【悲報】私氏、小学生妹ちゃんのヒモになりそう   作:おねロリのおね

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悲報。カフェ・オレ氏逮捕される

 わたしは思いがけなく顔出し配信をすることになってしまった。

 

 しかし、生の小学生が顔出しすることによって、リスナーのお兄ちゃん諸氏には、わたしの本気が伝わり、ある程度わたしの言うことを聞いてくれるだろう。なんだかんだ言っても、配信を見に来てくれる以上、わたしのファンであることは間違いないからな。

 

 それに、まあわたしってカワイイですし?

 外に出れば、老若男女問わずに微笑ましいものを見るような視線を投げかけられる。

 なかには、ねちっこい視線を投げかけてくる人もいるけど、そういうロリコンの視線は正直見られてるほうからすればバレバレなんだよな。こっちが見返すと、すぐに視線逸らしたりするし、むしろカワイイのはおまえらだぞ。

 

 カワイイわたしのお願いを、雑魚なお兄さんたちが拒否できないのは当然の理。世の中の真理と言ってもいい。要するに、

 

――手玉にとるっていう感覚ですかねぇ(ロリサキュバス目線)。

 

 人形遣いが人形を操るように、メスガキは雑魚お兄さんたちを操るのが宿命なんだよ。

 

 こういうふうにわたしがファンを動かして、盤面を有利に進める方法を俗に『ファンネルを飛ばす』と表現したりする。ファンネルっていうのは、ガンダムの兵器のことで、小さなビットからビームとか飛ばしたりする例のアレだ。あるいは、『伝書鳩』といって、わたしの意図を配信外にお届けすることも、これに含まれるかもしれない。

 

 いずれにしろ、わたしが直接的に掲示板を操作するというのは、いくら匿名掲示板でも歪みが生じてしまうと思う。人狼ゲームで狼が噛みによって盤面操作をすると、どうしても狼の意図が透けてしまうことがあるからな。同じように、匿名性のなかで特定の個人の発言が目立ちすぎると、わたしの存在がバレる可能性があるってことだ。

 

「だからぁ♡ お兄ちゃんたち、まずは読書の時間だよ♡ いきなり向こうに書きこんだりしたらダメだからね。いくら頭よわよわでも『待て』くらいできるよね? お兄ちゃんたち♡」

 

『はいわかりました』

『わんわーん』

『わかりましたw』

『リアル小学生の身バレのリスクを考えると、そうそう書きこめんて』

『掲示板いま読んでるけど、これお姉ちゃんがかわいすぎるw』

『小学生の指示に従うオレら』

『メスガキに飼われたい』

 

「よしよし♡ 待てができてえらいね♡」

 

『クゥーン』

『小学生にヨシヨシされる事案』

『しかし、イソラもこれ掲示板読みながら配信とかできるんかね? \2000』

 

「エル・オーお兄ちゃん、スパチャありがとう。お姉ちゃん活動資金に使わせてもらうね♡ 配信しながら掲示板見るのはちょっとキツイかもしれないかなぁ♡」

 

 配信は見られながら見るといった芸当をこなしているわけで、素の状態でも常にマルチタスクをしているわけだからな。これにもうひとつの作業が加わると、わりと厳しい。

 

『お姉ちゃん活動資金というパワーワード』

『イソラに課金しちゃって大丈夫? パパ活になったりしない? \3000』

『お姉ちゃん活動資金だから大丈夫だろw』

『みなさんにいただいたお金はお姉ちゃん活動資金として使わせていただきます』

『いくらハイスペックな小学生でも、さすがに厳しいか』

 

「ニート兄ぃスパチャありがと。パパ活ってなんのこと? パパみたいに活動することかな?」

 

『いやいやおまえ知ってるだろw』

『カマトトぶりやがってよう』

『もうね。小悪魔ちゃんなんよ』

『リアル小学生の容姿に騙されてはいけない』

 

「わたし小学生だからわかんなぁい♡」

 

『ぐぅ正論』

『これ以上なく正論』

『あんまり言いすぎると事案になってしまうという罠』

『くそおおおお。メスガキめ。わから……いやなんでもない』

『もう二度とわからせできないねぇ』

 

「それはそうと、今いるお兄ちゃんたちだけじゃなくて、夜にいるお仕事してたり学校にいってるお兄ちゃんたちに説明するために、今日はもう一回配信するね。あと少しで休憩しようかな」

 

 今は突発的な昼配信をしちゃってるわけだけど、わたしのリスナー層は夜に参加してる方が多いしな。いったん配信切ってから、夜にもう一回配信するほうがいい。

 

 それにわたし自身の予習も必要だ。

 勝手にお姉ちゃんの日記を盗み見るような背徳感もあるけど、実は少しだけ――いやおおいに興味がある。お姉ちゃんって思考隠しするタイプだからな。わたしにも、というか人間全般に対してこころを開かないタイプ。そこが愛おしいところなんだけどね。

 

 そろそろお姉ちゃんが帰ってくる時間だし、お姉ちゃん成分が切れてきた。

 夕飯の準備もしなくちゃいけないから、残り時間はあと少しってところか。

 

 少ない時間でできることは――っと。

 

「あ、そうだ。カフェ・オレのお兄ちゃんに報告してもらおうかな♡ まずは掲示板の流れをざっとわたしに説明してみて。お兄ちゃん頭いいからできるよね♡ あとスパチャは無理しないでいいよ♡」

 

『見てこいカフェ・オレ』

『これはロックされてます』

『小学生に狙われてます』

『ひえ』

『カフェ・オレ死』

『スパチャは無理しないでってところがもうね。飴と鞭なんよ』

『スパチャ無理しないでのところだけスゲエ優しげな声なのが怖い』

『掲示板、まだそんなに進んでないからすぐ読み終わったぞ』

『首輪つけられちゃったね♥』

 

『伝聞になるからメスガキが自分で読んだほうがいいと思うが、ざっと説明すると、姉が妹のヒモになりそうってことで自分をヒモ姉と自称して助けを求めている。その後は、ヒモ姉のダメっぷりが速攻で明らかになり、メスガキとの生活を生配信で流すといった感じか。\100』

 

「ふぅん。お姉ちゃんわたしから百万円渡されて、自分のこと小学生妹のヒモになりそうって思っちゃったんだ。かわいいね。ほんとかわいい♡」

 

『ヒモ姉www』

『そりゃ(小学生から百万渡されたら)そう(ヒモになるの怖い)よ』

『掲示板的には、無難に見守る派が多そうではある』

『ヒモ姉が情けなさすぎて相対的に妹ちゃんが優秀って感じか』

『小学生に生活全般をお世話されまくってる時点でもうね』

 

「わたしのスレ民の評価はどんな感じ?」

 

『そうだな。一概には言えんが姉への愛情を抱いているってのはスレ民も感じてるんじゃないか。ただそれは家族愛だと思うし、中には姉妹百合てぇてぇとかで茶化してるやつもいるが、背景事情を考えるとどうしてもなぁ。\100』

 

「そりゃそうだね。わたしもそう思う」

 

 両親を失って、お姉ちゃんとふたりきりになった小学生だからな。

 姉への思慕の情は、家族愛だと解釈するのが一般的だろう。

 それがわかってるからこそ、わたしも悩んでいたんだしな。

 

『ちな、ヒモ姉にメスガキへの恋愛感情はないそうだ。\100』

 

「はあああああああああああああぁぁぁぁ!? なんでええええええええええぇぇ!?」

 

 ふざ、フザけんなよ! ちくしょう。

 こんなの、こんなのまちがってやがる。

 わたしのお姉ちゃんはそんなこと言わない!

 いや、お姉ちゃんを否定してるんじゃない。

 お姉ちゃんは絶対正義だから、お姉ちゃんの言葉は正しい。

 けれど、脳みそが焼き切れそうなくらい熱くて、現実を受けいれられない。

 

『うるせえwww』

『悲報。メスガキ発狂するwww』

『イソラちゃん、ツライ現実に耐えられない』

『小学生だもんな』

『そりゃそうよ……。小学生妹から言い寄られても困惑しか湧かない』

『怒っててもかわいいのがバグるんだよなぁ』

 

「スゥ―――、ハァ。えへへ、取り乱しちゃってごめんね♡ そっか。そうだよね。()()()()()()お姉ちゃんがわたしに堕ちきってないのは、わたしにもわかってたんだ」

 

『だからこそ時間を求めたわけだからな』

『妹から恋愛感情向けられてるとか普通思わんて』

『家族愛と勘違いされちゃうだろうしな』

『いまでも家族愛かもしれないなって思うぞ。自分自身もわかってないだけで』

『今の時点ではって、必死に抗弁する姿がいじらしいわw』

 

「じゃあさ、カフェ・オレのお兄ちゃんとしては、今後どんな対策をするのがいいと思う? もちろん、わたしがあきらめるって線はなしね。お姉ちゃんをその気にさせるプランを考えてみて♡」

 

『いや、そんな方法があるのか疑問なんだが。今のメスガキは小学生なんだし、ヒモ姉がそれに応えたら、ぶっちゃけ児童虐待だろ。メスガキ自身が考えたとおり時間経過を待つのが無難だと思うぞ。\100』

 

「そうだね。時間経過は超大事。今の時点で告白するって線は、カフェ・オレお兄ちゃんのもたらした情報によって消えたって言ってもいいと思う。けれど、時間が過ぎるのを漫然と待つだけじゃなくてさ、盤面が有利になるように今という時間をどんなふうに活用したらいいかって話なんだけど。ねぇ、お兄ちゃんがんばって考えて♡」

 

『この小学生天才か?』

『ねえ、イソラちゃん本当に小学生?』

『他力本願寺だが』

『カフェ・オレ氏、顔出しの原因作ったから逃げられない』

『この小学生、転生して人生二度目なんじゃない?』

『ギフテッドか……』

『グリーンアイドモンスター……』

『お姉ちゃん逃げて。超逃げて。ついでにカフェオレも逃げろ』

 

『そうだな。さきほどの発言の焼き直しになってしまうが、掲示板ではメスガキの気持ちが確定しないように情報操作しつつ、家族愛で偽装するって線が丸そうではあるかな。\100』

 

「せっかく、わたしが情報を握ってる立場なんだから、もう少し積極的に動きたいなぁ♡」

 

『積極的?』

『もう十分に積極的だと思うが』

『押して押して押しまくってるよな』

『たまには引くことも覚えたほうがいい』

『ヒモ姉は陰キャっぽいから引いたほうがいいかもな』

 

「えー、お兄ちゃんたち消極的ぃ♡ そんなんじゃ満足できなーい♡」

 

『積極的に動くといっても限度があるだろう。掲示板の情報操作もやりすぎるとかえって逆効果じゃないか。\100』

 

「んー。そうかもね♡ でもリアル方面だったらどうかな♡」

 

『リアル方面?』

 

 それには答えず、わたしはおもむろに立ち上がる。そう()()()()動く。

 

 配信は、ローテーブルにパソコンを配置して、リラックスした状態で進めているが、今日のわたしはメスガキ度200%アップだからな。

 

 カメラの位置を微調整して、後方にあるベッドに腰かける。

 

 そして、足をくみ、みんなに見せつけるようにした。

 なお、今日の服装はワンピースというか子どもドレスというか、黒くてひらひらしているやつ。

 前のほうには大きめのリボンが垂れ下がっていてかわいらしい。

 当然、わたしが自分で選んで自分で買った一品である。

 パンツが見えそうな服装なので、少し気をつけなければならない。

 なお、靴下は履いてない。

 実のところ、陶器みたいななめらかな足が自分でもお気に入りだったりするんだよな。

 男目線で考えても、すごくキレイだし。触るとすべすべしてて気持ちいい。

 だから、みんなに宝物を見せるようにして悦にいるという感情が少しはある。

 

『ふあああああ。やめろ』

『やめなされ。やめなされ』

『メスガキさん、生足を見せつける暴挙』

『かわいいけど興奮しないな』

『これはいけません』

『小学生がはしたないですぞ』

 

 はしたなくても目的のためならキッチリやるのが真のメスガキなんだよ。

 

「今さっき思いついちゃったんだけどぉ♡ 例えば、カフェ・オレのお兄ちゃんのことはわたし視点信頼できるから。リアルで会ってもいいと思うんだよ♡」

 

『小学生から会っていいと言われる事案が発生してます』

『これはロリサキュバス』

『えぇぇ……\100』

『カフェ・オレ氏困惑』

『そりゃ困惑するでしょ』

 

「で、わたしがお姉ちゃんとどこかで待ち合わせをしているところに、カフェ・オレお兄ちゃんが声かけしてくるの。『ねえ君ひとり。かわいいね?』。そこで駆けつけたお姉ちゃんが颯爽と登場して、わたしは無事に守られる♡ カフェ・オレお兄ちゃんは『ち、強そうな姉ちゃんがついてやがったか』と言って逃げていく。これで、わたしがお姉ちゃんのことを好きになっちゃったというストーリーができあがるってのはどうかな♡ 未来への伏線になるね!」

 

『悲報。カフェ・オレ氏逮捕される』

『強そうな姉ちゃん。どう考えてもその時点で破綻なんですがそれは』

『メスガキはこう言ってる。お姉ちゃんのために死んでくれカフェ・オレ』

『はは、こんなになっちゃった。(手錠を見せながら)』

『わ……………ワァ…………\100』

『カフェ・オレちゃん。泣いちゃった』

 

「まあ今のは冗談だけどね♡ ごめんねカフェ・オレお兄ちゃん♡ ただ、こんなふうにリアルを利用するってこともできるかなって思ったんだよ。お兄ちゃんを信頼してるからこそできる一手だけどね」

 

 人はストーリーを求めるものだからな。

 なんか漠然と好きになりましたというんじゃ説得力がない。

 ただでさえ、家族愛だと誤解されやすい今の状況だと、お姉ちゃんを納得させることはできないんじゃないかという懸念がある。

 わたしはお姉ちゃんのことが好きになったというストーリーが欲しいんだ。

 

『ねえカフェ・オレ氏がさっきから息してないの』

『小学生にイジメられちゃったカフェ・オレちゃんがかわいそう』

『リアルで小学生と会うのはリスク高すぎだろうな』

『声かけるどころか道ですれちがっただけで事案だからな』

『世知辛い世の中だ』

 

「ほ、本当にごめんね。えっと嘘だよ。あんまり考えないで喋っちゃったの。お兄ちゃんたちが不利益を被るようなことは絶対にしないから安心して!」

 

 わたしはパソコンに近づいて平謝りした。

 どうやらやりすぎたようだ。

 

『メスガキなのか非メスガキなのか。それが問題だ』

『ガチ焦りしてるな。やっぱ小学生だしなぁ』

『近づいてこられると、緑の目に吸いこまれそうになる』

『ば、バブぅ……\100』

『カフェ・オレが幼児退行してやがる』

 

「さてさて、そろそろ時間かな。カフェ・オレお兄ちゃんをわからせちゃったし、リアルでの活動方法は問題が多そうだからナシの方向でいこうかなと思います。ただ、よかったらお姉ちゃんのことをわたしが好きになってもおかしくないようなストーリーを考えてみてね」

 

『みんなの力を結集して、妹が姉を堕とす方法を考えるか』

『しかも、小学生妹が姉に恋愛感情を向けてもおかしくないストーリーか』

『いやそんなのねーだろw』

 

『ばぶばぶぅ(悩みがあるなら顔の見えないネットの連中ではなくて、誰か信頼できる大人に相談してみたほうがいいと思うぞ。姉に恋するなとは言わんから、少しだけ周りに目を向けてみろ。それがオレのリアル方面でのアドバイスだ。\100』

 

「うん、カフェ・オレお兄ちゃんありがとう♡♡♡」

 

 でも――、カフェ・オレお兄ちゃんのことも信頼できる大人だよ。

 

 と、リンリーンとわたしのスマホに通知が入る。

 玄関先の遠隔カメラが起動。お姉ちゃんが帰ってきたみたいだ。

 

「あ、お姉ちゃんが帰ってきたからもう行くね♡」

 

『すげえ嬉しそうな声』

『いってらー』

『いってらー』

『今日の夜の枠ってリアル顔出しするのかな?』

『リアル顔出しはリスクだからしないほうがいいだろ』

『正直、リアル小学生と応対するのは緊張感で疲れる』

『ブイだからこそ気楽だったとも言えるかもな』

『バブぅ。\100』


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