【悲報】私氏、小学生妹ちゃんのヒモになりそう   作:おねロリのおね

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猫の試練

 いよいよ決戦の夜。

 わたしは不退転の決意を決める。

 運命を決めるメンバー登録の面接まで、あとわずかだ。

 

 メスガキちゃんアカウントに届いたDMには会場のURLが指し示されている。

 時間解放されるそこはVR空間になっているらしく、面接対象者は各々が自分でアバターを用意しなければならない。どんな格好をしてくるかは自由だが、就職や学校の面接と同じく恰好も評価対象と考えるべきだ。

 

 だいたいはみんな二足歩行をして紳士服を着たお豚さんらしい。

 それってオークじゃね?

 まあデフォルメ化した二頭身キャラが多いらしいが。

 

 わたしが用意したのは、ひらひらのドレスを着た羊さんだ。

 魔法少女とかでよくいるパートナーキャラみたいな感じ。

 もちろん、わたしが描いたオリジナルだ。

 つぶらな翆色の瞳と真っ白いふわふわの体毛が我ながら気持ちよさそう。

 毛先はちょっとだけピンク色。

 そこはかとなく妹の雰囲気をまとっている感じがしなくもない。

 

「じゃーん。どうよ。お兄ちゃんたち♡」

 

『じゃーんかわヨ』

『抑えきれぬ妹臭』

『あのさ。現実のイソラに配色似せるのやばない?』

『大丈夫か。メスガキ』

『もっと自己主張抑えたほうが……』

『淫猫の配信でも目立ちすぎたからな』

『もっと自分を抑えろよ。メスガキ。¥1000』

 

「できぬぅ♡」

 

『できぬじゃねぇよw』

『メスガキってわりと目立ちたがり屋だからな』

『そもそもメスガキな時点でそうよ』

『妹Ⅱのことも結構好きだよね。メスガキちゃん』

『オレらが見えてないところで、妹Ⅱも優しいお姉ちゃんなんじゃね?』

 

 ふん。いろいろ言われているが、恵子に負ける気なんてさらさらないがな。

 

「さぁて。最弱(ひつじ)こそが最強(おおかみ)であることを淫猫に見せつけてやろう♡」

 

『羊の皮をかぶった狼を顕現さすなw』

『最強なのは猫科の虎なんだよなぁ……』

『大丈夫か。最後まで予習しなくて』

『オレらは面接会場に入ることもできないからな』

『カフェ・オレ。メスガキを頼むぞ。¥10000』

『ああ任せろ……と言ってもオレの存在意義ないなったが……¥10000』

 

「MSGK泣かし隊のお兄ちゃん。カフェ・オレお兄ちゃん。スパチャありがとう。カフェ・オレお兄ちゃんは見届け人だね。わたしが淫猫に勝つところを一番そばで黙って指くわえて見てろ♡」

 

『ば……バブぅ。まあ、メスガキなら大丈夫だと思うが油断はするなよ。¥100』

『なんかフラグっぽい流れだよなw』

『こないだお姉ちゃんにキスされて浮かれてんじゃね?』

『まだお酒が残ってる説がワンチャン』

『ヒモ姉を犯罪者にしないためにがんばるんだ。メスガキ』

 

「ふふん。お姉ちゃんにキスされたのはむしろ勝利フラグだよ♡ 女神様のキスを受けて負けるわけないじゃん♡ 今日はでっかいカツ丼も食べてきたし♡」

 

『それがフラグだって言ってるんだよw ¥500』

『メスガキちゃん。がんばりなさい。¥1000』

『とりあえず火打ち石カチカチしといた。¥500』

『とりあえず近所の神社にお参りしといた。¥100』

『このメスガキに勝てた姉などいない。¥1000』

『大丈夫だ。データは頭のなかに入ってる。¥200』

『やったか!? ¥30000』

『あっかwww』

 

「みんな負けフラグ乱立させるのやめてよね♡ 猫が狼に勝てるわけないじゃん♡」

 

『直前まで追い詰められてたのは誰だよw』

『猫のほうが素の状態では強そうだけどなぁ』

『どっちも天才児だが、今回の場合、猫は選ぶ側だからなぁ』

『前回みたいにメスガキを見守っときたいが、それもできんし』

『この配信もいったん切るんだろ?』

 

「そうだよ。ラグとか出たらクソ雑魚パソコン使ってるって思われちゃうからね♡ いったんお兄ちゃんたちとはお別れだよ♡ みんなわたしがいなくなって寂しがれ♡」

 

 特にVRでアバター動かしながらだと、万が一ラグが出たとき復帰が難しそうだからな。

 断腸の思いだが、いったん配信は停止せざるをえない。

 

『おまえが一番さみしがってる定期』

『勝手にいなくなるな』

『メスガキぃ。ちくしょうううううう』

『くそおおおおおおおおお』

『くそおおおおおおおおお』

『くそおおおおおおおおお』

『くそおおおおおおおおお』

『くそおおおおおおおおお』

『くそおおおおおおおおお』

 

 画面いっぱいに敗北を味わっているお兄ちゃん達。

 なんなんこれ♡

 

「じゃあ、行ってくるね♡」

 

 

 

 ※

 

 

 

 会場の中は薄暗かった。

 ひと昔前のライブハウスのようなイメージか。

 ちらほらと会場内には既にお豚さんたちがいるようだが、そんなに多くはない。

 数としては100にも満たない感じか。

 わたしが現れると、アバターの何人かの頭上にコメントがふきだしで現れた。

 同時に機械音声がヘッドホンごしに聞こえてくる。

 

『あ、メスガキちゃんだ』

『羊かぁ……まあブタはあわんだろうしな』

『妹様と配色がいっしょだ。偶然か?』

『豚のいるところに羊ちゃんが迷い込んでくるとはなぁ……ぶひひ』

『妹様の疑似プレイして淫猫様に気に入られた泥棒猫め』

『おいやめろ。そんなこと言ってたらお叱りを受けるぞ』

『淫猫様にお叱りうけてぇ……』

 

 見ての通り――。

 わたしの評価はあんまりよくはないだろうな。

 モブがあまりにも悪目立ちしすぎたという自覚はある。

 しかし、狼としての矜持が抑えられぬのだ。

 

『メスガキ様。こちらに来ていただけますか』

 

 ひとりのお豚さんが近づいてきた。

 執事服にモノクルをつけた知的な印象のお豚さんだ。

 カフェ・オレお兄ちゃんだった。

 

――ふふ、初対面という体で現れたな。

 

 先の配信ではさりげなく、わたしをメンバーに推してもらう作戦だったが、淫猫がわたしをいたく気に入ってしまい、その作戦は頓挫してしまった。

 話の流れとしては、カフェ・オレお兄ちゃんがいきなりわたしを知り合いとして紹介するのも妙だし、奇妙さが連続すれば違和感を生むから、いまのわたしはお兄ちゃんとは初対面ということになっている。

 

『うん』

 

 わたしは短く答えを返しボロが出ないように気をつける。

 カフェ・オレお兄ちゃんが行く方向にアバターを動かすと、見えてくるのはライブハウスの奥まったところにあるステージ。そしてステージには階段というか低い段差がある。一番奥には巨大なスクリーンと豪華そうな椅子が置かれてあって、悪の根城といった感じがする。

 

 まだ淫猫の姿はないようだ。

 

『ここで膝をついてお待ちください』

 

『わかった。カフェ・オレお兄ちゃんありがとう』

 

 絶妙な視線のやりとり。

 VRだけど、お兄ちゃんがわたしを心配してくれてるのがわかる。

 片膝をつくという動作をさせて待機する。

 

 虚構と現実が入り時混じった空間で、その支配者が現れるのをひたすら待つ。

 待つ。待つ。待つ。

 やがて、スポットライトがステージ中央にある椅子に集まり、光のエフェクトがくるくると乱舞し周りを包みこんだ。

 そして光が消え去ったあとには、淫猫が足を組んで座っていた。

 

――傲岸不遜。

 

 まさに、一片の曇りもない女王メスガキがわたしの前に現れ出でる。

 

「あら、お待たせしてしまったようですわね」

 

『あんまり待ってないから大丈夫だよ』

 

「そうですか。ではさっそくですが――、わたくしの面接を受ける覚悟がおありということでよろしいですわね。メスガキちゃん」

 

『もちろん』

 

「では、まずは……そうですわね。プロフィールから言ってもらいましょうか」

 

 プロフィール?

 こんなVR空間での宣言に何か意味があるのかとは思うものの。

 おそらく、それらしく正しいと思える主張ができるかというところを見ているのだろう。

 つまり、いつもやってる人狼ゲームと同じ。

 狼が狩人を騙ったり、占い師を騙ったりするのと同じだ。

 

「名前はメスガキちゃん。年齢はJCくらいかなぁ~。淫猫ちゃんに興味が湧いたのは、お金のことが好きだからです♡」

 

 周りが少しざわついた。

 

『JCやったー!』

『マジでJCだとしたら、ワンチャン妹ありうるのか?』

『淫猫様のご年齢がJKくらいだとすれば……』

『馬鹿野郎。淫猫様のご年齢を勝手に推測するんじゃねえ』

『メスガキねえ……どうせおっさんだぞ』

 

 さすがにJS――女子小学生という設定には無理があるからな。

 リアルでは、もちろん淫猫もわたしもJSだが、精神年齢という意味ではもう少し高いような気がしている。

 

「静まりなさい!」

 

 淫猫が大喝した。

 会場内のコメントは波が引くように静まる。

 淫猫の表情はどこか嬉しそうだ。

 もちろん3D映像だから、現実の素顔をいくつかパターン化したものであるが、淫猫の場合はかなり細かい表情まで表現されているように思う。たぶん、マネーの力で絵師さんに描かせまくったんだろうな。普通はAIによるパターン表情の切り替えが主流だが、一枚一枚に魂こもってて普通にビビるレベル。

 

「さて、続きですがよろしいですね?」

 

『はいどうぞ』

 

「あなたはJCということでしたが、それが本当ならお豚さんの中でおそらく最年少になるでしょうね。その年齢で五万円ものスパチャをするのはなかなか大変でしたでしょう。どのように稼いだのですか。差し支えなければ教えてくださいませ」

 

『お小遣いを投資にまわしたりしてたら、いつのまにか百万円単位になってたよ』

 

「あなたのご両親はあなたが投資をすることに賛同したのでしょうか。未成年者が口座を開くのも大人の同意がいるでしょう?」

 

『わたしの後見人は自由放任主義者だからね』

 

「ふむ。後見人ですか……」

 

 そう後見人――お姉ちゃんはわたしのヒモだからな。

 もしも、お姉ちゃんが一銭も稼がなくても生きていけるだけのお金は稼ぐつもり。

 恵子がいれば黙っていても養ってくれそうではあるけど。

 お姉ちゃんをヒモにするのはこのわたしだ。

 

 ところで面接のメインの方策だが、わたしは極力嘘をつかないことにした。

 嘘をつくときのコツは、真実と嘘をほどよくブレンドすることだと言われている。

 わたしがJCといったのは嘘だが、そのほかのことは真実を述べるつもりだ。百パーセント嘘だけで構成されていると、どこかで無理が生じ、全体がほころぶものだからな。

 

「では、あなたはJCながらも独学で投資を学び、勝ちを拾えていると、そうおっしゃるわけですわね。世界経済が成長し続けるという前提を飲みこめば、さほど難しいことではありませんが、それでも素晴らしい才能ですわ」

 

『ありがとう』

 

 女子小学生の淫猫がなんか言ってるが、仮にわたしが普通のJCやお豚さんだったとしたら、かなりグラつくだろうな。女王様に褒められて悪い気はしないもん。

 

「ところで――」淫猫が口元に指をあてながら「宇宙最強の力とはなんでしょう?」

 

 いきなり中二病かよ。

 あいかわらず淫猫――いや恵子は話の脈絡を飛ばす傾向にあるな。

 天才はこれだから困る。

 

『で、でた! 淫猫様のご質問コーナーだ』

『あれ急にやられると焦るんだよな』

『正解とか気の利いた答えを返そうとすると失敗する』

『宇宙最強の力、それは妹ぢからです!』

『正解だ。マイブラザー』

 

 もちろん、わたしの答えはひとつしかない。

 

『宇宙最強の力、それは複利の力だよ』

 

 かの天才――アインシュタインが言ったとか言わなかったとか。

 だから、わたしにそれなりの知識があることを測っているんだろう。

 

「渋沢様が最も愛する者は誰ですか?」

 

 これは簡単。

 

『渋沢さんだよ』

 

 一万円札にもなっている渋沢さんは、昔の諭吉先生と同じくお金の概念と結びついている。

 株や投資をするうえで、もっとも大事なことは種銭を持っていること。

 スタートするのが100万円と1億円だと、同じ額を稼ぐ際、1億円のほうがはるかに簡単だ。

 つまり、お金はお金があるところに集まってくるということが言いたいんだろう。

 

「ロボテックにおける適正な人件費率はどの程度だと思いますか?」

 

『それはどの分野かによるよ』

 

「では最も期待されている介護業界だとすればいかがでしょうか」

 

『40パーセントくらいじゃないかな』

 

「それはなぜですか?」

 

『イニシャルコストが高いから。現時点では介護ロボットを導入するにも初期投資がかさみそうだよね。人間メインの介護事業が、人件費率50パーくらいで損益分岐点だからそれよりも少し低いくらいだと思う』

 

「一理ありますが、不正解ですわね。介護ロボットが導入されれば人件費率は20パーセント程度までは落せるでしょう。イニシャルコストの問題も、じきに解消されます」

 

『それはさすがに知らなかったな』

 

「メスガキちゃんにも知らないことがあって安心しましたわ」

 

『わたしはJCだからね~。淫猫ちゃんに教えてもらわないといけないことは多いと思うよ』

 

 これは本当。

 淫猫もとい恵子は経営感覚というか、そういう知識はわたしよりも優れているように思う。

 強くてニューゲームなわたしを遥かに凌駕する圧倒的な知識量。

 そして、知識だけで終わらない頭の回転の速さ。

 地頭がいいんだろうな。

 さすがに妹がこの場にいることまでは推測できていないだろうが。

 

「あなたに兄弟姉妹はいらっしゃいますか?」

 

 突然ガラリと変わる質問。

 上から見下ろす視線は、あくまで超越者のもので、黙っていればすべてをさらけ出さなければならない気になってくるから不思議だ。高圧的というわけでもないんだがな。

 

『いるよ』

 

 わたしは素直に答えた。

 

「あなたは、姉ですか? 妹ですか?」

 

『妹だよ』

 

「そうですか。妹……フフ」

 

 淫猫が漏れ出すように笑う。

 周りも再びざわつき始めている。

 

『ざわざわ……』

『妹というワードに淫猫様が嬉しそうだ』

『そりゃそうよ。淫猫様は妹狂い……』

『妹を吸いたいと日々おっしゃられている方だからな』

『妹を吸うというパワーワード』

 

 なんだよ妹を吸うって……。

 まあ、お姉ちゃんが時々わたしに抱き着いてきて、頭のあたりをくんくんしてくるから、それに近い感じか。恵子はあまり身体的に過度な接触はしてこないが、もしかしてお姉ちゃんと同じようなことをしたかったんだろうか。言ってくれればそれくらいは、してあげたのに♡

 

「あなたはお姉様を慕ってらっしゃいますか?」

 

『もちろん♡』

 

「どのようなところを慕ってらっしゃるのです?」

 

『全部だよ♡』

 

「一カ所に絞るとするなら?」

 

『かわいいところかなぁ♡』

 

「お姉様はかわいらしい方なのですね」

 

『うん♡』

 

「下のお姉様に対する評価はいかがでしょうか?」

 

『えーっと、お姉ちゃんがふたりいるって言ってなかったと思うけど』

 

「あらそうでしたか。すみません」

 

『でもまあいるんだけどね。下のお姉ちゃんに対する評価はできるお姉さんって感じかな』

 

「優秀なお姉様なのですね」

 

『うん。そう思うよ』

 

「信託報酬率が高いファンドと低いファンド。あなたはどちらを選びますか?」

 

 また、変わる。

 ほんと、めまぐるしいな。

 

『信託報酬率が低いファンドに決まってるよね。高いお金を払ってるんだから高いリターンが望めるなんて保証は投資の世界じゃ通用しないから』

 

「ノーロードあるいはバックエンドロードについてはどうお考えですか?」

 

『結局、名目が違うだけでお金は多くとられちゃうわけだから、詐欺みたいなもんだと思うけど』

 

「博識ですこと……」

 

 やべえ。煽られてるみたいだ。

 いや、声色からすると、落胆に近い感覚か?

 よくわからない。最初の頃の得体の知れなかった恵子と同じ感覚を受ける。

 

「妹は姉に庇護されるべき存在だと思いますか?」

 

『それはどういう関係を結んでいるかによるよね』

 

「あなたの場合はどうでしょう」

 

『わたしの場合は――』

 

 どうなんだろう。

 お姉ちゃんをヒモにしたいというのは、お姉ちゃんに庇護されるべき存在になりたくないともいえるわけで、そう考えると、妹は姉に庇護されるべき存在ではないということになる。けれど、わたしは、モラトリアムの時間はお姉ちゃんに庇護されるべき存在であることも利用している。難しいところだ。

 

『お互いに支えあうのがいいんじゃないかな』

 

 わたしは玉虫色の回答を返した。

 

「わたくしの考えは違います。正直なところ、メスガキちゃんの考えには不満がありますわ」

 

 淫猫はきっぱりと言い放った。

 

『そうなんだね。やっぱり妹は庇護されるべきって考え?』

 

「もちろんですわ。正確には力のある者が姉として妹を庇護すべきです」

 

『そういう考えもあっていいんじゃないかと思うけど、やっぱり関係次第なんじゃないかな』

 

「メスガキちゃんは上のお姉様をかわいいと評しましたね。かわいいとは庇護対象として見ている。つまり、内的には妹として見ていることに他なりません」

 

『お姉ちゃんをそんなふうに見たことは』

 

 あるな……。確かにそれは否定できない。

 

「ありますでしょう。わたくしが不満なのは、メスガキちゃんが利と理に聡く敏いところがありながらも、ロジックに従わない部分で、上のお姉様を下の姉よりも姉として慕っているという事実です」

 

『姉妹関係を利益とか力関係とかで見るほうがおかしいよ』

 

「いいえ。そうではありません。現実的には妹という存在は姉に保護されるべきです。未成年ならなおのことそうでしょう。わたくしが言いたいのは、寄りかかるのでしたらより強い者にしておきなさいということです。幸いなことにあなたにはもう一人姉がいるのですし、その方は優秀なのでしょう?」

 

『そんな家族内で序列とかつけたくないんだけど……』

 

「お優しいこと……。ですが、それではあなたは上のお姉様にご負担をかけていることになりますわね。庇護者は保護者にとっては大なり小なり負担になっているということ。上のお姉様の才覚を越えるほどに寄りかかれば、お姉様はつぶれてしまいます」

 

 酔いつぶれたお姉ちゃんの姿が脳裏に浮かんだ。

 恵子の言いたいことはわかる。

 お姉ちゃんの庇護者としてふるまいながら保護者としての地位を狙う。

 これは、お姉ちゃんにとって特大級の迷惑だろう。

 半分くらいは恵子がお姉ちゃんを鳳寿院家にとりこもうとしたせいだろうと思っているが、そもそもヒモにするということが、心理的な負担なんだ。

 

 恵子は自分ならつぶれないと言っている。

 確かにそうだろう。化け物のような思考能力と胆力がある。

 お姉ちゃんよりも、遥かに生存能力は高い。

 

 でも――。それでも。

 

『わたしはお姉ちゃんがいいんだよ』

 

「そう……なのですわね。それなら何も言いません」

 

 面接会場はあいかわらずざわついていた。

 淫猫が沈黙しているので、会場のざわつきがBGMとして聞こえてくる。

 

『淫猫様がここまで熱くなられるとは珍しい』

『奇妙なほどに付合しているからな……家族と重ねあわされたのだろう』

『それでどうなるんだ。面接結果は』

『メスガキちゃんJCのくせにオレより投資詳しいわw』

『オレらは雰囲気で投資しているからなw』

 

「静かに――」

 

 淫猫が口を開くと、ざわつきはピタっと止まった。

 

「最後に質問なのですが、あなたは何のためにお金を貯めようとしているのですか?」

 

 うーん。

 実をいうと、お金にはあんまり興味はないんだよな。

 この点も、嘘をついていることになるが、べつにお金のことが嫌いなわけではない。

 将来お姉ちゃんを養うためともいえるが、お姉ちゃんもなにかしら経済的には自立していく可能性が高いだろうし。迷惑をかけないため?

 いや、違う。本質的にはやっぱりただひとつ。

 わたしの答えはいつもシンプルだ。

 

『ほしいものを手に入れるためだよ』

 

「ふふ……お可愛いこと♡」

 

 淫猫はこの日一番の優美な笑顔を見せた。

 

 

 

 ※

 

 

 

『それで面接は合格かな』

 

「ええもちろん文句なしの合格ですわ。ただ――ひとつお願いがありますの」

 

『なにかな?』

 

「あなたの生の声をお聞かせくださいまし」

 

『えあ』

 

 やべ。キーボード操作をミスって変な声が出てしまった。

 このVR空間では、機械音声ではなく、わたし自身の声も出せるようになっている。

 しかし、そんなことをすれば一発でバレてしまうこと必至。

 どうする!?

 混乱して動きが遅れるわたしに、淫猫はいつのまにやら壇上から降りてきている。

 

 一歩。一歩近づいてくる。

 

 画面いっぱいに淫猫の妖艶な顔が広がった。

 黒ネコミミがピコピコと動いている。

 デフォルメしているわたしと違って、淫猫はアニメ3Dキャラで頭身も高い。

 その淫猫がわたしのまっしろふわふわな毛に手を伸ばした。

 わたし、もふもふされちゃった……。

 

『どうしてそんなこと』

 

「もちろん、貴重な妹サンプルとして心にとどめ置くためですわ」

 

『わたしは淫猫ちゃんの妹じゃないよ?』

 

「そうですか。しかし、あなたの心性はわたくしの妹と似ているように思いましたの」

 

『ブサイク声だよ。なんならおっさん声でイメージが崩れるかもしれないし』

 

「そんな心配はまったくしておりませんわ」

 

 周りがまたざわついた。

 

『淫猫様の執着が獲物を狙う猫のようだ』

『メスガキがうらやましい』

『ああ、オレのだみ声ならいつでもお聞かせするのに』

『メスガキやっぱおっさんなんじゃねーのw』

『淫猫様に優しくなでなでされたいブヒー』

 

 ヤバイヤバイヤバイ。

 これ断ってもいいやつなのか。

 メンバー登録はどうなる。

 時間が……時間が……足りない。

 

 淫猫の試練は佳境を迎えていた。




ちなみにわたしは雰囲気で書いてる♡
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