呪いの世にて空を飛ぶ   作:権現

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三話投降後、滅茶苦茶伸びてお気に入り登録増えてビビった。

なんでこんな伸びたの?




呪いと相反する者

 

 

 

 

 

■──時間継続・◇◇某所──■

 

 

 

 

 

「───ッ!!?」

 

 

 真人は悲鳴を上げる間もなく仰向けに倒れる。

 両手は潰れてしまった眼を覆うべく光が差さないようがっしりと押さえた。それでも潰れた眼が見てしまったモノからの輝きは真人の両目を奪うだけで飽き足らず、このまま焼き尽くしてしまうのではないかという程の激痛を齎した。声なき悲鳴を絞り出そうとするもその労力は目の再生に割かれ、軋むような掠れた音が漏れ出るだけ。

 その様を見た漏醐はすぐに真人と博麗の君を遮るように立つ。

 一時も、瞬きすらせずに博麗の君を睨みつける漏醐は、花御から渡されたコルク程の大きさの耳栓を融かし頭上と両耳からマグマを吹き出す。

 それは咄嗟の事だった。今まで仲間意識を持ってはいたものの、花御や陀艮程表立って同胞を守ろうなどという馴れ合いはしてこなかった。どちらかと言えば真人と似た立ち位置でいた漏醐にとって、今自分がしている行動は彼にとって必要のない、そして相対する博麗の君を前にしては無謀な行動に他ならない。

 なのに、漏醐は自身で困惑しながらも戦闘態勢を解こうとはしなかった。

 

 それを興味深そうに眺める夏油(羂索)と心底面倒臭そうにしている博麗の君。

 

 

「何、あれもしかして私の術式がなんかしたわけ?」 

 

「……あ~そういうことか。君の言葉で納得したけどそういえば真人は他人の魂が見えるんだよ。だから君の()()()()()()()()でも見てしまったんじゃないかな」

 

「えぇ……キッショ、私何にも悪くないじゃない」

 

 

 溜息を吐きながら博麗の君は右手で印を組む。

 

 それに警戒心を示す漏醐。だが、体は動かない。

 いくら博麗の君の力の波動が小さくなったとはいえ、彼女の周囲は未だ聖域───呪いにとっての死地である。此方から仕掛けることはそのまま自滅につながる。

 よって、漏醐が今出来るのは相手の出方を覗うことのみ。

 

 そして博麗の君がその印を解いた───が、術らしきものは発動された動きはない。

 困惑する漏醐に、今まで会話相手としてみていなかった博麗の君の視線が此方を覗く。

 

 

「別に何もしたりしないわよ、ただちょっとそいつが私を直視出来ないよう認識をいじっただけ」

 

「………信じられる要素がない。貴様は我々の天敵だと確信した。何があったとしても相容れぬ」

 

「それはそう、でも私としてはあんた等は()()()()()()。その程度の連中に嘘なんてつかないわよ」

 

 

 面倒臭そうに吐き捨てる博麗の君に、漏醐は言い返すことが出来ない。事実だから。

 ただ相対した、それだけで格の違いを思い知らされた。そして博麗の君が嘘をついていないのは間違いないのだろう。だが、それでも戦闘態勢を解くことが出来ないのは彼女の言葉以上に彼女の存在に己が恐れているが故。彼女がこの場を去らない限り、漏醐の身体が緊張から解かれることはない。

 

 

大゛丈゛夫゛………もう大丈夫だよ、漏醐」

 

「真人ッ!?」

 

 

 両目の再生が終わったのか、真人はゆっくりと体を起こし漏醐の肩に手を置いて彼女と相対する。

 今度こそ彼女のその姿を見つめる真人。真人にいつもの軽薄そうな笑みはなく、眩しそうに目を細める程度ではあるもののしっかりと彼女を見ることが出来た。

 

 

「アイツの言ってることは本当だよ。ちょっと眩しいけど目が潰れる程じゃない」

 

「だがッ」

 

「な~に?らしくないよ漏醐。夏油がアイツを連れてきたってことと、アイツが俺に気を使ってくれたこと、少し考えれば今はこっち側だってのは分かるでしょ」

 

「………」

 

 

 真人の言葉に、漏醐は黙るしかない。確かに、冷静になってみればこちらと()()()()()()()()()()同盟関係にある夏油が此方を害することはない。

 こちら側の勝利の最低条件である五条悟の封印が達成されるまでこの縛りは有効だ。であるのならば、目下五条悟以上の脅威である博麗の巫女が夏油の知り合いである以上此方を害することはない。

 そこまで考えが至ったことで、漏醐はようやく体から力を抜くことが出来た。思わず安堵のため息、次いで来るのは何の連絡もなく博麗の巫女を連れてきた夏油へのいら立ちだ。

 

 

「おい夏油貴様、何故博麗の巫女を連れてきた!!」 

 

「博麗の巫女って?私の事?」

 

「ああ、君が眠ってから大体100年くらいかな、その頃から博麗と書かれた神社の巫女───博麗の巫女って言われるようになったよ」

 

「へえ、そのまんまね」

 

「安直だよねぇ」

 

「聞けぇい!!!」

 

 

 

 

 

■──時間経過・◇◇某所──■

 

 

 

 

 

 漏醐は完全に不貞腐れていた。夏油の説明が不十分だったからではなく、自分達の天敵である博麗の巫女が一先ずはこちら側であると分かったことへの不満でもない。それについては寧ろ安堵した位だ。

 では、なぜ不貞腐れているのかと言われれば─────

 

 

「へえ、今の時代の人間ってそんな馬鹿みたいなこと考えてんのね」

 

「そうそう!!ほんと馬鹿らしくて笑えて来るんだよ。特にこの前の連中は傑作だったなぁ……俺の言った事まんまと信じてやんの」

 

「あ~似たような連中なら知ってるわ。私がいれば大丈夫だと勝手に思って勝手に不満漏らして勝手に自滅した連中。あんなざま見てたら宿儺とかそこら辺のがまだマシよ」

 

「 呪いなき地 と いうの は 、 人間 も いない と いうこと で しょう か

呪いなき地というのは、人間もいないということでしょうか 」

 

「ん……私以外は定住しないし出来ないから、最終的に人間と言えるのは私だけになるわね………っていうか気持ち悪いしゃべり方しないでよ」

 

「ぶぅ~」

 

「此奴に関してはなんか懐いてきたし」

 

 

 

滅茶苦茶懐いてしまったからである

 

 

 理由はもちろんある。

 なんでも真人曰く「博麗の巫女は身体こそ人間だが在り方としては宿()()()()()()()()()()()()」というのだ。

 何を馬鹿なと笑えば、博麗の巫女は術式が魂に刻まれている関係上、基本となるのが呪霊と同じ魂だ。呪霊は術師とは違い肉体を持たず、術式は自己の魂に刻まれている。そして、博麗の巫女もまた生まれた瞬間から自己の魂に術式が刻まれているという特殊な人間だった。

 術師は自己の術式を概ね4~5歳付近で自覚するが、それはどこに刻まれているかも同様に自覚するのだ。よって、博麗の巫女は術式の自覚と同時に自己の魂の輪郭を認識した。そこまでならば少し特殊な術師であったのだが、何某かが切っ掛けでその在り方が反転。呪力の全てが巫力へと裏返り、肉体の劣化がなくなった。そしてそのまま年月を重ねたことで肉体と魂の境界線が歪み、言わば身体のある霊体へと変貌を遂げた。

 故に、呪力と相反する巫力を持つだけで、在り方としては真人らと近しいというわけだ。

 それを見つけたのは真人の眼力と、夏油(羂索)の考察故。

 

 よって、此処にいる漏醐を除く三名は相反するだけで自分達と変わらない同胞だと認識したのだ。

 

 

「チッ………花御と似たような扱いをすればいい……か。簡単に言ってくれる」

 

 

 漏醐が今口にしたのは真人からの助言だ。

 花御もまた通常の呪霊たちとは異なる特殊な生まれ方をした故、純粋な呪いとはいいがたい存在だ。故にこの中で言えば最も呪いらしくない。だから、博麗の巫女もそれと似たような感じで認識すればいいというのだ。

 実際この中で博麗の巫女に最も懐いてしまったのが花御なのだからそう認識できれば後は容易だろう。

 

 だが、漏醐はそう簡単には割り切れない。

 伝承として博麗の巫女を深く知ってしまっている漏醐は一人であった時からその存在を恐れてきた。それが今更自分達と相反するだけであり方は同じであると目の前に突き付けられて、はいそうですかと受け入れられるほど柔軟ではなかった。と言っても納得もしているから、即座には無理というだけだ。時間を掛ければ慣れることも出来るだろう。

 

 

 ─────それはそれとして、

 

 

「儂はまだ赦していないからな、夏油」

 

「えぇ、引きずりすぎじゃない?ちゃんと説明して君も納得したじゃないか。ちょっと驚かそうとは思ったけど」

 

「ちょっとどころではないわ!!!」

 

 

 ポンっと頭から輪っか状の湯気が飛び出す。分かりやすく怒っている。それに対して夏油はへらへらと笑うのみ。その様に更に怒りを込み上げ拳を握り締めるだけで手は出さない。それも縛りによる制限であった。

 

 

「漏~醐~お前もこっちで話そうぜ~」

 

「…………」

 

 

 顔を引きつらせ、満面の笑みを浮かべる真人の方を向く漏醐。そこへ追い打ちをかける様にじーっと見つめる花御と陀艮の曇りなき目。

 興味なさげな博麗の巫女は此方へキョトンとした目を向けている。そこに先のような絶望的な威圧も、凍てつくような視線もない。その気になれば今すぐにでも此方を殺せる力を持っているとは到底思えないだろう。だが、それでも─────

 

 

「はぁ………博麗の巫女!!」

 

「ん、何?」

 

「本当に、貴様は此方を害しないのだな」

 

「しないわよ面倒臭い、だってアンタらも私に襲い掛かってきてないし」

 

「………その言葉、忘れるなよ」

 

 

 漏醐は漸く、その重い腰を上げて同胞の元へと歩き出した。

 ……………その姿を瞼を細めながらニィッと口を三日月にして、羂索は笑った。

 

 

「うん、順調順調。やっぱり連れてきてよかった」

 

 

 

 






後書き

追加情報

二話で述べたように巫力を持つ者を呪物にすることは出来ない。
よって当然他者を対象とした術式等も対象として選択できない。
当然呪力の伴わない物によっての殺害を行っても呪いを発生することはない。
つまり、呪霊にはならないしなれない。




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