呪いの世にて空を飛ぶ 作:権現
続きです。
アニメの呪霊組強いね~想定通りだったけど。
宿儺の術式でちょっと考察したこともありますけど、それは作中で書こうと思ってます。
それではどうぞ。
そんな言葉が白髪おかっぱの少年とも少女ともつかない人物、裏梅の脳裏をよぎった。
その人物とは宿儺と幾度も小競り合いをし、その都度引き分け、終いは酒を酌み交わした唯一の例外。
宿儺に付き従う裏梅もその関係を悪くないと思わせた腐れ縁。
されど彼女が言った「一度つながった縁はそう簡単には切れない」という言葉を今まさに実感していた。
「あ、裏梅じゃん。あんたも
「」
もう会えないと思っていた旧友に、博麗の君に会えたことに対する驚き。
次いで来たのはこのことを黙っていたあのにやけ面をした
■──陀艮の生得領域──■
裏梅の到着により戦力が整ったと見なした羂索はパンっと両手を叩き自身に視線を集めた。
「さて、それじゃ戦力もそろって交流も深めたことだし、作戦会議と行こうか」
「はーい」
「はい、博麗の君」
「そういえばあんた等って何が目的で集まったの?」
そう、博麗の君が発言した瞬間────呪霊組の時間が止まった。漏醐に関してはこの感覚は二度目である。
ギギギとさび付いた歯車の様にゆっくりと首を博麗の君へと向ける漏醐。その口元はハクハクと声が出ない様子。其処へ追い打ちをかける様に夏油は今気づいたと言いたげにハッとした表情で彼女へ説明した。
「あ、ごめんごめん。そういえば説明してなかったね」
「げェェとォォうゥゥゥ!!!」
ポポポンと頭上から黒煙を巻き上げる漏醐に対して花御はどうどうと落ち着けんとし、陀艮は真人の背に隠れる。そして真人は腹を抱えて笑っていた。
漏醐の怒り、それは夏油が博麗の君に説明していなかったことではない。
それよりも前、自分たちの目的を知らない状態で博麗の君を自分たちにけしかけて恐怖を掻き立てさせたということである。
漸くその件についての怒りが収まったと思ったらまた蒸し返されて漏醐の堪忍袋ははち切れんばかりにパンパンだ。
「あー?……ああ、何怒ってるのかと思えば私が事情を知らずにあんた等を消しかけたことについて怒ってるわけね。それはアイツが悪いわ。でもま、ごめんなさいね」
「くゥゥゥ………ッ!!!」
自分が悪かったとぺこりと謝る態度を見せる博麗の君に漏醐の怒りが爆発することはなかった。というよりもその怒りの行き場を無くした。
プルプルと震えながら雲一つない青空を見上げ、漏醐は叫んだ。
「カァァァァァァァァアアアアアアアーーーッ!!!!!」
ゴミ一つない綺麗な海、生い茂る草木、さらさらと輝く砂浜で小さな火山が噴火した。
■──それから暫く──■
その後、鎮火した漏醐はこの集まりから一人離れて頭を冷やすべく海に潜った。さながら海底火山のごとく。
それをしり目に夏油は博麗の君へと説明する。
1 ─── 人間と呪霊の勢力図を書き換えること
2 ─── そのために一番の障害となる術師・五条悟を封印すること
3 ─── 両面宿儺を完全復活させること
大きな目標としてはこの三つを果たすべく彼等は此処に集まったのだ。
それを聞いた博麗の君は特に反応することなく
「そ、説明ありがと。じゃあ、作戦会議続けていいわよ」
と、興味なさげだった。
意外に思う花御、陀艮。しかし真人は博麗の君のその反応にニィっと口元を吊り上げた。
自分たちは人間を絶滅させようとしているにもかかわらず、それに対してうんともすんとも言わない博麗の巫女。
真人はそれが可笑しくて堪らなかった。この世で最も呪霊を絶滅させることが可能な人物が、それをせず寧ろ人類の絶滅を掲げる自分達に与しているという。これが笑わずにはいられない。
「五条悟の封印という最終目標の前に、高専側にある宿儺の指を回収するのが第一目標かな」
「高専って言うと京の都にある方?それとも
「うん、京の都じゃない方だね。今の呪術界はそこに忌庫があるんだ」
博麗の君の問いに答える夏油。
嘗ての呪術界───博麗の君や宿儺が暴れていた時代の本元は今の東京ではなく京都であった。そこから年月を重ねた末、呪術の本元は東京と京都に二分した。それは特級の呪いに備え、大本が一か所に集中したことによってそこを潰されるリスクを想定したからだ。尤も、そのせいで東京と京都の交流戦などで対立が起こったりなどもしているのだが………。
「でもさ、高専側に潜入するって言ってもその手段はあるの?確か天元っていう術師の結界で場所が分かんないって夏油が言ったんじゃん」
真人は問う。天元の結界術によって高専に侵入することは通常の手段では不可能だと。
そこへ夏油は答えた。
「問題ないよ。天元の結界術は“守る”よりも“隠す”ことに重きを置いた結界だ。だから場所さえ特定出来れば侵入は容易になる。そして───」
言葉を途中で区切り、袖から一つの札を取り出した。
「高専側の指にはすでにマーキング済みだよ」
博麗の君はその札を見てほうっと感嘆の息を吐く。
「それ、“境界の糸”を模してるのね。呪符に結界術を予め仕込んでいおいて発動するって奴。出来るようになってたんだ?」
「流石にその場で作るってことは出来ないけどね。苦労したよ」
「 “境界”とは?
境界とは? 」
「結界術の深奥、まあ結界術の極ノ番みたいなものだよ。それより、後は高専側に気付かれないように侵入する方法についてだ」
夏油は花御を指さした。今回の目標の要は君だと。
「花御は呪いの中でもかなり特殊だ。だから膨大な呪力も真人や漏醐に比べて感知しにくい。加えて、高専の建物のほとんどが木材を使われている。つまり───」
「植物を介しての侵入は容易ってことか………」
真人の答えに夏油はにこりと笑って頷く。
「後は陽動役と、本命の忌庫に行く役の二組に分かれての行動がベストだね」
「 では 、陽動役 は 私が引き受けましょう
では、陽動役は私が引き受けましょう 」
「んじゃ、忌庫役は俺がやろっかな」
「ねえ、私もなんかやることないわけ?」
夏油は面白そうと目を輝かせている博麗の君に相変わらずだと思うも、今回ばかりはダメだと首を振った。
「残念だろうけど今回はないよ、寧ろ今回ばかりは君が出たら勿体ないんだ」
「む、なんでよ」
「どうせ君のことだから件の五条悟にちょっかい掛けたいとか思ってたんだろうけど………流石に時期が悪い。ちゃんと時と場所は用意するから今回は許してくれ」
いずれちゃんと出番は用意すると博麗の君へと小指を差し出す夏油。それにムッとするも博麗の君は此方も小指を差し出しそれを結ぶ。
「「指切」」
■──それから暫く──■
作戦会議が終わり、各々が準備を整えようとしているところ、博麗の君は花御に声を掛けた。
「花御、ちょっといい?」
「 なんでしょう、博麗の巫女
なんでしょう、博麗の巫女 」
振り向く花御に博麗の君は徐に木の棒を投げ渡した。それを受け取る花御。
「 これは?
これは? 」
「さっき彼奴が言ってたからそこら辺の樹の棒を使ったわ。あんた、自然のものだったら何でもいいのよね?だからそれに結界術を仕込んでおいたのよ」
「 結界術、というと 先程 貴女が言っていた “境界” のことでしょうか?
結界術、というと先ほど貴女が言っていた境界のことでしょうか? 」
「まあね、なんかその五条悟ってやつのこと大分警戒してるっぽいからそれなりの物を仕込んでおこうと思ってね。それ使えばある程度の衝撃は肩代わりしてくれるわ」
博麗の君は自信満々に笑って花御に説明する。
先ほど夏油が見せた宿儺の指へのマーキング術と同じく、予め結界術を仕込んでおくという技術だ。だが、夏油が呪符という呪術を介するのに適したものを媒介にしていたのとは違い、博麗の君は其処らへんの適当な木の棒、呪術的な媒介になりえない、けれどそれを扱う者に適した形のものに組み込んだのだ。
そんな高等な技術だとは知らない花御は、自分たちに近しいとはいえ人間が呪いに何かを手渡すという行為がとても不可解に思えた。だが、どこか胸の奥が熱くなる感覚もあった。
「術の発動条件は、その木の棒に呪力を籠めること。そうすれば後は術が発動してあんたを守る囲いが出来るわ。だからなるべくありったけの呪力を籠めなさいね。出力の面はその術が代行するけど、その燃料である呪力はあんた依存なんだから」
「………」
「?どうしたのよ」
「 いえ………感謝します、博麗の巫女 私たちの同胞よ
いえ………感謝します、博麗の巫女。私たちの同胞よ 」
花御は心からの感謝を、博麗の君へと伝えた。それが伝わったのか彼女ははにかみながら笑顔を花御と返した。
「どういたしまして、よ」
そして、彼等呪いの躍動───その第一歩を踏み出した
因みに霊夢と羂索の指切は別に何の縛りもありません。
たんなる約束という意味での指切です。
それを破っても別に何のペナルティもありません。
ただ単に霊夢が不貞腐れるだけです。
それではまた次回。