【悲報】私氏、小学生妹ちゃんのヒモになりそう 作:おねロリのおね
みんなが寝静まった夜。
狼さえも眠りに落ちる時間。
「異空ちゃんは眠る宝石のようですわね」
わたしはささやかれている。
耳元で覆いかぶさるようにして少女の声が聞こえる。
さざなみのように小さな声。
わたしはベッドに縛りつけられていた。
手足に巻きついているのは縄のような硬いものではなく赤とピンクに彩られたリボンだ。
動かそうと思えば動かせないほどではない。
けれど、意識が朦朧として、身体は満足に動かない。
まぶたさえも閉じ切ったまま。
身体の芯が奇妙に熱い。
「はっ……はっ……」
狼がそうするように、わたしは小さく息を吐く。
熱が逃げない。
逃げられない。
熱い――。
わたしの頬に少女の吐息があたっている。
かろうじて目を開けると、そこには黒曜石のような瞳が視界いっぱいに広がっていた。
視線を合わせると、黒の
「異空ちゃんの瞳はアレキサンドライトのようですわね。わたくしが生きてきた中で出逢った最高の――。秘めたる想いを解き放つ輝く断片。ああ……欲しい……」
「え、恵子ちゃん、わたしを、た、食べたいの?」
「そうですわね。
――それもまた?
疑問のうちに視界を動かすと、隣にはお姉ちゃんが眠っていた。
悪い魔女に毒をもられた眠り姫のように瞳は閉じられている。
わたしと同じようにリボンで拘束されていた。
「お、お姉ちゃん!」
わたしは叫んだ。けれど、お姉ちゃんは起きない。
恵子は、わたしに見せつけるようにお姉ちゃんの頬を撫でる。
「んっ……」
頬から唇へ撫でまわし、髪をひとすくいして花をかぐような仕草をする。
見ているうちに、息が苦しくなった。
わたしは必死に無様な吠え声をあげ続ける。
「お姉様の瞳はさながらアンダリュサイト。控えめながら輝く宝石。こちらもまた捨てがたい」
お姉ちゃんはうっすらと瞳を開けていた。
恵子はお姉ちゃんを覗きこむように観察している。
その顔は喜悦に染まっている。
それを隠そうともしていない!
「やめて。お姉ちゃんを食べないで!」
恵子は見せつけるように、お姉ちゃんの頬にキスをした。
不条理な――。
あまりにも理解が及ばない展開。
ヤダ! ヤダ! 恐怖と混乱に思考がグチャグチャになる!
「わたくし、欲しいものは
そんなの――おかしい。
欲張りすぎる。
わたしだって欲しいものはひとつに絞っているのに……。
あれもこれも欲しいなんて、もはや猫でも狩人でもない。
狼陣営も村人陣営も関係なく、ただひたすら我が道を行く。
他者を歯牙にもかけず。
他者を歯牙にかけゆく存在。
「いただきまぁす♡」
そんなの。
そんなの――。
――ただの
ハッと目が覚めた。
ドリームか……。マジ焦ったぁ……。
ものすごい寝汗をかいている。
『異空ちゃん起きて朝だよ』
いつものお姉ちゃんボイスを止めて、わたしはうにゅーんと伸びをする。
張りついたパジャマのなかにぱたぱたと空気を入れて少し涼む。
心臓はいまだドキドキしている。
スマホを見ると、もう朝の七時か。
お姉ちゃんボイスは既に三十分近くもスヌーズを繰り返していることになる。
今日は祝日ということもあってか、昨日は少し夜更かしをしてしまった。
悪夢を見た原因はたぶんそのせいだろう。
それにしても、スリーピースとはいったい。
お兄ちゃんたちが変なこというからあんな夢を見たんだ。そうに違いない。
だいたいこちとら小学生だぞ。少しは加減しろ。えちえちな会話をブロックしたことはないが、いくらなんでもそりゃないって。恵子がお姉ちゃんとわたしの両取りを狙っているとか、どんな属性だよって話。
世の中は広いからハーレムやら逆ハーレムやらもありえなくはないが――。
しかし、冷静に考えてほしい。
唯一の肉親を亡くした小学生が、性的な意味で姉妹を堕とそうと狙っているとか考えられるか?
ありえん。半分くらいはブーメランになってる気がするが、わたしだって節操というものは持ち合わせているつもりだ。
恵子がドラクエの魔王のように、ふたりでお姉ちゃんを分かちあおうとか言ってきても、わたしは断固拒否するね。
やはり本線は家族愛が欲しくてがんばってるってところだろ。
家族に異分子が混じるなんて、言葉にすれば数文字程度のことだけど、そこには言葉にできないほどの努力と時間が費やされているものだからな。わたしだってそうだった。お姉ちゃんが好きすぎて、暴走しないようにこれまで我慢してきたんだからな。お姉ちゃんもきっとそうだろう。誰かといっしょに暮らすということに、お姉ちゃんが努力をしなかったわけがない。いくら仲良し姉妹でも……。
――家族になるには我慢が必要。
これはわたしの実体験から導き出された真実だ。
どういう種類の我慢かは人によるだろうけどな。
※
さて――。
今日はお姉ちゃんも休みだから、ゆっくりと朝の支度ができる。
今日はお姉ちゃんが大好きなパンケーキでも作ろうかな。
ようやく夢のことを忘れかけ、今朝の献立をあれこれ考える。
それから着替えてソロソロと部屋を出ると、思いがけず声が聞こえてきた。
「……様。……さい」
防音のきいたお姉ちゃんの部屋からは閉め切っていれば中の音が聞こえてくることはない。
頭がまっしろになるというのはこのことだろう。
わたしはまだ恵子に部屋の合鍵を渡していないが、お姉ちゃんは既に恵子に渡しているところを見た。その意味するところはただ一つ。
声が聞こえるとしたら、恵子がお姉ちゃんの部屋に侵入していることしか考えられない。
「お姉様。起きてください」
――ドアは少しだけ開いていた。
「本当にお姉様は眠り姫のようですわね。王子様のキスで起こす必要があるのでしょうか」
わたしは目を見開いて、その少しだけ開かれた隙間を注視する。
想起するのはさきほどの夢の内容。
お姉ちゃんが恵子に襲われている映像。
「お姉ちゃん!」
わたしはドアを思いっきり開け放った!
そこには、予想通り恵子がお姉ちゃんを優しく揺り起こしてる姿があった。
「あら――」恵子がこちらを向いた。「異空ちゃん。起きたのですわね」
「どうして恵子ちゃんが……」
「ここにいるかですか。それは異空ちゃんが起きなかったからです」
「確かにそうだけど」
「何度もベルを鳴らしましたのよ。ですが起きてくる気配はありませんでしたので」
「そうだけどぉ……」
恵子の指はお姉ちゃんの肩のあたりにとどまっている。
モゾモゾと動くお姉ちゃん。
あっ……あっ。お姉ちゃんが起きちゃう。
覚醒が近いのは長年の経験ですぐにわかった。
「ふやぁ。あれぇ。今日は恵子ちゃんだぁ。おはよう」
起きちゃった……。
お姉ちゃんがわたしじゃなくて、恵子に起こされちゃった。
わたしの姿に気づいたお姉ちゃんはポヤンとした顔でわたしに視線を投げる。
「あ、異空ちゃんもいたんだ。おはよう」
「む~~~~ん」
他意がないのはわかってる。
でも、わたしがついでみたいに言われたのがすごくすごく不満だ。
のっしのっし歩いて、わたしはドアをバタンと閉めてその場から遁走した。
口を開けばキタナイ言葉がとびだしそうで。
自分の感情を制御できそうになかった。
わたしは我慢したんだ。
※
感情ぐちゃぐちゃ丸である。
お姉ちゃんはあれから恵子によって着替えさせられリビングルームに降りてきた。
着ている服はレトロ風なワンピース。
ウェストのあたりをキュッと引き絞り、お姉ちゃんの豊満な身体のメリハリを際立たせ上品に見せている。そして首元には青細いネクタイを緩く垂らしており、わたしの趣味とは違うが、センスの良さを感じさせた。
お姉ちゃんがいつもよりかっこよく見える。
それは常ならばわたしにとってもハッピー要素なんだけど……。
当然のことながらわたしは素直に喜べない。
お姉ちゃんが恵子の思うがままに、コーディネイトされて。
恵子好みのお姉ちゃんにさせられて。
お姉ちゃんもそれを受け入れて少しうれしそうに見える。
そして――。
もうひとつ許せなかったのは、
皿にのっけてあるパンケーキにわたしはフォークをぶっ刺した。
既にわたしは周回遅れ状態だった。
起きたときには先手をとられ、朝食は既に作られていたのだ。
朝ごはんはわたしが作る約束なのに。
「恵子ちゃんもお料理上手だねぇ」
「お姉様のお口にあったようでなによりです」
恵子が無難に応えをかえした。
お姉ちゃんのお皿にはパンケーキが三段重ねで置いてある。
お姉ちゃんの好きな甘いハチミツがたっぷりとかけられている。
それをお姉ちゃんはニコニコしながらパクついている。
――むうぅぅぅぅぅぅん。
風船のようにわたしの頬が膨らんでいく。
お姉ちゃんの節操なし!
という言葉が口まで出かかったが、パンケーキを口いっぱいほおばることで飲みこんだ。
ふと、恵子と視線が交差した。
その視線にどんな意味があるかはわからない。
少しわたしをうかがうようなそんな視線。
そして沈黙。
ナイフとフォークがお皿とキスする音が食卓を支配する。
「あの――」
恵子が沈黙を破った。
「異空ちゃん。本当にごめんなさい」
「え、突然どうしたの?」
わたしの代わりにお姉ちゃんが疑問を口にする。
やはり、恵子はわかっていたらしい。
わたしの不満も。やるせなさも。吊られた狼の気分も。
全部わかっていたみたいだ。
やっぱりこいつはお姉ちゃん狙いの狩人なんじゃないか?
でも、だとしたらどうして謝るんだろう。
「異空ちゃんとの約束を破ってしまったんです」
「約束?」
「お姉様を朝起こすときはいっしょに。朝食は異空ちゃんが作るという約束でした」
「そ、そうなんだね……なんか妹たちに計画的にヒモにされていってるような……」
「約束を破るのは悪いと思ったのですが、今朝方は起きてくる気配がなく、わたくしが先走ってしまったのです。家族としてどうしてもお役にたちたくて、お姉様を起こし妹を起こさないのが、
そこまで解説されてしまうと、こちらとしても感情の置き所がなくなる。
「とらないって言ったのに……。恵子ちゃんのうそつき!」
ついに言ってしまった。
わたしはまるきり子どものように道理の通らないことを喚き散らしている。
「そうですわね。誓いますわ。今後は絶対に約束を破りません。お姉様のお世話はひとりで勝手にいたしませんから、どうか許してくださいませ」
「……むうう」
そこまで言われてしまうと、恵子の気持ちにも少しは共感するところがでてくる。
お姉ちゃんのことが好きとかそういうのではなく、家族としてのポジションを手に入れようとした結果だとすれば、恵子の行動もわからんではないからな。
ただ、お姉ちゃんをとられてしまったというような感覚が湧いて、どうにも恵子の言葉を受け入れられない自分がいた。
我ながら狭量だとは思うけど、わたしにとっては絶対に譲れない無二の宝石だからだ。
そんな葛藤を抱いていると、視界に影が伸びた。
お姉ちゃんだった。
「ふやっ♡」
わたしはお姉ちゃんに抱きしめられていた。
やわらかい物体に顔がうずまり、溺れそうなくらいの愛情で包まれている気分だ。
わたしに押し出されるようにしてはみ出たお肉が周りに広がる。
知らなかった。おっぱいって液体だったんだ。
これぞまさしくアルキメデスの法則。
「異空ちゃん。お姉ちゃんは異空ちゃんのお姉ちゃんだよ。だからごめんね」
「お姉ちゃん♡」
即落ち二コマもいいとこだが、お姉ちゃんはわかっていないなりにわたしのことを気にかけてくれた。そのことがうれしくて、こころの中が暖かいもので満たされる。
実をいうと、恵子に対する怒りや敵愾心というのは不思議とそんなに湧かなかった。
それよりもお姉ちゃんが無頓着なことのほうがわたしにとってのダメージだったんだ。
お姉ちゃんが気にかけてくれるなら、わたしはすべてのことを許せる気がする。
「お姉ちゃんどこにも行かないで♡」
わたしは渾身の力をこめて頭をすりつける。
あざとい。我ながらあざといが――。
お姉ちゃんをとられそうで嫉妬したのは本当のことだ。
演技2割本心9割で構成された、まごうことなき妹プレイ。
これに落ちないお姉ちゃんはあんまりいないといっておこう!
「うんうん。私はどこにも行かないよ」
「お姉ちゃん好き……♡」
それにしても、まさかこういう流れになるとはな。
棚からお姉ちゃんとはこのことだ。
その結果をもたらした恵子に、わずかながら感謝の念も生じる。
「少しだけ羨ましいです」
知らぬ間に恵子が近づいてきていた。
ぽろりとこぼすようにつぶやくのは幼い嫉妬心。
それはどちらに対して抱いたものだろう。
お姉ちゃんはわたしからおっぱいを離し、なんとも言い難い顔をしている。
その意味するところはわかっている。
お姉ちゃんは恵子のことも家族として抱きしめたいのだろう。
でも、わたしの手前、本当にそうしてよいのかわたしに確認しようとしている。
言葉がでてこず悩まし気な表情。
し、しかたないにゃぁ。
ここは大人のわたしが大度を見せるとき。
「いいよ。お姉ちゃん」
お姉ちゃんは視線で確認するように「いいの?」と聞いてるみたいだった。
わたしは頷く。
お姉ちゃんとわたしは片腕を開いて恵子を迎え入れた。
「ありがとうございます。本当に嬉しいです」
恵子は雛鳥のように飛びこんで、三姉妹は仲良く抱き合ってましたとさ。
おしまい♡
あれ、でもちょっと待てよ。
もしも、恵子がここまで読み切ってたとしたら……怖くね?
※
そんなわけないよな。
いくらなんでも、わたしを嫉妬させて、お姉ちゃんに慰撫させ、さらには自分も慰撫されなきゃ死んじゃう的な主張をすることで、わたしも恵子を受け入れざるをえないような状況を創り出し、うまく家族ポジとしての地位を確立するとか……。
言葉にしてみたら、すごすぎる策略だが。マジだったとしたら天才すぎてビビるわこんなん。
いやいやいやいや考えすぎだろう。
おまえの頭ン中、人狼ゲームかよ。
最近は、お兄ちゃんたちと遊びすぎて、そんなふうに偏った考えになってしまったに違いない。
そうだ。そうだよ。恵子ちゃんはええコ。恵子ちゃんはええコ。
恵子はわたしを傷つけるようなことはしない。もたされたのは利益のみだ。
――状況はきわめて良好。
あれからわたしは『時間割』を創り出した。
恵子との口約束を文面化した感じだな。
内容は、今日のメイン担当は誰か。つまりこれは全般的なお姉ちゃんコンシェルジュサービスについて誰が担当するかという話。個別には朝起こす係。朝食を作る係。お弁当を作る係。買い物に行く係。お姉ちゃんと添い寝する係などなど。
学校の時間割のように、そこには一週間の予定がすべて書かれてあった。
まさしくお姉ちゃんヒモ化計画の新しい素描である。
お姉ちゃんは「ははは……妹ちゃんたちのお世話がすごすぎる件について」とか言って現実逃避してたけど、抵抗は無意味だ。お姉ちゃんは小学生妹たちのヒモになれ♡
もちろん、お姉ちゃんには全部覚えてもらって、もしも万が一間違っていたら、そのことを指摘してもらうようにしてもらった。ダブルチェック大事。超大事。お姉ちゃんはただ漫然とお世話を受けるのではなく、常にだれにお世話されているのか意識していなければならない。
なにしろ、これは恵子も
――わたし、パワープレイの楽しさ知っちゃった♡
そして、恵子は今わたしの隣を歩いている。今日はいっしょにお買い物する予定だ。というか午前中の段階で、そのように決定した。
お姉ちゃんは大学の課題があるとかでついてこれなかったが、まあほとんどいつもわたしひとりで買い物しているわけだから問題はない。お姉ちゃんはついてこれるときはちゃんといっしょについてきてるよ。そのあたりは常識的なお姉ちゃんだからね。
俯瞰的に見ればだ――。
恵子は家族が欲しいだけの優しい女の子で、わたしのこともお姉ちゃんのことも想ってくれている。
わたしがお姉ちゃんに情欲を抱いているから、偏って見えるだけであって、普通はこんなイイ子いないよってくらい性格もいい。
歪んでいたのは、わたしの瞳のほうだったんだ。
わたしは恵子と手を繋いで歩いている。
そして、もう片方の手は高齢者が使うような手押し車を引いている。
無地に花柄のついたいかにも女児っぽい一品だが、内実はあくまでシルバーカー。
これをわたしはキャリーバッグのように引きずって買い物にでかけている。
残念ながら重い買い物袋を引きずって歩くだけの体力はわたしには無いんだ。
買い物すがら、高校生くらいのお姉さんたちに「かわいいー♡ お姉ちゃんとお買い物かな♡」と言われたけれど、年期が違うのだよ。年期が。
まあ、恵子のほうが身長は高いし、実際に年上だ。
恵子はわたしを引率するような気持ちで、手をつなごうと言ってきたのかもしれない。
「それにしても異空ちゃんはすごいですね」
「え、なにが?」
「小学生なのにきちんと計画を立てて、生活をしているのですね」
「献立のこと?」
「それだけでなく、生活全般のことですよ」
「このくらい簡単だよ。恵子ちゃんもできるじゃん」
「それはそうなのですが、一般的な話ですよ」
ふむ。もしかして天才だと思われたか?
はっきり言うが、わたしは天才じゃない。
それなりに頭を働かせて生きてはいるが、それもこれも明るいお姉ちゃん計画のためだ。
「お姉ちゃんに心地よく過ごしてもらいたいから精一杯背伸びしてるだけだよ」
「背伸びしている異空ちゃんはかわいいですわね」
ふふ。褒めても何も出ないぞ♡ 今日のおやつは少しだけ色をつけてやろう。
「学校では仲の良いお友達はいらっしゃいますか?」
唐突な話題転換。
これは女の子生活を始めてから知ったことだが、女の子に会話の導入部分はほとんど必要ない。
女のほうが並列処理に優れているとか聞いた覚えがある。
どこまで本当なのかは定かではない。
けれど――、会話のスピードが速いのは確かだ。
恵子の場合は、特にそんな感じがする。
「いるよ。双子の姉妹ちゃんとか、占い趣味な女の子とか、カメラ好きな子とか」
「お家に呼ばれたりはしないのですか?」
「まあそれなりに。恵子ちゃんはどうなの?」
「わたくしは転校してきたばかりですからね」
「そうなんだ」
なんか闇深案件になりそうだから、突っ込むのはよしとこう。
「異空ちゃんは普段なにをされているんですか?」
「うーん。趣味の話?」
「そうですね」
「ネットとかかな」
趣味読書ですと履歴書に書くくらい無難な回答だった。
わたしって結構多趣味だからな。
イラスト描いたり。音楽したり。お姉ちゃんを愛でたり。
もちろん、お姉ちゃんを愛でるのが一番の趣味だけど、それが趣味認定されるかは謎だ。
「恵子ちゃんは何か趣味あるの?」
「そうですわね。わたくしは芸術鑑賞が趣味といえるものでしょうか」
「芸術鑑賞……」
まさにお嬢様って感じの趣味だな。
ネットでエロCG見ても芸術鑑賞って言えるわけだが。
言い方ってあるよなって思う。
表現次第で受け取り方なんて百八十度変わるわけだからな。
高尚な雰囲気。上品さ。お姉ちゃんからでは残念ながら学べない要素の数々。
小学生だが、恵子から学ぶことは多そうだ。
第二のお姉ちゃんとして認めてあげるのもやぶさかではない。
「わたくし、異空ちゃんも芸術作品のように感じていますのよ」
「え、わたしが?」
「ええ。そのアレキサンドライトのような瞳――宝石のようでとてもキレイです……」
「そ、そうなんだ」
なんか視線にねばっこいものを感じるんだが!?
わたし、もしかして狙われちゃってます?
受け入れようとした途端に、爆弾を放り投げてくるスタイルやめてもらえませんか。
「ふふ。あわてる異空ちゃんもかわいいですね。かわいい妹です」
「そ。そう? ありがとうね」
「ところで、お昼は何を作りましょうか」
お昼ごはんの話。
この会話のスピードは、人狼ゲームの議論よりも早いかもしれない。
しばらく、慣れるのに時間がかかりそうだ。
「そうだね。今日はお好み焼きの気分」
「なるほど……」
そう、グチャグチャのカオティックな食事。
わたしの今のこころ。
「いっしょに作りましょうね」
「うん」
結局のところ、わたしが恵子を受け入れた大部分の理由は、わたしの主導権を犯すことはなかったからというのが大きい。
わたしが作る献立を、生活プランを恵子はそのまま飲みこんでくれている。
それで、わたしといっしょに何かをするのが嬉しいと言ってくれる。
――喰えない少女だ。
わたしは思った。
ヨシ。一片の曇りもない姉妹百合を今日も書けたぞ!