しばらく経つと、フェリアの尋問役はケチャ少尉が行うことが多くなっていた。
カイとフェリアは、なんだかんだ言って命のやりとりをした腐れ縁ということで気も合うのだが、チャルチがいちいち焼き餅を妬くのでカイはフェリアの尋問からは外れることとなった。またチャルチがこっそりフェリアと接触して脅しや圧力をかけることのないよう、前皇帝の意を受けたリゲルがチャルチに強く言ったようだった。
「私とケチャ少尉がフェリアさんのお世話をします。カイさんとチャルチさんは接触しないようにとのこと。これは前皇帝陛下のご意向であります。」
チャルチは一瞬不満げな態度を見せるも、リゲルの殺気に気圧されたか、全身を覆う力を解放することなくリゲルに従った。
『何者なの…?』
あのチャルチを退かせるなんて。カイはその猫目の長身の美人とすれ違う際に、全身が粟立つのを感じた。なおリゲルは前皇帝直属の部下にもなりながらヤコブ=フィードラの助手も務めているが、このおかげでヤコブは話好きで聡明な前皇帝と接触できるようになった。それに彼は満足しているようであった。
「しかしフェリアは本当に強情だな。」
ある日、ヤコブはラフィタを捕まえて話しかける。ラフィタはこの男が好きではない。しかし、ヤコブの助手である猫目美人リゲルが正式に同僚となってしまった以上、むげな態度は取れなくなってしまった。
「陛下はラフィタ君もフェリアの世話係にしたはずなのだが。」
ラフィタは黙る。この男とフェリアの話はしたくはない。
「フェリアは君に会うのを拒否しているようだが。」
ラフィタは押し黙ったまま、首を縦に振った。
「これは私の得た情報だが。」そうヤコブは前置きした上で、ラフィタが聞いているかどうかもわからないまま話し始めた。
「魔女狩りと称して、フェリアを拉致しようとしている勢力がいるらしい。エストレージャにもいたと思うが、急進派の連中がピスカ・スーユにもいるのだよ。フェリアが今の手枷をはめられている状態で拉致されたら、いかに彼女が治癒力が高くても、暴力を受けた後で十字架にかけられ火刑にさらされてしまうだろう。しかもその勢力はアタタルカ皇帝のためと称してエストレージャの生贄を求めているらしい。別にアタタルカ陛下がそんな事を求めてはいないのだがな。陛下はそういった勢力を抑えることにまで手が回らないのであろう。クスコで立て直しをはかっている最中だからな。急進派の連中にとって黒の中隊のフェリアなどは格好の標的になるだろう。もう彼女はエストレージャにも戻れず、助けてくれる仲間もいない。我が助手のリゲルにも伝えたが、君にもフェリアの世話だけでなく、彼女の身の安全を守ってもらいたい。」
「!…フェリアさんが。」
「頼んだよ。ラフィタ君。」
ヤコブは言いたいことを一方的に言って、路地裏に消えていった。
長らくブランクが空きましたが、今夜より再開です。