【悲報】私氏、小学生妹ちゃんのヒモになりそう   作:おねロリのおね

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猫狩ギドラ

 配信の夜時間。

 わたしは呆れていた。

 

「あのさぁ~。お兄ちゃんたち頭まで雑魚だったの? いくらなんでも猫狩ギドラって牽強付会もいいところだよ。漫画やアニメじゃないんだからさぁ♡」

 

 恵子のことは速やかにお姉ちゃんに暴露され――。

 まあそれはいいんだけど、スレでの評価は猫か狩人かということで盛り上がっている。

 いくらなんでも、そりゃないでしょって話だ。

 

『せやかて工藤』

『この罵倒はあまり響かないな』

『愛が足りない罵倒はダメだぞメスガキ』

『現実を見よう』

『妹Ⅱにお姉ちゃん盗られそうで焦ってるんだろ?』

 

「いや、普通に考えて――、小学生の妹Ⅱちゃんがお姉ちゃんやわたしに欲情すると思う?」

 

『おまいう』

『そこにお姉ちゃんに欲情している小学生がいるんだよなぁ』

『鏡見てから言えよw』

『狼さんが何か言ってる』

『がおー、食べちゃうぞー』

 

「がおー♡ わたしのことはいいんだよ。全力で棚にあげよ♡ まずさ、妹Ⅱちゃんは小学生の女の子なの。メンタルは確かに強そうだけど、親を亡くしたばかりの子が、お姉ちゃんやわたしにハァハァしてたら気持ち悪いでしょ?」

 

『親を亡くして一年と経たずにお姉ちゃんにハァハァしてたのは誰だよw』

『ほんとそれ考えると、親御さんカワイソス』

『おまえはまず親御さんたちに謝れよw』

『まあ、いまでもメスガキは家族愛を求めている説もあるけどな』

『方便としてのハァハァ……そんなのもあるのか』

 

「いやいや、だぁかぁらぁ♡ わたしのことは置いておいてよ。一般的に言えば小学生がお姉ちゃんゲットぉ!とか妹ゲットォ!とか言わないって。あと天国のお父さんお母さんごめんなさい」

 

『謝ってるメスガキ素直で草』

『謝ったら許さない』

『謝っても許されないんだよなぁ』

『実例が目の前にいるから仕方ないだろ』

『おまえがやってきたことを省みろ』

『考えるべき可能性を考えないで敗北しても知らんぞ。¥100』

 

 う。メスガキスキーお兄ちゃんにスパチャとともに正論を投げつけられてしまった。

 

「わかった。じゃあ少し考察してみようか。お兄ちゃんたちは考察得意だからわかるよね♡」

 

『任せろ!』

『少なくともヒモ姉よりは考えられるぞ!』

『ヒモ姉と比べたら小学生のほうがまだ考察力高そうだからなw』

『ヒモ姉がこの配信見てたらかわいそうかわいい』

 

「ああ……、お姉ちゃんは普段配信を見てないっぽいよ。特にお姉ちゃん配信についてはわたしとコラボするとき以外は見てないみたい。だから存分に夜時間を吠えて過ごそうね♡」

 

『わおーん』

『わんわーん』

『でもオレら狂人なんだよなぁ』

『とりま、考えるべきは――妹Ⅱの属性だな。¥100』

 

 ふむ。妹Ⅱの属性か。

 

「MSGK泣かし隊のお兄さん。頼りにしてるね♡ ええっと……それじゃあ、猫狩ギドラについて考えてみようか。まず、妹Ⅱが猫だった場合だけど、この線はおそらく無いだろうと思っています♡」

 

『そりゃ狙われる立場だと考えるのはこわかろーてw』

『猫=メスガキ狙いという考えだからな』

『嚙みしめろメスガキ。今の状況がおまえがお姉ちゃんにやってきたことだぞ!』

『メスガキはなによりもまずお姉ちゃんに謝るべき』

『戒メロン』

『仮説なんだから、まずは猫だと仮置きして考えてみな。¥200』

 

「ふむん♡」

 

 わたしは唇に手をあてる。

 確かに仮置きして考えないと始まらないか。

 もしも、恵子が猫だった場合、つまりわたしを狙っていたとしたらどうなるか。

 ゾワンとした。

 いや、べつに気持ち悪いとかそういうのではない。

 ただ、生存本能が脅かされることに対して忌避感が湧いた。

 

 

 猫という役職は、狼に噛まれれば狼を道連れにし、もし吊られれば誰かひとりを道連れにする。

 その誰かというのは、お姉ちゃんかもしれないし、わたしかもしれない。

 

 そんな状況で、もしもお姉ちゃんがわたしではなく恵子を選んだらどうだろう。

 

 考えたくもないが、お姉ちゃんをネトラレてしまったわたしは脳が破壊されて、盤面から退場してしまうかもしれない。あるいは、お姉ちゃんは子どもを虐待した犯罪者としての自責の念に耐えきれず、これまた盤面から退場してしまうかもしれない。

 

 つまり、恵子が狼ではないかと誤認し吊られれば――。

 お姉ちゃんに恵子が選ばれれば――。

 任意の誰かが道連れにされる猫ルーレット、通称()()()が発生する。

 わたしかお姉ちゃんかのいずれかは盤面から去ることになる。

 

 恵子がどこまで考えているかはわからないが、もしそうなったら、お姉ちゃんを失った傷心のわたしを追いかけるつもりなのかもしれないし、あるいはお姉ちゃんがいなくなった未成年だけの家庭をどこか適当な誰かを後見人として紐づけてわたしを飼うつもりなのかもしれない。

 

 もちろん。それは確率的には低い話。

 恵子の本命がわたしで――。

 にもかかわらずお姉ちゃんに好き好き光線を発射するというのはいかにも迂遠だし。

 そもそも恵子がお姉ちゃんに選ばれなかった場合はどうなるんだ?

 つまり、恵子がブラフとしてお姉ちゃん好き好きしても、受け入れられなかった場合は?

 

 そこまでの推理をみんなに披露する。

 

『選ばれなかった場合か』

『どうなるんだろうな』

『小学生の恋は成就しない様をメスガキに見せつけることになるとか?』

『WSS案件になるから、メスガキはかなり不利になるぞ。¥2000』

 

「ん。わからせマンお兄ちゃん。ありがとー。ところでWSSってなに?」

 

『ん。さすがにWSSはメスガキでも知らなかったか。WSSというのは、「わたしのほうが先に好きだったのに」という言葉の略で、要するにメスガキが告白する前に妹Ⅱが告白してしまうと、そのCOが成功するにしろ、しないにしろ、ヒモ姉は心に防壁ができてしまい、メスガキは失敗する可能性が高まるということだ。¥100』

 

「なにそれ! ゆるさん!」

 

『小学生らしい激高でほほえまーw』

『WSSでぐぬぬとなるってことか』

『狼として吊られた時点で、妹Ⅱは戦略を通したことになるのか』

『猫ルー狙いの猫って上級者すぎて怖w』

 

「いやでもさ。そのあとに猫はわたしをゲットできるわけ? お姉ちゃんに告白を断られたとして、その後にわたしに乗り換えるように見えるわけでしょ。節操なくない?」

 

『モラトリアムの時間が創れるわよ。¥200』

 

「あ、おねロリのおねお兄ちゃん。モラトリアムって?」

 

『WSSによってメスガキちゃんは告白ができなくなるってこと。そうすれば、時間は無限にあるのだから、猫はゆっくり狼を調理すればいいの。私としてはそれでもぜんぜんおいしいのだけどもね。メスガキちゃんが一番かわいいから守りたいわ』

 

「そうか。なるほどね。お姉ちゃんが妹Ⅱの告白を断っておきながら、わたしの告白を受け入れるというのはダブスタ気味になってしまうから受け入れない。仮にわたしが大人になれば――、そのときは成就する可能性があるけれど、それまでの間にわたしを堕とすって魂胆か」

 

 舐められたもんだな。

 狼の狩りはしつこいんだぞ。

 狙った獲物は絶対にあきらめたりはしない。

 

「じゃあ、その場合はわたしがお姉ちゃんをあきらめなければ問題ないよね?」

 

『まあそりゃそうだが』

『むしろ、ずーっと成功しない状況に持っていかれるかもしれんぞ』

『そもそも、ヒモ姉がノーマルだったら端から無理な件』

『メスガキの姉をヒモにする計画は破綻しちゃうよなぁ』

 

 くっ。そうか。

 恵子が現れた時点で考えるべきだった。

 お姉ちゃんのお世話を恵子と分担している今の状況では。

 わたしだけのお姉ちゃんではなくなっている。

 時間は既に味方じゃない。

 

「あ、じゃあ――噛みつけばいいんじゃないかな」

 

 わたしはとっさに思いついたことを口にする。

 

『猫を噛むとか正気かw』

『メスガキは初心者狼さんだったんでちゅね』

『かわいいな。メスガキ♡ 小学生らしい発想ですここびっち』

 

 煽るな煽るな。

 お兄ちゃんたちは人狼ゲームというお遊びに惑わされすぎなんだよ。

 

「漫画やアニメじゃあるまいし、これは現実なんだからさ♡ 例えば、わたしが狙われてるとか言って、妹Ⅱを追い出すって方向性だって考えられるわけじゃない。それが噛むってことだよ♡」

 

『その噛みは通るか?』

『ンー。現実的に考えると、それってありえないシチュエーションなんじゃ』

『小学生に襲われる小学生ってことか。ヒモ姉がそれを信じるのかねえ?』

『オレ氏もそう思います。¥100』

『オレ氏は人の意見に乗っかるだけじゃなくてなんか意見だせよw』

『バブってオギャる。それがオレ氏クオリティ』

 

「確かに小学生が小学生に言い寄るっていうのは、ちょっと考えにくいシチュだとは思うけど、生活を続ける中で、もし本当に妹Ⅱが猫だったらそのうち尻尾を出すんじゃない?」

 

『絶対罠だそれ』

『こんな簡単なトラップにひっかかるのね。おかわいいこと♥』

『そうやって狼を焦れさせて踏ませるのが猫の手口』

『絶対にやめたほうがいい。いやな予感がぷんぷんするぜ……。¥100』

『本当にわたくしに噛みついたらどうですとか言われそう』

 

「MSGK泣かし隊の兄貴が言うんならやめといたほうがいいのかな」

 

 正直、よくわからんのよな。

 人狼に喩えて話をしているわけだけど、現実的に恵子がわたしに言い寄るってシチュ自体が、想像の埒外だからなぁ。推理を伸ばしてみても違和感バリバリ。会議は踊ってもしかたないところはある。

 

 あらためて考えてみて。

 

――恵子が猫の可能性は本当にあるのだろうか。

 

「じゃあ、次に狩人の場合だけど――、わたしはこっちの線のほうが高いと思うな」

 

 恵子が狩人であればどうか。

 復習になるが、狩人は狼の襲撃から村人を守る存在だ。

 狼が人を喰い殺す悪であるなら。

 狩人は正義を体現するヒーロー的な役割を果たす。

 

 わたしが考えるのは、赤ずきんちゃんの()()()の話。

 狩人に助けられた赤ずきんちゃんは、その後、狩人に対して恋心を抱かないだろうか。

 

 お姉ちゃんはノーマルだからそれはないと思いたい。思いたいが――。

 

 少なくとも『家族』という枠組を保持しようとする狩人と手をとりあう可能性は高い。

 昼時間(モラトリアム)が過ぎ去ったあと、狼がいなくなった村は復興を目指す。

 現実的にはわたしも成年に達するまでは同じ家に住み続けることはできるだろうが、一度拒否された恋が成就する可能性は限りなく低いということになる。吊られた狼は草場の陰からその様子を見続けることになる。嫌すぎる状況だ。

 でも、猫のときと同じように違和感がある。

 小学生がお姉ちゃんに恋してるってありうるのか。

 いやわたしという実例があるのは重々承知しているところではあるが。

 

「やっぱり家族という()()を維持したいだけというのが本線だよね……」

 

『それはそうだが、強化狩人だった場合はどうするんだ? ¥3000』

 

「萌えるお兄さんお兄ちゃん。スパチャありがとう。強化狩人か……」

 

――強化狩人。

 

 狩人には特殊能力持ちの強化狩人というものも存在する。

 強化狩人は、狼だろうが狐だろうが村人だろうが、自由に射殺ができる。

 

 もしも、恵子がお姉ちゃんのことを好きで、わたしを邪魔な存在として排除したいと思っているなら、わたしを射殺してしまえばいい。要するにお姉ちゃんを狙っている悪い狼であると告発すればいい。この場合も、ノーマル狩人と同じく、しばらくは家に住み続けることはできるだろうが、それまでガッチリとお姉ちゃんをガードしつづけて、わたしがいなくなった後にしっぽりと――みたいなことも考えられる。

 

「結局……どうすればいいのかなぁ……」

 

『涙声なメスガキがかわいそうかわいい』

『メスガキが猫に踊らされてるよ! かわいいね』

『妹Ⅱの要素が足りなさ過ぎてこれだけじゃ判断はつかんな』

『盤面整理兄貴。早く来てくれ。オレはもうワケがわからないよ!』

 

「そうだよ。盤面整理兄貴。お願いします!」

 

 頭を下げると――。

 どこからともなく現れる盤面整理兄貴。

 

『盤面整理をする。妹Ⅱが猫である場合、猫はメスガキが好きだ。それで狼であることを装い姉に拒否されることで猫ルーを発生させるか、あるいは狼に噛まれることでメスガキを道連れにする。この場合、メスガキは絶対に猫を噛まないほうがいい。なにかしら罠が仕掛けられている可能性が高いというのが歴戦のつわものの見識だ。¥100』

 

「んーまあそういう感じか。じゃあどうすりゃいいのわたし」

 

『この場合、姉を素直に噛めばいいということになるが、話はそううまくはいかない。¥100』

 

「狩人の場合があるからね」

 

『そのとおりだ。妹Ⅱが狩人の場合、姉を守っている可能性がある。それが秩序を維持したいからか姉を好きだからかはわからないが、いずれにしろ、狼の襲撃は防がれてしまう。狼は吊られてしまい、最終的には狩人と村人はしっぽり暮らすか、あるいは恋とは無縁な平穏な家庭が築かれるかはわからんが、メスガキの想いは破綻する。¥100』

 

「じゃあ、妹Ⅱを糾弾したら」

 

『猫かもしれんので噛めない。¥100』

 

「どうすりゃいいのおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!」

 

『悲報。メスガキ壊れる』

『姉をいたぶってきたツケが回ってきたんだ。あきらメロン』

『いやまあ普通にノーマル狩人で恋とは無縁なやわらか仲良し家庭を築きたいだけだろ』

『仲良し家庭を築きたいだけだとしたら、妹Ⅱちゃんけなげ』

『あ……いいこと思いついた。¥100』

 

「なに。ムカチャッカ半島お兄ちゃん」

 

 ムスっとした口調になるのは許してほしい。

 わたしは軽く絶望しているんだ。

 

『スリーピースでひとつなぎの秘宝を求める。略して3Pすればいいんじゃね? ¥5000』

『小学生の配信でなんてこというんだ。おまえw』

『赤スパだけどこれは許されないだろw』

『草しか生えない最高に丸い回答で笑った』

『おまえそれはヒモ姉が犯罪者ルートじゃねえかw』

 

「だめだこりゃ……」

 

 ドリフ的に終わる夜会議だった。

 

 

 ※

 

 

 

 奇妙な感覚。

 悪くはない。

 けして悪くはないが。

 なにかしら侵入されているような。

 なにかしら冒涜されているような。

 一匹狼としての矜持を踏みにじられているような気分。

 

――これが飼いならされる気持ちか。

 

 与えられる感覚としては気持ちいいの一言。

 ほとんどお姉ちゃんから与えられるものではなかったそれ。

 わたしからの、ではなく――。

 わたしが与えられる刺激。

 

――恵子に髪を梳かれていた。

 

 丁寧に丁寧に。

 ブラシで髪を梳かされている。

 心が――安らぐ。

 これ以上なく安心する。

 なにかしら庇護されている気持ちになる。

 実際に、一歳年上とはいえ、恵子が姉的ポジションであることは間違いないだろう。

 妹が姉に庇護される。

 それはなにもまちがっているはずがない。

 なにもおかしなことではないはずだ。

 前にも言ったが、わたしは誰かに撫でられるのは嫌いじゃなかった。

 ほんのり触れる指先から伝わる熱。

 そこに含まれる暖かな人の情は、孤独な狼を癒すに十分だったから。

 

「うふ♡」恵子がわたしの髪にそっと手を添える。「もったいないですよ異空ちゃん」

 

「え、なにが?」

 

「髪の毛です。お手入れしないともったいないです。せっかくこんなにキレイなのに」

 

「簡単なお手入れくらいしてるよ。ブラッシングもしてるし」

 

 鏡越しに見える恵子は首を振った。

 どうやら答えとしては落第点らしい。

 

「いいですか。女の子の髪は()なんです」

 

 視線でわかっているだろうと問われているみたいだった。

 確かにそのとおり。

 わたしはお姉ちゃんの髪を毎日毎朝毎晩梳かしている。

 お姉ちゃんはそのままでもかわいいが、その素材を活かさないのは実にもったいない。

 髪は女の命なんだから、少しぐらい省みてと、お姉ちゃんには言いたい。

 わたしがお姉ちゃんをお世話する理由(わけ)をそっくりそのまま言語化されているのだから、否定のしようもない。もちろん、わたしはわたし自身のこともそれなりに綺麗にしようとは思っている。お洒落にも気を使ってるし、今時の女の子の水準には達しているはず。せっかくとびきりカワイイ女の子になったのだから、自分自身を高めないのはもったいないからな。

 そこで得た技術をお姉ちゃんに使えるというメリットもあるわけだし……。

 

「異空ちゃんはお姉様を()()()()()()です」

 

 思考が先回りされている。

 

「そんなことないよ」

 

「そんなことありますよ。ですから自分のことは()()()になってしまってるのでしょう。実際にほら、ここに証拠があるのですから」

 

 白銀の髪をすくって見せる。

 いつもより少しだけ輝いて見えるそれは、わたしの怠慢の証拠として提出された。

 わたしができたのは沈黙を返すのみ。

 恵子はうっすらと笑う。

 

「それに――髪は女の武装です」

 

「武装……?」

 

 そりゃまたぶっそうな。

 益体もないギャグが浮かんだが、もちろん言いたいことはわかる。

 

「ストレートヘアだけではなく、いろいろな髪型を試してみるのもいいと思います」

 

「そんなの恵子ちゃんも――」

 

 ストレートロングヘアじゃん。

 もちろん、ツヤツヤで光を浴びたら天使の輪っかがでるくらいキレイで。

 けっして、なにもしてないわけではないのだろうけど。

 髪型としてはごく普通といえる。

 わたしとほとんど変わるところはない。

 

「いまは異空ちゃんのことです」

 

「でも……」

 

 髪の毛という()()()を持たれてるせいか。

 わたしはいまいち反抗的な気分になれない。

 

「メンドウくさいよ」と。

 

 本当にメンドウくさかったので適当な答えを返してしまった。

 

「わたくしがやってあげます」

 

「いいよ。時間がもったいないよ」

 

「そうではありません。異空ちゃんはお姉様のお世話をすることに喜んでいるのでしょう? 楽しんでいるのでしょう? わたしにもその喜びを味わわせてください。妹をお世話する楽しみを与えてください」

 

 恵子は、わたしの心を正確に見抜いている。

 まさか、姉に欲情しているとまでは考えていないだろうが。

 お姉ちゃんを依存させることで得られる喜びは本当だ。

 

「いいけど……」

 

「ありがとうございます。では少し編みこんでみましょう♡」

 

 宣言通り、恵子はわたしの髪をいじるのが楽しいようだ。

 いそいそとわたしの髪をもてあそんでいる。

 わたしはなされるがまま。

 髪の毛をいじられるときに何かできることはないからそれは当然と言えたが、わたしがまな板の上の死んだ魚みたいな目になるのは、先日の配信でお兄ちゃんたちの推理を聞いたからだろう。

 

――猫狩ギドラ。

 

 猫という役職は、狼に嚙まれれば狼を道連れにし、もし吊られれば誰かひとりを道連れにする。

 お兄ちゃん達の指摘は、端的に言えば、恵子が私のことを好きなんじゃないかというものだ。

 

 あるいは狩人として家族を守ろうとしている。

 家族という概念を。

 

 もしくは強化狩人として、わたしという狼を排斥しようとする布石。

 

 ……要素を拾えない。

 

 恵子がどういう想いで、わたしにかまうのかわからない。

 

「はい。できましたよ」

 

 編みこまれた髪は後ろで結ばれている。

 わたし、()()()()()()()()()()

 それはけっして嫌な感覚ではない。

 誰かにお世話されるのは悪い気分じゃないし。

 恵子のこともちょっぴり家族とは思い始めてるから。

 

「ありがとう」

 

「それにしても――」

 

「ん?」

 

「異空ちゃんは綺麗でかわいいですね」

 

「そうかなぁ」

 

「そうですよ。わたくしにとってはかわいい妹です」

 

 最後に髪留めを装着させてもらう。

 いつもより少しだけかわいいわたしが完成する。

 そして――、ふっと湿り気のある感触。

 わたしのほっぺたに、恵子の唇がおりていた。

 

「あ、ああ……なにするの」

 

「異空ちゃんがかわいすぎて、つい――ね♡」

 

 こいつは本当に一体何なんだ。

 

 猫か狩人か。

 

 わたしにはわからない。

 

 誰か助けて!




見た目的には単に姉妹百合が展開されてるだけという
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