ちな、推しはリューさん。あと何故かわからんけどダフネちゃん好きなんよな。
(……OK。一旦…そう、一旦状況を整理しよう)
未だ混乱は抜けきらないが、落ち着くためにも状況の整理は必須だ。
まず、前世の記憶が甦ったということ。
正直、考えたいことは山ほど、山ほどあるのだが、大体のことは一旦脇に置いておく。
次に、今の状況。
アイシャが隣で眠っている。つまりは、俺が前世から続く童貞を捧げたのは彼女ということだ。
まあ幸いというべきか不幸というべきか、顔を見たからか昨晩の記憶も大体戻ってきた。
昨晩の互いを求めあう…控えめに言って最高の経験だったといえる。
(あ~…クッソ良かったなぁ…)
これだけ気持ち良いものだと知っていたなら、変に意地を張って童貞を貫いていたりしなかったろう。
できればもう一回……いや、永遠に味わっていたいと思う。
……否、やはりこの際正直に言おう。
惚れました。
ハイ。
いや、聞いてほしい。ワンナイトを共に過ごしただけの関係なのは充分に理解しているし、娼婦相手に本気になるなんてどうかしているという意見もわかる。俺だって、仕事で相手をしている嬢相手に貢いだり、本気で恋したりするバカな男を馬鹿にしていたわけだし。
しかし、しかしである。
そんな理性を彼方に吹き飛ばすほどに彼女との行為は素晴らしかった。
『いや童貞が何言ってんだ。一人しか経験なんてないじゃないか』って言われれば反論などできないが、しょうがないではないか。男というのは馬鹿なのだから。
一応さらに言い訳をしておく。
元々、アイシャ・ベルカというキャラは普通に好きなのだ。信頼出来るし、最初からいい人感あふれていたし、漢気あふれるいい女だし、強いし、スタイルも良いし胸もでかいと、悪い所なんて精々ちょっとえっちすぎるぐらいのもんだ。まあ、原作の描写でアイシャを嫌いになるような人はそういないだろうが、それでもキャラとして好感が持てるというのは間違いない。
……ちなみに、最推しはリューさんである。
いや、
なにせ推しランキングは塗り替えられたからだ。
すでに好きな女ランキングでも推しランキングでも二位以下に圧倒的大差をつけてアイシャがトップである。
ウダウダと言い訳がましくこの恋を正当化したが、結局のところ『一発ヤって良かったからずっとヤりたい』、だ。
(あ~あ、アイシャも俺と同じようなこと思ってくれてれば良いんだけどなぁ~…)
「おはよう」
その声に、俺は意識を現実に戻した。
見れば、
昨晩では見ることのなかった表情にドキリとするが、平静を取り繕う。
「…おはよう、って言ってももう昼過ぎだけどね」
「もうそんな時間か」
「うん。まあ…朝方までシてたわけだしね」
「それもそうだね。…んっ」
伸びをするために起き上がったことで少し声が漏れた上に、その生まれたままの上半身が露わになる。
さすがに俺も直視するのは気恥ずかしく、目を逸らしてしまう。
が。
伸びによってハァ~…と漏れ聞こえる吐息で我が愚息は反応してしまう。
頼む大人しくしてくれという俺の願いも虚しく、布団の上からでもわかるほどに膨らみ始める。
「フフ…」
小さな笑いが聞こえたので見れば、アイシャは俺の愚息を見ていた。
「や、これはちがくて!…そう!せ、生理現象だから!」
気づかれた恥ずかしさから、まだ何も言っていないのに言い訳らしいものを並べ立てる。
朝までシた後に起き抜けに興奮していると知られるのは何となく不味い気がしたからだ。
一体何が不味いと思っているのかは自分でもわかっていないが。
しかし、俺の内心を見透かしてか、アイシャは俺に寄りかかり、その豊満な胸を押し付ける。
「ちょ…あ、アイシャさん?」
今度は微笑ではなく、女の笑みで俺を見つめて。
「……ヤるかい?」
「ヤります」
即答だった。
結局、俺がファミリアの
あれから本当についさっきまでサカっていたが、さすがに互いに帰る必要があるということで、非常に非っっっっ常に名残惜しいが熱い口づけを交わしてから別れたのだった。
で、当の俺だが。
「あの……入れてもらってもいいでしょうか?」
「「「「無理」」」」
絶賛締め出され中であった。
一体何が起こってこうなっているのか……事実はこうだ。
昨晩、ライと帰還祝いをしていたディオニュソス・ファミリアのパーティメンバーの男性一行によって、泥酔していたライは歓楽街へと誘導された。
そこで、男どもに予想外の事態が起こった。
ナンパの成功。加えてその相手があの“
あまりにも衝撃的すぎる展開の速さに酔っぱらって正常な思考を失った男どもは、呆然と夜の街に消える男女を見送ることしかできなかった。
そして、思考が戻ってきた男どもはこの衝撃的な事実をファミリアのメンバーに伝えんと、本拠へと即帰還した。
本拠に帰ってきた男どもは、先ほどの事実をファミリアメンバーに言いふらした。
ここで、ややこしいことが起きた。
まず、事実として。件の彼、ライ・レインバックは、同ファミリアの一人の少女から恋心を向けられていた。
だがそれも当然と言えば当然のことだ。19歳という若さでLv4に到達したファミリアのエースで、容姿もそこそこ、性格も問題無い。
加えて言えば、どうやら男どもの話を盗み聞くところ、童貞だというではないか。童貞というのは評価が分かれるところだが、このファミリアの特色でもある高潔な女達からすれば『遊び人・だらしない』よりは遥かに好印象だった。
実際、ライに好意を寄せる少女も奥手で、控えめな子だったので、童貞と聞いて少し安心した節もあった。
そして、少女がライを好きということは女達からすれば周知の事実であった。気づいていなかったのは
だが、好意に気付かなかったライ本人が悪いかと言えば、そんなことはない。
少女は奥手でそれほど積極的なアピールをしていたわけではないし、周りも無理に引っ付けようとはしていなかったのだ。
で、悲劇は起こった。
何も知らぬ
例え娼婦が相手だとしても、好きな人が他人とヤるというのは少女含め女連中にとっては許されざることだったのだ。
だが、周りの女達は決して可能性を捨てなかった。
『だ、大丈夫だよ!何もせずに帰ってくる可能性だってあるし…ね?』と、わずかな希望にすがり少女を慰めていた。
いや、これは一方的な信頼の押し付けであったのだろう。彼に命を救われたことは何度もある。だから彼ならば…不可能なことでもきっとやり遂げてくれる。
午前3時。
まだ帰ってこない。口には出さなかったが、女達は『あぁ、もう1発ぐらいはヤっただろうなぁ』と考えていた。
午前6時。
……いや、逆に考えるんだ。聞いた限りではべろべろに酔っぱらっていたと言うのだから、何もせずに爆睡している可能性もある!
午前9時。
……。い、いや…だ、大丈夫……だよね?
午前12時。
ついに、このあたりで彼を信頼する人は皆無となった。
少女への慰めは、『きっと大丈夫だよ』から『きっと他にもいい人居るよ』にシフトしていた。
午後3時。
もはや悲しみや呆れを超えて、女たちにあるのは“怒り”であった。
午後6時。
もう日が落ちようという時間になって、彼は帰ってきた。
だが、女達は一縷の望みに賭けていた。何もせず、ただ寝ぼけていただけだったのだと、そんなふうに帰ってくることを。
だが、そんな望みは打ち砕かれた。
妙にツヤツヤな肌。
ナニかで体力でも消耗したのか、若干よろつく歩き姿。
そして何より、全身から漂う『俺、一皮むけちゃいました』感。
結果、女たちの怒りは爆発したのだった。
(いや知らんがな)
本拠の前で立ち尽くす俺は、意味の分からない女性陣の怒りに困惑を禁じ得なかった。
「いや、あの、ほんとすんません。や、ほんと」
「あんた、何が悪いかわかって謝ってんの?」
(で、出た!!『私がなんで怒ってるのかわかる?』に並ぶ世界三大答えの難しい問題!)
正直、ライからすれば頭から尻まで聞いても何が悪いのか一切わからない。
というのも、女たちが伝えた内容は少女の好意云々は省いているからだ。最も肝心な部分が隠された問題を解けと言われても分かるわけがないだろう。
「…や、もう、ほんと勘弁してください」
「は?だから何が悪くて謝ってんのって聞いてるんだけど?」
理不尽である。
「で、でも!確かに俺娼館行きましたけど、他の男連中だって普通に行ってるじゃないですか!なんで俺だけこんな責められてるんですか!」
「ぐっ…」
痛いところを突かれた女達。
極めて理不尽な怒りを向けていることは彼女たちにも自覚があるのだ。
だが、さすがにもはや冷めている少女の恋心を伝えてしまうのは不味い。
結果として、無意味な膠着が続いてしまっている。
だが、この膠着を吹き飛ばす妖精が現れる。
「あ……」
気付いたのは、門を挟んで通り側を見ている女達が先だった。
自分の後ろを見ていると気づいたライは振り返る。
「……団長か」
歩いてきていたのは、我らがディオニュソス・ファミリアの団長のフィルヴィス・シャリアだった。
俺たちに気付いたフィルヴィスは少し驚いたように立ち止まったが、すぐに先ほどよりも速い速度で歩き出した。
だが門は俺を入れないために閉まっているので、立ち止まらざるを得なかった。
「……何をしているんだ?」
不愛想に問いかけるフィルヴィスに、俺を締め出していた女達は戸惑いながらも答える。
「…ただ、雑談してただけ…です。だ、だよね?みんな」
「うん」「そうです」と続く女達を怪訝そうに見渡す。
だが、不躾に見られるのに不快感を覚えたのか、一人が「な、なんですか?」と聞いた。
「門を通りたいんだが、開けてくれないか」
そう言われて、女達は謝りながら即座に門を開けた。
「…………」
開けてもらったフィルヴィスだが、お礼どころか一瞥もすることもなく女達を通り過ぎて本拠へと入っていってしまった。
(空気悪っ!)
分かっていたことだが、団長様は相変わらず腫れ物扱いされている。
幸いなのは、あまりにも可哀そうすぎてあれだけ邪見な態度を取っても虐めとかに発展しないということだろう。
妙な気まずい静寂が続いたが、俺が「通って、いい?よな?」と聞くと「う、うん」と答えてくれたので、この気まずい空間を抜け出して無事本拠に帰還を果たしたのだった。
ライ「チソチソが『この雌だ』って言ってんだよね…」
アイシャ「子宮が『この雄だ』って言ってんだよね…」
圧倒的空気の悪さ。フィルヴィスさんさすがっす。
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