【悲報】私氏、小学生妹ちゃんのヒモになりそう 作:おねロリのおね
配信が終わって、わたしは謎の充実感に支配されていた。
お姉ちゃんに『
それで、一定の効果が見込めたし、百万円については純粋なミスだが、今からでも取り繕える。
「さーって、あとはどのタイミングで伝えるかかぁ……」
まあ、家族団らんの時がいいだろう。
つまり、夕飯時。
食べ始めでも食べ終わり頃でもなく、ちょうど中間地点くらいが最も効果的か。
お姉ちゃんは好きなものだと口が軽くなる傾向にあるから、今日はお姉ちゃんが好きなものをつくろうかな。
なお、お姉ちゃんはわりとなんでも食べてくれる。
好物もけっこう多くて、ハンバーグとか唐揚げとか、けっこうカロリー多めのが好きなみたいだ。でも、油っぽいものをいくら食べても太らない体質らしく、そのエネルギーは特定部位に吸われているように思う。おっぱいの神秘。おっぱいとは宇宙の心だったんですね。
そう考えると、わたしはお姉ちゃんのおっぱいを育てているんだなぁってしみじみ思えて幸せ脳汁がドバドバでてくるから不思議だ。
などと思っていたら。
――リンゴーン。リンゴーン。
部屋のベルが鳴った。
珍しい。お姉ちゃんだ。
わたしはジェット機のような勢いでドアを開け、お姉ちゃんを迎え入れる。
ドアを開けた瞬間に、お姉ちゃんのいい匂いが胸いっぱいに広がり、ほんとダメになる。
愛おしい。
とりあえず、抱いた。
いや、とりあえずというより反射的に抱き着いたといったほうが正しいか。
もはや本能レベルでお姉ちゃんを求めている。
「お姉ちゃん。どうしたの?」
おっぱいに顔をうずめながら、わたしはお姉ちゃんのご尊顔をみあげる。
お姉ちゃんはワタワタしながら、わたしのことを抱きしめ返してくれる。
あ。あ。お姉ちゃん!
お姉ちゃんがいる世界は美しい。
お姉ちゃん、生まれてきてくれてありがとう!
「あのね。お姉ちゃんちょっとだけチャレンジしてみようと思うの」
「へ? チャレンジ?」
告白チャレですか? ま、まさか?
ふわふわになっちゃうわたし。
でも、お姉ちゃんの答えは違った。
「お姉ちゃん料理苦手でしょう。今日は私が料理作るから、見ていてほしいなーって」
「え、お、お姉ちゃんが料理……だと……」
な、なぜだ。
そんな、わたしの楽しみがおっぱいのお育てが……あばばばばばばば。
またお姉ちゃんだ。またお姉ちゃんはわたしの想像を越えていく。
そんなお姉ちゃんがこころの底から愛おしくもあるのだが、わたしはさっきまでのウキウキ気分がぶっとんで、混乱のさなかにあった。
じ、自立の前準備とかじゃないよね。
誰か助けて! こんな状況どうすればいいの。
MSGK泣かし隊の兄貴。メスガキスキーお兄ちゃん。リスナーの誰か!
「えっと、異空ちゃんはわたしが料理するのイヤかな?」
「い、イヤじゃないよ。お姉ちゃんの手料理わたしも食べてみたいな♡」
そんなふうに言ったら、お姉ちゃんに頭を撫でられる。
でへへ。ダメだよお姉ちゃん。
お姉ちゃん特攻のついているわたしは撫でポされたら二コマで即落ちしちゃう。
まあ結局のところ、お姉ちゃんに激甘なわたしがお姉ちゃんの願いを断れるはずもない。
そのまま、リビングルームに連れだって、いっしょに料理を作ることにあいなった。
※
須垣家のキッチンは、リビングルームと直結している。
キッチンはかなり間取りをとったスペースを有しており、小学生の矮躯でも使いやすい。
ぶっちゃけ、この家はふたりで住むにはかなり広いんだよな。
そう、つまりはお金持ちです。
正直なところ、この家を売ればそれなりのお金にはなると思うし、そうでなくても遺産だけでも節約すればふたりが生きていけるくらいのお金はある。
お姉ちゃんは無理して就職しなくてもいいんだけど、そこはまあお金を稼ぐだけが仕事をする意味ではないから、わたしとしては何も言えない。ほんとはお姉ちゃんがニートになってくれたら一番いいんだけどね。
わたしのお嫁さんとして永久就職してくれないかな。
「えっと、妹ちゃん。エプロンはこれでいいのかな?」
エプロンの装備確認もできないお姉ちゃんがかわいい!
って、思ったのもつかのま。
ものすごい違和感をかんじる。
「ねえ、お姉ちゃん。なんで妹ちゃんなんて言うの?」
媚び媚びビーム発射。
お姉ちゃんに名前を呼ばれるのは、妹の特権だ。
妹は姉のことをお姉ちゃんと呼ぶのが正しいが、姉は妹を名前を呼ぶべきであるというのがわたしの宗教だ。なお、呼び捨てのほうが本当は望ましい。
異空って呼んでほしい。
妹ちゃんなんて距離があいたみたいでイヤだ。
「い、妹ちゃんはわたしのことお姉ちゃんって呼ぶでしょう。だ、だからわたしも妹ちゃんって呼んでみようかなって」
「えー、イヤだよ。ちゃんと異空って呼んでよぉ♡」
「あわわわわわわわわ」
なぜかお姉ちゃんに口を塞がれました。
は、これって事案なのでは?
お姉ちゃんのしなやかな指先を感じて、わたしは絶頂しそうになる。
ああ、いま脳汁でまくってるんだろうなってハッキリ自覚できた。
「おねえひゃぁん。異空って呼んでぇ♡」
「異空ちゃん。えっと、今日だけは妹ちゃんじゃダメかな」
にゃ。にゃーん。
耳元でささやかれるとか、こんなんセックスじゃん。
わたしは力なくコクリとうなづいた。
「じゃ、じゃあ料理作ろうかな」
「うん。異空が手伝ってあげるね♡」
「妹ちゃん!?」
ちょっとした意趣返しだ。
お姉ちゃんがわたしを妹呼びするなら、わたしは異空を自称する。
お姉ちゃんわからせってやつだ。
なぜだかお姉ちゃんは焦っているようだけど、いつもおどおどしているのはお姉ちゃん的にはノーマルな状態だ。ちょっと素直さが足りなかったかな。でもお姉ちゃんが悪いんだよ。
「さあ、夕飯まで時間がないから巻いていこ? お姉ちゃんはお米の研ぎ方わかる? 洗剤で研いじゃダメだからね」
「うん、さすがにお米の研ぎ方くらいわかるかな」
お姉ちゃんがお米を研ぎ始める。
白くて優雅なちょうちょが舞っているみたいで、その様を眺めるのは案外たのしい。
腰を入れて、ギュッギュッっとお米を研いでると、わたしはお米になりたいと思ってしまった。
まあ家事全般が潰滅的に苦手なお姉ちゃんではあるが、べつに食べられないものができるというようなラノベ設定はない。
料理に手慣れた人間なら、複数の作業を同時並行的におこなうことで時間短縮できたりするが、お姉ちゃんは素人同然として考えればいい。今日は単線で、ひとつずつの作業を確実にこなしてもらうほうがいいだろう。
あ、あと油モノはやめたほうがいいかな。
フライパンで簡単に炒められるものにしたほうがいいか。
それとも、煮込み系。そうだな。カレーあたりが妥当か。
あれは材料切ってぶちこむだけだからな。本当の意味で小学生でもできる料理だ。
――いや、そもそもの話。
「ねえ、お姉ちゃん」
お米研ぎをずっと続けているお姉ちゃんに声をかける。
まあ……、研ぎすぎて死ぬことはないから、それはべつにいい。
「ん。どうしたの?」
「今日、お姉ちゃんはなんの料理をつくるつもりなの?」
「そうね。えっと……そうね……」
きょどりはじめるお姉ちゃん。
子ウサギみたいでかわいいけど、さすがにジト目だよ。
「考えてなかったんだ」
ざこざこお姉ちゃんという言葉はのみこんだ。
さすがにメスガキ設定は現実では持ちこめない。
わたしは従順でお姉ちゃんのことを慕っている一介の小娘ですよ。
「考えてませんでした」
ガックリとうなだれるお姉ちゃん。
ああもう、お姉ちゃんが料理しなくてもわたしがずぅぅぅっと作ってあげるのに。
なんなら、お口に料理を運んであげるのに。
でもまあ、そんなことより料理だ。お姉ちゃんにも成功体験は必要だろうしな。
ここは順当なアドバイスでもするか。
「いつもはわたしが買い物しているから把握してないと思うけど、本当は料理の前に何を作るか考えないといけないからね。料理は準備が九割みたいな話だよ。今回は冷蔵庫の中を確認するところから始めるといいよ」
「そ、そうね。そうする」
とりあえずお米を研ぎ終わったと判断したのか、わたしのアドバイス通りに冷蔵庫を開けにいくお姉ちゃん。ふたりで使うにはかなり巨大な冷蔵庫が壁際に設置されている。わたしはお米を炊飯器にセットしてボタンを押す。うーむ、3合炊いてるけど、残りはパックに詰めて冷凍庫にでもぶちこんでおくか。大は小をかねるって言うしな。必ずしもまちがった判断とはいえない。
横目でお姉ちゃんを見ていると、お姉ちゃんは挙動不審ぎみに冷蔵庫に近づいていた。
パカっ。開ける。
そして、そっ閉じ。
そして、また開ける。今度はおそるおそる。
謎の行動だ。いやまあ予想はつくけど。
「えっと、お姉ちゃん?」
「あ、あのね。けっこういろんなモノがあるんだなって思って」
「うん。そうだね。お姉ちゃんが今日なに食べたいのって聞いてから作るときもあるでしょ。いざというときのためにけっこう買いだめしてるんだぁ」
「そうなのね。いつもありがとう妹ちゃん」
「うん。お姉ちゃんはがんばって美術の勉強しているんだもんね。こんなことくらいでお姉ちゃんの助けになれるならうれしいよ♡」
「妹ちゃん……」
「とりあえず!」わたしは湿っぽくなってしまった空気を入れ替えるように明るい声をあげる。「今日のところは、カレーつくろ。カレー」
「そ、そうね。カレーいいわね。カレーつくりましょう」
「まず材料だけど、お姉ちゃんわかる?」
「そうね。ジャガイモと人参とお肉……カレーのルーとか、かな?」
なんだそのテストの答えを先生に聞くような態度は。
でも、そんなお姉ちゃんがかわいすぎて思わず微笑が漏れてしまう。
「あとは玉ねぎとかかな。とりあえず、冷蔵庫から出して。あ、全部出さなくていいからね」
多く作るほうが簡単かもしれないが、食卓にずっとカレーが並ぶのもどうかと思うしな。
お姉ちゃんが材料を取り出してくれたので、わたしはピーラーをお姉ちゃんに渡す。
「はい。皮剥いて」
「あの、妹ちゃん、にんじんって皮あるの?」
「その発想はなかった。あるよ」
「牛肉にも皮あるの?」
「皮は既に剥いでると思うよ……」
どうしよう。お姉ちゃんの発想がわたしを越えていく……。
そして、お姉ちゃんの横にわたしは待機。さすがにピーラーで皮を剥くなんて素人でも簡単にできる。わりとゴッソリいってるが、ご愛敬だ。
さて、包丁のほうはわたしがしますかね。
踏み台に乗って、適当な大きさに乱切りする。
「妹ちゃん。今日はわたしが……」
「うん。手伝うよ。見ているだけじゃつまらないんだもん」
「そうよね。いっしょにつくろうね」
「うん。あ、よそ見しながらピーラーつかったら危ないよ」
指の皮ごとゴッソリってなったら、死ぬほど痛い。
お姉ちゃんならやりそうだからな。正直冷や冷やしてるんだ。
包丁も持たせてもいいんだけど、ちょっと怖いんだよな。
やっぱりわたしがやるのが安牌か。
お姉ちゃんから、スゲエ小さくなってしまったジャガイモを受け取る。
うーん。これだともっと用意してもらったほうがよかったか。
とりあえず、切る。
お姉ちゃんが皮を剥くよりわたしが切るほうが早いが、まあ皮剥くのもけっこう手間だったりするしな。このあたりは、必ずしもわたしの料理スキルが上ということにはならないだろう。
で、それと同時に、厚手の鍋を用意して、サラダ油をひいておく。
火をかけて、サラダ油を熱しておき、切った具材をどんどん入れていく。
ほんとは火の通りにくい順番から入れたほうがいいけど、素人料理なんでそこはガバガバでも問題ない。こまけぇこたぁいいんだよ。
「妹ちゃん。ちょっとペース早くないかな」
「ん。焦らないでも大丈夫だよ。最終的にぜんぶ鍋のなかに入れるから、そんなに味は変わらないと思うし、料理屋さんの料理じゃないんだし、時短してもいいんじゃない。気軽にいこ?」
「そ、そうなんだ」
とりあえず納得してくれたのか、お姉ちゃんはまた皮剥きに専心しはじめる。
皮を剥く必要のない肉を適当な大きさにぶつ切りにして、鍋のなかにぶちこむ。
にんじんひとつで手こずってるお姉ちゃんに愛しさを感じながら、玉ねぎはちょっと難易度が高すぎるかなということで、皮剥きから芯の取り除きまでわたしがやることにした。
お姉ちゃんはにんじんをまだ剥いている。
――もしかして皮と身の境界がわからないのでは?
「えーっと、そろそろ剥けてるんじゃないかな」
「そうなのね。じゃあ、はい」
うわぁ……ほっそ♡
にんじんスティックみたい。
まあいいさ。にんじんが嫌いな派閥もあるだろうしな。
適当に切って、鍋にぶちこむ。
あとは炒めるわけだが、まあここはお姉ちゃんに任せてもいいだろう。
インハイターだし、そこまで危険ってわけでもない。
「適当に炒めるだけでいいよ」
「適当ってどうすればいいの?」
「うーん、具体的に言えば、玉ねぎがふにゃふにゃになったかなってところ?」
「時間という概念で教えてください……」
「うーん。玉ねぎは火が通りにくいからちょっと時間がかかるんだよね。でも、全体的には十分くらいあればいいんじゃないかな」
「わかった。測るわ」
「お姉ちゃん、鍋見ようよ」
完全に焦げつくってことはないと思うけどさ。
ストップウォッチを片手にガン見しているお姉ちゃんは真剣そのものだ。
料理してるお姉ちゃんってなんだかいいな。
うん、これも悪くない。
そんなこんなで十分経過。
それから、水を加えて煮こむわけだが、あとはまあ特にすることはない。
いつもわたしが作っているときは根性出して灰汁という灰汁を取り除いているが、そこまで執拗にしなくても十分うまいしな。たぶん、わたしが自分で食べるぶんを作るだけだったらそこまでしない。
「灰汁とりは、まあ適当でいいよ」
「また適当……適当って、要するに適切かつ順当ってことよね」
すごい勢いで問いかけてくるお姉ちゃん。
いかん。曖昧な言葉はよくなかった。
「う、うん。そうだけど」
「どれくらいすれば適当なのかわかんないの」
「そだね……、まあ、五分に一回くらいのペースで見えてる灰汁の八割くらい取り除けばいいんじゃないかな」
お姉ちゃんが今後料理を続けるかは謎だが、ひとまずの回答だ。
おねえちゃんは「わかった」と言って、わたしの言ったとおりに時間を測り、そして灰汁とりを実行する。お姉ちゃん素直! 素直すぎて逆に怖い。変な人に騙されないか心配。
でも――、妹に対する信頼だと捉えると、なんだかうれしくもある。
精神的に重労働をしているのか、額の汗を手でぬぐうお姉ちゃん。
オタマを握りしめているお姉ちゃん。
真剣なまなざしのお姉ちゃん。
すごく応援したくなる。
赤ちゃんがハイハイして近づいてくるときに生じるような、そんな気持ちだ。
何時間見てたって見飽きない。
おっと、本当にいつのまにか時間が経過していたぞ。
「じゃあ、あとはルーを入れて、再度煮込むだけだね」
「どうやって入れればいいの?」
「うん? 普通に割って適当に配置して……だけど」
「普通ってなに?」
「哲学だね」
「適当ってなに? 私にはもうなにもわからない」
いかん。お姉ちゃんがテンパってる。
慣れないことの連続で精神がもたないんだろう。
「まず、カレーのルーは割るんだよ。チョコレートみたいに切れ込みがあるから割りやすいよね。それで、割ったルーを適当に……、等間隔に配置したらいいんじゃないかな。それから、だんだんルーが溶けていくから、オタマで混ぜていったらいいよ」
「わかったわ!」
うん、がんばれ! お姉ちゃん。
※
完成したカレーをわたしは絶賛していた。
もうそりゃ全肯定妹マシーンですよ。お姉ちゃんを称賛するのに余念がない。
強いて言えば、具材がちっちゃくなりすぎているが、そんなことは関係ねえ。
これはお姉ちゃんがわたしのために作ってくれたファースト手作り料理だ。
わたしはカレーを食べているんじゃない。
お姉ちゃんがわたしのために作ってくれたという概念を食べている。
うま。うま。うま。うま。
「本当においしいよ。お姉ちゃんは料理の天才だね!」
「え、ええ、そうかな」
照れているお姉ちゃんが愛おしい。
世界が輝いて見える。
そんなわけで、わたしはすっかり忘れていた。
お姉ちゃんに伝えるべきことを。
百万円の出所を。