一夜の過ちから始まる   作:たーなひ

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感想評価ありがとナス!

正直誤字報告がないことにびっくりしてます。んなことある?


三話 ディオニュソス・ファミリア

 

 

(なぁにやってんだ俺はぁぁぁぁぁ!!!!!)

 

 

 

明くる日の朝。

俺渾身の心の叫びである。

 

色々、まあ、流れとかあるし。やっちまったもんはしょうがない。

昨日のことは切り替えていこう!

 

 

(……とか、そんなんどうでもいいんだよ!!!!!

ふざけんじゃねえよ俺!!!よりにもよって……

 

 

 

ディオニュソス・ファミリアってなんだよぉぉぉぉぉ!!!!)

 

 

 

 

 

さて。

無事前世の記憶を取り戻した俺であったが、昨日は一旦脇に除けた問題を直視するべき時が来たのだ。

 

(ディオニュソスはヤバイ。何がって、もうとにかくヤバイ)

 

あまりにもヤバすぎて語彙力の低下が起きた。

 

正直、オラリオにある数あるファミリアの中でも、屈指のハズレだ。

もしワーストランキングをつけるなら

 

一位 闇派閥(イヴィルス)全部

二位 フレイヤ

三位 ディオニュソス

 

ぐらいには入ってくる。

 

え?フレイヤの方が嫌なのかって?

そりゃそうだろう。死ぬ直前まで戦わされるなんて最悪だし、自由とか無さそうだし。

てかフレイヤ・ファミリアの利点なんてフレイヤとお近づきになれる以外には無いだろう。入りたいってやつはただのフレイヤの狂信者なんで関わらないでください。(偏見)

 

 

まあとにかく、後の展開をある程度知っている者としてディオニュソスはハズレもハズレと言わざるを得ない。

 

 

(いや、待てよ?)

 

しかし、よく考えて見れば、そこまで悪くないように思えてきた。

というのも、最後の方は確かにガチで最悪ではあるが、それまで…それこそ原作開始からそこそこ進むまでは特に問題ない。

それに、別に改宗(コンバージョン)を止めているわけではないだろうし、ヤバくなる前に改宗してしまえばいいのだ。

理想を言えば、原作開始までに改宗(コンバージョン)して、安全に行きたいところだ。

 

そう、長期的に見れば不味いが、短期的に見れば悪くない。

むしろ下手に50階層あたりの超危険階層に行ったりするようなロキと比べても優良な方………なわけねえよ。さすがに美少女達と関わることの方が約束された破滅より良いに決まっている。

 

 

 

ってなわけで、一瞬は絶望した俺だったが、まあ意外と何とかなりそうなことがわかって一安心である。

 

 

 

 

(にしても…ディオニュソス・ファミリアねぇ…)

 

思い起こされるのは、昨日の出来事だ。

 

突如現れた我らが団長、フィルヴィスによって俺たちの間にあった空気はヒエッヒエになってしまった。

だがああいった空気になったのには、どちらにも要因がある。だが大元の原因にはフィルヴィスの過去の出来事が関係している。

 

 

かつては別にそこまで人を邪見に扱ったりするような性格ではなかった。エルフらしい、ちょっと潔癖な女の子だったのだが、それが変わってしまったのは『27階層の悪夢』が起こってからだった。

 

 

『27階層の悪夢』。今から、4年ほど前になるだろうか。

未だ闇派閥(イヴィルス)の活動が活発だった時期の話だ。

 

ダンジョンの27階層で闇派閥の連中による、階層主をも巻き込んだ超大規模な怪物進呈(パス・パレード)が冒険者に対して行われたという事件だ。

この時は闇派閥の幹部の目撃情報があったために、多くの有力な冒険者が27階層に向かっていた。そのため冒険者への被害はとてつもなく大きく、後に救援に駆け付けた冒険者が言うには、広間(ルーム)から、その道まですべてが死体と、死体を貪る怪物(モンスター)に埋め尽くされていたのだとか。

 

しかし、これだけ凄惨な事件でありながらも、生存者が()()()()()()()()()()()

その唯一の生き残りこそが、フィルヴィス・シャリアだった。

 

この世の地獄を見たかのような凄惨な光景だったためか、リヴィラまでたどり着いた彼女はもはや死人のようだったという。

 

 

 

だが、悲劇はこれだけでは終わらない。

 

 

こんな事件があったとしても、彼女は冒険者であった。倒れた冒険者に報いるためか、迷宮へ潜ることをやめはしなかったのだ。

 

当然の話だが、ダンジョンに一人で潜るなんてことは自殺行為であるため、必然誰かしらとパーティを組むことになる。

 

そして、彼女の悲劇はまさにそこだった。

 

 

まるで呪われたかのように、彼女とパーティを組んだ者は全滅した。そう、組んだ者()()()だ。

しかし、彼女自身はなぜか死なずに生き残る。

 

この事実が冒険者達に広まるまでそう時間はかからなかった。

 

そして、彼女は冒険者達にこう呼ばれるに至った。

 

死妖精(バンシー)”と。

 

 

 

 

ってのが、フィルヴィス・シャリアの大まかな来歴である。

曇らせ製造機と名高いダンまち世界においても有数の過去を持つ屈指の曇らせヒロインだ。

 

こんな感じのことがあったので、彼女はあんな風に人に関わらず、関わらせないようにしているというわけだ。

なので根は優しい。悪いやつとか、嫌なやつという訳ではないのだ。

 

それ自体は知っているが故に、ファミリアからは敬遠されながらも虐められたりといった事態には発展していない。

強いて言えば副団長のアウラさんが目に見えて嫌っているような感じなぐらいだ。

 

 

 

あ、俺?俺はアレよ、別に普通よ。

今となっては色々知ってるから、『ネームドキャラだ!』って感動以外にはほぼない。

元々これまでの俺は、気に掛けながらも特に話しかけたりはしない…といった感じだったので、これまでと関わり方に変化はない。

 

 

キャラとしては普通に好きなので、原作通りの活躍をしてほしいところだ。

 

 

 

 

 

 

次に、俺のことだ。

 

 

俺、ライ・レインバックは、Lv4という都市有数の冒険者である。

原作を知る人からすれば『たかだかLv4』と思うかもしれないが、リューさんも同じLvだし、Lv5以上のキャラは超大派閥の幹部数人だけだ。

ネームドのキャラは大体Lvが高いが、それよりも遥かに多いモブキャラのほとんどはLv1だ。実際都市の冒険者の半数以上はLv1だし、Lv2は全体の3~4割を占めている。そのわずかな残りこそがLv3以上の上澄みというわけだ。それを鑑みれば、中堅派閥でありながらLv4というのは破格の強さを誇る。

 

だが正直、ダンジョンのヤバさをこの身と原作知識で実感している俺としては、Lv4では全くもって安心できない。出来ることならとっととLv6あたりになって、一人で安心して深層を闊歩できる程度の強さを手に入れたいところだ。

 

 

 

…ちなみに、俺の二つ名は銀髪からとって“銀騎士(シルヴァリエ)”。…まあ、普通にかっこいいからまだマシな方だ。ダークインフェルノ…だの、ファイヤーフレイム…だのといった中2みたいな名に比べればいくらかマシだ。欲を言えば“静寂”とか“猛者”みたいな、ルビを使わないやつの方が良かったが、そう高くは望むまい。

 

 

 

 

(……ダメだ。腹減った)

 

一応許してくれたっぽいんだが、さすがに女性陣と顔を合わせずらいので時間をずらすべく考え事をして時間を潰していたんだが、もう腹が減りすぎてしんどくなってきた。結構ずらしたから女性陣は食堂にはいないはず。

 

 

 

 

 

食堂に行くと、思った通り女性陣は朝食を食べ終えたようでもう出ていったようだった。

 

が。

 

 

 

「おや?おはよう、ライ」

 

 

 

我らが主神、ディオニュソス様がいた。

 

 

 

 

 

ディオニュソス。

神の例に埋もれず、人間離れした容姿を持っている。タイプでいえば、甘いマスクの貴公子…といったところだろう。

清廉な印象に惹かれてか、女性陣は堅めな性格が多くなっている。もちろん見た目だけでなく、性格も善神として有名であり、特にコレといって悪いところは無い。

彼の司る葡萄酒にかけては酒の神であるソーマをして『俺よりも極まっている』と言わしめるほどだ。

 

 

今の俺としてはちょっとこう……思うところが無いでもない。

とはいえ、そんなふうに思っていることを知られるわけにもいかないので、いつも通りに。

 

 

「おはようございます。ディオニュソス様」

 

「昨日は大変だったみたいだね」

 

「いやぁ、もうほんとに大変でした。俺悪くないですよね?」

 

「う~ん」

 

一応自身の眷属のことであるため、当然少女の恋心も知っているわけだから、女性陣の気持ちもわからないでもない…といった感じである。

 

「え、まさかディオニュソス様、女性陣の味方ですか?」

 

「いやいや。まあ、あの子たちにも色々あるんだよ」

 

「えぇ……」

 

(正直、誠に遺憾であります)

 

「あ、てか、ディオニュソス様も知ってるんですね。俺が歓楽街に行ったこと」

 

「うん。サムたちがあれだけ大声で言いふらしていたからね」

 

「あいつら……後で絶対殴る」

 

「…あれから女性陣にゴミのような目で見られてるし、それで許してあげなさい」

 

「あ、それであいつら昨日からずっと居ないんですね」

 

「うん。さすがに針の筵状態だと本拠にも居ずらいからね」

 

いい気味だ。あいつらのおかげで俺は訳も分からず女性陣に嫌われているのだし。

 

「で、件の女性陣は…?」

 

「あの子たちなら朝早くに揃って出かけて行ったよ」

 

「え。じゃあ俺の朝飯は…」

 

「『無し』だそうだよ」

 

「えぇ…陰湿…」

 

衝撃の事実である。

何せ、ウチでは基本的に女性陣が料理当番を交代して回している。

というのも、ウチの男どもは俺含めて揃って料理がダメダメなのである。下手に食材を無駄にさせるぐらいなら、最初から私らが作った方がマシ!とのこと。ぐうの音も出ません。

 

しかし前世の記憶を取り戻した今の俺は違う。前世では極稀に、Twitterで気になった料理を作ったりしたものだ。だから俺は料理が出来るようになった……と思ったが、この世界にCOOKPAD先生もGoogle先生もいないのだった。やっぱダメじゃん。

 

 

 

そういえば、なぜこんな仕打ちを受けても全然応えていないのか疑問な人もいるかもしれない。

その理由は、こういったことは別に珍しくはないから、だ。

ウチのファミリアは女性がほとんどである。まあこれはディオニュソスの女性人気が高いことが原因なのだが、そのせいかファミリア内では女性の方が立場が強い。

すると、ちょくちょくこんな風になることがある。

 

とはいえ、別に仲が悪いわけではない。向こうも別に悪い人ではないし、俺らも別に人道に反したことはしないから長期化するということもない。むしろこんな風に適度に言ってもらってガス抜きしてもらう方が、いきなり爆発するよりも全然良い。

こっちとしても料理だの家事だのを任せてしまっている負い目もあるし、多少は我慢しようという思いが強いのだ。

 

 

閑話休題。

 

女性陣みんなで仲睦まじいことこの上ないのは結構なのだ。

が、そんな女性陣の中でも殊更浮いた存在がいる。誰あろう。

 

 

 

「おはようございます。ディオニュソス様」

 

 

そう。我らが団長、フィルヴィス・シャリアさんだね!

 

 

「ああ、おはようフィルヴィス」

 

「おはよう、団長」

 

「………」

 

(え、俺は?)

 

え、今、目あったよね?挨拶無しマですか?…と言いたいところだが、彼女はそんなもんだ。

それこそ、まともに会話をするのなんて崇拝しているディオニュソス様だけである。

 

 

「ははは、見ろフィルヴィス。ライが『え?俺には挨拶無しですか!?』って顔をしているぞ」

 

なぜ分かるディオニュソス!"超越存在(デウスデア)め”!

 

「してないです。思ってはいましたけど」

 

見れば、フィルヴィスはしかめっ面で、『えぇぇ…』みたいな顔をしている。

これはアレか?挨拶とかしたくないけど、ディオニュソス様の言ったことだし挨拶した方が良い気がする…的な?

 

ディオニュソス様の『そろそろ仲良い人とか作った方が楽しいぞ』的な気遣いは有難いんですけど…いや、やっぱ有り難くないんで勘弁してください。

 

 

「いや、団長。ほんと、別に気にしないんで」

 

「………」

 

(いや気まず!オカンの知り合いに『ウチの娘可愛いでしょ?付き合ってみたら?』って言われた時かよ)

 

あれマジで気まずい。てかお節介過ぎるからマジでやめてほしい。

 

 

クソ気まずい沈黙が流れる食堂で、『なんでただ朝飯食いに来ただけなのに、朝飯食えない、その上気まずい団長と鉢合わせなきゃいけないんだよ』と内心で毒づく。

 

 

 

 

だが、その状況を打ち破ったのは、思いもよらぬ人間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「邪魔するよ」

 

 

「「「!!??」」」

 

 

突如響いた聞きなれない声に三者は驚いた。

 

予想外への行動が最も早かったのは、フィルヴィスだった。

 

 

「なぜお前がここにいる!!

 

麗傑(アンティアネイラ)!!」

 

 

 

 




ア「邪魔すんで~」

ふぃ「邪魔すんねやったら帰って~」

ア「あいよ~」



フランス語のシュバリエ(騎士) と シルバー(銀) で”シルヴァリエ”。我ながら中々かっこよくね?
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