一夜の過ちから始まる   作:たーなひ

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ふと浮かんでおもろそうやったから書きました。
ギャグ寄りではあるよ。


一話 酒は飲んでも

 

 

朝。

 

 

高く上った太陽の光で、微睡む間も無く意識を覚醒させられる。

 

 

(クッソ頭痛ぇ。…てかもう昼過ぎじゃねぇか)

 

 

かっこつけた導入のつもりだったが昨日の酒でも残っていたのか、もう昼過ぎだというのに時計を見るまで気付かなかった。

 

 

「ハァ……」

 

二日酔いの頭痛と二日酔いとはまた違うっぽい原因不明の気怠さで、俺は思わず重苦しい息吐いた。

 

 

 

さて、昨日は何をしていたのだったか。二日酔いで痛む頭を必死に回した。

 

確か深層の遠征から帰ってきて、帰還祝いで馬鹿ほど呑んで飲まれて……。

 

 

 

そんで…。

 

 

 

 

 

(おいおいおいおいおいおい)

 

知らず、頬を冷や汗が伝う。

 

(…そう…そうだ。流れで俺が童貞だって話になって……んで歓楽街の……)

 

そこまで考えて、俺は隣に目を向ける。

 

そこにあるのは、ちょうど人ひとり分の、呼吸によって上下する膨らみ。布団を頭までかぶっているが、はみ出した黒髪は滑らかだ。

 

 

 

「フーーーー…」

 

(よし、落ち着け俺。改めて状況を整理するんだ)

 

まず、大まかな経緯は思い出した。

 

深層への遠征を終えて帰還した俺たちは、帰還祝いのパーティーをした。

その後、酔っぱらった俺は歓楽街に繰り出し、童貞を捨てるべく道行く娼婦に声をかけた。

面白半分に付いてきた仲間たちの期待を裏切り、まさかの一人目でお相手をゲット。

驚いて声も出ない仲間たちを置き去りに、男と女は夜の街に消えた…。

 

 

(ってなんで最後三人称視点なんだよ)

 

セルフツッコミを入れるほどには落ち着いたが、ついに童貞を捨てたことに実感を持った俺は人知れず達成感に酔いしれていた。

酒の力とは恐ろしいもので、普段なら絶対に来ない歓楽街に来て、その上娼婦を引っ掛け一夜を過ごす…などといった俺にとってのある意味偉業を成し遂げた。

 

 

(…で、問題なのは、行為の内容とかどんくらいやったかは兎も角、その相手すらも覚えていないってことだ)

 

そう、そこが問題だ。

一夜の過ちだとか、お酒に任せてというのは、普通に俺の倫理観的には”BAD”だ。少なくとも、例え娼婦が相手だったとしても、朝起きて『何も覚えてません』というのは些か不義理に過ぎるだろう。

 

 

 

 

「…………。……フーーーー」

 

今日何度目かもわからぬ溜息を吐きだした。

 

(ま、まあ、やっちまったもんはしょうがない。とにかく、この子が起きる前に顔ぐらいは確認しないと…)

 

ついに、男は意を決した。

 

(そうだ。俺は冒険者だ!この程度で怯んでどうする!)

 

 

 

が、つい昨日まで童貞だった男には、この─恐らく全裸の女性がいる。しかも童貞を捧げた─布団をめくるには、経験も覚悟も、何もかもが足りていなかった。

 

 

(だ、だが…だがしかし!先にこの女性が目を覚ましたとして、そこで始めて彼女を見た俺はどうなる?

 

『あ、あ、あ、あ、あの…その…』と、気まずくなってしまうことは必須!!)

 

昨晩どのような醜態を晒したか分からない初めての女相手に、まともに話が出来る自信などあろうはずもない。

 

 

(だが、ひとまず顔を見れば……なんか覚悟の準備ができる……気が…する。それに、そう。顔を見て何か思い出す可能性もある!)

 

そうだ。色々な可能性もあるし、その方が確実にベター!

 

(勇気を出すんだ俺!階層主との戦闘に比べれば……まだマシ…だ!)

 

『正直、階層主との戦闘の方がいいなぁ…』と零す小さな俺を端へと追いやる。

 

 

これが!!俺の!!!!”冒険”だぁぁぁぁぁ!!!!!

 

 

ついに男が!!布団をめくる!!

 

 

 

 

 

(あ、なんかこれ、銀魂で見たことある気が………ん?あれ?銀魂ってなんだっけ?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「?????????」

 

絶句。

 

都市有数の冒険者であっても処理しきれない情報が流れこんだためだ。

 

 

 

 

 

艶やかな、腰ほどまであろう長い黒髪。

 

日焼けではなく、アマゾネスの種族的特徴でもある褐色の肌。

 

長い手足と、引き締まりながらも魅力的な体。

 

あとすごいでかい胸。

 

 

 

 

結論を言おう。

 

布団の下にいたのは、まごうことなく。

 

 

イシュタル・ファミリア。その主力である戦闘娼婦(バーベラ)の中でも、トップクラスの実力を持つ女傑。

L()v()()。二つ名は『麗傑(アンティアネイラ)』。

 

名は、アイシャ・ベルカ。

 

 

この女傑が隣でスースーと寝息を立てていたのだ。

 

 

 

当然、これは驚くべきことだ。

二大派閥のような規模でなければ、Lv3以上は主力であり、その名は多くの者が知っている。『麗傑』も例外ではなく、イシュタル・ファミリアの幹部を務める彼女を知らぬ者はそう居ない。

 

それが、隣で寝ている…つまり、昨晩のお相手はこの『麗傑』、アイシャ・ベルカだったわけだ。

 

 

これによって、男の脳はショート。無理もないだろう。酔って捧げた童貞のお相手が、まさかのイシュタル・ファミリアの幹部。

例えどんな経験豊富な男であっても、この状況であればパニックを禁じ得ないだろう。

 

 

 

 

…………が。

 

 

確かにこの事実が男に困惑をもたらしたことは間違いない。

 

だが、()()()()()を些事と割り切れるほどの衝撃が、男の脳内を襲っていた。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

なるほど。

 

わかりやすく言うならば、俺は転生者か、あるいは憑依かというやつなんだろう。

 

 

かつて西暦2023年を生きていた俺は、どうやら死んだらしい。

らしいというのも、俺がよく覚えていないからだ。

 

まあ、その辺はどうだっていい。

 

アニメを見て、大学に行って、友達と遊んで、サークルでサッカーをしたりといった日常の思い出が途切れ、次に記憶があるのは農村での幼少だ。ドラゴンのキーホルダー、戦隊ヒーロー、カタナに憧れる多くの少年の例に埋もれず、英雄の都オラリオに憧れた少年は、齢10歳にしてオラリオに凱旋した。

 

まあ、そこからは色々あり、現在に至る…というわけだ。

 

 

…で、なにより特筆すべきは、この世界、“ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか”、通称ダンまちの原作知識があるという点だ。

 

これらが、二日酔い+頭痛+童貞卒業(前世から続く)+アイシャという特大の衝撃によって呼び起こされた…といった感じだろうか。

 

 

まあともかくとして、晴れて…晴れて?

 

俺は前世の記憶を取り戻したのだった。

 

 

 


 

 

 

アイシャ・ベルカ。イシュタル・ファミリアの幹部であり、Lv3の戦闘娼婦(バーベラ)

周囲の団員からの信頼も厚く、面倒見のいい頼れる姉御ポジションを確立している。色欲に忠実ではあるが、彼女を知る者がその人柄を悪く言うことは無い。アマゾネスらしいサバサバした性格とまとめても良いだろう。

 

だがその人柄故に、彼女はこの上なく無様な『失態』を演じた。

たった一人の哀れな後輩を救うため、彼女は無茶をしたのだった。その代償として、Lv5による蹂躙と、『魅了』という枷をつけられた。

 

それ自体を後悔はしていない。

結果としては問題を先送りにしただけではあったが、彼女の命は先延ばしに出来たのだから。

 

 

 

…とは言ったが、全部忘れて今まで通り生きていけるか、と言われれば当然否だ。

 

骨の髄のさらに奥まで魅了されつくしたアイシャは、少し変わってしまった。

 

(はぁ……)

 

見る男見る男、全てに興味を感じない。元より誰彼構わずというわけでは無いが、自分よりも弱い男の相手をする気など欠片も起きなかった。

 

それも、当然と言えば当然だ。

美の神による魅了は、抗えぬほどの退廃的な快楽と幸福感をもたらす。それを味わった後に、満足に思える夜を過ごせるとは思えなかった。

 

 

(せめて、あたしよりも強い男でも居れば、良いんだけどね…)

 

あわよくば、あの屈辱的な快楽を忘れさせてはくれないだろうか……。

 

 

 

 

そんな折であった。

 

 

「ヘイ!そこの美女!!」

 

Lv3ともなれば感覚も常人とは比べ物にならないため、音の方向や視線を容易に感じ取る。自分に向けられた声だとすぐにわかった。

 

ナンパか……と半ば呆れながらも振り返る。

 

 

「……おや」

 

少し、驚いた。

その男は、アイシャも名を知る男だったからだ。

 

 

男の名は、ライ・レインバック。

若干19歳という若さでありながらLv4に到達した、中堅派閥デュオニュソス・ファミリアの若きエースだ。

 

 

 

「どう?今夜、俺の童貞、貰ってくれない?」

 

ムードもカッコ良さもへったくれもない、最悪の口説き文句ではあっただろう。

加えて、側から見てもわかるベロンベロンの泥酔状態。

 

だがアイシャには、それがちょうど良いぐらいの、都合の良い男に感じた。

Lvで見ても、実績で見ても自分よりも強いのは明らかである上に、伝え聞く人柄もそう悪いものはない。

加えて、ベロンベロンに酔っている訳だから、最悪自分が楽しむ演技が出来ずとも覚えてない可能性もある。

最後に。童貞など久しく食ってないし、童貞なら自分のテクニックがあればどうとでも出来る。

 

 

そう結論を出したアイシャは、妖艶な笑みを貼り付けて答えた。

 

「良いよ。アンタのハ・ジ・メ・テ。あたしが貰ってやるよ」

 

 

 

 

 

 

自身のとっておきの部屋まで連れ込んだアイシャは一、二もなく服を脱ぎ始めた。元よりアマゾネスの服装は踊り子以上に薄着で過激であるため、布など2枚か3枚程度だ。

 

それに、アマゾネスは愛の言葉を囁いたり、風呂で体を洗って清めたりといったまどろっこしいことはしない。

『オラァ!脱げぇ!勃てぇ!!行くゾォ!!酒池肉林じゃうおぉぉぉぉぉ!!』みたいな感じだ。

 

まあアマゾネスと言えども娼婦であるため、一発やってお仕舞い、なんて事にはしない。

が、とりあえずアマゾネスの交尾は全裸になる所からだ。

 

ライをベッドに押し倒し、手際よくズボンのベルトを外し、下着を破り捨てる。………破り捨てるぅ!?

 

 

 

さてさて、新進気鋭若きエースの童貞チ○○はどんなもんかな?

 

 

 

そんな、ワクワクした気持ちでソレを見たアイシャはしばし絶句した。

 

「……………、…………」

 

デ、デカァァァァァイ!!!

 

(こ、これで……童貞でこのデカさ!?まさか、ここまでとはね!)

 

経験豊富なアイシャをしてトップを争うレベルのバベルに、知らずアイシャも興が乗り始める。

 

 

「……フフ。優れた剣士だとは聞いちゃあいたが、まさか下の方もLv4……いや、Lv5並みだったとはね。驚いたよ」

 

「………まぁ、一度も鞘から抜かれた事もない、まっさらな剣なんですけどね」

 

「こんな剣の持ち主のハジメテを貰えるなんて光栄だね」

 

「お、お手柔らかに……」

 

「安心しな。あたしがちゃあんと、リードしてやるからさ…」

 

長い長い夜が始まったのだった。

 

 

 

 

 

 

一概には言えないが、こういったコトには勝敗がつく場合がある。

もちろんお互いが満足出来ればOKなのだが、先に限界に達する、あるいは気絶する、音を挙げる等々の勝敗をつける手段は存在する。

無論、決めなければならないものでもないし、考えながらヤル必要は無い。

 

 

だが、もしも今回、勝敗をつけるとしたら…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

アイシャの完敗であった!!!

 

 

 

まさに“蹂躙”!!かつて自身のファミリアの団長であるLv5にボコられた時以上に。

 

そう。Lv5─第1級冒険者─だったのはデカさだけでは無かった!体力!!精力!!技術!!あらゆる面においてLv5……いやそれ以上のポテンシャルを秘めていたのだ。

 

そして何より、()()()()()()()()()

例えるなら、フレイヤ・ファミリアのガリバー兄弟のように。まさに神レベルの相性の良さこそが、第1級冒険者を誰もまだ見ぬ頂ーLv10へと至るらしめる要因となったのだ。

 

 

 

そして、完全に、完璧に、完膚なきまでにわからされたアイシャ。

 

もはや魅了がどうだとか、相手の強さがどうだとかはどうだって良かった。何もかもを忘れて本能に付き従った。

 

男女はただ、ただひたすらに互いを求め、快楽を貪り続けた。

 

 

果たして、二人同時に互いに精魂尽き果て意識を失ったのは、アイシャの娼婦として…女としての意地だったのか、ライ(童貞)の限界だったのかは誰にも分からない。

 

 

(あぁ………この雄だ…………)

 

 

ただ、眠りに落ちるその瞬間に実感したこの事実こそが、アイシャにとって、女にとって何よりも大事な事だった。

 

 

 


 

 

 

 

 

 

目を閉じていても感じる光が少し強くなったことで、アイシャの意識が覚醒する。

 

未だ抜け切らぬ疲労感の中、瞼を開けると、そこには昨日と変わらぬ男が居た。

 

(あぁ、夢じゃ無かった。昨晩の交わりは、高鳴りは……本当だった)

 

 

こちらを見て、目があったまま固まっている男。

 

 

どうしたのだろうか。

……あぁ、そう言えば、彼は酔っ払っていたのだったか。まだ頭がボーっとしているのだろう。

 

私はただ一つ、確かなことを伝える。

朝方まで続いた長い長い闘いは、私だって事細かに覚えてはいない。

でもそれでも、愛する者と目覚めを共にしたときには。

 

昨晩声をかけられた時のような貼り付けた笑みではなく、ただ快楽を貪る笑みではなく、ただただ愛しいものへ向ける等身大の笑みを向けて。

 

 

「…おはよう」

 

 

そこにいたのは、女傑でも、娼婦でもない。

ただの、愛しい(ヒト)へとびきりの愛を向ける(オンナ)だった。

 




転生して、前世の記憶を思い出したのが今日って話ね。


童貞への偏見えぐい?気のせいよ。


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