【悲報】私氏、小学生妹ちゃんのヒモになりそう 作:おねロリのおね
「お姉ちゃん♡ サメとゾンビどっちがいーい?」
わたしは、お姉ちゃんに語りかけた。
手にはバルタン星人のごとく、ふたつの映画のパッケージを掲げて持っている。
フォフォフォフォフォ♡
「え、突然どうしたの?」
お姉ちゃんはパッケージを見た瞬間、脅えているみたいだった。
リビングのソファのところで足を抱えて小さくなっている。
身をそらして、わたしから逃げようとしてる姿が実にそそる♡
それもそのはず、お姉ちゃんはこわがりなんだよね。
ホラー映画自体が苦手であまり見ないタイプ。
今も見ていたのは、風光明媚な渓谷に挟まれた大河を下るナイスボートな映像だった。
今日は土曜日で、恵子もいない。
恵子は一週間に一度くらいのペースで実家のほうに帰っている。
家令から報告を受けて、いろいろと指示を飛ばしているらしい。
普段はIT時代の申し子らしく、スマホやパソコンからテレワークしてるみたいだが、顔をつきあわせてやらなければならないこともあるとかないとか。まあ家をずっと空けておくのもよくないのだろう。
ともかく、恵子がいないので、お姉ちゃんにいつもよりずっと甘えられる。
たまにはお姉ちゃん成分を補給しないと、わたし生きていけない。
「お姉ちゃんといっしょに映画みたいなぁ♡」
わたしはソファに膝をのっけて、お姉ちゃんに迫る。
そして映画のパッケージをグイグイと押しつけた。
ちなみにサメ映画のほうはお前もうサメじゃねーだろっていうぐらい、えげつねえモンスターが襲来するようなことが書かれてあるが、大丈夫。そいつ映画の中では
でも、お姉ちゃんはそんなこと知るはずもないし、わたしも先入観を持って映画を見てほしくないから、あえて何も言わないのだ。
「お、お姉ちゃんはディズニーとかのほうがいいなぁ」
「えー、サメもゾンビもおもしろいよ♡」
特にサメやゾンビというのは、ロンリーウルフと重なるところがあるからな。
ゾンビは連帯しているが、意思のない無統率な群体だし、サメは言わずもがな。
どちらも人間関係を際立たせるためのギミックになってるんだよ。
わたしは、どちらかと言うと、サメやゾンビに感情移入するタイプである。
「こういうのはちょっとお姉ちゃん苦手なんだよねぇ……」
「だってほら、ここに小さなお子さんは大人の人といっしょに見ましょうって書いてるよ♡」
「え……あ、本当だ」
歯切れの悪い返事をするお姉ちゃん。
あまりパッケージを直視したくないのだろう。
「お姉ちゃんがいっしょに見てくれると嬉しいな」
「う、うん。わかった」
「ほんと♡ ありがとうお姉ちゃん♡」
わたしはパッケージを放り出してお姉ちゃんに抱き着いた。
ちなみに今日のお姉ちゃんは、だらし姉ぇモード。
わたしが着せたオシャンティーな服を脱ぎ捨てて、下着同然の姿となっている。
恵子がいないと、お姉ちゃんも少し油断するんだよな。
そこがお姉ちゃんのかわいいところです♡
※
選ばれたのはゾンビ映画だった。
パツキンの若い姉ちゃんが主人公で、おっぱいは結構デカい。それだけでも見る価値あるわ。
わたしがジャケ買いした理由の大部分は、おっぱいに責任があると言っても過言ではない。
なお、ゾンビなハザードではなく、超人的な力を持たない一般市民というところが実によい。
この映画の特殊なところはポイント・オブ・ビューという視点の妙にある。
要するに、カメラ視点ということで、実際に撮影されたものがほぼそのまま提示されているというような形だ。登場人物の中にカメラマンがいて、そのカメラ視点なんだよな。だからこそ俯瞰視点と違って、臨場感が半端ない。
恐怖に震えた人間が、カメラのブレとして表現される。
小さな息遣い。
暗闇から迫る得体の知れない人影。
FPS視点ともまた違うぞ。この視点は、獲物を追う狼に通ずるところがある。
パツキンの姉ちゃんが逃げる!
「ふえぇぇぇぇぇ。ヤダぁぁぁぁ!」
そして怖がるお姉ちゃん♡
そのままわたしはぬいぐるみのように抱っこされる。
恐怖を逃がすためのショックアブソーバなのだろう。
お姉ちゃんの素足がわたしの身体ごとからめとっていて、ちょっとだけ息苦しい。
けれど、それに倍する嬉しさがある。
――ゾンビさん、ありがとう♡
もっとお姉ちゃんを怖がらせてください。
実をいうと厳密にはゾンビじゃないが、そんなことはどうでもよいのだ。
恐怖に震えるお姉ちゃんが愛おしい。
きゅーっとしたくなる。
「ねえ、お姉ちゃん」
わたしはお姉ちゃんを見上げた。
「な、なななにかな。異空ちゃん」
顔が近くて、わたし大興奮。
涙目のお姉ちゃんがかわいくて、すぐに食べたくなっちゃう。
けれど、わたしは視線を合わすにとどめた。
「怖いなら、わたしを見ていていいよ。わたしなら怖くないでしょ?」
ほーら。かわいい小学生妹ですよー♡
「が、画面から目をそらしたら、いっしょに見てることにならないから……」
お姉ちゃん♡
怖くてもわたしのことを想って我慢してくれるところが好き♡
「実は、わたしもちょっぴり怖くて、お姉ちゃんをチラチラ見て安心してた♡」
「異空ちゃんも?」
「そうだよ。だって怖いもん♡」
ぎゅうううっと、お姉ちゃんに近づいていく。
太陽に吸いこまれる小惑星みたいに、限りなく距離をゼロにする。
お姉ちゃんのお日様みたいな体温を感じて、本当に安心する。
でも、それだけじゃ足りない。
これからのことを考えると、どうしても布石を打っておかなければならない。
「もし、お姉ちゃんに怖いことが起こっても、
「異空ちゃんが?」
「うん。何か怖いことあっても、困ったことあっても、絶対守ってあげる♡」
――そう、
お兄ちゃんとの配信のなかで気づいた、恵子の持つ最終兵器。
それに対抗するためには、お姉ちゃんがわたしを狩人であると誤認してもらわなきゃならない。
なんのことはない。いままでの培ってきた姉妹の信頼度の差を対抗手段にするんだ。
これは、恵子が猫狩どちらであっても、あるいは素村であっても、わたしがまっさきにすべきアピールだった。
いまになって思えば、わたしは恵子と共同戦線を張った気になって安心していたんだ。
腑抜けているとしか言いようがない。吊られても文句を言えない失態だ。
もちろん、恵子は素村である線が一番濃い。今でもそう思っている。
わたしの中では、恵子は家族が欲しいだけのただの小学生だ。
だけど、だからといって猫狩を警戒しないのは、トーシロの考えってやつですよ。
わたしは怠惰な豚じゃない。飢えた狼なんだ。
「だから、お姉ちゃん、なんでもわたしに相談してね♡」
「う、うん。異空ちゃんの言う通りにするね」
お姉ちゃんは画面で襲われているパツキンの姉ちゃんをチラチラ視界にいれている。
画面から視線を逸らすのも怖く――、しかし直視するのも怖い。
恐怖のあまり、わたしの守るという言葉にすがってしまう。
そしていよいよゾンビに押し倒されるお姉ちゃん!
緊張感のあまり、お姉ちゃんはわたしを力強く抱きしめる。
「わ、私を守ってぇ! 異空ちゃん!」
「もちろんだよ。お姉ちゃん♡」
映画はバッドエンドぎみに終わったが、わたしのストーリーはハッピーエンドでまちがいなし。
「ううう。怖かったぁ」
「フォフォフォフォフォ♡」
思わずニコニコダブルピースをかましてしまうわたしでした。
さすが忍者キタナイという声がどこからともなく聞こえてきそうだ。
しかし、勝てばよかろうなのだ!
※
「ただいま戻りました」
夕方の六時をまわった頃。
玄関口のベルが鳴り、恵子の声が聞こえてきた。
いつもなら、そこで勝手に入ってくるのだが、その様子はなかった。
「申し訳ありませんが、荷物が多くてどなたか開けていただけませんか」
「はーい」
ちょうど料理をしていたわたしが、いったん火を弱火にしてドアに向かう。
玄関の扉を開けると、そこには恵子の視界を塞ぐほどの大きなプレゼントボックスを持った恵子が立っていた。中身は軽そうだが、質量的には大きそう。三段重ねになっていて、一段目二段目は薄い。三段目だけはやたら大きくて立体感のある箱だ。
「恵子ちゃん。おかえりなさい」
わたしは持ってきた箱のことには触れず、お決まりの言葉を口にした。
「はい。ただいま戻りました」
身体を半身にして、わたしに顔を向ける恵子。
そのままニッコリと笑う様子は、家族のもとに帰ってきて安心しているように見える。
油断しているわけじゃないが、やっぱりどうしても小学生というフィルターがあるからな。
恵子を中に招き入れ、わたしはドアを閉めた。
これでまた姉妹という密室の完成だ。
逃げ場のない闘技場――決戦のバトルフィールドというべきか。
家族になった人間に対してあまり誉められた考えではないがな。
階段からお姉ちゃんが降りてきた。
先ほどまでのだらし姉ぇ恰好は鳴りを潜め、いまではわたしが用意した恰好をしている。
清純かつ優雅な一品。もちろん、かわいい。
けど、さっきまでの下着同然の無防備な姿も捨てがたい。
オトコごころは複雑なのよね。いや乙女ごころか。知らんけど。
「あ、恵子ちゃんおかえり~。今日はちょっと遅かったね」
「お待たせして申し訳ございません、お姉様。今日は外国の方との商談に少し時間がかかりすぎてしまいましたわ」
「へえ、そうなんだ……。恵子ちゃんって本当に小学生?」
「わたくしなんか、ひよっこですよ。オジさま達にかわいがってもらっている立場ですわ」
謙遜を見せる恵子。
本当にそう思ってそうだが、客観的に見たら小学生というレベルじゃない。
わたしは鍋の火加減をみながら、お姉ちゃんとのやりとりを見守っている。
「外国の人とのお話って、やっぱり英語でするの?」
「そうですね。英語が多いです。スウェーデン語も少々使うといったところでしょうか」
「恵子ちゃんスウェーデン語もできるの!?」
「たしなむ程度ですわ」
トリリンガルかよ。
やっぱりこの小学生、底が知れない。
というか――さらりと流したが
お姉ちゃんは「すごいねー」と感心しきりだ。
しかし、単純に英語を話せるのがすごいって感じだな。
「異空ちゃんも英語を話せるのですよね?」
「んー、わたし? まあそれなりに」
そりゃ話せるが、いちおう外国生まれの外国育ちではあるからな。
話せなきゃ日本にやってくるまで、パッパとどうやってコミュニケーションとっていたんだって話になるわけで、英語くらいは話せて当然という感じもする。
『それだけじゃなくて、スウェーデン語も話せますわよね』
恵子が突然、スウェーデン語で喋りはじめた。
パッパの血筋も調べたんだろうから、この程度は知っているというアピールだろうか。
『もうだいぶん忘れたよ』
『ご謙遜ですわね』
『わたしは日本語ベースで考えているからね』
これは本当。
いくつか言語を学んでいると、同じ意味を持つ言葉が重なって思考される。
脳内の切り替えみたいなものが必要になってくるんだけど。
わたしの場合は、あくまでベースは日本語を使っている。
『異空ちゃんにも、わたくしの商談をぜひとも手伝ってほしいですわ』
『わたしまだ小学生だよ。無理に決まってるよ』
『オジサマ達とのお話は楽しいですわよ。皆さま紳士ですし。異空ちゃんもきっと気に入られます。わたくしが保証いたします』
『小学校の先生に、知らない男の人としゃべっちゃダメって言われてるし』
まあ、お兄ちゃんたちとは日夜しゃべりまくってるがな。
でも、お兄ちゃんたちは知らない人じゃないからいいんだ。
『わたくし、カワイイ妹を自慢したいのです!』
見え透いた魂胆だと思った。
恵子が最終兵器を使う布石を打ってきている。
「ここは日本なんだから日本語をしゃべってよ。
お姉ちゃん呼びのカードを切って、恵子を牽制する。
恵子はすぐに口をつぐんだ。そして若干、顔を赤らめて嬉しそうにする。
むぅ。勝負に勝って、試合に負けたとはこのことか。
「天才な妹たちに挟まれて、そ、疎外感がすごい」
お姉ちゃんが絶望した顔をしていた。
お姉ちゃんはカワイイの天才児なんだから、そんなに悲観しちゃダメ♡
「大丈夫だよ。いまどきAIちゃんに任せれば、ほとんど同時通訳はできるんだし」
「でも、異空ちゃんの算数の宿題をAIちゃんに解いてもらったら。マスターは大学生なのにこんな簡単な小学生向けの問題も解けないんですかぁ♡って煽られたもん……」
あー。
あれはイヤな事件だったね。
わたしがちょっぴりお姉ちゃんに頼る演出をしたくて、お姉ちゃんに宿題を見せにいったら、そういう顛末になってしまった。最近のAIは学生の宿題に使われてしまうのを防ぐために、なんらかのバイアスがかかっているらしい。
ていうか、AIちゃんってさりげにメスガキ仕様じゃね?
「ともかく、ここは日本なんだし、べつに外国語ができなくても大丈夫だよ」
「本当に?」
「本当だよ。恵子ちゃんも、外国語は禁止でお願い」
「わかりましたわ。家内の秩序を乱してしまい申し訳なかったです」
ひとまず話が落ち着いたところで料理が完成した。
夕食における永遠の定番。
――すき焼きである。
※
「お姉ちゃん。今日のお味はどうかな?」
「もちろん! おいしいよ! お肉やわらかぁ♡」
そう、お姉ちゃんのお胸のお肉もやわらかぁ♡ どんどん吸収されてイケ♡
お姉ちゃんが喜んでくれてなによりだ。
一方、恵子のほうはというと、これまたいつものように静々と食べているが、表情はやはりほころんでいる。日本人にとって魂の料理ともいえるすき焼きの魅力に抗える者はいまい。
たとえ、スウェーデン語が堪能な小学生だろうが、それは真実といえる。
「ふふ♡ 異空ちゃんは、すぐにでもお嫁さんになれますわね」
うっ。
恵子にそんなふうに言われてしまうと複雑な気分だ。
前にお姉ちゃんにも同じように言われたが、そのときとはワケが違う。
もし、恵子が猫だったりすると恐怖を感じる。
ええい、なにくそ。狼が怖がってどうする。
「すき焼きって見た目以上にシンプルなんだよ。食材切って煮つめるだけだからね」
「お姉様の好みに寄せているところが素晴らしいと言いたいのですわ」
「……」
恵子がわたしとお姉ちゃんを睥睨する。
その観察眼はどちらを狙っているのか。あるいはどちらも狙っていないのか。
「お姉ちゃん好みの味に染めてるのは確かだよ」と、わたしは言った。
「お姉様が異空ちゃんに慕われて、わたくし些かモヤっとしたものを感じます」
「えー、モヤっと?」とお姉ちゃんがお肉にパクつきながら言う。
「はしたない妹とお笑いください。異空ちゃんに想われているお姉様を見て、羨ましいと思ったのですわ」
「恵子ちゃんもすぐに私たちみたいになれるよぉ」
お姉ちゃんは甘いな。
いろんな意味で甘い。
だけど、わたしもまたそう思っている部分があるのは確かだ。
なんだかんだいって、恵子は必要以上に踏みこんできたりはしないからな。
手探り状態なのはこちらも同じ。
恵子が時折踏みこみすぎても、それはわたしにも同じくらいの責任があるように思う。
「そうなれると嬉しいと思います」
恵子は静かに目を閉じて、そう言った。
※
それから人心地つき、ようやく例のデカいプレゼントボックスに話題が移る。
「これなーに?」と、お姉ちゃん。
さっきから気になっていたらしい。もちろん、わたしも同じ気持ちだ。
――この中には、恵子の秘密兵器が隠されているのではないか。
そんな戦々恐々とした気持ちが湧いてくる。
「また、領域侵犯になってしまいそうで、心配なのですが――」
普段よりも心なしか弱々しい声だ。
恵子は三段目の大きなボックスのリボンを解き放った。
中から現れたのは、巨大な一抱えもある猫のぬいぐるみだ。
ちょっとデブ猫だが、そこは愛嬌だろう。
「お二方にどうしてもプレゼントがしたくて……」
恵子はデブ猫を持ちあげる。
視界がさえぎられるほどの大きなぬいぐるみだ。
もちろん、その意図するところはわたしへのプレゼントなのは疑いようもない。
「お姉様にも、異空ちゃんにも本当に感謝しているのです」その姿はとてもいじらしい。「受け取っていただけますか」
「うん。ありがとう。恵子ちゃん」
これって、中にカメラとか仕込まれてないよな。
いやいくらなんでも、そういった証拠を残すほど恵子は容易いプレイヤーじゃない。
ぬいぐるみが、たまたま猫だから、そういった思考になってしまっただけだ。
お部屋にはそれなりに女児っぽくぬいぐるみは置いてあるし、そこに一匹加わるだけならべつに問題はない。ブサイクな顔もよく見ればかわいらしいし。
でも怖いのは一段目と二段目か。
こちらにはヤバげな臭いがプンプンする。
いつだって、秘密兵器は最後までとっておかれるものだからな。
果たして、二段目の箱からは、黒いドレスが現れた。
子どもサイズで、わたしにぴったり合いそうな一品。
「パリのタイユールに創らせましたの」
「夜会とかで着るようなドレス?」
わたしは両の手でドレスを手に持ってみた。
夜空を手のひらサイズに封じこめたような、とてつもない金額がかかってそうな一品だ。
それにしても、どうやってわたしのサイズを知ったんだろう。
まさか目視?
「サイズについては、いくつかのお写真から推測した数値になりますわ。合わなかったらおっしゃってください。すぐに調整させますので」
「これ絶対高いやつでしょ。受け取れないよ」
「鳳寿院の力をもってすれば、この程度たいしたことありません」
イヤな予感がますます膨れあがる。
「すごーい! 異空ちゃんが着たら絶対似合いそう!」
お姉ちゃんが目をキラキラさせている。美的感覚に鋭敏なお姉ちゃんは、プロの作った芸術作品ともいえる一品に釘づけのようだ。
「もちろん、お姉様のもありますよ」
そして、最後に取り出されたのはお姉ちゃん用のドレス。
こちらは大人向けのシックな感じで、わたしのようにひらひらはしていない。
きっと、すごく似合うと思う。
「うわぁ。こっちは素材負けしそうだね」
「そんなことありませんよ。お姉様もお綺麗ですから」
「えー、そうかなぁ」
喜色を隠せないお姉ちゃん。
というか、そもそもお姉ちゃんはずっと素の状態。素村だ。
金や権力とは無縁な無邪気な村人は、与えられた見たこともない財宝を前にはしゃいでいる。
――ゾクっ。
背中に戦慄が走った。
お姉ちゃんは気づいていないけれど……。
ついに恵子が最終兵器を繰り出してきたという感じか。
数分後の未来を、わたしは正確に覚知する。
「どこの夜会に出てもおかしくないですよ。お姉様♡」
「恵子ちゃんありがとうねぇ」
「お姉様に喜んでいただいて嬉しいですわ」
恵子は言っている。
鳳寿院の跡取りの唯一の
下々の者に見せつけてやれ、と。
つまりは――。
保護者らしく振舞ってねってだけだよね、きっと