調査と意気込んだもののやることはただ歩くことである
この歳だとまだ足腰に負担がかかろうと無茶を通せる
若さというのはとても良い、母は若さ関係無かったけど
30前半か後半だと言うのにハリの失われない肌、たるまない目、不老不死かな?
それよりもここらの呼吸のしずらさである
適当に歩いているとどこかの森に入ったようである
そこまでの過程を何も覚えていない
幸運にも妖怪が来なかった程度にしか、本当にそれだけ
俺が不味いとでも思ったのか、もしくは他に要因があるのか
ただ幸運としか思っていなかった
「…でかいキノコだ」
この森に入って暫くすると大きなキノコが現れた
何かを放っている様子には見えないがこれだけ苦しいと何かを放っているように見える
色はケバケバしく、見た目から食えたものでは無いと察せられる
あまりにキモイ、今腹が減ってなくてよかったよ
俺はそのキノコの胴体を人差し指でなぞり、舐める
「…ちっ、やっぱり毒だな」
ピリピリとした感覚が舌を汚染していく
どうも麻痺系の毒がこのキノコの成分に含まれているらしい
そう思ってもう一度、今回は指全体で撫でるように触る
そしてナイフを使い破片を切り取る…破片はポケットにしまった
ふむ、これで問題は無いだろう
「な、…あぁ?」
また歩き出そうとすると体が倒れる
人差し指から足の先に至るまで何も動かせない
畜生、やらかしてしまった…俺は一瞬で理解した
あのキノコ思いのほか毒の回りが強く、毒自体もかなり強い
それこそ、ひと舐めすれば倒れる程に
もし一口でも食べてしまえば…
そう思うと体がぶるりと震える、麻痺して震えないけど
今回幸運だったのは倒れた場所が草むらであったこと
それと服がこの奪ったものであることだ
そして…意識が消えるように無くなった事か
もし妖怪に見つかって食い殺されるなら、それは良い
苦しまずに死ねるんだったら、死んでやる
そう思いながら、俺は消える意識に全てを託した
〇
「…?」
俺はどこかで目覚めた
起きた瞬間伝わってきたのは柔らかい感触
俺が倒れた場所は草むらだ、ベッドじゃない
しかし、自分はベッドに寝て…否、寝かされていた
どうも誰かに助けられたらしい
…魔法の森に助けなんて来るんだな
そう思いながらため息をついた
「あぁ、起きたのね」
ため息をついた瞬間、横から声がした
俺は瞬間的に太腿のホルスターにあるM1911を取り出す
そして何も躊躇いもなく引き金を引いた
…弾けた
いや、どちらかと言えば外れたの方が正しい
スライドが宙を舞い、地面に落ちる
俺は何をされたのか分からなかった
「自壊の魔法よ、よく使われるから対策代わりのね」
「…そうかよ」
見たところマガジンは刺さったままだった
どうも俺が寝ていた間に魔法を仕込んでいたらしい
俺はふんと少し悪態をついた
「助けれてくれた恩人にそんな態度をとるのかしら?」
その金髪はそんなことを言い出した
そんなことを言う割にはずっと手元で人形を弄っている
お前だろと俺は軽くため息をついた
「…しるか、妖怪に言う礼も無い」
俺はそう言った
実際その通りのことだった、言う礼なんて無かった
そう俺が黙りこくっていると彼女が口を開く
「私は魔法使い、元々は人間よ、妖怪とはまた違った存在」
彼女はそう言った
とても信頼したくない言い分だがどうも妖怪では無いらしい
なんだがそうじゃないと言いたい部分はあるが。
とは言えど皮肉を言いたくなるのは己の性か
「…態々人間を捨てるとはな」
「魔法使いになるには人間を捨てるしかないのよ」
「そうかよ」
そう言って俺ベッドから足を出し、地に足を着く
そのまま落ちたスライドを取り上げる
どこも破損した箇所は無い、本当に自壊の魔法の様だ
「…どうして俺を助けた」
俺は銃のスライドを戻すのに悪戦苦闘しながら問いかける
実際問題、あそこで俺を助ける意味はどこにも無い
なぜならこの服装からして妖怪の敵だとわかる筈だ
それなのにこいつは俺を助けた、何故?
そう問いかけると彼女は答えを返す
「どうしてって、人が倒れていたら普通助けるでしょう?」
「そうか?この服装で?」
鎌をかける
こいつが文の言っていた反乱軍を知っているのか
そう思っての質問だった
「ええ、"その服装で"」
ここでようやく彼女は俺を見た
青い碧眼が俺のことを見る
どうやら知っていたらしい
そうすれば更に疑問が湧いてくるわけで…
「じゃあなんで尚更俺を助けた、敵だろうが」
「貴方がそいつらの人間じゃないからよ」
そう彼女は言った
どうやら俺が奪った服というのはバレていたらしい
彼女は何かを懐から取り出した、鉄の糸に2枚の鉄板がある
その鉄板には何かの文字が彫られていた、日本語だ
「これは認識票、ドッグタグね」
「どっぐたぐ?なんだそりゃ」
「外じゃ犬にこれと同じようなのを付けるらしいわよ」
「はぁ、それを人間に付けたと」
「正確には同じようなのを付けたら皮肉られたって話しね」
そんな雑学を俺に並べられても困る
こちらの教育はクソ程に等しい
どっぐだぐという単語しても恐らく英語と呼ばれる奴だ
母がサノバウ"ィ"ッ"チ"とか言ってたけど意味は分からない
というか分からなくてもいい気がする
「で、それがどうした」
「これは奴らの…まぁ身元確認証みたいなもの、自分が誰か示す為にある」
「で?お前はそれと名前が違うからあの組織の人間では無いとか思ったわけか?」
「その通りだし、それに…銃の扱いも慣れて居ない様だしねぇ」
ようやく銃を復元できた俺に彼女はそう言った
「ふん」
実際俺はその組織の人間では無い
これは適当に死体から剥ぎ取った物だ
これに関しては隠す意味も何も無い
俺はそう思った
「…確かに俺は組織の人間じゃない」
スライドを引いて薬室に弾があるのを確認するとホルスターの戻す
彼女が敵では無いことが分かったが、それきりだ
それ以上は何ない
「世話になった、じゃあ――」
そう言って立ち上がり、歩こうとした時だった
急に足から力が失われて体が地面に打ち付けられる
疑問の声は口から零れることは無かった
…少しは予想をしていたからだ
「麻痺毒があのキノコにはかなり含まれてるの、しかも数分で効く即効性」
「…先に言いやがれ」
「言おうとしたら出ていこうとしたじゃない」
彼女は不満げにそう言った
俺は両腕で立ち上がろうとする
しかしまあ、どうも少し筋肉が麻痺しているらしい
思いどおりに力が入らないのだ
「全く、少しは信用しなさい」
そう言いながら彼女は俺を抱え上げた
ひょいと言う擬音が入りそうなくらい簡単に
上半身は動かせたので会話は難なく出来た
「俺は重いか?」
「どうでしょうね」
そう言って彼女は俺をベッドに乗せた
抵抗しても意味が無いのは分かりきっていたので俺は何もしなかった
出来れば振り払いたかったが、出来なかった
「安静にしなさい、私から言えるのはそれだけよ」
彼女はそう言って人形弄りにもどる
俺はそれを少し眺めて、外を見つめた
魔法の森らしく、瘴気が蔓延している
よくもまぁ自分はこの中を平気で歩けたものだ
あのキノコさえなければ普通に進んでいたことだろう
既に日は沈んでいた
「どのくらい経った」
「半日、凄いわよ…妖怪ですら一舐めで一日中動けなくなるもの」
「そうか」
俺はそう言われて手のひらを眺める
既に体の汚れはなくなっていた
病人だからってここまでやってもらう必要は無い
落胆のようなため息が漏れ出た
俺は少し悩んだ後にまた外を見始めた
その片手間のように、会話をする
「俺の体を拭いたりはしてないよな」
「ええ、拭かせてもらったわ」
彼女は手も止めずにそう答える
そんな彼女に対して、俺は…
「そうか…同居人が居るみたいだな?」
彼女対して何も思うことなく、そういった
次の小説
-
キヴォトスに霊夢が来る話
-
幻想郷が現実世界に攻め込む話