【悲報】私氏、小学生妹ちゃんのヒモになりそう 作:おねロリのおね
わたしがブイチューバーを始めたきっかけは両親の死だ。
なぜ始めたのかは、正体を隠して小学生でも稼げる手段がそれしかなかったからとも言える。
たぶん、小学生というアドバンテージを活かせば、顔出ししたほうがよかったかもしれんが、それをすると、どうしてもお姉ちゃんにバレてしまうからな。当然、個人勢だし、企業勢とコラボしたこともない。
ここ一年でお金をそこそこ稼げるようになったのは、単純に運がよかったからだろう。
実の両親がどちらともアーティストだったため、それなりに歌や楽器の演奏やイラスト描いたりするのとかにも素養はあるが、いまどきそんな才能のあるブイチューバーなんてごろごろしてるからな。単体要素でわたしがプロに勝てる道理はない。
お姉ちゃんにバレてはいけない理由は、なかなか言葉にするのが難しい。
わたしがお姉ちゃんと添い遂げるためには、お姉ちゃんをその気にさせなければならない。
お姉ちゃんのわたしへの依存心を高めるというのは、基本的な方向性としては間違っていない。
お姉ちゃんは引っ張っていくタイプというより、引っ張られる方を望むタイプだしな。
しかし、いまの外形的状況をかんがみるに、お姉ちゃんとわたしの絆というのは、小学生の妹である
この理論はわかるよな?
つまり、わたしには、「お姉ちゃんがいないと生きられない」と主張することで、お姉ちゃんと結婚するという戦略もありえたわけだ。
しかし、その戦略がとりえないのは、お姉ちゃんの性格からして明らか。
いずれ、お姉ちゃんがわたしという重荷に耐えかねて、離れていくことが予想された。
お姉ちゃんはさみしがりやだが、孤独耐性はそれなりに強い。
ひとりでいるのはイヤなくせに、群れたいとは思わないタイプだ。
お姉ちゃんとわたしを繋ぐ紐帯は、依存心と自立心のギリギリの綱引きの上に成り立っている。
だから、わたしの計画の最終フェーズは、高校生にあがったくらいに、わたし実はお金を稼げますが、それでもお姉ちゃんといっしょに暮らし続けたいですと主張するつもりだったんだ。
既に計画は破綻してしまったも同然だが、お姉ちゃんに渡した百万円はタンスの中に大切にしまわれていて、今は宙に浮いている状態だ。伝え方次第では、まだ望みはあるだろう。
しかし、どう伝えるのが正解なんだ。まったくわからん。
しかたがないので、わたしはリスナーたちに聞いてみることにした。
※
「あ、また来たんだ。雑魚お兄ちゃんたち♡ こんな日曜の真昼間から小学生のわたしとお話したいなんて、彼女とかいないのぉ♡ 人生敗北者ぁ♡」
はい。メスガキです。
容姿は一言でいえばロリサキュバスって感じかな。
特徴的なのは、ちっちゃな羽にハート形のしっぽ。
ほっぺたに☆マークついてて、紅い瞳の奥にはハートマークが浮かんでる。
おなか丸出しの短めなトップに太ももまるだしの短パン。やたら肌色率が高い恰好だ。
黒髪が短めのツインテールになっていて、幼く生意気そうな印象を抱かせる。
ブイではイラストレーターのことをママと呼称したりするが、このキャラのママはわたしだ。
なお、小学生という設定だが、まさか中身がリアル小学生だとは思っていないだろう。
中身クォーターで、声質もいくらかか変えられるわたしは、幼いながらも聞き取りやすい声もそれなりに出せる。
『くそおおお』
『初手罵倒が疲れたこころに効く』
『イソラたんでしか摂れない栄養素がある』
『男を手玉にとる術を知っている小学生』
『ハァ……ハァ……敗北者?』
『取り消せよ。今の言葉』
『もはや様式美ですらあるな』
ちな、わたしのブイチューバ―ネームは、メスガキ・イソラという。イソラは本名だが、まあわりとキラキラしているから、本名だとバレることはないだろう。
さて、今日はリスナーたちに話を聞きたいわけだが、いきなり話を聞くというのもぶしつけな感じがした。
まあ、なにをしゃべってもいいとは思うんだが、リスナーも一枚岩ではないからな。
ここは選別が必要になるだろう。
「あのさぁ。今日はわたし暇だからお兄ちゃんたちとゲームしてあげるね♡」
『ゲームだと?』
『イソラちゃんとゲーム……むふふ』
『お膝に乗せてゲームかな。いいよ?』
『唇に指を持っていってゲームに誘うのほんとエッチ』
『おまえさん、少々エッチすぎやせんか』
「ゲームの内容はぁ……人狼ゲームです♡ 知ってるよね人狼♡」
『宇宙じゃないほうの人狼?』
『メスガキちゃんに人狼ゲームとかできるの?』
『小学生に負けるかよ』
『人狼ゲーム自体を理解していない輩がいる』
『男は狼なのよ。気をつけなさい』
『イソラちゃんが涙目で食べられる姿を想像して捗る』
「ふうん。だいたいみんな知ってるみたいだね♡ じゃあ今回は上級者村ってことで村建てするから、自信のあるお兄ちゃんだけ来てね♡ 雑魚お兄ちゃんがきたら容赦なく罵倒するから覚悟してね」
とはいえ――、本当に強いリスナーが来るかは五分五分だろう。
ただひとりふたりでも論理的思考能力が高いやつが来てくれると望ましい。
集合知ってやつはマジで侮れんからな。
少なくとも、AIに聞いてもらうよりも、ずっと正確な答えを出してもらえると思う。
試しにAIちゃんに聞いてみたら、初っ端に法律的かつ倫理的に小学生妹がお姉ちゃんと結婚するのはダメって言われたからな。
連れ子だから大丈夫だよって言っても、結局のところ結論はお姉ちゃんとよく話し合って決めろだ。はー、つっかえ。丸い回答なんてこちとら求めてないんだよ。
ほんとAIちゃんはイイ子すぎて使えん。メスガキを舐めるなと言いたい。
※
そんなわけで人狼ゲームは始まった。
いちおう、マジで人狼ゲームを知らないクソ雑魚お兄ちゃんのために説明すると、人狼ゲームとは、村人陣営と人狼陣営に別れて、推理を戦わせるゲームだ。村の中に人狼がまぎれこんでいて、一夜にひとり噛まれる。村人は人狼を昼時間にひとり吊ることで村の平和を取り戻す。
なんの能力も持たない村人――素村は村民が人狼か村人なのかの区別がつかない。
まあ、そこで能力持ちの占い師とか、霊能力者とか、狼の襲撃から守れる狩人とかいるわけだが、セオリーはあるものの、最後にモノを言うのは論理的思考力と発言の説得力だと思う。
村の構成は、わりと標準的な12B。
この村には村人にも人狼にも属さない狐という役職が存在する。狐については、人狼が過半数を越えたときに生存していれば勝利という役職だ。
なお、罵倒は禁止だが、メスガキにおいてはこの限りではない。メスガキは煽り、煽られるのがお仕事だからな。ふふん。
で、今回わたしは村人か。
正直なところ、リスナーたちはわたしの活躍を見たがっているから、なるべく最後まで吊らない方向でいくとは思うが、忖度されて生き残るなんて正直ごめんだ。
意見噛みといって、発言が鋭い村人は人狼に噛み殺される可能性もあるが、わたしは有能アピして生き残っていくぞ。
で、生き残りました。いまは4日目。
よっぽどのレアケースでなければ、狐は吊れたと思う。
でも、狼については吊れていない。ひとり目星はついたけど、誰も指摘しないな。
しゃーねえ。ここはバッチリ決めてやりますよ。
「あは♡ マジで雑魚狼見つけちゃった♡ よわよわだね♡」
メスガキスキー『ほう』
おねロリのおね『今の時点でわかるの?』
MSGK泣かし隊『メスガキちゃん意外にも賢くてワイ震える』
萌えるお兄さん『ざこざこ狼さんでてらっしゃい』
腹パン大魔王『イソラを感情吊りしたい』
わからせマン『イソラちゃんが真っ白すぎて、ここ盲信で村勝てそう』
「ねえ、萌えるお兄さん♡ メチャクチャな発言は見せかけで、本当は狼なんでしょ♡」
萌えるお兄さんは初日からカスみたいな発言しかしてこなかった。
普通に見れば、ここは村人でありながら狼陣営である狂人の線が濃い。
しかしながら……、
「萌えるお兄さんが吊り縄をいま逃れられているのは、ニート兄ぃが真占いではなくて狂人だったから。つまり狂人ムーヴをしていた萌えるお兄さんが村視されるからだよね♡」
MSGK泣かし隊『いやまあ普通に考えてそうじゃないか? 萌えるお兄さんの行動は初日から臭かったが、言動に一貫性がなくてフラフラしているように見えたぞ。思考力よわよわの残念村人のほうが可能性として高いような気がする』
萌えるお兄さん『はぁ。こりゃ狼すけちまったな。どう考えてもイソラちゃんが狼じゃん』
「くっさぁぁぁ~♡ それが演技だって言ってんだよ。雑魚狼さん♡」
メスガキスキー『お口わるわる……芸術点高いな』
腹パン大魔王『メスガキ吊って、この村燃やそうぜw』
わからせマン『なにげに言葉しゃべって、瞬間的に打鍵されるソフトつえーな』
おねロリのおね『キーボードぽちぽちするのお姉さんにはちょっとツライわ』
メスガキスキー『個人的には、打鍵するほうが思考をまとめるにはよいな』
MSGK泣かし隊『オレもその線だわ。コミュ障だからな……』
おねロリのおね『わかる』
腹パン大魔王『わかる』
わからせマン『わかる』
「だぁ! 議論時間短縮するために、主張するね。萌えるお兄さんを狼視する理由は、致命的なミスがあったからだよ♡」
萌えるお兄さん『致命的なミス……、そんなの……』
「あるんだよこれが♡ ねえ、教えてほしいな。どうして、萌えるお兄さんは三日目に『呪殺かぁ。吊り余裕ないなった~』って言ってるの?」
萌えるお兄さん『あ?(威圧)』
メスガキスキー『あ、マジだ』
腹パン大魔王『あーなるほどそういうことか完璧に理解した』
おねロリのおね『あの日の時点で、狼狼狂生存が見えていたってことね』
MSGK泣かし隊『ムカチャッカ半島とニート兄ぃが両偽占いだとわかってた?』
「そういうことだよ。ついでに言えば、今日、霊能がニート兄ぃに白出しする前に、萌えるお兄さんは、『吊り余裕孕めって願ったかいがあったな』とか、ぬかしてるわけだけど、孕むっていうのは、要するに0が1になったことを示しているわけだよね? ねえどうして吊り余裕が1になったのを知ってるのかなぁ♡ なにか反論ある? 萌えるお兄さん♡」
萌えるお兄さん『うぐぐ……』
「ないよねえ? だって、それって真占い師が嫉妬マスク三世だって知ってなきゃできない発言だもの。あの時点で、それを知っているのは、真占い師である嫉妬マスク三世本人か、さもなくば、失言しちゃったクソ雑魚狼さんってわけ♡」
萌えるお兄さん『でも、オレが狂人って線もあるじゃん』
「ははっ。お兄さん語るに落ちるってのはこのことだよ♡ ほんとよわよわ雑魚狼さんだったんだぁ♡ 小学生に負けて悔しいですかぁ♡ はい、以上証明終了でぇす♡ 真狩のMSGK泣かし隊お兄さん、指定お願いしまぁす♡」
MSGK泣かし隊『わかった。指定:メスガキ』
「はぁ????」
いみふなんだが。
ちょっと泣きそう。
腹パン大魔王『感情吊りワロタwwww』
メスガキスキー『お前の言う権利は全力で守るが、お前の言うことは気にくわないw』
おねロリのおね『ちょっと男子ぃ。イソラちゃん泣きそうじゃない』
わからせマン『でも、そこがよくない?』
おねロリのおね『まあそうねえ』
「ちょ、ちょっとまってよ。どう考えてもおかしいでしょ!」
MSGK泣かし隊『ごめんごめん。ちょっとした冗談だよ。指定:萌えるお兄さん』
「ふぅ。ひやひやさせないでよ」
腹パン大魔王『いつも思うんだけど、イソラってメスガキっぽくないよな』
メスガキスキー『まあそこがよくもあり、悪くもあり』
わからせマン『演技にしても、わからせの理論を理解してそうで、オレ的には良い』
萌えるお兄さん『こんなはずでは……。あとで絶対わからせてやるからな!』
「ちっちゃい遠吠えだね♡ これじゃお兄さん、狼じゃなくてチワワだよ♡ 負け犬おっつ~~♡」
萌えるお兄さん『くそおおおおおおおおっ!!(微興奮)』
ともあれ、萌えるお兄さんは吊られて、あとはラストウルフだ。
そのあと、紆余曲折合って、結局わたしとラストウルフであるわからせマン、そして判定役のメスガキスキーが残されることになった。
わからせマンは狼とのラインは切れているが、わたしの白要素は十分なはず、負ける要素はたぶんない。
「そういうわけで、わからせマンは黒いってわけ」
わからせマンの黒要素も十分に拾えたし、わたしには萌えるお兄さんを吊ったという実績もある。これで負けるわけがない。
メスガキスキー『ううう……わからん。マジでわからん。確かにイソラは死ぬほど白いが……』
「ちょっとは脳みその回転数あげていこうよ。メスガキスキーお兄さん。少し考えればわたしが村人なのはわかるでしょ? これでわからなかったら、お兄さんのことさげすんじゃうよ♡」
メスガキスキー『正直なところ、オレにはメスガキとわからせマンのどちらが狼かはわからない。単体の黒要素白要素はほとんどメスガキが村人であることを告げているからな』
「だって、わたし村人だもん。当然でしょ」
メスガキスキー『けどな、萌えるお兄さんが死に際に言った言葉を思い出すとわかるぜ』
「はあ?」
メスガキスキー『あいつは、最期に『こんなはずでは……』と言っていた。こんなはずではなかった。つまり、ラストウルフであるメスガキから、相談もなく裏切られたからとっさに出た言葉だったんだ」
「いやいやいやいやおかしいでしょ!? メスガキスキーは普通に考えるってことを覚えよ? 順当に考えれば、こんなはずじゃなかったって、メスガキごときに見破られるとはって意味じゃん。わたしが身内切りしたとか考えすぎだから」
メスガキスキー『舐めるなよメスガキ。オレが……オレたちがわからせてやる!』
「思考がロックすぎるでしょおおおおおおお!」
見事なまでの逆噴射である。
あえなくわたしは吊られ、狼陣営の勝利とあいなった。
すみません。
矮小ながら、作者は承認欲求に飢えております
どうか感想評価なんでもよいので
お恵みをいただければ幸いです
そこまで壮大なお話ではないですが、楽しんでいただけるようがんばります