にしたことは無いが…
「ねー、貴方は食べれる人間?」
「違うわ、食えない人間よ」
霊夢が空を飛んでいると、1人の妖怪がでてきた
明らか弱小の名無しの妖怪に見える
赤いリボンをした、金髪の幼女
なんてまぁ人間ウケしそうな…
霊夢は何とそう思った、突発的に
外の人間はこういうのが好きなのがいる…
母が言っていた、多分間違いないはず
「じゃあ…勝ったら食べるのだ!」
「貴女が?精々頑張って」
構えもしなかった
相手の妖力は己の霊力の半分以下
それとて厄介な手建てを持っているようには見えない
陰陽玉が霊夢を守るように旋回する
この玉には意識に似た物があるらしい
使い手を選ぶのも意識モドキだし、自動で動くのも意識モドキのお陰だ
「落ちろー!」
妖怪がそう言って弾幕を放つのが見えた
やはり弱小と言ったところか、隙間が多い
……ただスペルカードルールを守っているのは賞賛しようか
数年前に発行されたルール…スペルカードルール
いわゆる弾幕ごっこという物、遊びだ
血を血で洗う戦闘より、美しく雅な遊びを…
"誰かが"決めた…その誰かについて記憶はあるがモヤがかかって見えない
まるで誰かが見るのを禁じているかのようだ
母に聞いても有耶無耶にされる
…知られたくないのだろうか
そう思いながらお祓い棒を振るい上げたのだった
〇
「銃を構えろ!」
散発的な銃声が聞こえる
この屋敷の中に不法者が現れたようだ
ナイフや銃で武装した物騒な奴ら
…お嬢様の言われた通り、ここは物騒だ
「はぁ」
ゴミ掃除は朝に終わらせたはずなのに
メイドは頭を抱えてため息をついた
そして、その太もものホルスターからナイフを取り出す
時計を持ち、その針を見た
動きもしない、時計の針
ピタリと一時停止されたかのように止まった針
それは針だけに限らず、この世界にまで及んでいた
動かない、世界は止まっていた
動けるのは、彼女一人
「…お掃除と行きましょう」
銃を構えた男達
灰色の発火炎と灰色の空中に浮いた弾丸
それぞれが妖精メイドに向かっていた
止まった世界で動けるのはただ1人
──────そして、時は動き出す
〇
「あの異変の時、あんたはアンツィオを構え、狙撃体制に入った」
カチリとボルトを戻し、スコープを除く
距離はそれなりだ、屋敷が横10cm位の大きさである
このスコープなら更に大きく見える
「完璧なポジションに着いた
時が来たら狙撃する手筈だった︎︎」
夜なのに大地が赤く見える
空に浮かぶ紅い月が発する赤い光のせいだ
「その時に邪魔者が来たんだ、丁度博麗巫女に追い払われた闇妖怪にな」
「いてて…そこで何してるのだー?」
ふと声がした俺はアンツィオ持ち立ち上がって、そちらを向いた
幼女だ…凄い幼女、ロリだ
ただ、瞳の色は紅でこんな天気の時に人はここに来ない
迷ったとして既に妖怪に食い殺されているだろう
「観察だ」
「何のだー?」
「あんたはやり過ごすために'観察"と嘘をついた
狙撃の邪魔だったろうからな︎︎」
妖怪は何のと聞いてきた
俺は面倒になり、アンツィオを館に構え直した
「あの館を…不気味と思わないのか」
「んー…分からないのだ」
分からないか
人間から見て悪趣味や気味悪と思われても妖怪はそうとは思わないのかもしれん
こいつと俺の感性は方向が全くと言うほど違うからな
「あんたはいつまで経っても襲わないことに疑問を感じた
だからさりげなく、天気を聞くように言ったんだ︎︎」
「食わないのか?」
「ん…食えないのだ…」
がっかりとした様子で妖怪は言った
何か理由でもあるのか?能力に関係でもあるのか?
そうおもっていると、妖怪は更に言った
「れいむから今日は食うなって…負けたから」
「博麗巫女に…」
先程弾幕ごっこが見えた
あれはこいつと博麗巫女との戦闘だったらしい
うざったかったので途中狙撃しようと思ったが…早まらなくてよかった
「あんたは安心しきった訳じゃなかった
口約束を妖怪が守るとは思わなかったからな︎︎」
「いつまでいる気だ」
「帰るのだ」
そういうと、妖怪は闇に包まれた
そのままふらふらしながらどこかに飛んで行ってしまった
…結局なんだったんだろうか
本当に気まぐれなんだな、妖怪ってのは
「…」
短い溜息をついたのち、スコープを覗いた
「あんたが使っているアンツィオは妖怪の賢者に破壊された物だ
41cm砲と同じ威力を持つ…"ファイガ"︎︎に会うのは大変だった」
…そろそろだ
そろそろ…皆殺しにされる筈だろう…
紅魔館の屋根が吹き飛ぶのが見えた
あそこは確か玉座の間の…
ならば─────────
〇
「ここはこれ以上通しません!」
「これ以上って通してるじゃない」
何矛盾を当たり前のように言ってるんだこいつ
霊夢は変なものを見るような目でそいつを見た
中華服に帽子をかぶった赤髪の女
拳法の構えをした様子だ…拳法て…
…というより
「貴方ここのルール知ってる?」
「弾幕ごっこですか?知ってます」
「ならこれらは何?」
霊夢が言いたかったのはこの惨状だった
五六人程の人間の兵士が死んでいた
人間の、だ
幻想郷で人を殺すのは御法度である
それを知っていて殺したのか?
「あちらから襲いかかってきたんです
正当防衛は妖怪に適応されないと?︎︎」
「…そう」
母が言っていた反対勢力の奴らだろうか
数年前にあった"鉄嵐異変"…もとい人と天狗の戦争
バレットストームとも言われたそこはまさに現界に現れた地獄だったそうだ
人里から見える戦火、人を吹き飛ばす嵐
その勝敗は天狗の勝利だったのだが、残存勢力は居るらしい
その時に別のところに配属されていたか…又は地獄の生き残りか
「まぁいいわ、それより通して欲しいの」
「無理です、絶対に通すなと言われているので」
「…通してるじゃない」
霊夢がそういうと、彼女はダンッと地面を踏みしめた
まるでそれをこれ以上指摘されたくないようだ
「紅美鈴…参る!」
「そう」
肩苦しい名乗りを切り捨て、霊夢はお祓い棒を向けた
幼女でも大人でもやることは変わらない
妖怪相手なら、尚更それは変わらないのだ
〇
「あんたは博麗巫女が吸血鬼を追い立てるのを待っていたはずだ
狙撃のタイミングはそこしかないからな︎︎」
スコープを覗く
先程からずっとこれである
少し前に玄関とも呼べる門で凄まじい光が見えた
多分博麗巫女が門番をぶっ飛ばした音だろう
あの門番には五六人程仲間が殺されたから、できるだけ痛い思いをして欲しい
スコープを覗く
「あんたにゃ暇だったろうな
だが、そんな所に邪魔者が現れた
ルーミアよりも面倒な︎︎︎︎…盗人がな」
「おーい!そこで何してんだ?」
「…」
俺は闇妖怪の時とは違うようにアンツィオを置いて立ち上がった
声の方向は上だ、顔をそちらに向けた
そこには魔法使いが居た
見たまんまの魔法使いと言うやつだ
とんがりボウシに飛ぶ箒…正に魔法使い
…見た目だけじゃないといいんだが
「何も、眠たかっただけだ」
「そうか…?何か狙っていたような気がするが」
アンツィオはバレている
俺はストックを蹴り上げ、バレルを掴んだ
嘘は通じない…しかし本当のことを語る訳にもいかない
「気のせいだろ」
「そんなもんもっててよく言うぜ?」
人間…だろうか?
金髪に黄色の目というなんとも妖怪らしい見た目をしている
質問をして、答え次第では殺するか
「…人か?」
「何を当たり前なことを!普通の魔法使いだぜ!」
…人らしい
普通の魔法使いとはこれ如何に
魔法使いという存在は普通では無いのだ
なんだ?いつの間にか幻想郷では魔法使いは普通になったのか?
妖怪の方が普通である、全く
「館に行け、求めるものはそこにある」
「あんたはとにかくその魔法使いを行かせたかった
物凄く面倒な予感がしたからな
…それは当たってしまったが︎︎︎︎」
俺がそういうと、彼女はニィッと笑った
とても面倒な予感がしてきた、何故だ
「その前にお前を倒す」
…なんでだ
ここでただ狙撃銃持って館見てただけじゃないか
どこに怪しいことがあると?魔法使いとかほざくお前の方が怪しい
「…邪魔をする気か?」
「もちろん!お前が何かを殺す前に私が懲らしめる!」
そう言って彼女は六角形の物体をこちらに向けた
陰陽玉の印字がされた、何かのアイテムらしい
…魔力を感じる…マジックアイテムか?
俺がそう考えていると、全身が鳥肌を上げた
嫌な予感なんてものじゃない、消し炭にされる程の寒気
「クソ」
「恋符・マスタぁぁぁ………スパアァァアアク!」
俺が崖から飛んだ瞬間、俺のいた所を閃光が埋めつくした
あまりの眩しさに、そちらを見たくないほどだった
…クソッタレが
俺は悪態をつきながら空中に留まる
飛行のイロハは何とかこなした
…何時間でも飛べる自信はある
「あー、落ちなかったか…痛くなく済んだのに」
「後悔するなよ」
事実上の宣戦布告
そしてこちらは反対勢力の者
理から弾き飛ばされた居場所無き者達
無法者達の集団、時代遅れ
…ごっこ遊びが通用すると思うなよ?
次の小説
-
キヴォトスに霊夢が来る話
-
幻想郷が現実世界に攻め込む話