【悲報】私氏、小学生妹ちゃんのヒモになりそう 作:おねロリのおね
あれからほどなくして、メスガキちゃんアカウントと淫猫の間でDMが取り交わされ、面接は次の日曜日ということになった。少し目立ちすぎたかなと思うものの、初めての女子メンバー候補ということで恵子の記憶の中に刻まれたはずだ。
一次試験の結果はほとんど最高と言ってもいいだろう。
カフェ・オレお兄ちゃんは無惨なことになったがな。
貴重な一般庶民妹サンプルとしてメスガキちゃんを切ることは、相当なポカをしない限り、おそらくないだろうと思う。わたしの勝利は近い。
恵子との水面下での戦いは続いているが、もちろん日常生活も途切れることはない。
「六時か……起きよ」
部屋のドアを開けると、まだ誰の気配も廊下にはなかった。
すると示し合わせたように、恵子の部屋の扉が静かに開く。恵子だった。
寝ぐせひとつない黒髪がさらりと流れ、視線にはやわらかいものが宿っていた。
「おはようございます。異空ちゃん」
「おはよう。恵子お姉ちゃん」
「……! ええ、おはようございます!」
目に見えてキラキラとしたオーラをまとう恵子。
――ふふ♡ ちょろいやつめ♡
恵子のメンバーになると決めたとき、わたしは密かにもう一つの作戦を発動させていた。
今日からしばらくは気持ち多めに恵子お姉ちゃん呼びをする。
リアルと虚構の両面作戦である。
仮に――だが。
もし、恵子が猫としてわたしのことが好きならどうすればよいか。
お姉ちゃんをとられたくないというのがわたしの最終目標なのだから、恵子を懐柔したほうがよい。つまり、甘える妹として、お姉ちゃんを鳳寿院家にとりこもうとするのをやめてもらう。
これが通れば、時間は再びわたしの味方になる。
近い将来――五年後くらいに
お姉ちゃんは根っからの庶民だし、ハッキリ言って鳳寿院家の名は一般人には重すぎる。選択肢は初めからあってないようなもの。わたしが選ばれるだろう――。
そのときは恵子というオマケもくっついてくることになるが、なぁに主導権はこちらにあるんだ。たいしたことはないさ。恋愛は好きになったほうが負けというのは古事記にも書いてある。
そんなわけで恵子といっしょに朝食を作っている。
今日は和食な気分。正確には和洋混在系のいわゆる定番な日本食。
ご飯とお味噌汁にベーコンエッグ、サラダ和えといった感じだ。
――和をもって貴しとなす。
という、今のわたしの気持ちを体現させてみた。
容姿だけで見れば、わたしは洋風で恵子は和風だからな。
ちなみに和というのは、原文ではやわらぎと呼ぶんだぜ。カッコいいだろぉ~。
「ふんふーん♪」
「今日は気分がよろしそうですわね」
「そうかな? あ、恵子お姉ちゃんはお味噌汁のほうお願い」
「わかりましたわ」
恵子は手慣れた手つきでお味噌汁を作り始めた。
今日は大根のお味噌汁。細切りにした大根が軟らかくなるまで煮こむのはそれなりに時間がかかる。その間に、わたしはちょっとお高いアメリカンスタイルのベーコンをカラカラになるまで焼いた。同時並行的に、違うフライパンで目玉焼きを作る。
お姉ちゃんは半熟とろとろが好き。わたしは硬め。恵子はどっちでもいいらしい。
もちろん、お姉ちゃん最優先ですよ。
わたしはお姉ちゃんファーストだからね。
しばらく時間が経過する。
フライパンに視線を落としながら、
「ねえ、恵子お姉ちゃん」
と、わたしは言った。
「はい。どうしましたか?」
ふふ。お姉ちゃんと呼ばれて嬉しいか。
では、ここらでジャブを打たせてもらおう。
「お姉ちゃんを鳳寿院家に取り込もうとしている件だけど、あれやめてくれないかな?」
「あら、どうしてでしょうか」
「お姉ちゃん、明らかに困惑してたよね」
「人は巨大な宿命を意識したときに必ず困惑するものですわ」
鳳寿院家の一員になるのが宿命か?
人の業だろう。
「でも、お姉ちゃんには独り立ちする道もあるよね?」
「それはもちろんですわ。鳳寿院との関わり方も最終的にはお姉様が決められることです」
「だったら――」
「ふふ。異空ちゃんはお姉ちゃんを守るかわいい騎士さんみたいですわね」
「むう……」
「わたくしも同じ気持ちです。お姉様のことは姉としてお慕いもうしあげておりますが、他方でわたくしの中では庇護対象でもありますのよ」
「どういうこと?」
「だって、お姉様は小学生妹のヒモなのですから、普通の姉妹の関係としては逆転していると言えますでしょう。わたくし、お姉様のことも妹のように感じるときがありますの」
「お姉ちゃんなのに?」
「年齢は関係ありませんわ。わたくしとお姉様がそういう関係を結びたいと思った。だから姉妹という関係になれたのです。異空ちゃんも同じでしょう?」
「確かに……」
それは否定できない。
「お姉様を妹として仮定すれば、わたくしが鳳寿院家の中にとりこもうとするのは、おかしなことではありません。お姉様がたとえおイヤだといっても、
――パターナリズム。
別名、家父長主義。
強い立場にある者が、弱い立場にある者の意思に反してでも、弱い立場の者の利益になるという理由から干渉しようとすることを指す。
恵子はやはり根本的に女王様なのだろう。
わたしも、お姉ちゃんのことを保護したいけれど、ここまで極端じゃない。
いつのまにやらベーコンはカラカラになっていた。
そして目玉焼きは、早めに救出したお姉ちゃんのだけはふわとろだが、恵子とわたしの目玉焼きはカッチカチのハードボイルド仕様だ。少し喋りに熱が入りすぎたらしい。わたしは火を止めた。
「ねえ、恵子お姉ちゃん」
「はい。なんでしょう」
「かわいい妹の頼みでもダメかな?」
「ふふ♡ そうですわね……。考えておきましょう」
ただではわたしの噛みを通してはくれないか。
恵子のほうも火を止めて、大根の一片を口に入れた。味見だろう。
「わたしにもちょうだい」
「火傷しないようにお気をつけなさい」
恵子はお箸で大根を掬い、ふぅふぅと冷ましてくれた。
差し出されたお箸に迷いなく、わたしも口に入れる。
大根は噛まなくてもいいぐらい柔らかくなっていた。
いつのまにやら、鍋のほうも
誤用かそうでないかは、微妙なところだけど。
※
朝食とお弁当ができあがったところで、お姉ちゃんを起こしにいく。
もちろん、恵子もいっしょだ。
いろいろと言いたいことはあるが、
こちらから約束を破ることはしない。
そして、恵子も盟約を破る気は無いようで、わずかずつこちらに干渉することで盟約自体を改変しようとするところが手ごわいところだ。
サディスティックな女王様に勝利するのは、ただカワイイ妹という立場ではダメらしい。
まあいいさ。恵子は考えると言っていた。
猫を手なずける作戦が失敗すると決まったわけじゃない。
そんなことを思いながら、わたしはお姉ちゃんの部屋のドアノブに手を伸ばした。
そこに驚くべき光景が広がってるとも知らずに。
「え?」
わたしは目を疑った。
お姉ちゃんが起きてる!
ふらふらとした足取りで、目元はゾンビみたいにどこを見ているかわからない。
朝に弱いお姉ちゃんがベッドから抜けだしてひとりでに起きるなんて奇跡のような確率だ。
しかも、驚くべきはそれだけじゃなかった。
――クソダサジャージ。
お姉ちゃんは自分で着替えていた。
赤ジャージの上着のジッパー部分を閉めようとしているが、寝ぼけているのと大きなおっぱいが邪魔してうまくいかないようだ。だってそれ高校生の時のやつだよね。お姉ちゃんのおっぱいは今も成長していて、収まりきれていないよ。
やがて、わたしの存在に気づいたのか、お姉ちゃんの視線がこちらに向いた。
「あ、おはよう。異空ちゃん。恵子ちゃんもおはようね~」
「おはよう。お姉ちゃん……なにしてるの?」
「あのね。いつまでも妹ちゃんたちのお世話になるのはダメかなって思って、できることから始めようと思ったの。着替えくらいならできるかなぁって……」
できてねぇよぉ!
「お姉ちゃん今日大学行くよね。まさかとは思うけど、その恰好で行くつもりなの?」
クソダサいというのもあるが、お姉ちゃんみたいな美人がおっぱい爆盛のジャージ姿で登校するというのは、世のお兄さんがたの目に毒なんじゃないだろうか。
あまりに無防備かつ無謀な試み。
お姉ちゃんがヒモを脱却したいのはわかるけど、コレは無い。
「お姉様。ジャージ姿が必ずしも悪いとは言いませんが、美術を学びに行かれるのにその恰好は品性を疑われませんか?」
恵子はわかりやすくジト目になっていた。
身体からゴゴゴとオーラみたいなのがたちのぼっているようだ。
女王様のオーラに一般人は気おされるしかない。
お姉ちゃんはタジタジとなっている。
「あ、あのね……私に一番馴染んでるのってコレなんじゃないかなぁって」
まあ、わからないでもないよ。
お姉ちゃんにとって、ジャージ姿は一種の心の防壁なんだろうと思う。
鎧のようにジャージを身にまとって、自分の心を守りたかったんだ。
「はぁ……異空ちゃんがお姉様を甘やかしすぎたから、こうなってしまったんですね」
「恵子ちゃんが無理強いするから、無理にがんばった結果だと思うよ……」
「その結果がコレですか……」
「ジャージ動きやすいよ。ぜんぜん悪くないよ?」
お姉ちゃんは必死にアピールした。
恵子、頭を抱える。
わたしも頭痛がしてきた。
コレは無いという意味では、恵子と意見が一致していた。
「ほら、お姉ちゃんさっさと脱いで」
「そうですわ。お姉様には土台無理なのですから、まずは妹たちにお世話されなさいませ」
「ひ、ひぇ。脱がさないで。ひとりでできる。ひとりでできるから!」
「ひとりでできないからこうなってるんだよね?」
「お姉様が一人で着替えるなんて、ニワトリが空を飛ぶようなものですわ」
「ひーん」
妹ふたりに迫られて、お姉ちゃんは防御の姿勢になった。
無駄だけどね。
妹ゾンビに襲われる姉は無惨にもひん剥かれてしまうのだ。
※
「くすんくすん。私、がんばったのに」
朝食の時。
お姉ちゃんは落ちこんでいた。
そりゃ、がんばったのはわかるんだけど、努力の方向性がね……。
お姉ちゃんに優しい言葉をかけてあげたいけれど、お姉ちゃんにずっとヒモでいてほしいわたしとしては、なかなかいい言葉が思い浮かばない。
「お姉様がお独り立ちしようとがんばっていらっしゃるのは喜ばしいことだと思います。けれど、それ以前に家族としてのルールを破るのはいかがなものでしょうか」
「約束?」
「そう約束です。例の時間割はわたくしと異空ちゃんでお作りしたものですが、お姉様がお世話をされることで初めて完成するのです。お姉様が断りもなくルールを破るのは困りますわ」
「そ、そうだよね……。でもそれだと私っていつまでもヒモのままなんじゃ……」
「断りもなくと申しあげました。一言も妹たちに相談もなく、おひとりで決められるのは自分勝手というものです」
「自分勝手……」
お姉ちゃんがショックを受けている。
「恵子ちゃん。言い方」
さすがに放っておけず、わたしは口をはさんだ。
確かにお姉ちゃんがやったことは横紙破りかもしれない。
お姉ちゃんにルールを破られて、わたしも怒っていたのは確かだ。
でも、言い方ってあるよな。
「生意気を申しあげました。けれど――、異空ちゃんのことをどうかお考えください。異空ちゃんはお姉様のお世話をするのが生きがいなんです。とりあげないであげてください」
「わたしを理由にしないでよ」
「そうですわね。異空ちゃんをアリバイにするズルい言い方でしたわ」
ですが――、と続ける。
「お姉様のお世話をできてわたくし家族としての絆を得たようで嬉しかったのです。お姉様にそんな気がないのは重々承知しておりますが、朝の出来事は絆という紐帯を切り離されたようで寂しかったのですわ」
「ごめんね。恵子ちゃん。約束を破る悪いお姉ちゃんで」
「いえ、お姉様をヒモ扱いしているのは悪い妹のわたくしですから」
ムム。遠まわしにわたしも非難されているみたいだ。
しかし、ここでお姉ちゃんにヒモにならないでいいよと言うことはできない。
――いったいどうすれば。
わたしの懊悩が伝播したように、お姉ちゃんも頭を抱えていた。
「うう、ヒモになりたくけど、ヒモにならなくちゃ妹ちゃんたちが傷つく。いったいどうすれば」
お姉ちゃんは煮詰まってしまった。
※
あれからお姉ちゃんは悩ましげな表情のままだった。
わたしはお姉ちゃんのことが心配になりながらも、どうすることもできなかった。
小学生の朝は早い。大学生よりずっと先に登校時間が迫ってくる。
いつもの道を歩きながら、学校へと向かう。
――恵子と手をつないでな。
業腹ではあるが、恵子と仲たがいをしてもいいことはない。
わたしは恵子と和解の道はないかを探ることにした。
「恵子お姉ちゃん。あまりお姉ちゃんをイジメないでよ」
「イジメてるつもりはありませんわ。それにお姉様をヒモにしたいのは異空ちゃんもでしょう」
「それはそうだけど、お姉ちゃんのこころはお豆腐みたいに脆いんだよ。優しく扱わなきゃダメ」
「ふむ。確かに一理ありますわね」
「でしょう」
「ですが、やはりお姉様にはもっと大人になってもらわなくてはと思います」
「お姉ちゃんに嫌われてもいいの?」
言外に、わたしにもと聞いたつもりだ。
恵子はわたしの意図を正確に理解して、目を細めた。
「それでもかまいません。嫌われてしまうことを恐れて何もしないより、わたくしはわたくしなりの方法でその方を愛するだけです」
「恵子ちゃんは強すぎるよ」
「そうですわね。わたくしも時折、そんな自分が煩わしくなることもあります」
狼は群れるが、猫は群れたりしない。
家族どうしで集まったりはするが、基本的に孤高の存在だ。
鳳寿院家の跡取りとして、周囲の大人たちからも同じ年代の子どもからも恵子は浮いてきたのだろう。まさに天然モノの孤独な女王様。不器用すぎるスタイルが人を遠ざけてしまう。
まったく困ったお姉ちゃん
※
小学校が終わり下校の時間になった。
恵子とは一時間違うときがあるが、今日はたまたまいっしょの時間だ。
朝のときと同じく手をつないで帰り、玄関に到着する。
お姉ちゃん大丈夫かな。
最近のお姉ちゃんは恵子の猛烈な攻勢もあって
マッサージとかしたら、少しは和らぐかなと思うけれども、ヒモになること自体をヨシとしないお姉ちゃんからしたら、どうなんだろうな。
家の中は、まだ昼間だというのに暗かった。
「お姉ちゃんただいまぁ」
声をあげてみても反応がない。
嫌な予感がする。
お姉ちゃんの靴は玄関口にあった。
家に帰ってるのはまちがいない。
わたしが帰ってきたら、必ずといっていいほど玄関口で出迎えてくれるお姉ちゃんが来ない。
「なにかあったのでしょうか?」
恵子が怪訝な表情をする。
わたしはいてもたってもいられず、靴を脱ぎ散らかしてお姉ちゃんの部屋に向かった。
部屋の鍵はかかっていなかった。
わたしは思い切ってドアを開けた。
「あ、異空ちゃぁん。おかえりぃ。ふへへ♡ 異空ちゃんがダブルに見えるぅ♡」
お、お姉ちゃんが……飲酒してる。
床に転がってるのは、アルコール度数9%の酎ハイ。
空になった500ミリ缶が、一本、二本。
そして、手元には三本目の桃味のそれ。
――お、お姉ちゃんが現実逃避しちゃってる!?
恵子に追い詰められすぎた結果、ついにお姉ちゃんが壊れちゃった。
「お、お姉ちゃん。大丈夫なの?」
「え、なにがぁ?」
夕暮れよりも真っ赤な顔が、豆腐よりも柔らかな声を出した。
これはどうしたらいいんだろう。
「恵子お姉ちゃん。お姉ちゃんが酔っぱらっちゃってる」
「お姉様。飲酒をするのは大人としてのたしなみかもしれませんが、だらしないですわよ」
後から追いついてきた恵子が、再びジト目になっている。
「もうー。恵子ちゃんはうるさーい! お姉ちゃんはねえ! お姉ちゃんは……大人なんだゾ! もっと優しくしろよぉ!」
お姉ちゃんもジト目で応戦。
これにはさすがの恵子も一歩引いた。
「もーう。小学生のくせにぃ。かわいい妹のくせにい」
「お姉様。お水をお飲みになっては……」
「水なんか飲んでられるかぁ! 馬鹿ぁ!」
グビ。グビ。グビ。
そんなに一気に呑んじゃ危ない。
「だいたい、ほーじゅいんとか知らないしぃ。えこちゃんはえこちゃんだから家族なんらよ。どうしてそんな意地悪すんろ? ねえ。恵子ちゃん。こっち来なさい」
「はい。お姉様。わきゃ」
食虫植物のような動きで捕獲される恵子。
どんなに頭がよくても、身体は小学生の女の子。
豊満経営によって育ち切ったお姉ちゃんの身体の前では、無力な女の子に等しい。
「いじわるな女の子はこーだ! わからせてやる!」
「お、お姉さ――むうううううう」
ちょ、ちょっと待って。
なにが起こってるの。
お姉ちゃんが口移しでアルコール度数9%の酎ハイを恵子に飲ませていた。
じたばたともがいていた恵子だったが、最後には高濃度アルコールの前に敗北し、クタっと全身の力を抜いてしまう。
「お姉ちゃん何してるの!」
わたしは絶叫した。
「あー、異空ちゃん!」
ものすごく目が座っているお姉ちゃんである。
「なに、お姉ちゃん?」
「こっちきなさい」
恵子はくったりとしたまま、ペッとばかりに吐き出され、あとに呼ばれるはわたしのみである。
ちょっとだけ期待してしまっているわたしがいる。
ご、ごくり。
でも、こんなので……いやでも。
「はーやーくー!」
「はい」
そして収まる定位置。
お姉ちゃんのお胸の位置に頭を預け、手と足で絶妙にロックされている。
小学生の力じゃ、絶対に逃げられない♡
「お姉ちゃんはね。少し怒ってるのです」
「そうなの? わたし何かしちゃった?」
「恵子ちゃんも異空ちゃんも、お姉ちゃんがヒモになりたくないって言ってるのに……すんすん」
今度は泣き上戸。
お姉ちゃんの感情が行方不明だ。
実を言うと、お姉ちゃんがお酒を飲んでいる姿なんて見たことはない。
わたしが知る限り初めての飲酒。
「お姉ちゃん、ごめんね」
わたしはお姉ちゃんの顔に手を伸ばした。
わたしと恵子が戦うのは宿命かもしれないけれど。
お姉ちゃんを巻きこんでしまって、本当にごめんなさいって思う。
お姉ちゃんが傷つかない方法があればそうしたい。
「本当にごめんなさひっておもってるんなら、お姉ちゃんをヒモにすりゅのやめなさひ」
「それはヤダ♡」
「もーーーう。異空ちゃんもわからせてやる!!!」
「むうううううううん♡」
わたしの今世におけるファーストキッスは桃の味がした。
それにしても、小学生の身体にアルコール度数9%はキツイ。
一気にお腹の奥が熱くなって、わたしは気を失ってしまった。
後日。お姉ちゃんは土下座してわたしと恵子に平謝り。
わたしはそもそも煽ってた面もあるからどうということはない。
そして、恵子はちょっぴり引いていた。
「お姉様を舐め腐っていたわたくしが甘かったのですわ」
とは、恵子の言。
これより先、恵子は少しだけお姉ちゃんのことをヒモにすることに強引さがなくなり、お姉ちゃんはお姉ちゃんとしての威厳を取り戻したのである。
酒の力ってスゲェ……。
お酒は飲みすぎたらダメよ