【悲報】私氏、小学生妹ちゃんのヒモになりそう 作:おねロリのおね
いつもの小悪魔チックなメスガキではないわたし。
恵子からの申し出を受けて、わたしは
要するに、ファンシーでキラキラしていてお姫様チックな、現実のわたしに似ているアニメな感じのわたしを想像してもらえばいい。
この容姿だとメスガキ度数は下がる。
当たり前だよな。正直なところ、リアルなわたしはかわいすぎるんだ。
かわいさは時として武器となるが、メスガキという属性は言ってみればサディスティックな側面を多く含んでいる。それがかわいさで中和されてしまう。
わたしにとっては、ちょっぴり不利ではあるが、せっかくの初ユニット。そして、淫猫のクオリティはさすがプロが描いただけあって、メチャメチャ高いんだよな。わたしのメスガキな容貌も気に入っているが、ユニットなのにクオリティの差が出るのは、配信を見てくれるみんなに対して申し訳ない気がした。
――だいたい、お兄ちゃんたちはわたしたちの都合に巻きこまれている。
であれば、わたしは配信者として、みんなを楽しませるというスタンスを崩したくはない。
恵子特攻があるという面も考えたがな。
決戦前夜に恵子のCOを聞いた限り、わたしの外貌に惹かれたらしいし。
ただ、恵子もさでずむな女王であるから、この点は痛しかゆしといったところか。
わたしをよりイジメたくなるのかもしれない。
だから、このデータを渡したのかも。
まあ、いいさ――。やることは変わらない。
わたしのキャラはメスガキで押し通す。
――わたしは会場にダイブする。
会場はコロシアムのようなVR空間で、これも恵子が用意したものだ。
わたしが先にダイブすると、階段状になった周りは人であふれていた。
75名のお豚さん(カフェオレお兄ちゃん除く)と、699名のお兄ちゃん達。
みんな欠けることなく、わたしと恵子の配信を見に来てくれている。
こんな奇跡はおそらくリアルでもめったに起こらないだろう。
恵子は、まだ現れていないようだ。
「こんな小学生の配信見に来るなんて、みんなロリコンなのぉ♡ 雑魚お兄ちゃんたち♡」
『メスガキがメスガキじゃない、だと……』
『うお、メスガキちゃんが妹様だとは聞いていたが、すげぇ違和感あるぜ』
『生の声なんだな。かわええ……』
『リアル小学生なんだよな? 淫猫様もメスガキも』
『淫猫様が天才小学生すぎてより一層盲信いたします!』
『JCじゃなくてJSで株とか語るメスガキがいるらしい』
『予習で、イソラちゃんの配信いくつか見てきたけど、違和感ありまくりだな』
『魂はいってる妹様かわいい』
『オレ、妹様のファンになるわ』
『淫猫様にとってもたぶん、妹様ファンになるのはOKだと思われ』
『そもそもこの配信で何がなされるんだろう』
『淫猫様は何を想い、何を成すのか』
『カワヨ……』
『メスガキちゃんのファンたちもかなり多いなぁ』
合成音声も聞こえるが、数が数だけにほとんどノイズとしてしか聞こえない。
しかし、この点については対策済みだ。
わたしの眼前には、いくつも小窓が現れては消えていく。
恵子のVR空間にはメッセージが合成音声としても流れるが、コメントを表示する機能もある。
その応用で、コメントをすぐ近くに表示することができる。
半透明なウインドウが無数に表れる。まるで言葉のシールド。
これは、現れては消える儚い泡沫のようなものだが、恵子に聞いたところ特殊な機能があった。
頼りになりそうなMSGK泣かし隊の兄貴。
盤面整理が得意というより趣味な盤面整理兄貴。
少し情けないけど水平思考が得意なカフェ・オレのお兄ちゃん。
前は敵だったけど今では妹好きな狐のお兄ちゃん。
時々鋭いことを言うわからせマン。
ちょっとサドいが、ロジカルな思考の腹パン大魔王。
嫉妬のことについてはなぜか熱い嫉妬マスク三世。
ひたすらにわたしに優しいおねロリのお姉さん。
初心者的ムーブで白く見られてしまうメスガキスキー。
家族愛とかに敏感な萌えるお兄さん。
えとせとら・えとせとら。
でも、みんな志願してくれた。
わたし利の発言をする狂人として。
いや、正確には狼の声を聴ける聴狂人として。
「合言葉を言え♡」
『わおーん』
『なんぞ?』
『合言葉??』
『わおーん』
『わおーん』
『狼の遠吠えが聞こえる』
『なんでわおーん?』
『そういや、淫猫様の配信でも妹様わおーん言うてたような』
『わおーん』
『わおーん?』
『わおーん』
『なんかの符丁か?』
わたしの発言をもとに、お兄ちゃん達のうち、志願者たちが合言葉を言ってくれる。
それをもとに、わたしはコメント発言者を確認し、ピン止めしていく。
わおーーーん!
あ、これお豚さんだ。なんかノリで発言した人が混ざってるらしい。ぽいっちょ。
そんなわけで、わたしの布陣は完成した。
さぁ、かかってこい淫猫。わたしたちは負けないぞ。
※
「狂おしいほどにかわいらしいですわね。イソラちゃん」
背後から突然声がした。聞き間違えることはない。
振り返ると、そこには恵子が悠然と立っていた。
あのときのメンバー配信とは違い、夜会ドレスのような恰好に着替えている。
また、札束ビンタで創らせたのだろうか。
衣擦れの音まで聞こえてきそうなリアルさ具合だ。
金の力ってスゲェ……。いや、まあ、恵子が綺麗なのは否定しないけどね。
「五分遅刻だよ。淫猫お姉ちゃん」
「ふふ。かわいらしい抵抗を見せる妹に時間をあげただけです。ご準備はできましたか」
「わたしは上流階級じゃないんだからさ。時間にパンクチュアルなほうが好き」
「なるほど、覚えておきましょう」
ビジネスシーンでは五分前行動が主流だが、上流階級では五分遅れ行動がメインだとか聞いたことがある。人と人が出会うときも、受け入れるだけの準備が必要だから、少し遅れて到着するというのが通例になっているらしい。知らんけど。
「さて――最初に申し上げておきますが、わたくしがこのコラボ配信を企画した理由は、イソラちゃんに完膚なきまでに敗北を味わわせるためです」
わたしにとっての敗北条件は、お姉ちゃんへの恋心が知られてしまうこと。
しかし、ここにはお姉ちゃんはいない。つまり理論上、わたしに敗北という二文字はない。
「とでも思ってそうなので、間違いを二つ訂正しましょう。まず、わたくしが切り崩したいのは、あなたがたお兄様と呼ばれる方々です。イソラちゃんはお兄様方を味方と思っているようですが、事がゲームではなく現実であるとしたらどうでしょうか。社会的に見て、常識的に見て、世間的に見て、誰が正しいのか。本当はわかっているはずなのです」
「それは淫猫お姉ちゃんがお兄ちゃん達のことを知らないだけだよ」
「いいでしょう。ですが、小学生であるあなたに手を出すような大人がいれば、通常は事案となることをお忘れなく……」
「自分だって、わたしを狙ってるくせにぃ♡ な~に言ってるのかな♡」
「わたくしはいいんですよ」
「なんで!?」
「わたくしも小学生ですから」
「むうう。それはズルい言い方だよ。都合がいい時だけ大人のふりして、都合が悪くなったら子どものふりをする。おかしいじゃん」
「はやく大人になりたいイソラちゃんは、そう思うでしょうね。ですが、いまこの時においては、わたくしの言葉こそが正しい。あなたの言葉こそがまちがっているのです」
「そんなの勝手に決めつけないでよ!」
いまは昼時間。
確かにわたしにとって時間は不利なまま。
『落ち着けメスガキ』
『猫の挑発にカンタンに乗っちゃいけない』
『オレ氏もそう思います』
『おまえはまず豚の恰好でそのセリフ言うのやめろよw』
『淫猫ちゃんが言う、もうひとつってなんなのかしら?』
そうだ。おねロリのお姉さんが言うように、淫猫は二つの間違いを指摘した。
わたしの思考を完全にトレースしている淫猫のことだ。
なにかとんでもない秘策が用意されているに違いない。
「ふふ、二つめの間違いについて指摘させていただきましょうか」
淫猫がツイっと指先を動かすと、突然地面が揺れ始めた。
ゴゴゴとせりだすようにしてわたしのいた地面が丸く切り取られてあがっていく。
そして、同じように淫猫の地面もあがった。
みんなからは見上げる形になるが、恵子としては下に見られるのは嫌だということだろうか。
そして三回目の揺れ。
ちょうどわたしと淫猫の位置からは三角形を描くようにして、再び地面がせりあがっていく。
「お、お姉ちゃん?」
そして地面から生まれるようにして現れたのはお姉ちゃんだった。
わたしが描いた天使のキャラじゃない。現実のお姉ちゃんに似せたアニメキャラクター。
いま、お姉ちゃんの身体は地面から生み出されたクリスタルのような結晶の中に埋まっている。
手を軽く組み、祈るような姿勢。
そして、目と口は堅く閉ざされている。動きもない。
――ブラフだ。
「お姉ちゃんの偶像を用意して、わたしがひるむとでも思った? 残念でした~♡」
だいたい、お姉ちゃんを呼ぶくらいなら、最初から淫猫はリアルでわたしと交渉すればいい。
お姉ちゃんに恋心を伝えられたくなければ、わたくしに従えってな。
それに、そもそも――、お姉ちゃんは陰キャなんだよ!
他人とコミュニケーションをとるのもエネルギーを消費するタイプ。
だから、こんな大勢の場にわざわざ出てくるはずがない。
『メスガキ、これってヤバくないか?』
『ヒモ姉が目の前にいたらうまく反論できないのでは?』
『淫猫が前もってヒモ姉と交渉していた可能性もあるが……』
『メスガキはわりとパッション系だからなぁ』
『ヒモ姉が思考トレースできないパッション系の最たるものだということを考慮しろ』
「う、うーん……そうなの?」
お兄ちゃんたちの言葉がブレーキになって、わたしは再考してみる。
お姉ちゃんが突飛な行動をするタイプなのは知ってる。
お姉ちゃんがスレッドをたてたのも、料理を作ったり、自分で起きたり、お酒を飲んでつぶれちゃうのも、わたしの想像を越えていた。
だとしたら、お姉ちゃんがこの配信に参加している可能性もあるのか。
お姉ちゃんがここにいたら、わたしはどう取り繕えばいい?
「ふふふ……。考えているようですわね。その知性のきらめきこそがわたくしの最も好きなところですわ。アレキサンドライトの瞳よりもずっと輝いています」
「悪趣味だよ」
「メスガキキャラが崩れちゃってますわね。もともと根が素直なイソラちゃんにメスガキキャラは無理があるのではなくて?」
「ほっといてよ。これがわたしのキャラなんだから」
「仮面をかぶるのは悪くありませんよ。わたくしもポーカーフェイスを嫌というほど学んできましたからね。では――さっそく始めましょうか」
――言葉の殴り合いを。
家族会議という名の議論が始まる。
恵子の目的は、わたしが自ら狼だと自白することにある。
半ば確信はあるだろうが、わたしが自ら狼COすること、絶望を願っているのだろう。
とんださでずむだが、そうすることで、ようやく恵子はわたしに選んでもらえると思っている。
だから――、最初の議題は。
「お姉様をヒモにするという点について、イソラちゃんはどうお考えですか?」
「どうって?」
「本当にそれはお姉様のためにおこなわれているのでしょうか」
「何が言いたいの?」
「とぼけなくていいんですのよ。イソラちゃんはお姉様を手に入れたい。ですが、さすがに小学生では、お姉様と添い遂げるというのは無理筋。だから、今のうちに将来のために布石を打っておいたのでしょう? ヒモにして、イソラちゃんがいなければ生きていけないと、そう思わせるのが目的だったのではありませんか?」
「淫猫お姉ちゃんも盗撮していたなら知ってると思うけど、お姉ちゃんはひとりで生活できない系の女の子なの。家族はふたりきりになったんだから、できるわたしがやったらいいじゃん」
「なるほどそれは一理あります。わたくしもお姉様のヒモっぷりには少々こころを痛めましたわ。これでは社会復帰は絶望的かと思ったものです。ですが、わたくしが来たからには、お姉様のお世話を引き受ける必要はなくなったはずです。なぜ、時間割などを作り、お姉様のお世話を続けたのですか?」
「それがわたしの役割だからだよ」
「それは、お姉様のためではなく自分のためだったと認めるということですか」
「違う。だいたい淫猫お姉ちゃんも家族として定着したいって言ってたじゃん。わたしがお姉ちゃんをヒモにするのは、淫猫お姉ちゃんのためでもあったんだよ」
「あらあら、わたくしのことを考えてくださったのですね。お優しいこと。ですが、わたくしはお姉様をヒモにするのは初めから反対でしたわ。現時点でのお姉様の生活力から、すぐにヒモ状態を脱却するのは無理と判断しましたが、いずれは――そう、近い将来に自分のことぐらい自分でできるようになるべきだと思いましたし、いまもそう思っております」
「むぐぐ……」
『正論パンチかましてくる淫猫を腹パンしてぇ』
『しかし、これ勝てねーわ。分が悪すぎる』
『この配信で勝とうとするよりは、負けない方向で考えるべきかもな』
『メスガキもお姉ちゃんの偶像が見守ってる状況だと難しいな』
『そもそもサンドバック状態だからな。狼の防御感がでちゃってる』
『淫猫はメスガキラブCOしちゃってるし弱点なさげだしな』
「さて、イソラちゃんにまずはひとつ選んでいただきましょうか」
「な、なにを」
「認めなさい。あなたはお姉様をヒモにしたがってるでしょう。もしそうでないというのでしたら、今後、お姉様のお世話はわたくしがすべておこない、お姉様を真人間に矯正させます」
「だ、ダメ! それは……ダメ」
「でしたら、認めるのですね」
「認める……。でも、それは淫猫お姉ちゃんが最初に言ってたとおり、お姉ちゃんとわたしをつなぐ絆なんだよ。お姉ちゃんとわたしは血がつながってない。でも、家族になりたいって思ったから、お姉ちゃんのお世話をしたかったんだ」
「ふふ……なるほど、それはまた突き崩しがたい理由をあげてきましたね」
この点に嘘はないからな。
要は比重配分の問題。わたしの大部分はお姉ちゃん大好きって気持ちによるものだけど、ほんの数パーセントは家族愛も含まれる。
わたし自身にだって正直よくわかんないグチャグチャした感情なんだ。
他人の恵子にわかるはずがない。たとえ家族でも。
「まあいいでしょう。成分分析をかけるように、人のこころを分析するというのも無粋というもの。ですが、方向性としては、イソラちゃんはご自身のためにお姉様をヒモにしたいという点は認めるわけですわね」
「二度も確認しないでも、発言を覆したりはしないよ」
「でしたら、今後についてはどうなされるおつもりですか。自分のためにずっとお姉様をヒモにし続けておくのでしょうか。それはあまりにもお姉様がかわいそうではありませんか?」
「お姉ちゃんが卒業したら、自然と自立していくんじゃない? わたしは待ってるんだよ」
「そうですか。でしたら、お兄様方はどうお考えなのでしょうか? イソラちゃんの考えは結局のところ時間稼ぎのように思います。行きつく果ては、お姉様を完全にヒモにすること。それが正しいことだと思いますか。大人の判断をお聞かせください」
『家族間の出来事だからなというのはあるな……』
『オレ氏も外の意見は聞くべきだと言ったことあるが、フラットに見れば、ヒモ姉がかわいそうというのは考えないでもない。でも、ヒモ姉も頑張れよって気持ちもあって、あー、バブぅ』
『こんなときまでバブんな、おまえはw』
『淫猫はロック思考が強いな。ハッキリ言うが、おまえのヒモ姉に対する想いもただの感想だぞ』
淫猫は、わたしのピン止めしたアカウントを、手元にコピーして読みこんでいるようだ。
その不敵な笑みにゾクっとした。
「MSGK泣かし隊さんですか。わたくしのお姉様に対する評価が感想というのはそのとおりです。すぐにでもナイトになれそうなくらい優秀な方のようですわね。ですが――これでわかりましたでしょう。イソラちゃん」
「なにが?」
ぞんざいな口調になるのは許してほしい。
淫猫の思わせぶりな態度が悪いんだよ。腹パンしてぇ。
「結局のところ、彼等はイソラちゃんの
イラ!
お兄ちゃんたちを悪く言うとかなんなん。
「だったら、淫猫ちゃんは? お姉ちゃんを宝珠家のヒモにしようとしたよね。それってお姉ちゃんのこと思ってないよね?」
「そのとおりですわ」悪びれることなく淫猫は言った。「パターナリズム。わたくしは最初からそう申しあげております。お姉様の気持ちよりもお姉様の自立のほうが急務。小学生のヒモである異常状態よりはそちらのほうがよいに決まっているじゃないですか」
「それはまちがってるよ。わたしもお姉ちゃんをヒモにはしたいけど、少しはお姉ちゃんもヒモでいていいって思ってくれてると信じてる。でも、淫猫はそもそも他人が何を考えようが、どう行動しようが、どうでもいいんでしょ」
「ええ。もちろん」
「だから、まちがってるんだよ」
「まちがっていてもいいとも申し上げました。わたくしが客観的にみてまちがってるとしても、わたくしはわたくしの信じた道を突き進むのみです」
「だったら、お兄ちゃんたちの発言を聞いたのも、ただ論破したかっただけじゃん」
「ええ、そのとおり――。ですが、イソラちゃんのおっしゃることもまた想像の域をでませんね。お姉様が何をお考えなのかはお姉様しかわからないでしょう?」
「そりゃそうだけど……」
でも、スレッドで、配信で、日々の生活で、わたしはお姉ちゃんの気持ちに少しでも近づく努力をした。その努力がすべて無駄だったなんて思いたくない。少なくとも恵子よりはお姉ちゃんの気持ちを知っている。
『メスガキの言ってることは正しいと思うがな』
『ヒモ姉はメスガキ保護のためにヒモになってもいい発言はしていたぞ』
『お豚さんたちが恐ろしいほど静かだな……』
『これが恐怖政治ってやつか』
『メスガキ。おまえは自分の道を信じつづけろ!』
えへ♡ やっぱりお兄ちゃんたちは頼もしい。
そうだよ。淫猫が言ってることなんて、それこそ口から出まかせにすぎない。
お姉ちゃんの気持ちをわたしは信じる!
「そろそろ時間ですわね」
「時間……?」
チラリとモニター端の時間を見てみる。
配信開始から三十分。時間は夜の九時半になっていた。
なにやら嫌な予感がして、わたしはお姉ちゃんのほうを仰ぎみた。
お姉ちゃんがゆっくりと開く花弁のように瞳を開けた。
「イ ソ ラ ちゃん――?」
唇からこぼれる声は、まぎれもなくお姉ちゃんのもの。
心臓が早鐘を打つ。
こんなの聞いてない。
お姉ちゃんがヒモとかヒモじゃないとかはどうでもいい。
わたしは負ける。
今じゃなくても、すぐ後に必ず吊られる。吊られてしまう。
開始から三十分。
ズレた時間を告げられていたお姉ちゃんが配信に乱入した。
「さぁ。お姉様のお気持ちを聞きましょうか」
絶望的な状況の中、後半戦が始まる。