スキマに愛された大尉という人間について   作:回忌

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白色の同居人

空気が凍った気がした

明らかに彼女の様子が変わった

先程まで忙しなく動いていた指は動くのを止めている

 

静寂の中、彼女が先に口を開いた

 

「なんの事かしら」

 

「どうも落ち着かなくてな」

 

先程から俺はおちつけない

こう見えて頭の中はごちゃごちゃとしている

面白いくらい何も分からない、分かりきっているが

 

「さっきから何かが動いてるんだよ、ガタガタと」

 

「…気の所為じゃない?」

 

「気の所為?バカかお前は」

 

先程から物音がする

 

それだけで落ち着かなかった

それももうわざとと言うくらいうるさいこと

どんどんと腹が立ってくる、動けないのが腹立たしい

 

「…紅茶の匂いもするしな」

 

ついでの感想だった

先程から濃い香りが漂ってくる

それにアリスも今気づいたらしい

 

…何気に嫌そうな顔をした

 

「紅茶くらい飲むわ、私を誰だと?」

 

「ずっと俺の横に居たのに、いつの間に作ったんだ?」

 

「…えぇ」

 

俺の質問に対する答えは何かの返答

しかしその答えは俺の求めていたものだ

それに対してオレが何かを言おうとすると…

 

 

 

 

 

「もぅ、分かってるなら最初から「出てこいー!」とか言いなさいよ」

 

「母さん…なんで帰ってなかったの…」

 

ドアを開けて、白髪の女性が入ってきた

それに対してもう目に見えて嫌そうな顔をして彼女…名前しらないな、そういえば…が迎える

その女性はとても柔らかい笑みをしてこちらに歩いてくる

 

「こんにちは、人間」

 

「…そう言うお前は人間じゃないな」

 

俺は笑みを向けてくる女に明らかな警戒をしていた

恐ろしく強い何かの力…恐らく…魔力

少しだけ聞いたことのある話だ、母から少しだけ

 

確か幻想郷のどこかに魔界があって、そこには人が住んでいるのだとか

 

「…魔界人か?」

 

「あら知っているのね、わりと魔界人って知られているのかしら」

 

「そうでも無いと思うが」

 

本当にそうでも無いと思う

俺は村から外れて育ったから里の事情をよく知らない

それ故に母が情報の全てだったため知られているとかよく分からないのだ

事実だ、嘘は述べていない

 

「…それで、なんでここに留まっているんだ」

 

「私は元からこの家に住んでるわよ」

 

「そんな訳ないだろう、あんたみたいなんが普通住んでたら幻想郷が崩壊しちまう」

 

この魔力、そこがしれない

こんな奴が普通に隠居してるかのように幻想郷に居る?

んなこと信じられるわけも無い、当たり前だ

 

「それと、お前はこいつに嫌われているようだが?」

 

この白髪のことを言う度彼女の顔が歪む

まるで彼女のことが嫌かのようだ

 

「…こいつ、なんて名前じゃないわ

 私の名前はアリス・マーガトロイド、アリスよ」

 

「アリスか、アリスに嫌われているようだが?」

 

「アーンヒドイ、私何もしてないのに」

 

「過保護なのよ!母さんは!」

 

アリスは声を荒らげる

わりと落ち着いた性格と思っていたので少し驚いた

都会系とか言ってたか?これが外の世界か…

 

「…誰だ、あんた」

 

それはそれとして俺は質問することにした

彼女達の言い争いについて俺はほぼどうでもよかった

それよりも魔界人であることに興味が言った

 

あ?魔法使い?知らん知らん

 

「ああ、私かしら?

 神綺っていうのよ、アリスの母親よ」

 

「厳密に言えば全ての魔界人の母親、この人魔界作った神様よ」

 

アリスがとんでもないことを言った

目の前のたくましいサイドテールを持ったこの女性は魔界の創造神というのだ

そんな人物がただひとりの創造物のためにわざわざ幻想郷に来ている

 

そんなことに勿論ただの人間であるこの男は恐怖して――

 

 

「へー、親がいるってのはいいな」

 

全く別のことを言った、なんなら恐怖すらしてなかった

 

「そうそう!そう私を称え崇めな…――えぇ?」

 

この男にとって生まれはどうでもよかった

たとえ神あろうとも態度を変える気はサラサラなかった

どんな荒魂でも、彼は屈する気はなかった

 

 

尚これが妖怪が相手となると話が変わる

 

一気に妖怪首置いてけになる

 

「親とはまた違う存在だけどね」

 

「まぁ、血の繋がった親子には見えんな」

 

男から見れば神綺がアリスに依存しているように見える

というか何故か知らんがとても大切にされている?何故?

まぁ、気にすることでもないけど

 

「いやねぇ、久しぶりにアリスの家に来たら男がベッドに寝てたからねぇ

 もしかしたらこいつアリスの夫!?こいつが!?って」

 

「母さん!」

 

「過程が吹っ飛んでやがる」

 

なんともまぁ酷い方に思想が飛んでいっている

何をどうしたらそんな反応に…普通保護とか何か思わないのか

彼はそう思った…彼は"そちら"の知識はあまり無かった

ただ正常な反応として、ヤバいやつだと思った

 

…ただ、"そちら"の知識がなかった故に

 

 

 

 

「だからそのベッドで"ズッコンバッコン"ヤッたあとだと思ってー」

 

「母さん!!!」

 

神綺の言う冗談に何も気付けず

 

「俺も(戦闘をこんな場所で)"や"るわけないだろ」

 

しかしも言い方も悪かったようで

 

「へぇ?ここじゃなかったら(アレを)やるのかしら?」

 

とても卑しい瞳をした彼女はそんな質問をした

彼女の質問に彼は当たり前のように

 

「あぁ、(戦闘を)するとも」

 

と、答えた、大事な所が全て抜けていた

2人とも「ここまで言えば察するだろ」という気持ちが強く、結果これである

2人の勘違いも甚だしいというところだろう

 

…そもそも彼が"そういう"ことを知らないのも問題だとは思うが

 

 

(ふふ、中々面白い男じゃない)

 

 

そんな彼の前で神綺は目の前の男に興味を持った

初めて見る人間…中々の逸材とも思った

この見なくてもわかる霊力の奔流、そしてそれを制御する意識

それ全てを加味すると、アリスの嫁でも納得する人物

 

…が、しかし

 

(…んん…?)

 

突然、妙な感情が浮き上がってる

なぜだか分からないが、ゾワゾワとした嫌な感覚がする

とても感じたくない、もう離れていたい、そんな感覚がした

 

それはアリスも同じだったらしい

 

いや、軽めだった

 

「…、…」

 

少しだけ顔が無表情になる

何か嫌なものを近くにしたような…

 

あぁ、そうか

 

「ふん、嫉妬深い奴め」

 

この感情を久しぶりに思い出した

 

そして、あいつも

 

嫌味、憎しみ、拒否、皮肉

 

負の感情、生きていればいくらでも感じる感情

嫌い、簡単に言えばそんな感情が彼に対して湧いていた

今すぐにでも殴って帰りたくなる程の嫌な感情が溜まっていく

 

(…が、まぁ、脅し程度か)

 

まだ抑えられる程度の感情

しかしこれ以上大きくなると神綺とて耐えられない

アリスの夫候補をこの場で潰したくない、それが神綺の中の感情だった

 

 

 

「今夜っきりの付き合いだ、直ぐに居なくなる」

 

彼はそういった

彼女達の顔の陰りを見ての発言だった

ずっと、顔を見られていたらしい

 

「私はもう帰るから、あなたより直ぐに居なくるわ」

 

「どうせ直ぐに来るくせに?」

 

人形作りをしていたアリスが同時進行しながらそんなことを言った

それに関しては男も同じことを思っていたところだった

ただ、当たり前か分からなかった為言うのを躊躇っただけだ

 

「ええ、どうせ来るわ、この人は」

 

「えーんひどい、じゃあ帰るわ」

 

そう言うとすぅっと消えるようにどこかに行ってしまった

薄く円が見えた、恐らく魔法陣…ということは魔法だろうか

魔法に関しては全く知らないので本当にどうでもいい

霊力関係ならまだ興味を示すが、それ以外は知らん死ね

 

ここはいいところとはいえない

 

男は率直にそう思った

 

鬱蒼とした草木が生い茂り、何もかもがどんよりとしている

やる気を無くす濃霧に人体に影響を与える瘴気

これに加えて妖怪と変なキノコ達だ

 

故に人がここに来ることはあまりない

ていうかあって欲しくないことだ

 

そんな嫌われた森に居る男は瞼を閉じた

あれだけ話を続けると、眠気も迫ってくる

 

故に、彼は瞳を休めることにしたのだ

 

 

 

 

寝静まったとある家

家主である魔法使いも既に人形を置き、休眠に入った

魔法使いと化した彼女にとって不必要であるそれをやっている

先に生まれた魔法使い、魔女が見たらなんと言うことか

 

そんな家の一室、保護された客人

 

魔女の善意にとある人物は感謝を送る

 

「ありがとう、貴女が魔法使いを偽ってくれて」

 

その顔横に小さな謝礼を置いて、彼女はあの部屋に向かう

己の意中の男、手のひらで踊り狂う男

自分自身の意思で進んでいる、確かにそんな男

 

「ふふふ」

 

顔を撫でる

人差し指が顔の輪郭をなぞり、ピッと切り裂く

鋭い爪が頬に切り傷を生じさせる、血が流れる

 

 

赤い、紅い、紅い、あかい…

 

キラキラとした反射が思わず唾を飲み込む程の妖艶さ

人間の血が放つとは思えないカガヤキ

 

それを零れないように綺麗に指で掬い、口の中に運び込む

 

「あぁ…、……」

 

思わず感嘆の声が零れる

震える体を抑えることが出来ず、快感で足がガクガクと震える

この魅惑の味を何度口に運びたいと思ったか

彼が無意識に結界を張っているおかげで今まで近付けなかった

 

しかし、この魔女のおかげで彼は少しだけ警戒を解いた

 

その少し、結界が緩めば簡単に入れる

強引な手段を使わずとも、簡単に

 

「ああ、美味しい、とても甘美だわ、貴方の血」

 

彼の鼻先と私の鼻先が触れそうなくらいに近づく

彼は静かな寝息を立て、その瞼が開くことは無い

今までになく深い眠りに彼はついていた

 

「彼女がいるから?ああもう嫉妬しちゃうじゃない」

 

別の部屋で寝ている魔女に嫉妬を飛ばしながら彼女は空間を切り裂く

切り裂かれた空間は瞳となり、無数の瞳を生み出す

その禍々しい空間に身体を入れ込み、少し振り返ったかと思えば、空間はいつの間にか消える

 

 

この部屋には、最初から何も無かったかのようだった

 

 

ただ、彼の頬にある切り傷を除けば、の話だった

 




現在約1986年

彼はまだ16歳


ただ、それだけ

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