【悲報】私氏、小学生妹ちゃんのヒモになりそう   作:おねロリのおね

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灰色のセカイ

 わたしの計画は――、つまり、お姉ちゃんブイチューバー化計画は、お姉ちゃんとわたしの私生活が漏れていることを知った時には既に始まっていた。

 

 ()()()()()()という攻勢防壁によって、リスナーを一時的に掌握することはできても、人という集合体を完璧に掌握することは土台無理な話。

 

――たったひとり。

 

 お姉ちゃんという最愛の人のこころすら動かせないのだから、人のこころを変えるのは容易じゃないってことは、骨の髄まで染みている。

 

――たったひとり。

 

 お姉ちゃんに膨大な時間と思考リソースを費やしても、お姉ちゃんはある日突然大学をやめようとするし、ある日突然退学届をもらってくる。いちばん身近にいる人でさえもこれだ。いくらわたしがお姉ちゃんに離れないで欲しいといっても、人のこころは見えないのだから。いつか不意打ちのようにいなくなるかもしれない。

 

 そもそも、配信もスレッドも、いろんな考えを持つ人たちがサラダボウルがごとく詰めこまれているのだから、いつかは狐みたいなやつがでてくることは予想された。むしろ、今回の狐さんはまだ優しい方だろう。

 

 じゃあどうするか――。

 

 人の善意を信じるふりをして漫然と処刑されるのを待つのか?

 そんなのはただの怠惰な豚だ。それよりわたしは飢えた狼でいたいと考えた。

 

 リスナーたち――お兄ちゃんたちのことが嫌いってわけじゃない。いつ裏切られるかと思って裏でこっそり牙を研いでいるかと言われればそういうのとはちょっと違う。

 

 お姉ちゃんにもさっき伝えたが、ブイチューバーは演者だ。

 キャラクターという仮面(ペルソナ)をかぶってお兄ちゃんたちと相対している。

 それはお兄ちゃんたちもそうだろう。スレ民もそう。お姉ちゃんもそう。みんなそうだ。

 

 みんな灰色の世界にいる。

 みんな顔のない世界にいる。

 わたしなんか特にそうだろう。

 わたしというキャラを特徴づける銀髪も、たぶん本当は灰色と評するのが正しい。

 そんなセカイが存外に心地よくて、わたしはいまここにいる。

 

――何が言いたいかって言うとだ。

 

 お姉ちゃんをブイとして擁立しコラボしてしまえば、そういうキャラクターとして認知される。つまり()()()()()()()()()()()()()()()()()、わたし=狼を証明できないってこと。

 

 いつか狐さんみたいな人がひょっこり現れて、お姉ちゃんに対してわたしがどす黒い狂愛を抱いていると主張しても、それが虚構か真実か明らかになることはない。そういうキャラなんだよって反論できるから。

 

 もちろん、これまでの経緯をつぶさに見てきたお兄ちゃんたちにとっては、わたしのシンジツの顔がどこを向いているかくらいはわかっているだろうが、べつにそれはどうでもいい。お兄ちゃんたちはメスガキに興味があるだけのただの変態雑魚お兄さんだからね♡

 

 まあ理由の九十九割くらいはお姉ちゃんと合法イチャイチャしたかったというのもある。

 イソラならいくらでもセクハラし放題だからな。

 そういうキャラなんだからしかたないよね♡

 

「ねえ、お姉ちゃんどうかな。わたしといっしょに出演してくれる?」

 

「え、ええ……、でもわたし、たくさんの人の前で喋ったりするのは苦手で……」

 

「でも、お姉ちゃんもスレ建てしてみんなの前でヒモ姉として喋ってたわけでしょ?」

 

「それは……そうだけど、異空ちゃんのことが心配でがんばったの……」

 

 なんだこのかわいい生物。いますぐ結婚したい。

 

「わたしのために無理してくれたんだ。お姉ちゃん優しい。ありがと♡」

 

「ううん。私がコミュ障だから、匿名掲示板くらいしか方法が思いつかなくて」

 

「その結果、わたしとお姉ちゃんの私生活が明らかになっちゃった、と――」

 

「うっ……ごめんなさい……」

 

「いいよ♡ わたしのことを思ってのことだったんだよね♡」

 

「そうなんだけど……わたしがいろいろとダメダメなせいで異空ちゃんに迷惑かけちゃった」

 

 お姉ちゃんは罪悪感にさいなまれている。

 少しだけわたしも罪悪感を覚える。そう思うように誘導したのはわたしだからだ。

 でも、それに倍する喜びも感じていた。

 罪という絆でつながり、罪という紐でお姉ちゃんを縛る喜びだ。

 

「ねえ、お姉ちゃん。今のままだとイソラはリスナーさんたちの中で浮いちゃってるんだよ」

 

 わたしは困り顔で告げる。

 

「さっき言ったメスガキ? とかいう属性のせいで?」

 

「うん♡ だって、メスガキが好きなのはお兄ちゃんじゃないといけないからね。メスガキイソラはアイドルみたいなものなんだ。アイドルって恋愛禁止なところあるでしょ」

 

「うん。あるね」

 

 お姉ちゃんは胸のあたりで腕を組んで頷いてくれた。

 おっぱいを強調する仕草。あふれ出るお肉♡

 これは天然小悪魔成分だ!

 

「お姉ちゃんが大学やめちゃうのヤダって言うのは、メスガキ的には失点だったんだよ。わたしの視線が他の人に向いているっていうのはよくないよね」

 

「それは理解できるけど……、お姉ちゃんが好きって設定だけじゃダメなの? その……結婚したいとかじゃなくて。普通に家族として」

 

「うーん。足りない感じがしたんだよね。メスガキというキャラとお姉ちゃんが家族として好きっていうのは、ちょっとミスマッチなんだ。まあ、同性だからお兄ちゃんたちの嫉妬みたいなものは回避できると思うけど、そもそもメスガキが家族想いっていうのが、少し矛盾してるんだよね」

 

「そういうものなのね」

 

 お姉ちゃんはわたしの言葉をそのまま飲みこんでくれるようだ。

 あまりメスガキを知らないからだろう。

 

「うん、だから、違和感を違和感でなくすくらいの強烈なキャラづけが必要なんだよ。水と油を混ぜるような強力なやつが必要なんだ♡ わたしいっぱいいっぱい考えたよ。それで思いついたのがわたしがお姉ちゃんを好きで♡ 好きで♡ 好きすぎて♡ 愛してやまないヤンデレ属性持ちって設定だったの」

 

「なるほど……」

 

 お姉ちゃんは必死に理解しようとしてくれている。

 正直なところ、お姉ちゃんは陰キャではあるがオタク趣味というわけではない。

 いわゆる門外漢というやつで、わたしの言ってることは半分も伝わってないだろう。

 でも、お姉ちゃんはわたしのことを信頼してくれている。

 それくらいはうぬぼれてもいいよな。

 

「お姉ちゃん、わたし。イソラを棄てたくないよ」

 

 わたしはお姉ちゃんにすがるような視線を投げる。

 少しだけ涙を目に浮かべて。

 原因を作ったお姉ちゃんを責めるわけでもなく、ただただ悲しいと祈る小娘のように。

 

――お姉ちゃんに自責の念が生まれるように。

 

「がんばってここまでイソラというキャラを育ててきたの。このごろはみんなにも認められて、少しはお小遣いももらえるようになったんだよ。生意気なメスガキがかわいいって言ってくれるようになったんだよ」

 

「で、でも……お姉ちゃんには異空ちゃんを家族以上には見れないよ。リスナーの皆さんにもつたない演技を見せることになるんじゃないかな……たぶん」

 

「いいんだよそれで」わたしはニッコリ笑って答える。「お姉ちゃんは妹に迫られてタジタジとなっている。ノーマルなお姉さんでいいと思う」

 

「え? いいの?」

 

「うん。あたりまえだよ。今回問題になっているのはイソラというキャラクターのほうだからね。お姉ちゃんのことが好きすぎる妹だとみんなに知ってもらうのが目的なんだから、お姉ちゃんは特になにか演技する必要はないよ。いつもの素のままのお姉ちゃんで十分。ただ隣にいて、いつもみたいにおしゃべりしてくれるだけでいいから」

 

「隣にいて喋るだけなら……」

 

「やった♡ お姉ちゃん、ありがとー♡」

 

 お姉ちゃんが了承の意を示したのと同時に喰い気味で確定させた。

 それと同時にお姉ちゃんに抱き着くわたし。

 おっぱいに不時着……、わたし、おっぱいに不時着しました!

 事故って宇宙をさまよっていた宇宙飛行士が無事地球に帰還したみたいな気分だ。

 ヨシ! これで明るいお姉ちゃん計画は完結する!

 

 

 

 

 

 

 次の日の夜。

 

 

『あれからどうなったんだろうな』

『そりゃもうぐちょぐちょのどろどろよ』

『妹ちゃんがツヤツヤして現れたら確定w』

『悲報。ヒモ姉逮捕される』

『もしそうだったとしても、オレはヒモ姉擁護するぜw』

『妹にこんだけ想われてお姉ちゃんも大変だなー(棒)』

『妹にドア叩かれて、もうだめぽ状態なヒモ姉がかわいそうかわいかった』

『オレ氏もそう思います』

『おまえはスレ監視してろw』

『もうスレ監視とか意味ねえだろw』

 

「なぁにお兄ちゃんたち。そんなにメスガキとお姉ちゃんの行方が気になるのぉ♡」

 

『イソラキター!!』

『声の調子とかはいつもどおりだな』

『イソラちゃんが元気そうでなにより』

『相対的に姉は無惨された可能性も』

『お姉さんは安心したわ。とりあえず大丈夫そうね』

 

「うん、わたしは大丈夫だよ♡ あれからどうなったのかみんな気になるよね?」

 

『そりゃそうよ』

『気にならないわけがない』

『ぶっちゃけメスガキが配信やめる可能性もあったからな』

『もうおまえたち姉妹のことが気になって眠れねえよw』

『お姉ちゃんのこと食べちゃった? ¥10000』

『おまえ言いにくいことをズケズケと……w』

『これは赤スパ乙とはいいがたいな』

『これはひどいwww』

 

「あ、エル・オーお兄ちゃんスパチャありがとう♡ 残念ながらお姉ちゃんのことは食べられなかったよ……」

 

 わたしは視線を伏せて悲しげに言う。

 

『そりゃ残念……なのか?』

『残念ながら当たり前』

『本当にすまない……¥500』

『ふーむ? なんか匂うぜこりゃぁ』

『メスガキがあの程度で沈むタマか?』

 

「あ、狐のお兄ちゃんスパチャありがとー♡ ぜんぜん気にしなくていいよ」

 

『狐いたんかワレェ』

『ゴン、おまえだったのか』

『その五百円玉はもしかして妹君からもらったものなのではw』

『狐、おまえおもしろすぎるだろw』

『かわいそうかわいい狐きゅん』

 

「みんな狐さんのことかまいすぎ。もっとわたしのことちゃんと見てよ♡ えっとね。お姉ちゃんのことは食べられなかったけど、ちゃんと告白自体はしたよ。あ、初見さんのために一応説明しておくけど、わたしはお姉ちゃんのことが大好きで、いつか結婚したいと思っているお姉ちゃんガチ恋勢ヤンデレメスガキ小学生だからね。みんな覚えておいてね♡」

 

『情報大渋滞メスガキ』

『告白自体はしたんだ』

『つまり失恋したってこと?』

『失恋して小学生はひとつ大人になったってことか?』

『考えうるなかで最善ではあるが寂しいものだな。¥200』

 

「あ、MSGK泣かし隊の兄貴。おつかれさまー。みんな勘違いしてるけど、告白は失敗に終わったわけじゃないよ♡ 頭わるわるなお兄ちゃんたちのために説明してあげるね♡」

 

『ほう……』

『え、じゃあお姉ちゃんはどうなったの?』

『わかんねえな。なにか違和感が……』

『告白は成功したのか失敗したのか、どっちなんだい』

 

「結論から言うと、お姉ちゃんはわたしの告白を受け止めてはくれたけど、受け入れてはくれていないって状態かな。まあ当たり前と言えば当たり前なんだけどね」

 

『そりゃそうなる』

『だいたいはそう』

『ロリコンでもない限りはな』

『メスガキちゃんと姉妹百合してぇ』

『だったらなんでこんなにうれしそうなんだ』

 

「わたしの今の時点での最善は、お姉ちゃんに拒否されないってことだからね」

 

『拒否はされないか』

『小学生を拒否できるかって言われるとなあ』

『優しく諭すだろうからな』

『まあ、ヒモ姉は良識人ではあるわな。生活全般はクソ雑魚なめくじだが』

『考えてはくれたってことか。¥100』

 

「うんまあそういうこと。お姉ちゃんは前向きにわたしとの関係を考えてくれた。それだけで十分なんだよ。その証拠にね――、今日はお姉ちゃんをゲストとして呼ぼうと思ってます♡」

 

『ざわ……ざわ……』

『え、ヒモ姉くるんか?』

『マジで姉妹同時出演? 姉妹百合てぇてぇ?』

『なんだ。この盤面は……いったい何を狙ってる?』

『盤面整理兄貴がさっきからザワザワしてるな』

 

「さぁて、お姉ちゃんの登場でーす♡ はいみんなパチパチパチ♡」

 

『8888888』

『あれ、このキャラってあのとき創ってた天使ちゃん?』

『ヒモ姉がブイとして降臨するのか』

『天使降臨だと……馬鹿な』

『いったい何が始まるっていうんです?』

 

 そんなの決まっている。

 史上最大のお姉ちゃんラブラブ配信だよ!




今日はガチで寝過ごしたんで、ギリギリに提出
たぶん、ちょっと荒いかもです。すまない……
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