【悲報】私氏、小学生妹ちゃんのヒモになりそう   作:おねロリのおね

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メスガキわからせ生配信

 くそッ。どうしてこうなった。どうしてこうなった!

 

 今日はお姉ちゃんの初めての手料理を食べることができて、人生って本当に素晴らしいと思っていたのに、なぜか最後の最後でお姉ちゃんのお部屋でいっしょに寝るのは拒否されてしまった。

 

 いつも寝てるわけではない。たまに、なにかしらお姉ちゃんがかわいい行動をしたときに、ぬいぐるみを持って、いっしょに寝たいって主張するだけだ。わたしの中のお姉ちゃん愛はゲージマックスで常に溢れているが、重い女とか思われたくないしな。

 

 けど、いままでの行動パターンからして、お姉ちゃんはわたしの願いを拒否ったことはない。

 いっしょに寝たいが通らなかったことは、数えるほどしかなかったんだ。

 

 チクショウ。なぜだ。なぜなんだ。

 慢心……環境の違い……。

 

 いや、知っている。わかっているはずだ。

 お姉ちゃんはおそらくだが、自立しようと目論んでいるのではないか。

 だから、わたしへの依存心を少しずつ切り離そうとしているのではないか。

 それってつまり、わたしが切り離されるも同然なのではないか。

 

――あ。

 

 ヤダッ! ヤダッ! ヤダッ!

 お姉ちゃんに切り離されるくらいなら、自分で心臓もぎとったほうがマシだ。

 そんな結末、否定してやる!

 いますぐお姉ちゃんのお部屋に突貫して、貞操を奪ってやる。

 

 そんな気持ちがフツフツと湧いたものの、すんでのところでわたしは我慢した。

 おそらくだが今日お姉ちゃんは慣れないことをして精神的に疲れていたんだろう。

 小学生のわたしと応対するのは、わたしに依存させているとはいえ、精神力を使うことなのかもしれない。お姉ちゃんは()()()()()()()()()()()()()()()()からな。わたしも例外ではない。だから、お姉ちゃんはひとりになりたかったんだ。

 

 たぶんそう。きっとそう。

 お姉ちゃんにはわたしが必要!

 わたしにはお姉ちゃんが必要!

 これはもう夫婦。

 

――でも。

 

 不安と妄執が暗がりから襲ってくる。

 どうしてもお姉ちゃんがわたしから走り去っていくイメージが消えない。

 闇の力に浸食されていくよぉ……。

 

「いや、まだだ!」

 

 小学生女児のわたし、ピョンっとベッドから飛び起きる。

 ベビードールがめくれあがり真っ白いショーツが見えようが関係ない。

 どうせ誰も見てないしな。

 

 そしてお決まりの混乱鎮静ルーチンを発動した。

 

――まずお姉ちゃんの愛くるしい御姿をこころのなかに思い描く。

 

――そしてゆっくりこう唱えるんだ。

 

――「お姉ちゃんかわいい」と。

 

 疑いを捨ててかかれ。信じるものは救われる。

 わたしは念仏のように「お姉ちゃんかわいい」を唱える。

 

「お姉ちゃんかわいい。お姉ちゃんかわいい。お姉ちゃんかわいい」

 

 うん、大丈夫だ。だいぶ落ち着いてきた。

 地獄に仏、現世にお姉ちゃんとはこのことだぜ。

 

 しかし、機を逸してしまったな。

 ベッドに腰かけなおしながら、わたしは本日の出来事を反省する。

 

 物事には機というものがあると思う。

 今日は突然のお姉ちゃんの料理する宣言に機先を制されてしまった。

 イクゾー! と気合を入れていたから、出鼻をくじかれた形だ。

 

――いやはや、まったく。

 

 お姉ちゃんは本当にわたしのこころをもてあそぶのが上手いな。

 これ絶対お姉ちゃんは小悪魔属性あるだろ。

 天然っぽさもわたしを惑わす誘いの一手に違いない。

 ちくしょう。淫魔みたいなおっぱいしやがってよぉ!

 

 わたしはお姉ちゃんに対して、例の『大学をやめないで宣言』をするつもりだったんだが、どうにもそんな気分ではなくなってしまった。当然、付録である百万円のことも伝え損ねた。

 

 いや、それどころか、なんというか……、

 本当にそれでいいのかという疑念も生じてしまったんだ。

 他の選択肢は本当にないのか、もう少し考えを煮つめる必要がある。

 

 もちろん、ただただ時間を経過させるのはよくない結果を生みそうだ。

 わたしにはどれだけの猶予が残されているのだろう。

 時間はわたしに有利に働くはずだった。

 しかし、今では時間こそがわたしを裏切っている。

 

 ふと冷静になってみると、なんで人生の斜陽に入る前の小学生が時の流れに残酷さを感じてるんだろうと思わなくもない。

 

 家族という閉じられたトリカゴだからだろうか。

 わたしがずっと前から欲しかった宝物。

 わたしとお姉ちゃんという固定された(フェイズ)

 できることなら、そっと仕舞っておきたかった。

 でもそれだと、きっといつかは破綻するだろう。

 

――やっぱ、配信しかないか。

 

 わたしはそう結論づける。

 しかし、今日の配信はもう既に済ませてある。

 いくらなんでも、一日に二回も配信するとか、リスナーに対しても失礼だろう。

 突発的なイベントとかあれば別だが、今日はもう寝るほかない。

 

 はぁ……、お姉ちゃんといっしょに寝たかったな。

 わたしはモンモンとしながら、朝を迎えるのでした。

 

 

 

 

 

 

 さて、小学校から帰宅。

 今日は買い物に行く必要もなかったし、お姉ちゃんはまだ大学にいる時間帯だ。

 

 まあ例によって配信については、お姉ちゃんが在宅中でも防音されているから問題ないといえるが、生活全般をわたしが取り仕切っている以上、家事をおろそかにはできない。

 

 家事はわたしにとってのアイデンティティでもあるからな。

 

 平日はお姉ちゃんとお風呂に入ったあとくらいに配信するのが常であるが、今日は少しでも早くアドバイスをもらいたい。

 

 とりあえず、夕飯前にパパっと配信しますか。

 

「まだ平日の三時くらいなのに、お兄ちゃんたち仕事はぁ♡ 学校は行ってないのぉ♡」

 

『くそおおおおおお!』

『ニートでごめんなさい』

『学費を全部親に出してもらいながらメスガキ配信見てる背徳感がクセになってんだ』

『父さん。母さん。ごめんオレ……(仕事に)行くよ』

『テレワーク中にメスガキ配信見ててごめんなさい』

『私は大学生だから。大学はわりと時間があるのよ』

『今日は有給ですが何か?』

『メスガキさんが今日もイキイキイキっていてえらい』

『初手罵倒様式美』

『メスガキのニヤついたほっぺたつぶして、変な音ださせたい』

 

「あはは。雑魚なお兄さんたちがかわいそうだから、イソラがお相手してあげるね♡ うれしいよね。小学生とお話できる機会なんて早々ないよ?」

 

『よく考えたらそうだな(冷静な自己分析)』

『小学生がいるキャバクラみたいなもんだしなw』

『そう考えたら犯罪臭すげえw』

『くそおおおおおおおおおお(興奮)』

『オレ氏……少し様子見中』

『メスガキどころかコンビニのお姉さんにお釣りですって言われたのが今日のMVP』

『でもメスガキも同じようなもんじゃん。平日配信してるんだし』

『個人勢で平日の三時に配信。あ(察し)』

 

「なぁに勘違いしてるのぉ♡ わたしは小学生だから学校が早く終わったんでーす♡ さあて、今日の雑談は前回の続きだね。わたしにアドバイスくれたMSGK泣かし隊のお兄さんはいないみたいだけど、あとでアーカイブで見るだろうからいいかな」

 

 アドバイスくれたMSGK泣かし隊の兄貴に申し訳ないが、ここは拙速を尊ぶことにする。

 お兄ちゃんたち、わたしに力を貸してくれ!

 メスガキを愛する者たちよ、つどれ!

 

「あ、初見さんのために軽く説明しておくと、お姉ちゃんに大学をやめてほしくないわたしがスパチャでみんなからもらった百万円を学費として渡しちゃったんだけど、それをどう説明するかって件だよ。お姉ちゃんは百万円を受け取りたくないっぽいし、人を甘やかすのって難しいね♡」

 

『お姉ちゃんにクソデカ感情向けてた件か』

『小学生のくせに、義姉に性的興味を抑えられない子がいるらしい』

『初見ですが、メスガキって本当に小学生なん? \100』

『小学生がブイチューバーしてるとか、世も末だろ』

『まあリアル小学生配信とかもないわけじゃないが』

『いまどきブイはほとんど企業勢だしな』

『メスガキも仕事っぽいキャラづくり味あるわ』

『普通に考えれば、こんだけキャラ立ちまくってるの小学生じゃ無理』

 

「あはっ♡ 初見のお兄ちゃんに言っておくけど、わたしは本当に小学生だよ♡ ほらほら幼女と話せてうれしいでしょ♡ 喜べよロリコンお兄さんたち♡」

 

『くそおおおおお(なんか嬉しい。これがメスガキの魅力?)\100』

『くそおおおおお(わかる。言葉は棘だがなんかあったかい)\100』

『くそおおおおお(いっしょにこのメスガキわからせようぜ)\100』

『くそおおおおお(かつてない連帯感。オレたちナカーマ!)\100』

 

「お兄ちゃんたちキモーい♡ そんなんじゃわたしが普通の小学生なら引かれちゃうよぉ♡」

 

『ち、メスガキがいきがりやがって』

『いつかわからせてやるからな!』

『オレ氏、この状況がとてもおもしろい』

『まあ、メスガキって名前な時点で小学生に興味あるのは自白しているようなもんだし』

『お、オレはメスガキってキャラづけに興味があるだけだ \1000』

『イソラちゃん声かわいいから好き \5000』

『赤スパ告白ナイス』

『ナイスパパ』

『いかしてるぜ。あんた』

 

「ん。消臭絶対必要おじさんお兄ちゃん、声が好きって言ってくれてありがとう。さてさて、じゃあ話のほうに移っていくけど、いいかなぁ」

 

『いいとも』

『いいですとも』

『かまわんやれ』

『確か姉ちゃんに大学にやめないでって言う話だったよな』

『自分の願望として大学やめないでという話』

 

「そうです。わたしがイヤだからお姉ちゃんに大学に通っててほしいって伝えるというお話だったよね。それで結果なんだけど――――」

 

 わたしは少し間を置いた。

 それからスっと頭を下げた。

 このメスガキ・イソラというキャラの稼働域は案外広い。

 キレイなつむじだって見せることができるぞ。

 まあ、普段メスガキのキャラと合わないからやってないけどな。

 そして、ちょっと強い声を意識して口を開く。

 

「なんの成果も得られませんでした!」

 

『今日時間早いなと思ったら謝罪動画だったのかよw』

『さんざんイキっておいて謝罪すんなw』

『いや待て。どうしてそうなった?』

『メスガキは姉へのクソデカ感情以外はコミュ力つよつよのはずだろ?』

『なにがあったんだ、いったい』

『ンー。メスガキって案外童貞くさいところがあるからな』

『お姉ちゃんに誘惑でもされちゃった?』

 

「お姉ちゃんに誘惑されちゃったってコメントあるけど、まさにそんな感じなんだよね。わたしが話を伝える前にお姉ちゃんが料理するって言ってきたからさぁ。わたしもお姉ちゃんの料理を手伝ってあげたの。これってもう結婚だよね?」

 

『ああそうだな(目そらし)』

『確か姉ちゃん20歳だっけ。姉妹百合てぇてぇじゃん』

『姉ちゃんって料理一回もしたことないんだっけ?』

『イソラの策謀によって、お姉ちゃんは既に餌付けされているらしい』

『姉の手料理を食べさせてもらって舞いあがってたんだなw』

『うーん。依存させたい依存症』

『お姉ちゃんが自立しちゃうとか勘違いして、盛大に混乱してたんじゃねーのw』

 

「まあ……そうね。うん、実はちょっと混乱してた。またお姉ちゃんが自立心を高めてるんじゃないかって思ったからね。だから、百万円の件はもう一回棚あげして、頭がよくて人生経験豊富なお兄ちゃんたちに聞こうかなって思ったんだよ。ねえ、わかるよね。お兄ちゃんたちって女性とつきあった経験も豊富なんでしょ♡」

 

『くそおおおおおおおおお』

『ああ女性と邂逅した回数なら何十回もあるぞ』

『毎日コンビニで会ってる』

『まあ普通に彼女くらいいるが』

『学校の先生は女性としてカウントされますよね?』

『メスガキごときが舐めるなよ』

『なんか上のほうで彼女いるくせにメスガキ動画見てるやつがいたぞ』

『あ?(威圧)』

『ちくしょうめ!』

 

「あ、ごめーん。少し煽りすぎちゃったぁ♡ 雑魚雑魚お兄ちゃんたちはわたしが相手してあげるだけじゃ不満なのかな♡ わたしのこと好きじゃないの? わたしはぁお兄ちゃんたちのこと好きなんだけどなぁ♡ もちろんオモチャとしてね♡」

 

『オレも好き』

『オモチャとしてもてあそばれちゃった』

『時々、非メスガキ要素を出してくるよな』

『メスガキ否定要素CO』

『彼女いる発言をしたやつをさりげにかばうムーブがもうね』

『でも、姉に欲情してる妹なのはまちがいないんだよな』

『もうイソラのキャラ設定グチャグチャ丸だよ』

『お姉ちゃんのことが好きってことは確か』

 

「そーだね。わたしはお姉ちゃんが好き♡ これはもう絶対的な世界運命だよ♡」

 

『世界運命?』

『そ、そうですか。よかったですね』

『オレ氏、人狼ゲームを観戦しているみたいだ』

『瞳の中にハートマークが見えるぞ』

『まあロリサキュバスだし……』

 

「ほらほら、お兄ちゃんたちなんか意見はないの? 恥ずかしがってないで出しちゃえよ♡ スカスカのノーミソ使って考えろ♡ ロリが困ってるのに、ロリコンのお兄さんたちがまともな意見ひとつも出せないなんて情けなぁい」

 

『罵倒加速装置入りました』

『しかし聞かれていることは昨日と同じだからなぁ……』

『下半身に血流が集まって何も考えられなくなりました』

『そうか。オレは髪の毛じゃなくて脳みそスカスカだったのか』

『メスガキのクソデカ感情の処し方とか誰も答えられねーよw』

 

『ちょっとオレ氏の発言を聞いてもらっていいか? \10000』

 

 赤スパが飛んできた。

 よっぽどわたしに聞いてもらいたいんだろう。

 その意見、自信ありとみた。

 

「カフェ・オレお兄ちゃん。スパチャありがとう。いいよ。言っちゃえ♡」

 

『つい先日のことなんだが匿名掲示板にあるスレッドが立った。そこでは、いまメスガキが言ってるのとほぼソックリな内容が流れていたんだ。要素をあげてもキリがないと思うが、両親が早世したこととか、姉の年齢が20歳とか、百万円を妹に渡されたとかな。ただメスガキの話と違うのは視点だ。つまり、このスレッドは姉が立てたやつなんだよ。\1000』

 

『ん?』

『カフェ・オレ氏。なんか語るやん』

『掲示板?』

 

 んあ?

 えっと。

 えーっと、うまく頭が回らない。

 

「すごく似通った事例があったから、その掲示板を参考にすればいいって話かな?」

 

『似た事例じゃない。ほぼ間違いなく『この事例』だ。あまり詳しく書きすぎると個人情報上マズイと思ったので伏せているが、メスガキはDMを解放していないからここに書くしかなかった。\1000』

 

『なんやなんや。メスガキが身バレしたって話か?』

『姉のほうが百万渡されて混乱して板立てたってこと?』

『カフェ・オレは何がしたいんや』

『板名とか書いてくれないとさすがにわからんな。星の数ほどあるんだし』

『試しに百万円で検索しても出なかったわw』

『メスガキちゃん動き止まってんよ』

 

「……」

 

 DMは確かに解放していない。

 そもそもわたしは個人勢をつらぬくしかなかったからな。

 企業勢とコラボでもしたあかつきには、秒で小学生だとバレる。

 そんな危ない橋は渡れなかったんだ。

 わたしがみんなとコミュニケートする窓は配信しかなかった。

 しかし、あのお姉ちゃんが匿名掲示板に板とか立てるか?

 ハッキリ言って想像できない。

 これブラフじゃない?

 そうだよ。きっとそうだ。

 

「証拠とか……あるのかなぁ?」

 

『声ひきつってる定期』

『なんだ? わからせか?』

『カフェ・オレ氏のわからせが始まるのか?』

『ブイで身バレは致命的だからやめてほしい。もしメスガキが配信やめたら怨むぞ』

 

『すまん。ビビらせるつもりはなかった。最初に赤スパ投げたのは、オレがメスガキの味方であると示したかったからだ。証拠は存在する。実を言うと、姉が妹の真意がわからんとかで、妹の心の内を探るために動画を撮影してスレ民に判断してもらおうって流れになったんだよ。\100』

 

 動画?

 お姉ちゃんが動画を撮影?

 ますます信じられない。

 

『姉が絶望的なまでにコミュ障だったために動画は生配信という形で流れてしまった。一応、のっぺらゲンガーをつかって最低限の個人情報保護はされているが、声までは加工されていない。AIに分析してもらったらビンゴ。メスガキの声と完全一致という結果が出た。\100』

 

『へえ……?』

『最近のAIさんはなんでも教えてくれるからな』

『オレがメスガキとつきあう方法を教えてください』

『AI:そんなのねーよ。顔見て出直してこい』

『くそおおおおおおお』

『つまりその動画を見つけられれば、メスガキの生身の姿がおがめてるってことだよな』

『のっぺらさんは棒人間にもなれるから、生身が見れるとは限らんぞ』

『ちょっと興味あるわ。メスガキの中身w』

『従順な羊の皮をかぶった狼だろw』

『ンー。カフェ・オレ氏が言及していないメスガキの属性を考えると、これって……』

 

 ヤバい……。

 まるで喉元に刃をつきつけられているような気分だ。

 動画の内容はわからんが、お姉ちゃんが()()()()()()()()()()()()()()が苦しい。

 身バレとかぶっちゃけどうでもいい。

 配信をやめなきゃいけないリスクは小学生だから常にあった。

 でもそれはお姉ちゃんを養うための手段であり目的ではない。

 だから、ちょっと未練はあるけど、べつにそれは問題ではない。

 カフェ・オレが何を思ってこんな発言をしたかは知らんが、それもどうでもいい。

 さきほどからカフェ・オレの発言にはわたしが小学生であるという情報を落してなかった。

 おそらく意図的な発言コントロールだろう。

 

 だとすれば、おそらく動画ではわたしが小学生らしい矮躯であることもバッチリ映っていたと推測できる。小学生のわたしを保護しようとしてくれてるのかは知らんが、もしそうだとすれば、彼は紳士だ。

 

 が――、だからどうした?

 

 わたしの生きる目的はなんだ?

 お姉ちゃんという宝物を得るということだ。

 いまの状況で何をすべきか。

 

「そっかぁ。そんなことになってたんだぁ♡ カフェ・オレお兄ちゃんは()()()()()()()()()()()と思っているの?」

 

『さっきも言ったが、オレはメスガキの味方のつもりだ。オレは掲示板で姉にメスガキがブイをやってることを知らせることもできたんだが、そういったことはしていない。どう考えても妹が姉に恋情を抱いているという状況のほうが特殊だからな。メスガキのほうに情報を渡すほうが第三者的な立場からはフェアだって思ったんだよ。\100』

 

「そりゃそうだよね。お姉ちゃんにガチ恋抱いている小学生とか、よっぽど戦略を練らないとうまくいかないからね。お兄ちゃんのお心遣い感謝いたします」

 

 わたしはまた頭をさげた。

 これはマジでそう思っている。

 カフェ・オレはやっぱりいいやつだ。

 わたしのことが小学生だとわかっていても、わたしのお姉ちゃんの想いまでは否定していない。

 

『だったらDMか、あるいはオレが捨てアド晒すから、そこにメッセージ送ってくれ。スレ名とか、動画アーカイブのURLとか渡すからさ。\100』

 

『なんだなんだ。いい話か?』

『カフェ・オレ氏がなんかかっこよくてむかつくわ』

『カフェ・オレの中、あったかいナリィ』

『こりゃ、メスガキもわからせられちゃったかな』

 

 カフェ・オレ氏のことは信頼できるだろう。

 それでお姉ちゃんがどんなスレを立てて、どんな発言をしているかがわかれば、お姉ちゃんを篭絡する一手になれる。

 

 だが――、足りない。

 圧倒的に足りないのは、そのスレッドをコントロールする術だ。

 いまはたまたまカフェ・オレ氏だけが、スレッドと配信を行き交い、両者を結びつけることができた。でも、第二・第三のカフェ・オレ氏が出てこないとも限らない。

 

 悪意のある者だって、出てくる可能性がある。

 

 わたしにとっての一番のリスクは、お姉ちゃんにわたしの腐れきった激重な愛情を知られてしまうこと。いまは家族愛を隠れ蓑にしているが、本心が知られてしまったら、お姉ちゃんはきっと受け入れてくれない。今の段階では――。

 

 当たり前だ。

 小学生女児には誰かと添い遂げたいという判断能力すら社会的に否定されてしまうから。

 

「ふふ……」

 

『メスガキ、不敵に笑う』

『カフェ・オレ氏にわからせられてしまってかわいそう』

『かわいそうかわいい』

『いざわからせを達成してしまうと、これはこれでむなしさを感じるな』

『すまん。急に話をしてしまって。今日は考えとくだけでもいいから。\100』

 

 わたしは、配信用のノートパソコンに小さな指を伸ばす。

 

――フェイルセーフ解除。

 

――第二セーフティ解除。

 

――キャラ・マスカレイドソフトの停止。

 

――本当に解除しますか。

 

――イエス。

 

――現在配信中です。本当に?

 

――答えはイエスだ。

 

「あーあ♡ カフェ・オレお兄ちゃんにわからせられちゃった♡ 責任とってよね♡」

 

 わたしはブイチューバーという仮面を投げ捨てて、みんなの前に小学生の矮躯を差し出していた。途端に広がるのは爆流のようなコメントの嵐だ。正直、ブイにとってリアル顔出しは自殺めいたところがあるからな。この混乱は予想された。

 

 でも、わたしにとってはそんなことは二の次だ。

 

『ええぇ……なにやってんのイソラちゃん。\100』

 

『ふわぁぁ……、メスガキちゃんがあらわれた』

『白髪にグリーンアイ。バチクソかわええ』

『え、メスガキマジの小学生?』

『メスガキというよりはビスクドールみたいな出で立ちだが、これはこれで……』

『これってワイらガチ小学生相手にメスガキプレイしてたってこと?』

『マジかよ。小学生のメスガキ演技能力の高さがスゲェ……』

『リアルメスガキだったとは』

『これもうメスガキをメスガキ呼びできる自信ねーわ』

『禿げになったら禿げを笑えなくなるようなもんよな』

 

 まあ、顔出しはちょっと思うところはある。

 みんなに対しての裏切りみたいなもんだからな。

 次回を許してもらえるなら、ちゃんとブイの皮をまとうよ。

 

 でもさぁ。

 わたしは、お姉ちゃんが一番大事なんだ。

 顔出し身バレとか、正直どうでもいい。

 

「カフェ・オレのお兄ちゃん。どうしたの? わたしのこの姿も知ってたんだよね。お兄ちゃんがわたしにこの姿を晒させたんじゃん」

 

『いやいや、まさか自分から晒しにいくとは思わんて。\100』

 

「でも、いたいけな小学生だよ。判断力ゆるゆるなわたしが大人のお兄ちゃんに追求されて、自爆しちゃうってことも考えられることじゃない?」

 

『それを自分で言ってる時点で草なんだがw』

『くそ。リアルかわいい小学生だとなんだか責めきれないぜ』

『ブイの仮面ってほんと大事だったんだなぁ』

『正直、カフェ・オレ氏は悪くないと思うぞ』

 

「でも、カフェ・オレお兄ちゃんはわたしのお姉ちゃんへの気持ちが本気なのもわかっていたはずなんだよ。そして、カフェ・オレお兄ちゃんにバレたんなら、お姉ちゃんにバレるのも時間の問題かもしれない。そう思ったら怖くなっちゃった……」

 

『シュンとした顔を見せるな』

『かわいいけど、かわいいって書いたら事案になりそうで書きこみづれぇ……』

『メスガキがシュンとすると、なんというか心にクルものがあるな』

『全部演技という線も捨てがたいのが恐ろしい』

『本当におまえ小学生か? いや見えてる現実とキャラで脳がバグるんだが』

『姉への恋情を打ち明けた回のアーカイブ消せば、とりあえずは大丈夫じゃないか?』

 

『いや配慮が足りなかったと言われればそうかもしれん。すまなかった。\100』

 

「ん。じゃあまずスレッドのURL張って♡」

 

『え、でもそれってリスナーにもバレちゃうんじゃ。\100』

 

「いいよ。だって顔出ししてるんだし、それに比べればいまさらじゃん♡」

 

『わかったよ。https://syosetu.org/novel/312293/1.html ここだよ。\100』

 

「わぁ。カフェ・オレのお兄ちゃんありがとう♡ さっきは悪く言ってごめんね♡♡♡」

 

『これってイソラのメスガキ度増してないか』

『もうこれイソラちゃん覚醒モード入ってる』

『なんとなくだが、イソラがしたいことがわかった気がする』

『小悪魔な羽が幻視される』

『イソラちゃん、天使みたいな容姿だけど小悪魔の羽ついてない?』

 

「じゃあ、みんなでスレを監視してて。わたしがブイしていることバレそうになったら教えてね♡ あと、こっちで都合がいい情報を流したくなったら伝えるからみんな協力してね♡ 最低でもカフェ・オレのお兄ちゃんはこうなった原因つくったんだから協力してくれるよね? 絶対逃がさないからね♡」

 

『うえええええええ』

『えげつねええええ』

『この少女、小悪魔につき』

『メスガキ力が急激にあがっていってる』

『情報操作入りました。情報操作入りました。情報操作入りました』

『ケテ……タスケテ……\100』

『カフェ・オレ氏が真っ白になって燃え尽きてやがる』

『わからせられているのはオレらだった?』

 

 そうだよ。雑魚お兄さんたち。

 わたしがわからせられるんじゃない。

 わたしがお兄ちゃんたちをわからせるんだ。




あなたがメスガキをわからせているとき
メスガキはあなたをわからせているのだ
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