【悲報】私氏、小学生妹ちゃんのヒモになりそう   作:おねロリのおね

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狩人日記?

X月XX日

 

 わたくし、目覚めましたわ。

 

 日記なんて益体のないもの。記録物としてはなんの価値もないと思っておりましたが、わたくしの感動を、一瞬一瞬の生の喜びを閉じこめるには、日記という媒体は有用だと思いなおしました。

 

 だから本日から日記を書き始めようと思います。

 

 今日、わたくしは天使ちゃんにお逢いました。白雪のようなベースに毛先は桜色を乗せた髪の毛。小さなかんばせは幼いながらも整っており、既に完成された美を見せます。なかでもアレキサンドライトを思わせる複雑な色合いをした瞳。ああ……古来より日本人が詩のなかに封じようとした詠嘆の感情を、わたくしは満腔を通じて理解しましたわ。

 

 ああ……。

 

 言葉が絶します。その沈黙の中にしか表現できない至上のかわいらしさ。

 

 ああ本当に。異空ちゃん。本当に。

 

 かわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいかわかわかわかわかわかわ。

 

 かわ……ゆす。

 

 どうにも感情が暴走気味になります。

 でもそれくらいわたくしにとっては衝撃的でした。

 

 異空ちゃんはどうやら両親を亡くしたばかりらしく、美人なお姉様と連れだってやってきました。おふたりは仲が良く、異空ちゃんの視線には無上の信頼感がうかがえます。対するお姉様の表情はこわばっており、これからお父様と相対することに緊張しているようでした。お姉様はかろうじて成年と呼べる年齢でしたが、まだまだ若い身空。誰か大人の庇護を求めて、わたくしのお父様にお会いしにきたのでしょう。

 

 異空ちゃんの顔に、(くら)いものが無かったのは幸いでした。その愛くるしいお顔が曇るのはあまり見ていたくはありませんでしたから。ですが、涙で濡れる瞳はどんなにか美しいだろうと、そう思わなくもありませんでした。異空ちゃんがかわいすぎるのがイケナイのです。子猫が愛くるしすぎてメチャクチャにしたくなるというのは往々にしてあることでしょう。

 

 お姉様とお父様が話している間、わたくしと異空ちゃんはしばらく子どもたちだけで遊んでいるように言われましたわ。

 

 鏡台に座る異空ちゃん、わたくしは背後から十本の指を覆うようにかぶせます。

 

 我ながら蜘蛛が獲物に組みつこうとしている様を連想しました。無垢な少女を屠る喜びは、目覚めたばかりのわたしにとって、抗いがたい熱を伴っていました。息が荒くならないように気をつけるのが大変でした。

 

 髪留めは心理的負担を与えないように、できるだけシンプルなものを選びましたわ。

 

 フランスの職人に作らせた一品もので、百万円ほどはしますが、おそらく異空ちゃんは気づいていないでしょう。なぜなら、宝石よりも尊いご自分の価値に、まったく気づいていらっしゃらないのですから。

 

 あと数年も経てば引く手あまたになることは想像に難くありません。いや、今でもその手の趣味の方にはたまらないはずです。欲望の視線にさらされ無惨に花を散らすよりは、いっそわたくしの手でたおってしまおうか。そう考えなくもありませんでした。

 

 わたくし欲しいものは絶対に手に入れる主義ですので。

 異空ちゃんをわたくしの妹にしたいというのが日記を書き始めた動機でもあるのです。

 

 

 

X月XX日

 

 残念ながら、異空ちゃんの家族にはなれませんでしたわ。

 お父様の言い分もわかります。お父様はわたくしを男手ひとつで育ててくださってますから、そこに異分子を取り込むことを忌避されたのでしょう。鳳寿院の力が邪魔をしてしまったのです。

 

 いっそ鳳寿院の名を捨ててしまおうか……。そんなことを考えなくもなかったのですが、現実的に見て、それは無理です。いまのわたくしは小学生ですし、ひとりで暮らすのさえ許されないでしょう。

 

 可能性があるとすれば、わたくしが中学に上がる頃に、須垣家の近くにある中学校を選択し、実家から通うのは遠いからという理由で、須垣家に転がりこむというのはどうでしょうか。

 

 これなら、お父様を説得することも可能かもしれません。なんだかんだ一人娘というのは最強です。父親にとって、娘はまるで無慈悲な月の女王のように逆らい難い存在だからです。お優しいお父様のことですから、きっと天涯孤独な姉妹のことも気にかけているはず。わたくしが須垣家のお世話になることで、お父様は須垣家の援助をする契機ができる。お父様の心にも沿う形になるでしょう。

 

 それまでの間にできることを考えます。

 

 

 

X月XX日

 

 わたくし、デビュタントを経験しました。

 

 十を数える年になると、鳳寿院家では社交の場に踊りでることになります。

 お父様のお仕事を少しだけお手伝いし、その傍らで顔をつなぐ。

 逆説、わたくしの計画を遂行していくためには、鳳寿院から離れなければなりません。

 

 要するに使用人の方々を使っていろいろとしてしまうと、必ずお父様に伝わってしまいます。

 ですので、親切なオジサマを見つけるためにも、積極的にデビューしたのです。

 

 それなりに親しい間柄になった後は、複数のオジサマを通じて、探偵を雇いましたわ。

 直接顔をつきあわせたわけではございませんが、情報はデータでのやりとりで十分ですし、私設の口座から報酬をお渡ししても誰にもバレることはございません。自主性を重んじるお父様は、わたくしの口座を覗き見るなんて無粋な真似はいたしませんから。

 

 これで登下校時の異空ちゃんの御姿を鑑賞できます。

 ああ……。今日もお可愛いこと……。

 

 

 

X月XX日

 

 ついでに、ブイチューバーとしてもデビューしましたわ。

 

 生意気に思われるかもしれませんが、わたくしどうにも庶民の方々の心情というものがいまいち理解できません。同級生の方々にも、どこか壁のある態度をとられてしまいます。同級生にすら「恵子お姉様」とか呼ばれる始末。上級生の方々からも呼ばれた時は心の中で頭を抱えましたわ。

 

 これでは、異空ちゃんを射止めることなんてできようもありません。

 わたくしは庶民の方々のように「恵子お姉ちゃん」と呼ばれたいのです。

 

 仮面をかぶりながら、庶民の考えを知る。

 それにはブイチューバーが効率的だと思ったのですわ。

 

 ブイネームは少し考えましたが、わたくしの名前からそのままほとんど捻りもなくつけました。

 鳳寿院恵子。

 HOUJUIN EKOから淫猫としましたの。

 

 容姿はネコミミのついた黒髪黒目のお嬢様。相場の百倍ほどお金を積んで、超特急でプロに描いていただきましたが、清楚な淫獣という矛盾した設定によく応えてくださっていると思います。

 

 

 

X月XX日

 

 淫猫は清楚系の女王様気質という設定にいたしました。

 わたくし、どうにも自分が高飛車なのではないかと思います。帝王学を学んできたせいなのか生来的な気質なのか、あるいはその両方の結果、わたくしは無意識的に人を支配してしまう傾向があると思います。だからこそ、逆につきぬけてキャラクターとして設定してしまえば違和感がないと思ったのですわ。

 

 もちろん、最初から異空ちゃんを披露したりはしません。

 誰が自分の宝石箱を赤の他人に見せびらかしたりするでしょう。

 

 信頼を醸成する期間が必要でした。

 もちろん、それはリスナーの皆様にとってもそうでしょう。

 わたくしが皆さまの信頼を勝ち取るためには幾分かの時間が必要だと思います。

 

 

 

X月XX日

 

 お豚さん。

 そう呼ばれることで、喜ぶ人種がいるらしいことを、わたくし初めて知りました。

 ブイはリスナーのことを特殊なファンネームで呼ぶ文化があるようです。

 いつのまにやら、リスナーさんはお豚さんになってしまいましたわ。

 わたくしがご挨拶すると、ブヒブヒ鳴くのです。

 お可愛いこと……。

 

 

 

X月XX日

 

 今日もお豚さんたちがブヒブヒ鳴いてます。

 このまま養豚をはじめましょう。

 

 

 

X月XX日

 

 異空ちゃん観察日記のほうも続けております。

 今日も異空ちゃんがかわいらしすぎますわ。

 

 

 

X月XX日

 

 今日は雨あがりの空。

 水たまりを飛び越える異空ちゃんがかわいかったですわ(小並感)。

 

 

 

X月XX日

 

 今日も異空ちゃんがかわいい。

 わたくし優勝しました!

 

 

 

 

X月XX日

 

 異空ちゃんが横断歩道を渡れなくて困っているご高齢の方を助けていらっしゃいました。

 ああ……異空ちゃんは天使。

 わたくしの異空ちゃんデータがECOドライブの中に溜まってゆく……。

 

 

 

 

X月XX日

 

 あまりの異空ちゃんのかわいさに目が曇ってましたが、少しおかしなことに気づきました。

 ほとんど毎日のように買い物をしてらっしゃるのは異空ちゃんなのです。

 シルバーカーを引いて、買い物をする姿は、初めてのおつかいといった風情があり、大変好ましいものでしたが、よくよく考えれば変です。

 お姉様はいったい何をしているのでしょうか。

 

 

 

X月XX日

 

 お姉様のほうも観察してみましたが、どうもお姉様は異空ちゃんに生活全般をお任せしちゃっているのではないかと思います。小学生がそんなことをできるのかとも思うのですが、わたくしでもできなくはないですし、絶対にないとは言い切れません。お豚さんたちにも意見を聞いてみましょうか。

 

 

 

X月XX日

 

 メンバーシップに入っていただいた、エリートなお豚さんたちに聞いたところ、異空ちゃんは家族愛にすがっているのではないかという線が濃くなりました。

 

 確かに両親を失ったばかりの小学生が、唯一の家族であるお姉様にすがるという考えは妥当なように思います。お姉様もそれをわかっているがゆえに、あえて小学生妹のヒモである状態を維持しているのかもしれません。

 

 

 

X月XX日

 

 自家サーバーのありあまる力を利用したVR空間。

 その奥まったところにある、一段高いところには豪奢な椅子があり、そこにわたくしは足を組んで座っています。

 お豚さんのひとりが、「もしかすると妹様は淫猫様のようにお姉様を愛してらっしゃるのでは」という愚劣な意見を奏上してきたので、叱責したのです。

 わたくしに踏まれて、お豚さんは喜んでいました。

 なにゆえ……。

 

 

 

X月XX日

 

 

 

 

X月XX日

 

 

 

 

X月XX日

 

 お父様がみまかって数日。

 たとえようのない心細さを感じます。

 家族とは、この宇宙とわたくしを結びつける紐帯だったのですね。

 縁を失うと、人は地に足をつけていられず、魂は中空へと霧散する。

 寂しい……。

 

 

 

X月XX日

 

 立ち直るのに、少しお時間がかかりましたわ。

 この世に縁がなければ作ればよいのです。

 天国に行ってしまったお父様、見ていてください。

 わたくしは必ず世界で一番カワイイ妹を手に入れてみせます!

 

 

 

X月XX日

 

 異空ちゃんはやはり天使でした。

 一年前のやりとりを覚えていて、わたくしの贈った髪留めを大事に想ってくださっていたのです。感動のあまり、わたくし涙を抑えきれませんでした。

 ああ……お豚さんたちが赤スパを投げる気持ちが今まさに理解できましたわ。

 推しに魂をささげるような気持ちだったのですね。

 ああ……、わたくし、異空ちゃんに赤スパ投げたい。

 鳳寿院の全財産、66兆2000億………!!

 

 

 

X月XX日

 

 引っ越しの準備に須垣家にお邪魔してわかったことなのですが、お姉様ヒモでしたわ。

 ただ、こうなると、異空ちゃんがお姉様をお世話しているのはなぜなんでしょうか。

 家族関係を確かなものにするため?

 しかし、それにしてはいささか過剰な気もします。

 前にお豚さんの一人が言っていたように、お姉様のことを狙ってらっしゃるからでしょうか。

 そんなバカなとは思うのですが……。

 

 

 

X月XX日

 

 異空ちゃんの心の内がわからなかったわたくしは、少々犯罪めいておりますが、お豚さんたちの意見をあらためて聞いてみることにしました。

 

 具体的には、わたくしが髪留め型のカメラで異空ちゃんの様子を撮影しお豚さんたちに提示。

 それから庶民の感覚で、意見を抽出するという流れです。

 

 もちろん、異空ちゃんの尊いお顔を晒すなんてことはいたしません。のっぺらゲンガーを使って顔をアニメ調にし、背景画像変更と変声も施し、プライバシーや肖像権に対して最大限の配慮をいたします。

 

 喧々諤々の議論が湧きおこりました。

 わたくしが思っているのと同様に判別不能。

 ただし、家族愛を一部はみ出るような感情も見え隠れするといった感じでしょうか。

 

 提示された意見はお姉様のお世話をわたくしが分担するというもの。

 もしも、異空ちゃんがかわいい狼さんだとしたら、わたくしが家事を分担することでお姉様をとられるかもしれないと焦り、尻尾を出すのではないかという意見でした。

 

 なるほど確かにと思い、お豚さんをねぎらってから実際にそのような作戦に移りました。

 

 

 

X月XX日

 

 お姉様のヒモっぷりが生半可なものじゃないことが判明いたしました。

 朝はおはようから、夜はおやすみまで。隙のないヒモ生活。

 これはお姉様が社会復帰するのは無理かもしれません……。

 

 せっかく縁あって家族になれたのですから、お姉様のこともないがしろにしたくはありません。

 家事を分担するというのは、わたくしの計画にも沿いますが、お姉様を更生させるという意味でも有用でした。異空ちゃんはかわいらしく抵抗しておりましたが、わたくしの言ってることは社会常識的に見て正しいので、うまく反論することはできません。

 

 しかしながら、異空ちゃんがお姉様のお世話をする本心は、やはり家族愛にあるのではないかとも思いますわ。いずれにしろ、わたくしが家事を分担することで、問題はないはずです。

 

 異空ちゃんがただのかわいらしい妹だとしたら、いずれわたくしにお世話されることに慣れていくでしょうし、仮に狼さんだとしても、お姉様をいっしょにお世話することで共同戦線を張ってるように思うでしょうから。

 

 

 

X月XX日

 

 一年前と同じく、異空ちゃんの髪の毛を梳いてあげました。

 少々髪が痛んでおります。トリートメントはしているのでしょうか。

 わたくしが姉らしく注意すると、異空ちゃんはメンドウくさいといった態度をとります。

 ああ……妹が姉をぞんざいに扱う。この距離感がたまりません。

 わたくしの手で綺麗にかわいくなっていく異空ちゃん。

 そして、ありがとうとはにかむ姿は、わたしの心臓を撃ちぬいてしまいました。

 思わず、頬に口づけてしまいましたが、少しやりすぎだったかもしれません。

 けれど、トマトのように赤く染まる異空ちゃんは、激カワ。

 もはやカワイイというレベルを越えています。

 常人であるわたくしが耐えられるはずもないのです。

 

 

 

X月XX日

 

 今朝は珍しいことに異空ちゃんが起きてきませんでした。

 

 わたくしと異空ちゃんは、朝はお姉様をいっしょに起こすことになっていますが、肝心の異空ちゃんが起きないことにはどうしようもないところです。何度かベルを鳴らしても無反応。

 

 異空ちゃんは頑張り屋さんですから、いずれ必ず起きてくるでしょう。

 わたくしにはそれを待つ選択肢もありました。

 

 ですが、ここでどうしても抑えがたい衝動がわたくしのなかに湧きおこったのです。

 

 さでずむ。

 

 異空ちゃんの曇り顔は致死性のかわいさを含みます。

 涙に濡れた瞳は宝石のように輝くでしょう。

 

 もちろん、脳裏では冷静に計算する部分もありました。

 わたくしが異空ちゃんに嫌われることで、お優しいお姉様は所在を無くしたわたくしをかばうでしょう。

 そうすると、今度は異空ちゃんが泣きはらした目で、お姉様を求めるに違いありません。

 わたくしとしましては、お姉様を強いて排斥しようという気はありませんから、それでもよいのです。

 

 計画はうまくいきました。

 わたくしは次女としてのポジションに収まり、須垣家の一員として真に迎え入れられたのです。

 

 その証として、わたくしの手元には、異空ちゃんの作った時間割がございます。お姉様のお世話についてビッシリ書かれたそれは、お姉様をとられたくないという想いと、わたくしを受け入れたいという想いがアンビバレンツに内包されていて、見ているだけで達しそうになりますわ。

 

 これが、異空ちゃんの考える明確な()()なのでしょう。

 わたくしはこのラインを犯さないように、わずかずつ浸透していけばいいのです。

 

 同日、わたくしは異空ちゃんといっしょにお買い物にでかけることができましたわ。

 小さな手から伝わる体温が尊く、わたくしは喜びを抑えることができそうにありません。

 

 途中で、護衛兼探偵をしていただいている高校生くらいに見えるお姉様や、いつも異空ちゃんを見守っていただいている高齢ながらその道では伝説のおばあ様にご挨拶しつつ、異空ちゃんと他愛のない会話を重ねました。

 

 女子高生探偵さんはわたくしと異空ちゃんが仲良く買い物をしているのを見て「お姉ちゃんとお買い物かな」とおっしゃってくださいましたわ。普通に考えれば、わたくしの配色は黒で、異空ちゃんは白。黒白なのにお姉ちゃん扱いをするのかと言われれば微妙どころかもしれません。すれ違っただけの赤の他人だからこそ違和感のない言葉ですが、要素をとられれば失言とも言えますわね。

 

 ですが、この点についてはどうしてもわたくしが聞きたかった言葉なのです。

 わたくしが欲しい言葉を投げかけていただいたという点で言えば、さすが伝説の探偵の孫といったところでしょうか。報酬には色をつけておきましょう。

 

 

 

X月XX日

 

 今日も優勝しましたわ!

 ついに、異空ちゃんがわたくしを姉と認めてくださったのです!

 

 ああ……。あああ……。

 天にも昇る気持ちとはこのことを言うのでしょう。

 

 忘れないうちに反芻したいと思います。

 

 今日、異空ちゃんは三姉妹丼を作るとのことでした。

 お豚さんたちがよく姉妹丼なる言葉を卑猥な意味で言っているのは知っています。

 しかしながら、天使の口からそのような言葉が出るとは正直意外でした。

 わたくしは、その意味するところが卑猥である――ということが伝わらないように、精一杯表情筋を引き締めましたわ。この程度、オジサマたちとポーカーゲームに興じたりするわたくしにとっては造作もないことです。

 

 それで重ねて聞いていきますと、なんともかわいらしい発想!

 この三姉妹丼はわたくしたち姉妹のことを指しているというじゃありませんか!

 

 これは浸透作戦がうまくいっていると見たわたしは、一気に侵攻を開始します。

 わたくしを、お姉ちゃんと呼んでもらえるように要求したのです。

 

 厚かましい願いですし、拒否される可能性もございました。

 もちろん、わたくしの中には、お姉様が傍らにいるから断られないだろうという打算的な部分もありましたわ。

 ですが、わたくしの希求は、異空ちゃんに姉と呼んでもらうことなのです。 

 

 望みは叶いましたわ。

 恥ずかしいからと言って、一度切りでしたけれど、一度目があれば二度目も必ずあるはずです。

 

 わたくしの計画は順調そのものですわ!

 

 

 

 

X月XX日

 

 異空ちゃんの身も心も手に入れるためには、お姉様の攻略が欠かせません。

 異空ちゃんはお姉様に依存しておりますから。

 

 しかし、異空ちゃんからお姉様をとりあげるなんてのは下策でしょう。

 

 言うなれば、わたくしは、異空ちゃんに食べられたいのです。選ばれたいのです。

 主体的な判断の結果として、わたくしをお姉ちゃんと呼んでほしい……。

 イヤイヤながら強制的に言わせるなんて状況は望ましくないのです。

 

 ずいぶんとワガママで傲慢だと思いますが、それがわたくしという存在なのだからしかたありません。

 

 中策は、円満にお姉様には退場していただくということが考えられます。

 具体的には鳳寿院の金と権力で自立を早め、お姉様がおひとりで生きていけるような環境を整えるのです。

 お姉様のほうがヒモを脱却すれば、当然、異空ちゃんのお姉様を依存させるという依存症も抑えられるでしょう。問題なのは、この方策は異空ちゃんを必要以上に追いつめてしまうこと。追い詰めすぎて、消えない瑕をつけることは望みません。

 

 上策は…………。

 

 まあここに書くことでもないでしょう。

 答えはわたくしの中に既にあるのですから。

 

 さぁ今日も、異空ちゃんを()()()()()()しましょう!




猫でした
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