「レイ・コリブリ。あなたにピサロ閣下から御呼出よ。」黒の中隊2番機ラ・パルカがレイ・コリブリを呼び出した。
「?なんでしょう。」
黒の中隊控え室でくつろいでいた黒の中隊4番機レイ・コリブリが立ち上がって、アルカンヘルに一礼をして部屋を出ていった。
「レイ。どうですか。フェリアがいなくなったが、黒の中隊はかわりないですか。」ピサロは相変わらず部下や同僚に対しても丁寧な言葉遣いをする。それが彼の冷酷さを少しばかり隠している。
レイは答える。「一人いなくなったぐらいで、黒の中隊はびくともしません。閣下の御命令あれば、いつでも蛮族どもを片付けてご覧に入れます。」
「君はいつも勇ましくて頼もしいが、今回は隠密業務を頼みたいのです。」
「は。どういったことでしょう。」
「耳を貸しなさい。」ピサロはレイを呼び寄せ、耳元でささやく。
「フェリアが生きているのですか?」レイは驚く。
「そうです。ピスカ・スーユのインティワタナの牢にいるらしいのです。」
「そこへ行って、フェリアを始末すればいいのでしょうか。」
「いや、生捕りにして、クスコのアタタルカ皇帝の元に届けていただきたい。」
「?…ピスカ領内の牢獄にいるのなら、アタタルカの権限で身柄を移せばいいだけでは…?」レイは命令の意図がわからず、混乱している。
「インティワタナは、賢明な前皇帝が支配している街です。アタタルカがいくらわめいても、罪人一人身柄を移すのも難しい状況なのです。」
「なるほど。そこで私がフェリアを拉致し、アタタルカの元にフェリアを運んでくると。その後は?」
「アタタルカの考えなら、フェリアの身柄の引渡しと引き換えに、クスコでの権力回復のためエストレージャの助力を要求するでしょう。しかし私はそれは拒否しようと思います。そうすれば、アタタルカ支持者のうちの急進派はフェリアを火刑にせよと暴動を起こしかねません。フェリアが火刑になるかはわかりませんが、いずれに転んでもアタタルカとクスコの住民の間には溝が生じ、今後エストレージャの支配がしやすくなるということです。」
「フェリアの引き渡し。そんな提案をしてきた時点で、アタタルカの器がしれています。」
「しかし、これはレイ。君にとっても良い提案であり、仕事ではないですか。」
「閣下もよくわかっていらっしゃいます。私はフェリアは好きませぬ。アルカンヘル姉様と共に行動する機会に何度も恵まれながら、これといった戦果も上げられず、蛮族どもに拉致される始末。先の戦では作戦に遅れた上に蛮族の妖術に引っかかってアルカンヘル姉様に斬りつけるなど言語道断。あのような者は、反逆罪での裁きを待つまでもなく、牢になどいれず、さっさと始末して仕舞えばよかったのです。閣下のご命令さえあれば、私が姉様や閣下に代わりあの不届き者を処分してご覧に入れましたのに。」
「レイ。私の命令は、フェリアを捕えて、アタタルカの元に届けよ。ですよ。殺してはいけません。わかりましたか。」
「…御意に。」レイは少し不満そうな顔をしたが、すぐに承諾した。